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創生篇
第十話:銀の証明
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ギルドマスター室の重厚な扉を閉じた翌朝。クロスロードの空気は、ルシアンとエリアナにとって一変していた。
カインから与えられた最初の「試練」。それは、銀ランクのパーティーですら尻込みするような危険な任務だった。
【依頼内容:廃鉱山『錬金術師の揺り籠』の調査】
【目的:内部で消息を絶った先行調査隊の捜索と、原因の排除】
指令書を握りしめるルシアンの隣で、エリアナは悔しさに唇を噛んでいた。ギルドの酒場に渦巻く、嫉妬と侮蔑の視線と囁き声が、容赦なく彼女の耳に届く。
「おい、見たかよ。あいつが噂の魔力ゼロだぜ」
「ギルドマスターに取り入って、一日で銀ランクに成り上がったっていう…」
「どうせ、何か汚い手を使ったに決まってる」
「なんなの、あの人たち…! ルシアンがどれだけ命を懸けて戦ったかも知らないで!」
憤りを隠せないエリアナの手を、ルシアンはそっと握った。
「エリアナ。仕方ないことだ。俺たちがこの街に来て、まだ数日しか経っていない。魔力ゼロの俺が、たった一日で銀ランクになったんだ。混乱するなという方が無理な話さ。それに、噂が広まるのは、それだけ俺たちが注目されている証拠でもある」
彼の声は、驚くほど穏やかだった。
「大切なのは、ここで反論することじゃない。俺たちがこのクロスロードで活動を続け、平穏に暮らすために、信頼を得ることだ。だから、見せるしかないんだ。俺たちの力を、そして俺たちが信頼に値する人間だってことを」
諭すようなルシアンの言葉に、エリアナはハッとして、握りしめていた拳の力を抜いた。
指定された酒場で待っていたのは、中堅パーティー「蒼き隼」の三人だった。リーダーの戦士バルトは、腕を組み、あからさまに不機嫌な顔でルシアンたちを見据えている。
「忠告しておく、小僧。足手まといになるなよ。レイジ・ベアを倒したのは、何か奇跡的な幸運が重なっただけだろう。お前らみたいな新人が、まぐれで生き残れるほど、この世界は甘くねえ」
癒し手のセーラも、心配と疑念が入り混じった表情で口を開く。
「本当に大丈夫なの? あのレイジ・ベアの件は聞いているわ。でも、あなたの回復力は異常だし、まともな戦い方じゃなかったって…。無茶は禁物よ」
斥候のリックは、無言でルシアンを観察している。その目は、品定めをするような冷ややかさを帯びていた。
エリアナが何か言い返そうとするのを、ルシアンは視線で制した。そして、バルトたちに向き直り、静かに頭を下げる。
「お気持ちは理解できます。俺たちの状況が普通でないことは、俺たち自身が一番わかっていますから。ですが、ギルドマスター直々の任務です。俺たちは、この任務を全力でやり遂げるつもりです。どうか、この任務が終わるまで、皆さん自身の目で俺たちを判断していただけませんか」
そのあまりに謙虚で、理路整然とした態度に、バルトは一瞬、言葉を失った。
「……フン、口だけなら何とでも言える。まあいい、ギルドマスターの特命だからな。だが、勘違いするな。俺たちは、お守りをするつもりはねえぞ」
バルトはそう吐き捨てたが、その声色から、最初のあからさまな敵意は少しだけ和らいでいた。
◇
クロスロードの街門を抜け、一行は廃鉱山へと続く街道を歩いていた。
「……ルシアン、ネロは大丈夫?」
小声でエリアナが聞く。ルシアンは背負っている少し大きめのバッグを軽く叩いた。
「ああ、少し窮屈で不機嫌になってるけどな」
バッグの中から「クゥン…」と、抗議するような小さな鳴き声が聞こえた。
まだ、信頼のおける人以外にネロの能力を見せたくない。
一方、前を歩くルシアンとエリアナから少し距離を置き、「蒼き隼」の三人はひそやかに言葉を交わす。
「おい、どう思う、あいつら」
バルトが忌々しげに切り出した。
「態度は妙に落ち着いてるけど…やっぱり、ただの新人(ルーキー)にしか見えないわ。特にルシアン君の方は、魔力が全く感じられない。本当に普通の少年よ」
セーラが心配そうに眉を寄せる。
「ああ。それでレイジ・ベアを倒したってんだから、話がわからねえ。一体、どんな奇跡が起きたんだ?」
バルトの疑問に、斥候のリックが冷静に分析を口にした。
「仮説はいくつか立てられる。例えば、レイジ・ベアが別の強力な魔物との縄張り争いで、すでに瀕死の重傷を負っていた可能性。あるいは、落盤や地割れのような、偶然の事故に巻き込まれた可能性だ」
「なるほどな。そこに、たまたま居合わせたこいつらが、とどめだけ刺したってわけか」
「それが最も現実的な推論だ。報告では、あのお嬢ちゃん(エリアナ)の魔法が暴走したともある。それも何かの引き金になったのかもしれない。いずれにせよ、彼ら自身の純粋な戦闘能力によるものではないと考えるべきだ」
リックの言葉に、バルトは深く頷いた。
「だよな。よし、認識を合わせておくぞ。今回の任務、俺たちはスリーマンセル(三人組)で動く。あいつらは、あくまで荷物だ。最悪、守る対象が増えただけだと考えろ。リックは索敵に集中。セーラは俺たちの援護を最優先。あいつらに構うな。いいな?」
「了解」
「わかったわ、バルト」
彼らは、ルシアンの実力を「奇跡によって生じた結果」と断定し、その戦闘能力を限りなくゼロに近いものとして、作戦行動の前提を固めた。その冷徹な判断が、この後、根底から覆されることになるとは、まだ誰も知らなかった。
◇
やがて一行の眼前に、目的地の「錬金術師の揺り籠」がその巨大な口を開けていた。山肌を刳り貫いた、まるで巨獣の顎のような入り口。ここは数十年前、一人の高名な錬金術師が巨万の富を投じて拓いた鉱山だったが、落盤事故と謎の瘴気の発生により放棄され、今では腕自慢の冒険者すら避ける不吉な場所として知られていた。
入り口付近には、先行調査隊のものと思われる無数の残骸が散らばっていた。へし折れた剣、引き裂かれた鎧、そして地面にこびりついた黒ずんだ血痕。
「ひどいな…」リックが顔をしかめる。「一方的な蹂躙だ。抵抗の跡はあるが、全く歯が立たなかったと見える」
内部へと足を踏み入れると、ひんやりとした空気が肌を刺す。鼻をつくのは、湿った土の匂いと、油と錆が混じったような不快な金属臭。静寂の中、どこか遠くから、キィ、…キィ、と金属が擦れるような微かな音が聞こえてくる。それは、一行の緊張を否が応でも高めていった。
最初の広大な空洞に出た、その時だった。
リックが鋭く叫ぶ。「――来るぞ! 全員、迎撃態勢!」
その言葉を合図にしたかのように、広間に散らばっていた鉄屑や廃材が、磁石に引かれるように一箇所に集まり、轟音と共に複数の巨体を形成していく。「ジャンク・ゴーレム」の出現だ。
「俺が前衛だ! リックは足止め、セーラは俺の守りを固めろ!」
バルトが即座に指示を飛ばす。銀ランクパーティー「蒼き隼」の、練り上げられた連携が始まった。
「シールドバッシュ!」
バルトが一体のゴーレムに突進し、大盾で殴りつける。凄まじい衝撃にゴーレムがよろめいた、その一瞬の隙をリックが見逃さない。
「そこだ!」
懐に潜り込み、膝の関節部に短剣を突き立てる。だが、硬い装甲に阻まれ、浅い傷しか与えられない。
「セーラ、光を!」
