異世界転生者〜バケモノ級ダンジョンの攻略〜

海月 結城

文字の大きさ
29 / 39

討伐

しおりを挟む
 その後も、生活圏を広げていったカレンは、ある事に気づいた。

「ここまで、走ってきたのに、全然疲れてない?」

 カレンは、小屋から狼と鳥が戦っていたところまで走ってきた。それなのに、息切れは少ししかしていなかった。(距離は大体三千メートルぐらい)

「もしかして、今までのトレーニングが身を結んだのかな?」

 カレンはそんなことを考えながら、森の中を走っている。

「ふぅ、ここが、今までの最高到達点だよね」

 カレンは、木につけている印が切れているところまで、走ってきた。(島の端っこと小屋との中間ぐらい)

「さて、ここからどうしようかな。ね、ヒューは何処に行きたい?」

 カレンは自分で考えることを放棄し、ヒューに任せる事にした。そして、ヒューは、翼をバサっと広げ、右翼を前に突き出した。

「よし、このまま真っ直ぐ進むぞ!」

 カレンはこの時気づくべきだった。何故今までの道で魔物と遭遇しなかったのかを。
 それから、数分後、カレンの目の前に大きな音と大きな砂埃を巻き上げて降り立ったのは、あの時の鳥だった。

「うわー。勝てるかな?」

 カレンはあの時の戦いをほぼ全て覚えていたので、今回の戦いは避けて通れない道だという事を、直感で感じていた。

『キュエエエエエエエエ』

 鳥が威嚇してきた。皮膚が悲鳴をあげるように鳥肌が立つ。カレンとヒューはその威嚇で身体が一瞬硬直してしまった。それを見逃さないのがこの島の魔物たちだ。
 その鳥は、炎を纏って思いっきり突進してきた。
 ヒューは上に飛んで、カレンは硬直した身体に鞭打って横に飛んだ。

「うっ!」

 ヒューは避けることが出来た。カレンは、尋常じゃない速度で避けた。そして、木にぶつかった。

「痛っ! こんな動き今までしたことなかったのに、なんだろう」

 鳥の魔物はカレンが瞬間移動したように見え、何処にいったか分からなくなっていた。
 カレンは、双剣を取り出して、鳥の翼を刈り取ろうとする。それに気づいた鳥は、翼をたたみ身体を反転させた。すると、鳥の六十センチほどの尻尾が鞭のようにしなり、カレンに襲いかかった。

「っ! でりゃ!」

 カレンは鳥に向かった勢いをジャンプ力に変換させ、鳥の頭上を通過した。

「やっぱり。脚の力が強化されてる!? もしかして!!??」

 そこでカレンは辿り着いた。何故、自分がこんなに脚の力と体力のみが強化されているのかを。
 この島にいる魔物には、食べるとその魔物の特徴を最大二つまで強化される特性を持っているのだ。
 カレンが食べた狼は、走る為の脚力の強化と体力を強化された。これが、カレンの今の速さの元になっている。

「さぁ、トリ公! こっからは私の逆転劇の始まりだよ!! 行くよ、ヒュー!!」
「キュルル!!」

 それからカレンの逆転が始まる。そう思っていた。しかし、そうならなかった。カレンは、自分の力に徐々に慣れていっていたが、カレンとヒューの戦いのタイミングが、全然合わなかった。その為、

「ちょ、ちょっと。ヒュー! 私を狙わないでよ!」
「キュ、キュゥゥゥ」

 ヒューはいつも通りに戦っていたが、カレンの速さが凄まじく、狙った先にカレンがいる。そんなことが巻き起こっていた。それを見ていたトリ公は、なんとなく、呆れていた。

『キェエエエエエ!!』
「あっ」

 トリ公は、カレンをこいつ今俺のこと忘れてただろ。って目で見ている。

「忘れてないし、言ってみただけだし」

 気まずい空気が流れた。それを簡単に壊したのはヒューだった。今の空気をチャンスと捉えて、水のブレスを放った。しかして、量も勢いも足りないそれは、トリ公の炎で蒸発した。

「キュッ!」
「あちゃー。私だけが戦力だね。ヒューは、大人しくしててね」
「キュルー」

 ヒューは元気をなくし、そこら辺の木の枝に止まった。

「ここからは、私とトリ公との戦いだよ!」

 そして、カレンは速さを武器に未だ敵わないトリ公に挑んでいった。
 トリ公の横を走り抜ける。それと同時にトリ公が飛べないように、翼を傷つけていく。それを何度も繰り返す。しかし、それでも傷は浅かった。

『キェッ!!』

 トリ公は、飛んだ。

「まだ、あんなに元気なの!?」

 トリ公は、炎を体に纏って突っ込んできた。まさに!! あれだね。ポケットなモンスターだね。
 それを、横にステップで避ける。

「なにあの速さ、音が遅れてきたよ!」

 音速を超えたトリ公は、勢い余って地面に頭を埋めていた。

「チャンス!!」

 カレンは、双剣で羽を切る。トリ公は、動けずに両方の羽も切られた。その痛みで、やっと土から出てきた。

『ギェェェェ!!!!」
「うるさい!」

 カレンは、油断することなく、トリ公の頭をめがけて、右手の剣をトリ公の頭に投げた。
 やっとの思いでカレンはトリ公に勝利した。

「や、やった! 勝った!」

 大声だと他の魔物がやってくる恐れがあるので、小声で喜んだ。

「よし、ヒュー! 小屋にこいつを持って帰るよ!!」
「キュル!!」

 ヒューは嬉しそうにカレンの頭の上に戻った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

転生『悪役』公爵令嬢はやり直し人生で楽隠居を目指す

RINFAM
ファンタジー
 なんの罰ゲームだ、これ!!!!  あああああ!!! 本当ならあと数年で年金ライフが送れたはずなのに!!  そのために国民年金の他に利率のいい個人年金も掛け、さらに少ない給料の中からちまちまと老後の生活費を貯めてきたと言うのに!!!!  一銭も貰えないまま人生終わるだなんて、あんまりです神様仏様あああ!!  かくなる上はこのやり直し転生人生で、前世以上に楽して暮らせる隠居生活を手に入れなければ。 年金受給前に死んでしまった『心は常に18歳』な享年62歳の初老女『成瀬裕子』はある日突然死しファンタジー世界で公爵令嬢に転生!!しかし、数年後に待っていた年金生活を夢見ていた彼女は、やり直し人生で再び若いままでの楽隠居生活を目指すことに。 4コマ漫画版もあります。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...