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第一章 化物と雪
10.真実の
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脳に全ての記憶が流れ込んだ後玄慈は呆然としていた。
ユキが自分を凍らせ、殺そうとした。その衝撃から立ち直れないでいた。
多々羅は刺していた指をずぽっと引き抜くとニヤっと笑い話す。
「あの時とどめを刺し損ねていたようでお前は今日まで生きていた…だからわしは、泡雪にもう一度殺してくるよう言ったのだ」
玄慈はユキを見る。ユキは黙ったまま地面を向いていた。
「しっかし、こんな奴が死んでも誰も悲しむ者はおらんだろうにいつまでも殺せんとは。泡雪、お前は本当に役に立たん妖だ。お前は山神様の失敗作だ。お前はわしが殺す」
「!?」
ユキはあっという間に首を多々羅に掴まれた。
腕には血管がいくつも浮かぶほど力が入っており、ユキはみるみる苦しい表情に変わっていく。
絞め殺すつもりだとすぐに玄慈は理解した。
泊めてくださりありがとうございます──
玄慈さんがいて本当によかった──
玄慈の頭の中に出会った日のユキの言葉と笑顔が浮かんだ。
(あれは全て偽りだったのだろうか)
(でも俺は…)
玄慈はすぐに考えるのをやめ、走った。
逃げる為ではなく、多々羅を止めるために。
「やめてくれぇーーーっ!!」
「ぐっ!?」
人間の中ではかなり力がある玄慈に突然体当たりをされ体勢を崩した多々羅は、そのまま腕の力が弱まった。地面にドサッとユキが落ちる。
「げほっげほっ」
玄慈は咳き込むユキに駆け寄り、命が無事であることを確認する。そのまま守るようにユキの体を抱きしめた。ユキはそれに驚いたが拒むことはなかった。
「なんだお前はぁっ」
「俺が死ぬから!ユキだけは殺さないでくれ!この子は俺を醜いと言わなかった!おっかぁ以外にお礼を言われたのも!優しく手を触れてくれたのもこの子だけなんだ!それが嘘でもいい!殺すための罠だったとしてもいい!ユキの手で死ぬなら…俺は幸せだ!」
ユキの目から涙が溢れた。
そして、あの頃のことを思い出していた。
幼き日、玄慈の体を凍らせた。
「そのままとどめをを刺しておけよ」
「はい」
多々羅が指示した後去っていくのを見届けたユキは、玄慈に再び冷たい風を浴びせていく。
まだ氷で覆われてない玄慈の右手には白い小さな花があった。
それが目に入った瞬間、ユキは手を止めてしまった。
「はっ…!」
凍って意識がなくなっても花を握って離さない手を見ていると、ユキの目から涙が流れ落ちた。
ユキはなぜ涙が出たのかわからずにいた。
ユキはそれ以上玄慈に攻撃することができず、逃げるように山へ帰った。
ユキの行動と本人の凄まじい生命力により、玄慈は運良く氷が溶けるまで命が保っていた。
「面白い。殺してくれと言うておるぞ。やってやれ泡雪」
ユキは多々羅の声で我に帰った。
涙を拭き、静かに声を出す。
「多々羅…私はこの人を殺せない」
「気でも狂うたか?まさかお前、この醜男に惚れたわけでもあるまいな」
「玄慈さんは醜くなどない」
ユキが多々羅を睨む。それは初めてのことであった。
「あの時私はとどめを刺せなかった。なぜかわからなかったけど今はわかる。私は、あの日から玄慈さんを愛おしいと思う。私は、彼のそばにいたい。これからも」
拭いたはずの目元からぽろぽろとまた涙を溢すユキ。それを見て、玄慈も涙を流した。
そんな2人を見て多々羅はふう、と息を吐いた。
「もういい。2人共わしが殺す」
ユキが自分を凍らせ、殺そうとした。その衝撃から立ち直れないでいた。
多々羅は刺していた指をずぽっと引き抜くとニヤっと笑い話す。
「あの時とどめを刺し損ねていたようでお前は今日まで生きていた…だからわしは、泡雪にもう一度殺してくるよう言ったのだ」
玄慈はユキを見る。ユキは黙ったまま地面を向いていた。
「しっかし、こんな奴が死んでも誰も悲しむ者はおらんだろうにいつまでも殺せんとは。泡雪、お前は本当に役に立たん妖だ。お前は山神様の失敗作だ。お前はわしが殺す」
「!?」
ユキはあっという間に首を多々羅に掴まれた。
腕には血管がいくつも浮かぶほど力が入っており、ユキはみるみる苦しい表情に変わっていく。
絞め殺すつもりだとすぐに玄慈は理解した。
泊めてくださりありがとうございます──
玄慈さんがいて本当によかった──
玄慈の頭の中に出会った日のユキの言葉と笑顔が浮かんだ。
(あれは全て偽りだったのだろうか)
(でも俺は…)
玄慈はすぐに考えるのをやめ、走った。
逃げる為ではなく、多々羅を止めるために。
「やめてくれぇーーーっ!!」
「ぐっ!?」
人間の中ではかなり力がある玄慈に突然体当たりをされ体勢を崩した多々羅は、そのまま腕の力が弱まった。地面にドサッとユキが落ちる。
「げほっげほっ」
玄慈は咳き込むユキに駆け寄り、命が無事であることを確認する。そのまま守るようにユキの体を抱きしめた。ユキはそれに驚いたが拒むことはなかった。
「なんだお前はぁっ」
「俺が死ぬから!ユキだけは殺さないでくれ!この子は俺を醜いと言わなかった!おっかぁ以外にお礼を言われたのも!優しく手を触れてくれたのもこの子だけなんだ!それが嘘でもいい!殺すための罠だったとしてもいい!ユキの手で死ぬなら…俺は幸せだ!」
ユキの目から涙が溢れた。
そして、あの頃のことを思い出していた。
幼き日、玄慈の体を凍らせた。
「そのままとどめをを刺しておけよ」
「はい」
多々羅が指示した後去っていくのを見届けたユキは、玄慈に再び冷たい風を浴びせていく。
まだ氷で覆われてない玄慈の右手には白い小さな花があった。
それが目に入った瞬間、ユキは手を止めてしまった。
「はっ…!」
凍って意識がなくなっても花を握って離さない手を見ていると、ユキの目から涙が流れ落ちた。
ユキはなぜ涙が出たのかわからずにいた。
ユキはそれ以上玄慈に攻撃することができず、逃げるように山へ帰った。
ユキの行動と本人の凄まじい生命力により、玄慈は運良く氷が溶けるまで命が保っていた。
「面白い。殺してくれと言うておるぞ。やってやれ泡雪」
ユキは多々羅の声で我に帰った。
涙を拭き、静かに声を出す。
「多々羅…私はこの人を殺せない」
「気でも狂うたか?まさかお前、この醜男に惚れたわけでもあるまいな」
「玄慈さんは醜くなどない」
ユキが多々羅を睨む。それは初めてのことであった。
「あの時私はとどめを刺せなかった。なぜかわからなかったけど今はわかる。私は、あの日から玄慈さんを愛おしいと思う。私は、彼のそばにいたい。これからも」
拭いたはずの目元からぽろぽろとまた涙を溢すユキ。それを見て、玄慈も涙を流した。
そんな2人を見て多々羅はふう、と息を吐いた。
「もういい。2人共わしが殺す」
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