幼馴染みの2人は魔王と勇者〜2人に挟まれて寝た俺は2人の守護者となる〜

海月 結城

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世界大戦~院長の過去~②

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 その日も勇者として二、三匹の魔物に襲わていた村を助けていた。

「勇者様ありがとうございました。少ないですが、数日の食料にはなると思います。よければ、貰ってください」

 こんな世の中だ、数日の食料はとても貴重で上手く遣り繰りしたら四日はそれで生きることが出来る。俺たちは断ったが村人全員で貰って欲しいと言われ、断ることが出来なかった。

 それから、数日が経過し俺たちは最前線の街にやって来た。何やら、ここの魔物の数が最近多くなっているという情報を掴んだからだ。

「勇者様。お待ちしておりました」
「うん。それで、今はどんな状況?」

 俺たちがその街に着いた時、魔物の存在をすぐ近くに探知していた。その街にいた冒険者、騎士団、傭兵団たちが街の外で武器を手に魔物を待ち構えていた。

「良かった、まだ始まってなかった」
「騎士団長、私たちの指揮はどうしますか?」
「……そうですね、勇者様方の動きはそちらでお任せします。我々は勇者様方の能力も何もかも私たちは噂でしか知らないので、うまく指揮が出来ないと思います。ただ、やはりと言うか中央が薄いんです。ですから、勇者様方にはその、中央をお願いしたいです」

 騎士団長は申し訳なさそうに提案してきた。
 多分だけだ、勇者と言っても若き青年に頼むのが気が引けるのかもしれない。

「分かりました、任せてください」

 そして、俺たちが最前線に着くと魔物が動き出した。

「全員武器を構えろ!!! 来るぞ!!!!」

 俺の声はそこにいる全員に聞こえる声で叫んだ。それと同時に、聖女であるメルトは城壁の上で歌いだし、聖女の力を使ってこの場にいる全員にバフを付けた。

 聖女のバフはそこら辺のバフとは比べ物にならない、そこら辺のバフだと能力を上げたとしても1.2倍、しかし聖女のバフは2.0倍だ。それに、能力を上げるだけではない、ほんの少しの再生能力まで付くお得付きだ。

 魔物が見えてきた。あと数秒で俺たちと戦闘が始まるところまで魔物が来るとそこで足を止めた。魔物が左右にずれて一本の道を作り出した。その先には一体の魔族が居た。

「初めまして、愚かな家畜ども。私は魔王軍四天王英知のケルト。そこにいるの勇者で間違いないか?」
「あぁ。俺は勇者ナオレイン」
「そんな睨まないで下さいよ。ほら、笑って笑って」
「……」
「冗談の通じない……ま、いいでしょう。勇者ナオレイン、我らが魔王様に挑むにふさわしいかここで見せてもらおうか」

 ケルトは腕を上げて振り下ろした。それを合図に魔物は走り出した。

 そして、最前線に送られた騎士団と冒険者、流石と言うべきだろう。後衛の魔法使い、弓使いが魔物に向けて魔法と矢を放った。魔法は広域殲滅魔法を使っていて魔物たちは避けることなど出来ずに死んでいく。弓使いが放った矢はそのどれもが空中で分散し魔物に矢の雨が降り注ぐ。広域殲滅魔法で処理しきれなかった魔物がそれで死んでいく。

「勇者殿!! これで、魔法職は少しの間動けません!! 後は……お願いします!!」
「了解した。シュナイ、死ぬなよ。ルーレイ、シュナイの援護を頼んだ。ゲンドラ、行くぞ」
「「「了解」」」

 そして、俺とゲンドラは正面突破で突っ込んでいく。普通なら、それを聖弓士のシュナイと聖魔士のルーレイが援護するのだが、シュナイは戦闘になると人が変わり弓を持って突っ込んでいく。弓で殴ったり矢を突き刺したり、エルフ特有の目と耳はシュナイの視覚に穴は無い。

「おれの邪魔すんなら、てめえら全部ぶっ壊してやる!!」
「はぁ、あのかわいいシュナイが、あんな言葉遣いにお姉ちゃんは悲しいぞ」
「うっせー! さっさとおれの援護しやがれ!!」
「分かったから、そんなに吠えないでくれ」
「あ? 聞こえてんぞ!! おまえもぶっ壊されてぇのか!?」
「おー怖い怖い。って、ちゃんと前見なさい」

 なんだかんだで、この二人は日常でも戦闘でも馬が合うようで続々と魔物を屠っていく。

「俺たちも、あっちに負けてらんないな」
「そうですね。それで、準備はどのくらいですか?」
「そうだな。後、五分ってところだな」
「了解しました。では、その間は私が守らせていただきます」
「いや、その心配はない」
「? と言うと……」
「俺だって、成長はしている」
「まさか……あの魔法詠唱を動きながら出来るようになったのですか!?」
「その通りだ」

 俺は以前までとある魔法を使うとき全集中しながら詠唱しないとできなかったのが、勇者として戦って行くうちに敵に攻撃しながらでも詠唱できるようになったのだ。これで、詠唱中隙だらけにならないようになった。

「『すべての悪を消し去る閃光よーー聖剣に宿り敵を貫けーー』」
「!? これはすごい」

 そこまで詠唱すると俺の体から真っ白い魔力があふれ出した。それからも、敵を屠りながら詠唱を続ける。

「ほう、あれは完成したら厄介ですね」

 そして、魔法は完成した。

「『収束せよ!!ーー顕現せよ!!ーー『シークレットナイト』」

 現れたのは、身長五メートルを超え、巨大な剣を持った騎士が現れた。

「『放て!!ーー『ホーリーライト・Level5』」

 まさしくそれは、神の一撃だろう。真っ白の閃光が騎士の剣から放たれ前方180度の魔物がこの世から消え去った。この魔法、魔物や魔族にしか効果が無い。俺の右前方で戦っていたシュナイとルーレイはこの魔法をもろで喰らっていても全くの無傷だ。と言うか、怪我を負っていたら人族やエルフ、オーガ族などは回復する。

「これで、魔物は全部やったか……」
「だと、良いんですけど」

 街を襲った魔物はそれで全部倒したと、思う。けど、何故だろう? 何か引っかかる。簡単に行き過ぎてる気がする。

「ハハ、ハーハッハッハッハ!!!」

 その声は、後ろから聞こえた。

「騎士団長? ど、どうしたんですか!?」

 近くにいた騎士は笑っている騎士団長に話しかけ、即座に騎士はその首を刎ねられた。

「!?」
「あーあ、四天王のケルトがやられてしまったぞ」
「……まさか、お前」
「いやはや、勇者がここまで強いとは誤算だったな。だが、問題ない」

 その時、街の中で大きな爆発が起きた。

「長いこと、この街を落とせなくて苦労したが、あと少しでこの世界は魔王様のものだ」
「お前、裏切ったのか!?」
「裏切った? 笑わせないでくれ。俺は最初っから人間ではない」

 そして、騎士団長の皮を被った魔族が現れた。

「俺は最初っからお前たちの仲間ではない。俺は、道化師のガグゥ」

 そして、街の中から二人の魔族が飛んできた。

「あれが、勇者? 結構かわいい顔してるわね。……食べたくなっちゃっう。私は色欲のサキュル、よろしくね勇者様」

 そう言って、サキュルはナオレインを見つめながら舌なめずりした。

「ってか、ケルトの気配ないんだけど? もしかして、さっきので?」
「見たいだな」
「ってことは、ムルトを止めるうざったい奴は居ないってことだね? そうだ、自己紹介がまだだったわね。我は豪拳のムルトよ。ムルトのことを楽しませてね」

 三人が並び立ち、その場にいた勇者と仲間以外の人間は足が震えて立つことしら許されなかった。

「ま、今日は自己紹介だけだ、今頃街の中は魔物によって蹂躙されているだろうな」
「あんたたち、なんてことをしてくれたのよ!!!」

 いかにも、殴り掛かりそうだったルーレイを手で制した。

「大丈夫。あそこにも仲間がいる。感じてみろ」
「……!? まさか……メルト?」
「ああ、あっちはもう大丈夫」
「? なにをこそこそしている。あっちに行かなくていいのか? まさか、勇者が街の住人を見殺しにする最低な奴だとはな……人間たちも可哀想だな」
「何言ってる? 俺たちが行くまでもない、ただそれだけだ」
「は?」
「!? ちょっと、どういうこと!?!? さっき放った魔物が……一匹も残っていないなんて!」

 あそこには、俺たちの仲間メルトが居る。メルトは聖女になる前格闘家として名を馳せていた過去を持つ。魔物なんて聖女の力を使ったメルトに歯が立つはずがない。

「……今日のところはこれで許してやる。帰るぞ!」
「その前に、私たちからの置き土産よ」

 魔王軍幹部は三人では円を描くように手を繋ぎながら飛んだ。三人の中心には漆黒の球体が出来上がっていく。それが街の上まで飛んでいくと一気に巨大化し、街の空を覆いつくした。そして、魔王軍幹部の合図と共にそれは落下していき、一瞬で消え去った。

「……そんなことさせる訳ないだろ」
「「「!?!?」」」

 それを消したのはナオレインの重力魔法だった。

「お、お前!! 何をした!!」
「何って、強力な引力をあれの真ん中に発生させて、消しただけだが?」

 魔王軍幹部たちは言葉が出ずただ茫然としていた。

「次は、お前たちがああなる番だ」





 そして、俺たちは魔王の目の前まで辿り着いた。

「魔王。お前を倒してこの世界に平和をもたらす」
「勇者、神によって作り出された神造の英雄か。四天王を倒して調子に乗ってここまで来たか?」
「魔王との雑談なんて付き合うわけないだろ。みんな、これが最後の戦いだ。気合入れていくぞ」

 俺の言葉にそれぞれが返事をして武器を構えた。

「良いぞ。かかってこい、その夢、この俺様が直々にぶっ壊してやる」
「あんたなんかに、私たちの夢を壊させなんてしない!」

 メルトは、今まで見たことのない程強力なバフを俺たちに掛けてくれた。その効果は、およそ二倍。能力が4.0倍に上がった。

「凄いな。これが、聖女の本当の力か」

 メルトの力のおかげで、俺たちの能力は四倍まで膨れ上がり魔力そのものも大きく増えた。その波動は魔王城周辺まで影響を与えていた。魔物や動物たちは魔王城から逃げるように遠ざかりいくつもの台風が発生していた。

 雷が落ちると共に最終戦は始まった。

 先に動いたのは聖魔士のルーレイだった。杖を甲高い音を出して地面を叩いた。すると、魔王城が動いて壁から触手のようなものが出てきて魔王の手足を拘束した。その動きを予測していた聖弓士のシュナイは矢を握り締め、魔王を貫いた。

 魔王は口から血反吐を吐いて、そして笑った。

 触手での拘束を一瞬で破壊しシュナイが逃げるより早く頭を鷲掴みして聖騎士のゲンドラ目掛けてぶん投げた。ゲンドラはそれを受け止めるために防御の姿勢を崩して手を広げた。しかし、シュナイがゲンドラに受け止められるより早く魔王がゲンドラの懐に入り込んで、お腹を殴られていた。

 その一撃で聖騎士のオリハルコンの鎧は砕け散った。

 それからも魔王の攻撃は止まらない。仲間と魔王の間に入って助けようとするがカウンターを喰らって遠くに飛ばせれ、その間に仲間たちがどんどんやられていく。

 そして、仲間たちは魔王によって殺された。

「あとは、お前だけだ勇者」
「う、そだよな……なぁ、みんな……起きてくれよ……頼むよ……目を、開けてくれよ……」

 俺は、魔王と戦っていることを忘れて泣き崩れていた。

「……脆い」

 それだけ言って魔王は俺の背後に立って剣を握り締めた。

「次の勇者はもっと歯ごたえがあるといいな」

 そして、俺は死んだ。




 ここは、どこだろう?

 俺は、真っ白な空間を漂っていた。周りにあるのはふわふわ浮いている四つの光る球だけ。

 あれは、なんだろう? なんか、懐かしい匂いがする。

 そう思って、手を伸ばしてみる。しかし、今の俺には手なんて存在しない。それに届きそうで届かない。そして諦めてしまった。

 俺はダメだった。魔王なんて倒せなかった。仲間が死んでいくのを見ていることしかできなかった。結局俺は勇者じゃなかった。何が、勇者は魔王を倒す存在だ、だよ。全然そんなんじゃなかった。勇者っていったい何なんだろうな?

『教えてあげようか?』

 それはいきなり現れた。

『勇者って言うのは、勇気ある者って訳じゃない。勇者って言うのは、神によって与えられた力じゃない。勇者って言うのは、そこにいる、そこで生きている希望なんだよ。希望があるからみんな絶望せずにいられる。それが、君。だからね、希望は無くなっちゃいけない』

 でも、あんな強い魔王なんて倒せない。勇者の力を使った俺では倒せない。

『? 何言ってるの? 君、まだ勇者の力なんて使ってないじゃんか。本来の勇者の力思い出させてあげる』

 そして、次の瞬間。死んだはずのみんなが目の前に現れ、そして、何かを喋って俺の中に入ってきた。

 次の瞬間。俺は、魔王の目の前に復活していた。

「そうか、これが勇者の力」
「!? ……お前、殺したはず」

 本来の勇者の力は一つ。それは強大で一人に与えるには負担が大きすぎる。だから、三人に分けて勇者の負担を減らしていた。本来、聖騎士、聖弓士、聖魔士、など存在しない。それはもとより勇者の力の欠片だったのだ。

 その力が勇者であるナオレインの元に戻ってきた。

 そして、勇者は魔王を倒した。

「……俺様が死んでも、再び転生してお前の前に立ち塞がるぞ」
「……そんなことはさせない」
「お前、何をする!?!?」
「お前を俺の中に封印する。そうすれば、お前は二度と転生しなくて、この世界は平和になる」
「っく、そが……」

 そして、世界から魔王は消滅した。筈だった。

『それじゃ、僕がつまらないんだよ。勇者と魔王の冒険譚。もっと僕に見せてよ』

 初代勇者と初代魔王の戦いからおよそ千年。その世界には魔王と勇者が再び現れた。たった一体の……によって。
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