「ええ! ホーリーライト!」
セーラの放った聖なる光がゴーレムを怯ませるが、それも束の間。ゴーレムの腕がバルトを薙ぎ払い、リックを壁際まで吹き飛ばす。
「くそっ、キリがねえ!」
一体を集中して叩いても、他の個体が死角から襲い来る。彼らの連携は確かに一流だった。しかし、ゴーレムの圧倒的な物量と再生能力の前に、じりじりと追い詰められていく。決定打を欠いていた。
「まずい、バルトの体力が…!」
セーラの悲鳴が響く。バルトの盾を持つ腕は限界に達し、リックも深手を負っている。もはや、全滅は時間の問題だった。
誰もが、最悪の結末を覚悟した。その時だった。
「――そこまでです」
静かな声が、絶望に満ちた空気を切り裂いた。
いつの間にか前線に立っていたルシアンが、二体のゴーレムが同時に振り下ろした鉄腕を、その両の腕で、こともなげに受け止めていた。
ゴッ、と空気が震える。
「馬鹿な!?」
バルトが、信じられないものを見る目で叫んだ。
ミシリ、バキィッ! けたたましい音を立て、ゴーレムの腕が内側から砕け散る。ルシアンは、そのままの勢いでゴーレムの胴体に手をかけると、力任せに引き裂いた。
「うそでしょ…?」
セーラの声が震える。
「解体してるのか…」
リックが、呆然と呟いた。
残りのゴーレムが、新たな敵と認識したルシアンに殺到する。だが、その全てが、彼の前では等しく鉄屑に還るだけだった。殴り、掴み、捻じ切り、投げ飛ばす。それは戦闘ではなく、ただの一方的な破壊だった。
やがて静寂が戻った空洞で、「蒼き隼」の三人は言葉を失っていた。彼らのプライドと、これまでの経験則、その全てが目の前で木っ端微塵に砕け散ったのだ。
◇
ルシアンに促され、一行はさらに鉱山の奥へと進んだ。すると、そこには信じられない光景が広がっていた。
広大な空洞が、ささやかながらも生活の息吹が感じられる「村」となっていたのだ。粗末な家々、畑、そして武器を持ちながらも怯えた目をした、大勢の人々。そのほとんどが、様々な部族の獣人たちで、中には人語を解する亜人種も混じっている。彼らこそ、社会から弾かれ、行き場を失った「はぐれ者」たちだった。
リックの目が、鋭く一点を捉えた。
「バルト、あれを」
彼が指差す先には、集落の一角に掲げられた、ボロボロの布があった。それは紛れもなく、クロスロードの冒険者ギルドが先行調査隊に持たせた隊旗の一部だった。
「…そういうことか」
バルトの顔が、氷のように冷たくなる。「調査隊を襲い、隊旗を戦利品として飾っていたとはな。こいつらが、この鉱山の『原因』で間違いない」
バルトが剣の柄に手をかける。殺気が立ち上り、はぐれ者たちが恐怖に後ずさった。
一人の老いた獣人が、震えながらも一歩前に出て、必死に首を振る。
「ち、違う!我々は何も…!」
だが、状況証拠はあまりに決定的だった。「蒼き隼」の三人は、既に彼らを討伐対象と断定していた。
その、一触即発の空気の中、ルシアンだけが冷静だった。
「待ってください」
彼は、敵意を剥き出しにするバルトと、恐怖に怯えるはぐれ者たちの間に立つと、まっすぐに問題の隊旗へと歩み寄った。
「ルシアン君、危ない!」
セーラの制止も聞かず、彼はそのボロボロの布を手に取り、静かに観察を始めた。
「バルトさん。これは、戦利品ではありません」
「何だと? それ以外に何だというんだ!」
「見てください」と、ルシアンは布の一部を指し示した。「この裂け目は、剣で切り裂かれたものではない。意図的に、綺麗に引き裂かれています。それに、この黒い染みは血痕ですが、その周りを見てください。すり潰された薬草が付着している。…これは、旗じゃない。巨大な止血帯として使われたんです」
