346 / 361
2部 3章
魔女の誘い
しおりを挟む
「エリンシアっ!エリンシアっ!」
私の悲痛な叫びが木霊し続ける。
その様子を見た、災厄の魔女が口端を上げて笑う。
「……アンタ……何がおかしいのよ!」
私の身体から黒い魔力が迸る。
その常人とは違う魔力を見た災厄の魔女が目の端を吊り上げ、笑いを止めた。
「……そう、貴方がその女の言っていた合成魔法の使い手ね」
「だったら何?……そんなことより、エリンシアを元に戻して!」
「嫌よ、それより貴方、私の仲間にならない?」
「誰がアンタの仲間になんてなるもんか!……今すぐエリンシアを元に戻しなさい……でないと……ひどいよ?」
普段、カモメが怒りを露にするなんてことは滅多にない。
いつも優しく、楽しそうに笑うカモメばかりを見てきたメリッサは心の底から怒りを向けるカモメを見て驚いていた。そして、その迫力に恐怖さえ感じるのだが、なぜか嫌な感じを受けない……当然である、そのカモメと同じ怒りをメリッサも魔女に抱いているのだ。
「カモメ様、魔女の持っているあの杖……あれが、エリンシア様を石に変えました」
「そう、じゃあ、あれを壊せばいいんだね」
「恐らく」
「なら、話が早いね!魔水風圧弾《アクアウィレス》!!」
「おっと……影風結界」
私の放った水と風の合成魔法を、災厄の魔女は影と風の合成魔法で防ぐ。
私の魔法の中でも威力の高い合成魔法なのだが、災厄の魔女の結界を破ることは出来ない。
それならばと、私はバトーネを手に、魔女へと駆け出した。
「はああああ!!」
「ちっ」
私の一撃を後ろへ飛び躱す魔女、だが、後ろへ飛びのいただけでは私の攻撃は躱せない。
私は、バトーネから風の刃を発生させ、後ろへ飛びのいた魔女へと攻撃する。
魔女は予想外だったのか、その攻撃を防ぐことが出来ずさらに後ろへと吹き飛ばされた。
「きゃあっ!」
「暴風轟炎!」
「影風結界」
容赦なく追撃したカモメだが、その攻撃は防がれる。
だが、明らかに魔女の動きが悪い。
「はあ……はあ……ちっ、そこの女のせいで今日は疲れたわね」
「大地槍!」
大地から現れた円錐状の塊が魔女の周りを囲む。
「私を閉じ込めたつもり?空くらい飛べるわよ?」
魔女が風の魔法で空を飛ぼうとする……だが、そうはさせない。
「変則合成魔法!」
魔女の周りを囲った土の塊が、熱を帯びる……そして、魔女を囲ったまま大爆発を起こした。
「しまっ……きゃあああああああ!?」
魔女は予想もしていなかったのか、その爆発に巻き込まれる。
だが、咄嗟に防御の魔法を唱えたのだろう。崩れ落ちる土の塊の中から魔女は傷つきながらも姿を現した。
「合成魔法を後付けですって……デタラメな事をするわね」
「もう降参したら?」
「冗談でしょ!影手炎爆」
「カモメ様、気を付けてください!その手に触ると爆発が起きます!」
「あら、ずるいわね。せっかくの手品の種を教えちゃうなんて!……でもね!」
私がメリッサの言葉を聞いて、影の手から距離を捕ろうとしたのだが、影の手が私に近づいてきていないことに気づく……影の手の狙いは私ではない……しまった。
「風よ!!」
咄嗟に走り、影の狙いの前に飛び出すと、私は風の結界を張って影の手の爆発を防御する……だが、風の結界だけでは防ぎきれず、私は爆風を受け地面を転がった。
「くっ……エリンシアは無事!?」
「は、はい、大丈夫です!」
そう、影の手が狙ったのは私でもメリッサでもなく石像となったエリンシアなのだ。
「アハハハ!残念、お友達を壊してあげようと思ったのに!」
「……アンタぁ……いい加減にしなさいよ!そんなことをして何が楽しいのよ!」
「楽しいに決まってるじゃない!私を裏切った人間たちが苦しむ姿は最高よ!!」
「裏切った?……何を言ってるのさ!」
「頭の中がお花畑の貴方には関係ないわよ!さあ、その子を護り切れるかしら!影氷槍!」
今度は影と氷の魔法がエリンシアを襲う。
私はそれを炎の魔法で撃退しようとするが、全てを打ち落としきれず、一本だけ、撃ち漏らしてしまった。
「そんなっ」
私の慌てた声を聴いて、魔女がにやりと笑う。
影氷の槍はエリンシアへと迫る……が、影氷の槍はエリンシアへとは当たらなかった。
「くっ」
「メリッサ!」
メリッサがその身を挺して護ったのだ。
だが、その為に、メリッサの背中には深々と影氷の槍が突き刺さる。
「大丈夫!」
私が駆け寄り治癒の魔法をかけるが、魔女はそれを許しはしない。
「アハハハ!そんな暇はないわよ! 影槍」
今度は影の槍が私達を襲う……くっ、どうしたら……。
かなりの重症であるメリッサの回復を止めるわけにはいかない……かといってこのままじゃ……。
私が、打つ手もなく焦っていると……救いの声が聞こえた。
「輝竜秘力!」
光り輝く何かが、私の前に光速でやってきて、影の槍を斬り飛ばす。
「クオン!」
「根暗坊主だけじゃないわよ!闇の牢爆」
「ちっ……影風結界……ぞろぞろと」
ディータの闇の魔法を災厄の魔女は合成魔法で防ぐ。
クオンとディータだけではない、レンとローラも駆けつけてくれた。
「っ!……エリンシア!?」
レンがエリンシアの存在に気づき、声を上げる。
その声を聴いて、他の皆もエリンシアが石なっていることに気づいた。
「貴方がやったのかしら?」
「……だとしたら?」
「ぶっ殺す!闇の牢爆!」
「おっと!」
ディータの魔法を躱して、魔女が空へと飛びあがった。
「さすがにこの数を相手にするのは辛いわね」
「逃がすか!」
クオンが飛び上がり、魔女へと斬撃を放つ……だが、クオンの斬撃が届く前に、魔女は姿を消した。
「空間魔法……面倒なものを持ってるわね!」
「アハハ!今回は引かせてもらうわね……そこの子を助けたかったら合成魔法の少女一人で私の所に来なさい………場所はここから西にある洞くつの中よ」
「誰が貴方の言うことを聞くと思ってるのよ!全員で行ってとっちめてあげるわよ!」
「それでもいいけれど、その場合ここにある石は私の影たちが壊すわよ?それでもいいのかしら?」
「なっ」
つまり、私一人で行かなければエリンシアとエルフたちが完全に殺されてしまうと言うことだ。
「さあ、お優しい貴方達はどうするのかしらね……、楽しみに待っているわ!」
そう言うと、魔女の声は聞こえなくなる。
先ほどまでの戦闘の激しい音はなくなり、そこには夜の静けさが戻っている……その静けさがエリンシアを石に変えられた苦しさと寂しさをより一層、私の心に叩きつけるのだった。
私の悲痛な叫びが木霊し続ける。
その様子を見た、災厄の魔女が口端を上げて笑う。
「……アンタ……何がおかしいのよ!」
私の身体から黒い魔力が迸る。
その常人とは違う魔力を見た災厄の魔女が目の端を吊り上げ、笑いを止めた。
「……そう、貴方がその女の言っていた合成魔法の使い手ね」
「だったら何?……そんなことより、エリンシアを元に戻して!」
「嫌よ、それより貴方、私の仲間にならない?」
「誰がアンタの仲間になんてなるもんか!……今すぐエリンシアを元に戻しなさい……でないと……ひどいよ?」
普段、カモメが怒りを露にするなんてことは滅多にない。
いつも優しく、楽しそうに笑うカモメばかりを見てきたメリッサは心の底から怒りを向けるカモメを見て驚いていた。そして、その迫力に恐怖さえ感じるのだが、なぜか嫌な感じを受けない……当然である、そのカモメと同じ怒りをメリッサも魔女に抱いているのだ。
「カモメ様、魔女の持っているあの杖……あれが、エリンシア様を石に変えました」
「そう、じゃあ、あれを壊せばいいんだね」
「恐らく」
「なら、話が早いね!魔水風圧弾《アクアウィレス》!!」
「おっと……影風結界」
私の放った水と風の合成魔法を、災厄の魔女は影と風の合成魔法で防ぐ。
私の魔法の中でも威力の高い合成魔法なのだが、災厄の魔女の結界を破ることは出来ない。
それならばと、私はバトーネを手に、魔女へと駆け出した。
「はああああ!!」
「ちっ」
私の一撃を後ろへ飛び躱す魔女、だが、後ろへ飛びのいただけでは私の攻撃は躱せない。
私は、バトーネから風の刃を発生させ、後ろへ飛びのいた魔女へと攻撃する。
魔女は予想外だったのか、その攻撃を防ぐことが出来ずさらに後ろへと吹き飛ばされた。
「きゃあっ!」
「暴風轟炎!」
「影風結界」
容赦なく追撃したカモメだが、その攻撃は防がれる。
だが、明らかに魔女の動きが悪い。
「はあ……はあ……ちっ、そこの女のせいで今日は疲れたわね」
「大地槍!」
大地から現れた円錐状の塊が魔女の周りを囲む。
「私を閉じ込めたつもり?空くらい飛べるわよ?」
魔女が風の魔法で空を飛ぼうとする……だが、そうはさせない。
「変則合成魔法!」
