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5、ユーゴという少年

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 カランカランと軽快な音を立てて食堂の扉が閉まった。
 空へ向かってぐぐっと腕を上げて伸びをした。
 美味しい料理でお腹が満たされて、莉々子はひとまず満足だ。
 結局彼らはユーゴの説得に最後は頷くことになったのだ。

「大した役者ですね」

 莉々子は揶揄する。
 全く大した大演説だった。思わず莉々子も魅入られてしまうほどに。

「何、ただの本音だ」

 ユーゴは余裕綽々のすまし顔だ。

(この野郎……)

 その態度を憎らしく思うが、もしかしたら本当に本音も含まれていたのかも知れない。
 あれだけ堂の入った演説を間近でされると、すべてが嘘にも思えなかった。

「貴様の世界ではどうだったかは知らんが、この世では王国の加護が行き届いておらん。さすがにその土地が壊滅するほどの被害を受ければ我が身を守るために派遣せざるおえんのだろうが、約束の血族の血を引いていない民間人が10や20死ぬだけでは国は動かんのだ」

 いつもと同じ淡々とした口調だが、その声音には何かがにじみ出ているようだった。
 血や苦渋やら、なにがしかの感情が、そこにはしみこんでいるのだろうか。

「俺の、民が死んでいるにも関わらずだ」

 従兄に継がせるわけにはいかないと言った時と同じような感情が、そこには籠もっているように思われた。

「これ以上、トカゲの餌になどさせん。絶対にだ」
「…………」

 ドラゴンを倒す、というのは領主になるための手段として、手柄を立てるためだと最初は言っていたが、どうやらそれだけの理由ではなかったようだ。
 意外にもユーゴは、人情に熱い人間なのだろうか。
 少なくとも、領地に住む人達のことを、身近な人間として大切には思っているのだろう。
 明るい日の光の中で見るユーゴは、昨日までよりも人間味を増して、少し、暖かい生き物に見えた。
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