その言葉に、バルトたちは息を呑んだ。
ルシアンは、老いた獣人に向き直る。
「あなた方は、調査隊の誰かを助けようとした。違いますか?」
老人は、目に涙を浮かべて何度も頷いた。
「はい…はい! 我々は、あの鉄の人形に襲われ、深手を負っていた冒険者様を一人、ここに運び込みました。持っていた薬草を全て使い、この布で傷口を縛って、必死に介抱したのです。しかし、その甲斐なく、その方は…」
老人が指差す先には、村の片隅に作られた、真新しい一つの墓があった。
さらに老人は語る。この鉱山の最深部に巣食う「何か」が、時折、彼らを襲い、仲間を連れ去っていくのだと。先行調査隊も、おそらくその「何か」の犠牲になったのだろうと。彼らは、侵略者と戦っていたのではなく、ただ恐怖に怯えていただけだった。
その時、ルシアンが前に出た。彼は武器を収めると、懐から干し肉と水袋を取り出し、老人の前にそっと置いた。
「まずは、これを。話は、それから聞きましょう」
その分け隔てのない、あまりに自然な振る舞いに、老いた獣人は目を見開いた。バルトたちも、彼の行動に意表を突かれる。
「怪我人や、病気の者はいますか? こちらには、優秀な癒し手がいます」
ルシアンがセーラに視線を送ると、彼女はハッとして頷き、杖を握り直した。ルシアンは、ただ敵を排除するのではなく、目の前で助けを求める者たちに、手を差し伸べようとしていた。その姿は、バルトたちの胸に、力の強さとはまた違う、別の種類の衝撃を与えた。
「若者よ…あなたは、一体…?」
老人の問いに、ルシアンは静かに答える。
「ただの冒険者です。そして、この鉱山の問題を解決しに来た。あなたたちを脅かす『何か』も、俺が必ず排除します」
その言葉には、絶対的な自信と、揺るぎない意志が込められていた。はぐれ者たちの目に、微かな希望の光が灯る。そして、バルトたちもまた、ルシアンという少年への認識を、ここで完全に改めることになった。彼は、規格外の力を持つだけでなく、真実を見抜く慧眼と、弱者に寄り添う王の器すら感じさせる、深く、大きな何かを宿しているのだと。
◇
はぐれ者たちの案内でたどり着いた鉱山の最深部。そこは、広大な空洞の中央に、禍々しい瘴気を放つ巨大な祭壇が鎮座する、異様な空間だった。周囲には、無惨に命を落とした先行調査隊の亡骸が転がっている。
その、祭壇の上から、ゆっくりと一体の人影が立ち上がった。
それは、先行調査隊のリーダーだった男の亡骸。しかし、その瞳には理性の光はなく、代わりに昏く、冷たい知性と、純粋な悪意が宿っていた。生前の剣技と強力な闇の魔術をその身に宿した、まさに「死の王」――コープス・ロードが、一行を睥睨していた。
バルトは叫んだ。
「ルシアン、エリアナ! お前たちは絶対に手を出すな! ここは俺たち『蒼き隼』の戦場だ!」
それは、先程までの戦いで砕かれた、銀ランク冒険者としてのプライドを取り戻すための咆哮だった。
三人は、息の合った最高の連携でコープス・ロードに襲いかかる。しかし、その決意は、あまりに冷酷な現実の前に脆くも崩れ始めた。
バルトの渾身の一撃は、コープス・ロードに軽くいなされ、逆に放たれたカウンターの一閃が彼の鎧を深く切り裂く。
「ぐっ…!?」
あまりの速さと重さに、バルトの体勢が崩れる。それを見逃さず、ルシアンが一歩前に出た。
「バルトさん、加勢します!」
「下がるんだ、小僧ッ!」バルトは、背後からの声に怒鳴り返した。「これは俺たちの戦いだと言ったはずだ!」
まだだ、まだやれる。俺たちの連携をもってすれば、必ず隙は生まれるはずだ。