魔女の周りを囲った土の塊が、熱を帯びる……そして、魔女を囲ったまま大爆発を起こした。
「しまっ……きゃあああああああ!?」
魔女は予想もしていなかったのか、その爆発に巻き込まれる。
だが、咄嗟に防御の魔法を唱えたのだろう。崩れ落ちる土の塊の中から魔女は傷つきながらも姿を現した。
「合成魔法を後付けですって……デタラメな事をするわね」
「もう降参したら?」
「冗談でしょ!影手炎爆」
「カモメ様、気を付けてください!その手に触ると爆発が起きます!」
「あら、ずるいわね。せっかくの手品の種を教えちゃうなんて!……でもね!」
私がメリッサの言葉を聞いて、影の手から距離を捕ろうとしたのだが、影の手が私に近づいてきていないことに気づく……影の手の狙いは私ではない……しまった。
「風よ!!」
咄嗟に走り、影の狙いの前に飛び出すと、私は風の結界を張って影の手の爆発を防御する……だが、風の結界だけでは防ぎきれず、私は爆風を受け地面を転がった。
「くっ……エリンシアは無事!?」
「は、はい、大丈夫です!」
そう、影の手が狙ったのは私でもメリッサでもなく石像となったエリンシアなのだ。
「アハハハ!残念、お友達を壊してあげようと思ったのに!」
「……アンタぁ……いい加減にしなさいよ!そんなことをして何が楽しいのよ!」
「楽しいに決まってるじゃない!私を裏切った人間たちが苦しむ姿は最高よ!!」
「裏切った?……何を言ってるのさ!」
「頭の中がお花畑の貴方には関係ないわよ!さあ、その子を護り切れるかしら!影氷槍!」
今度は影と氷の魔法がエリンシアを襲う。
私はそれを炎の魔法で撃退しようとするが、全てを打ち落としきれず、一本だけ、撃ち漏らしてしまった。
「そんなっ」
私の慌てた声を聴いて、魔女がにやりと笑う。
影氷の槍はエリンシアへと迫る……が、影氷の槍はエリンシアへとは当たらなかった。
「くっ」
「メリッサ!」
メリッサがその身を挺して護ったのだ。
だが、その為に、メリッサの背中には深々と影氷の槍が突き刺さる。
「大丈夫!」
私が駆け寄り治癒の魔法をかけるが、魔女はそれを許しはしない。
「アハハハ!そんな暇はないわよ! 影槍」
今度は影の槍が私達を襲う……くっ、どうしたら……。
かなりの重症であるメリッサの回復を止めるわけにはいかない……かといってこのままじゃ……。
私が、打つ手もなく焦っていると……救いの声が聞こえた。
「輝竜秘力!」
光り輝く何かが、私の前に光速でやってきて、影の槍を斬り飛ばす。
「クオン!」
「根暗坊主だけじゃないわよ!闇の牢爆」
「ちっ……影風結界……ぞろぞろと」
ディータの闇の魔法を災厄の魔女は合成魔法で防ぐ。
クオンとディータだけではない、レンとローラも駆けつけてくれた。
「っ!……エリンシア!?」
レンがエリンシアの存在に気づき、声を上げる。
その声を聴いて、他の皆もエリンシアが石なっていることに気づいた。
「貴方がやったのかしら?」
「……だとしたら?」
「ぶっ殺す!闇の牢爆!」
「おっと!」
ディータの魔法を躱して、魔女が空へと飛びあがった。
「さすがにこの数を相手にするのは辛いわね」
「逃がすか!」
クオンが飛び上がり、魔女へと斬撃を放つ……だが、クオンの斬撃が届く前に、魔女は姿を消した。
「空間魔法……面倒なものを持ってるわね!」
「アハハ!今回は引かせてもらうわね……そこの子を助けたかったら合成魔法の少女一人で私の所に来なさい………場所はここから西にある洞くつの中よ」
「誰が貴方の言うことを聞くと思ってるのよ!全員で行ってとっちめてあげるわよ!」
「それでもいいけれど、その場合ここにある石は私の影たちが壊すわよ?それでもいいのかしら?」
「なっ」
つまり、私一人で行かなければエリンシアとエルフたちが完全に殺されてしまうと言うことだ。
「さあ、お優しい貴方達はどうするのかしらね……、楽しみに待っているわ!」
そう言うと、魔女の声は聞こえなくなる。
先ほどまでの戦闘の激しい音はなくなり、そこには夜の静けさが戻っている……その静けさがエリンシアを石に変えられた苦しさと寂しさをより一層、私の心に叩きつけるのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
122
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる