葡萄の国から

一郎丸ゆう子

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5話 五男は働く

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五男はドアの向こうへ行くと、必死で働いた。お金がみんなを幸せにすると信じて。



そして、だんだん世界にお金が回るようになり、たくさんお金を持てる人々が増え、世界は豊かになっていった。


でも、そうなった時、人々はお金で買える幸せではなく、お金そのものを追いかけるようになった。


“お金のある人が幸せでお金ない人が不幸せ”と思われるようになり、お金を求めて新しい争いが起きた。


五男の思いも、やはりドアの外の世界全部には届かず、お金で幸せが買えない人をなくすこともかなわないまま、五男も葡萄の国へ帰る時間がきた。




「世界を幸せにできて、争いをなくすことができるのは、お金じゃなかったよ。僕のやったことは間違ってたの?」


「とても大切なことに気づいたわね。その気づきのためにあたながやったことは、素晴らしいことよ」


葡萄のお母さんがやさしく言いました。


「でも、今度はどうしたらいいんだろう?」


五男の嘆きに、兄弟たちもお父さんもお母さんも返す言葉がありませんでした。




すると、一番無邪気な末っ子の六男が言いました。


「なんか、面白そうだね。僕も行ってみたい」


「何を言ってるんだ。ドアの向こうはとても危険なんだ。遊びに行くなんてとんでもない」


兄さんたちは必至で止めたけど、六男の好奇心は止められずとうとう行ってしまいました。




「ああ、行ってしまったわ。しっかり者の兄さんたちがこんなに傷ついて帰ってきたのに。あの子にはとうてい無理だわ」


お母さんは嘆きました。


「見守るしかないだろう」


お父さんも絶望の中、言いました。



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