しかし、その希望的観測は、コープス・ロードの圧倒的な戦闘能力の前に、ただただ蹂躙されていく。リックの奇襲は全て読まれ、セーラの聖なる光は強力な瘴気によって霧散させられる。攻撃は当たらず、防御は破られ、じりじりと、しかし確実に、彼らは死の淵へと追い詰められていた。
バキィッ! という鈍い音と共に、バルトの誇る大盾が、ついに両断された。
「なっ…!?」
がら空きになった胴体に、闇の魔力をまとった蹴りが叩き込まれ、バルトは壁際まで吹き飛ばされる。
「バルト!」
セーラの悲鳴が響く。深手を負ったバルトを見て、ルシアンが再び前に出ようとする。
「もう限界です! 俺も戦う!」
「来るなァッ!」
血反吐を吐きながらも、バルトは叫んだ。その瞳に宿るのは、もはや意地だけだった。銀ランクパーティー「蒼き隼」が、魔力ゼロの、それもルーキーの少年に助けられてたまるか。そのちっぽけなプライドが、彼に現実を直視することを許さなかった。
だが、コープス・ロードは、そんな感傷に浸る時間を許してはくれなかった。
闇の魔力が渦を巻き、三人を同時に捉える範囲攻撃が放たれる。リックとセーラは衝撃に吹き飛ばされて意識を失い、最後の力を振り絞って立ち上がったバルトも、その身に受けたダメージでついに膝をついた。
コープス・ロードが、冷酷な視線で、地に伏したバルトを見下ろす。その手に持つ黒き剣が、とどめを刺さんと、ゆっくりと振り上げられた。
万事休す。
砕け散ったプライド。無残に転がる仲間たち。そして、絶対的な死の気配。
その、絶望の淵で、バルトは見た。
仲間たちが倒れ伏すこの地獄絵図の中、ただ一人、静かに、そして怒りを湛えた瞳でこちらを見つめる少年の姿を。
ああ、そうか。俺は、間違っていた。
意地やプライドなど、仲間の命の前では、何の意味も持たないクズみたいなものじゃないか。
俺たちが信じるべきだったのは、そんなくだらないものではなく、目の前にいる、この少年の圧倒的な「本質」だったのだ。
バルトは、最後の力を振り絞って叫んだ。
「ルシアンッ…! 頼むッ…!」
声に、視線に、全ての想いを込める。
「俺たちの…プライドも、意地も…もうどうでもいい…! こいつは…俺たちの手には負えねえ…! お前に、全てを託すッ!!」
それは、敗北宣言であると同時に、パーティーの未来、いや、自分たちの命運そのものを、一人の少年に委ねるという、全幅の信頼を込めた絶叫だった。
バルトは、傍らに転がっていた己の愛剣を、ルシアンへと投げ渡した。
◇
カキン、と軽い音を立ててルシアンが剣を掴んだ、その瞬間。
――空気が、凍った。
それまでただの少年だったはずのルシアンから、生物としての根源的な恐怖を呼び覚ますような、絶対強者のオーラが放たれる。コープス・ロードですら、その異様なプレッシャーに動きを止め、目の前の存在を測りかねるように警戒を強めた。
「エリアナ、下がっていて」
ルシアンは振り返らず、静かに、しかし有無を言わさぬ声で言った。エリアナは、その言葉に一瞬の迷いもなく頷き、後方へと退避する。彼女の表情には、ルシアンが必ず勝利するという、絶対的な信頼が宿っていた。
次の瞬間、ルシアンの姿が掻き消えた。
「――!?」
コープス・ロードが驚愕に目を見開く間もなく、背後で銀閃が迸る。
ズバッ!
闇の魔力で編まれたマントが、一瞬で切り刻まれ霧散した。
「グオォォ!?」
初めて感じる脅威に、コープス・ロードは狂ったように剣を振り回す。闇の魔弾を全方位に乱射する。だが、その全てが空を切る。ルシアンは、その暴風の中心で、まるで戯れるかのように舞っていた。エリアナは、その信じられない光景を、ルシアンなら当然だとでもいうように、微動だにせず見守っている。
スキル【ブレードダンス】。
それは、死線を舞う銀色の竜巻だった。
閃!斬!裂!
