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2部 3章
エルフの集落
しおりを挟む謎の女性に会ってからしばらく歩いて、森の奥まで私達は来ていた。
「フランクの話だとそろそろ着いてもいい頃だと思うんだけど……」
「モンスターとは出会えどエルフとは一人も会ってないよね」
集落に近づけば、エルフの一人や二人に出会えるものと思っていたんだけど……アテが外れたなぁ。
普通だったら、集落の周りを警邏しているエルフや、森で狩りをしているエルフ、ただ単に散歩しているエルフに出会えてもいいような気がするけど……フランクに教えてもらった場所間違えたのかな?
「あら、あれって家じゃない?」
ローラが森の先を指さし言う。
その指の方向を見ると、確かに、木でできた簡素な家が並んでいるように見えた。
「ホントだ、じゃあ、あそこが集落なのかな?」
「みたいだね、少し手前に門らしきものもある」
クオンの言う通り、それ程しっかりしたものではないがこれまた、木で出来た門のようなものがあった。
ただ、門の前には見張りらしき人はいない……モンスターも出るこの森で見張りもいないってのは変だな……集落らしき場所にも人影が見えないし……もしかして、引っ越しちゃったとか?
「とりあえず、行ってみましょうですわ」
そうだね、エリンシアの言う通り、ここで推察してても仕方ないし、とりあえず行ってみよう。
私達はそのまま進むと、木で出来た門の所まで来ていた。
遠くからだと解らなかったが門の両端には石像のようなものが二体立っており、まるで門を警備しているかのようであった。
「エルフの石像……ですか?」
「そうみたいね」
かなり精巧な作りの石像である。
エルフって石像づくり得意だっけ?……どっちかって言うとドワーフとかの方が作りそうなイメージあるけど……。
まあ、エルフの中にだって彫刻が好きなエルフもいるだろうし、門に石像があるというのもそれほどおかしなことじゃないか……ただ、ちょっと不気味だけど。
とりあえず、門にも誰もいなかったのでそのまま門を潜り、集落らしき場所へと私達は入った。
もちろん、門の場所で大声で叫んで、誰かいないか確認したのだけど、少し待っても誰も来なかったので仕方がない……やっぱり、引っ越しちゃったのかな?
そのまま、しばらく集落の中を歩いて回ったが、人っ子一人いなかった……その代わりなぜか、石像をあちらこちらで見かける。集落を歩いている風の石像、ご飯を食べようとしている石像、恐らくカップルであろう石像に孫と遊ぶおじいちゃんの石像……なんというか、この集落自体が石像の集落って感じである。
「……おかしいわね」
「肯定だ……これではまるで……」
ディータとレンが言葉を交わすと、クオンやエリンシアそれにローラも頷いた。
うん?確かに変な集落だけど、どうしたのだろう?
「おかしいって何が?」
「この石像たちですわよ……この石像全てがエルフですわ」
「ん?だって、エルフの集落にある石像なんだからおかしくないんじゃない?」
「おかしすぎますわ……なぜこんなものを作りますの?」
「誰かの趣味?石像展を開こうとしたとか?」
「こんな森の奥にですの?誰も見に来ませんわよ……それに、この数の石像を作るとしたら膨大な時間が掛かりますわ……いくら長寿のエルフといえども何十年もここで石像を作っていたら何かしらの噂くらい立ちますわよ」
それもそうだ……こんなところで石像を作り続けていたら街に来ていたエルフたちの話題に上りそうなものである。だけど、フランクはそんなことを一言も言っていなかった。
いや、そもそも、おかしい……この石像たちはまだ綺麗だ……作られてから経っていても数年だろう……もし誰かがここでずっと作り続けているのであれば一番最初に作ったであろう石像はかなり損傷しているはずである……だけど、どれを見ても同じくらいの新しさに見えた。
「これ全部、同じタイミングで出来たってこと?」
「というよりも、ここに住んでいたエルフが石像にされた……と考えたほうがしっくりくるわよ」
えええええええええ!?
この人数を石像に変えたってこと……それは……。
「そんな……それじゃあ、ここの方たちは皆、死んでしまったんでしょうか?」
「石化の呪いであるのなら術を解けば治るはずよ……でも、問題は誰がこの石化をさせたのか……ね」
石化というのは自然には起こらない現象である……つまり誰かが意図的にここの人達を石化させたのだ……でも、一体誰が……何のために?
そう考えていると、私は森の入り口で出会った女性を思い出した。
この森にいるには似つかわしくないような女性である。武器の類は持っておらずドレスを身に纏い、終始笑顔でいたあの女性……もしかして、あの人が?
「森の入り口で出会った女の人……あの人が?」
「かもしれないね……でも、確証はないし……それに……」
「あの女性は幽霊のように消えましたわ……あの方のせいかは解りませんが普通ではありませんわよ?」
確かに、正直私もあの女性にかかわりたくないという気持ちはある……なぜだろう……あの人はヤバい気がするんだよね……正直人間とは思えない……。
でもだからと言って、このままだとここにいるエルフたちは元に戻らないだろう……それでは、協力を頼めないし……何より、冒険者としてこの人たちを放っておくことは出来ない。
「とにかく、もう少し探索をしてみよう……もしかしたら、誰か石化を逃れているかもしれないし、そうでなくても情報を得ることが出来るかもしれない」
「そうだね……じゃあ、手分けして探してみよう」
そう言うと私達は別々に集落を探索し始めるのだった。
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