4 / 12
第一章 化物と雪
4.吹雪の中で
しおりを挟む
ヒョオ、ヒョオ。
珍しいほどに風が強い夜だった。
こんな吹雪なかなかないだろう。玄慈は囲炉裏の火を強めた。
小屋の鶏は無事か?川が凍ってしまうだろうか、そしたら魚がいなくなってしまう。
様々な不安に唸っていると
トン、トン
戸をゆっくり叩く音がした。ような気がした。
玄慈は思わず振り返った。
まさかこんな冬の夜に、しかも自分のような化物男が住む家に誰が訪ねてこようか。
きっとこの強い風が戸を叩いただけだろう。
そう思い玄慈は囲炉裏に向き直った。
トン、トン
また聞こえた。少し大きな音に思える。
玄慈はようやく立ち上がり、そろりと戸へ近づいた。
「だ、誰か…いるのかい?そこに…」
冬眠から目覚めた熊だったらどうしようなどと身構えていると、返事が聞こえた。
知らない人間の、若い女の声だった。
「夜分に申し訳ありません。この吹雪で山を越えることができず困っております…どうか、しばらく泊めていただけませんか?」
鈴が鳴るような美しい声だった。口調も礼儀正しい。
しかし、玄慈はすぐに人ではないと思った。
こんな吹雪の中わざわざ山へ登り、誰が住んでるかもわからない小さな納屋に若い娘が1人で訪ねるなどあるわけがないのだ。
なかなか返事をしない家主に娘がまた頼みこむ。
「仕事はなんでもします。どうか…」
きっと妖の類だろう、狐か狸か…
いや、だからなんなのだ。ここで人ではないからといって追い返す理由にはならない。そんなことをしては村人が自分にしていることとなんら変わりないではないか。
それにこんなに頼りにされるなんて初めてのことだ。
玄慈は己の考えを改め、戸を開けることにした。
念の為手ぬぐいで顔を隠して。
「うちは狭いし、ここに住むのは男1人だ。それでも構わないんならここにいるといい」
戸を開けると冷たい風が勢いよく入ってきた。
(こんな寒い中待たせてしまったのか。悪いことをした)
玄慈は心の中で反省した。
吹雪で細めていた目を少しずつ開けると、感謝している娘の姿が見えた。
「ああ、ありがとうございます!」
何度もお辞儀をして喜ぶ娘を見て、玄慈はとても驚き目を見開いた。
そこには見たことないほど真っ白な肌に、真っ白な長い髪の娘がいた。
そして、とても美しい顔立ちをしていた。
「私はユキと申します。しばらくお世話になります」
にこりと微笑む娘の目を見て玄慈は言葉を失う。
(化かされていないとこんなことはありえん。妖ならきっとこの吹雪の中どうにかして俺を食い殺すのだろうか)
(しかし、なんだろう。それでも…)
玄慈は考えるのをやめ、娘を家に入れた。
たとえ人じゃなかろうと、騙されていようと、
それでもかまわない。
そう思えるほどに、娘の瞳は薄氷のように儚く美しかった。
珍しいほどに風が強い夜だった。
こんな吹雪なかなかないだろう。玄慈は囲炉裏の火を強めた。
小屋の鶏は無事か?川が凍ってしまうだろうか、そしたら魚がいなくなってしまう。
様々な不安に唸っていると
トン、トン
戸をゆっくり叩く音がした。ような気がした。
玄慈は思わず振り返った。
まさかこんな冬の夜に、しかも自分のような化物男が住む家に誰が訪ねてこようか。
きっとこの強い風が戸を叩いただけだろう。
そう思い玄慈は囲炉裏に向き直った。
トン、トン
また聞こえた。少し大きな音に思える。
玄慈はようやく立ち上がり、そろりと戸へ近づいた。
「だ、誰か…いるのかい?そこに…」
冬眠から目覚めた熊だったらどうしようなどと身構えていると、返事が聞こえた。
知らない人間の、若い女の声だった。
「夜分に申し訳ありません。この吹雪で山を越えることができず困っております…どうか、しばらく泊めていただけませんか?」
鈴が鳴るような美しい声だった。口調も礼儀正しい。
しかし、玄慈はすぐに人ではないと思った。
こんな吹雪の中わざわざ山へ登り、誰が住んでるかもわからない小さな納屋に若い娘が1人で訪ねるなどあるわけがないのだ。
なかなか返事をしない家主に娘がまた頼みこむ。
「仕事はなんでもします。どうか…」
きっと妖の類だろう、狐か狸か…
いや、だからなんなのだ。ここで人ではないからといって追い返す理由にはならない。そんなことをしては村人が自分にしていることとなんら変わりないではないか。
それにこんなに頼りにされるなんて初めてのことだ。
玄慈は己の考えを改め、戸を開けることにした。
念の為手ぬぐいで顔を隠して。
「うちは狭いし、ここに住むのは男1人だ。それでも構わないんならここにいるといい」
戸を開けると冷たい風が勢いよく入ってきた。
(こんな寒い中待たせてしまったのか。悪いことをした)
玄慈は心の中で反省した。
吹雪で細めていた目を少しずつ開けると、感謝している娘の姿が見えた。
「ああ、ありがとうございます!」
何度もお辞儀をして喜ぶ娘を見て、玄慈はとても驚き目を見開いた。
そこには見たことないほど真っ白な肌に、真っ白な長い髪の娘がいた。
そして、とても美しい顔立ちをしていた。
「私はユキと申します。しばらくお世話になります」
にこりと微笑む娘の目を見て玄慈は言葉を失う。
(化かされていないとこんなことはありえん。妖ならきっとこの吹雪の中どうにかして俺を食い殺すのだろうか)
(しかし、なんだろう。それでも…)
玄慈は考えるのをやめ、娘を家に入れた。
たとえ人じゃなかろうと、騙されていようと、
それでもかまわない。
そう思えるほどに、娘の瞳は薄氷のように儚く美しかった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる