葡萄の国から

一郎丸ゆう子

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1話 長男は戦う

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葡萄の国はいつも笑いが絶えません


ここはいつでも、いつまでも平和



それは、お父さんの葡萄の木の愛が国中に行き渡り、お母さんの葡萄の軸がいつでも子の葡萄の実を守っているから




葡萄の国にはドアがあります。

子どもたちはそのドアを決して開けてはいけないとお父さんとお母さんに言われていました。



でも、好奇心旺盛な長男は、ある日、どうしても我慢できなくなって、とうとうそのドアを開けてしまいました。



ドアの向こうには、泣き叫ぶ子供、気の遠くなるような爆音、逃げ惑う人々が見えました。



「これは何? 今まで見たことがない景色」



「ああ、とうとう開けてしまったのね。」

お母さんは嘆き、お父さんは怒りました。



「ねえ、困っている人がたくさんいるよ。どうして助けないの」


「これまで沢山の仲間が行って、そしてみんな傷ついて帰ってきた。我々はもう誰も傷つけたくないとこのドアを閉め、決して開かないように呪文をかけたのだ」


「でも、僕は開けられた」


「時が来たのだろう。『天に選ばれた者が現れた時、この扉は開くだろう』、最後に扉を閉めた時に扉がそう言った。だか、私はお前を行かせたくない。この場所は何にも侵されない強力な結界がはってある。ここは永遠に平和で喜びに溢れた安全な場所だ。だが、お前が行くと言えば誰もそれを止めることはできない。選ぶのはお前だ」



「僕は行くよ」


長男はそう言うと扉の外へと出て行った。


長男は戦った。正義が勝って悪が滅びるのだと信じて。勝利がすべてをもたらしてくれると。


必死で戦って、勝利を収めた。


でも、戦いは新たな戦いを生み、喜びの裏側に悲しみがあることを知ると、長男は絶望を抱え、葡萄の国へ帰ってきた。



葡萄の家族は喜んで長男を迎え入れた。


ここでは心の傷も体の傷もすぐに葡萄のしずくで治してもらえる。


「扉の向こうでは、心の傷も体の傷も治るのにとても時間がかかるんだ。それにどうしても治らない病気やケガもある」




「よし、僕が向こうへ行ってみんなの病気やけがを治してくるよ」


葡萄のしずくの使い方が上手な次男が言いました。



「ああ、可愛い息子よ、扉の向こうにはここにあるような葡萄のしずくはないのよ」


お母さんは行ってほしくないと嘆いた。


「それでも僕は行くよ。向こうにも病気を治せる何かがあるはずだ。それを探してみんなの心と体を元気にすれば争いもなくなるはずだから」
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