回避と攻撃が完全に一体化した、人知を超えた剣技の嵐。
ルシアンの姿は、もはや銀色の軌跡となって、コープス・ロードの四肢を、胴を、魔力の源を、目にも留まらぬ速さで蹂躪していく。
コープス・ロードの動きに、初めて「焦り」と「恐怖」が混じり始めた。この魔物もまた、理解したのだ。目の前の存在は、断じて自分では敵わない、捕食者であると。
逃走を図ろうと背を向けた、その一瞬の隙。
それこそが、招かれた死への入り口だった。
「――終わりだ」
冷徹な声と共に、ルシアンはコープス・ロードの懐に潜り込み、天を突くかのような、渾身の斬撃を放った。銀色の光が、闇を寸断する。
ズギャアアアアアンッ!!
けたたましい轟音と共に、コープス・ロードの巨体が、頭から足先まで、見事に真っ二つに両断された。黒い瘴気が爆発的に四散し、魔物の絶叫が虚しくこだまする。そして、残骸は音を立てて地面に崩れ落ちた。
激しい戦いの余韻が残る中、ルシアンは静かに周囲を見渡した。バルト、リック、セーラの三人は、先程の攻撃で意識を失い、地に伏せている。ルシアンは彼らの無事を確認すると、背負っていた少し大きめのバッグを下ろした。
「ネロ、すまない。少しの間、狭かったな」
そう呟きながら、バッグの中から、漆黒の毛並みをした、小さな影狼を取り出す。ネロは、解放されると同時に、ルシアンの足元に擦り寄り、小さく鳴いた。その瞳は、先程まで強大な魔力を放っていたコープス・ロードの残骸を、飢えた獣のように見つめている。
ルシアンは、ゆっくりと両断されたコープス・ロードの傍らに近づき、意識のない三人の冒険者から、その黒い残滓が離れていくのを確認した。そして、ネロに向かって小さく頷いた。
漆黒の影は、主の合図を待ちわびていたかのように、瞬く間にコープス・ロードの残骸へと飛びかかる。貪るように、その黒い魔力を、まるで吸い込むように吸収していく。ネロの小さな体から、徐々に強大な魔力が満ちていくのが、傍目にも明らかだった。
エリアナは、その一連の信じられない光景を、ただ静かに見守っていた。彼女にとって、ルシアンの力はもはや驚くべきものではなく、当然のものとして受け入れられているようだった。
やがて、コープス・ロードの残骸は完全に消滅し、ネロは満足そうにルシアンの足元に戻ってきた。その小さな体には、先程までの弱々しさはなく、確かな力が宿っている。
「これで、終わりだ」
ルシアンはそう呟くと、再びバッグにネロをそっとしまい、意識を失ったままの「蒼き隼」の三人を見下ろした。彼らが目覚めた時、この廃鉱山で何が起こったのか、理解できるだろうか。そして、自分たちが託した、少年の圧倒的な力とは何だったのかを。
◇
クロスロードへの帰路、その雰囲気は行きとは全く異なっていた。
意識を取り戻した「蒼き隼」の三人は、道中、ほとんど口を開かなかった。ただ、時折ルシアンに向けられる彼らの視線には、もはや疑念や侮りの色はなく、畏怖と、そして命を救われたことへの計り知れない感謝だけが込められていた。バルトは、自分たちが気を失っている間に、あの強大な魔物の残骸が跡形もなく消え失せていたことについて何も問わなかった。もはや、この少年の周りで常識外れの何が起ころうと、驚きはしなかった。
ギルドマスター室の重厚な扉を前に、バルトは一度だけ深く息を吸い、仲間たち、そしてルシアンとエリアナを振り返った。そして、覚悟を決めたように扉をノックした。
室内で一行を迎えたギルドマスター・カインは、腕を組み、何もかもを見通したような厳しい表情で一行を待っていた。その鋭い視線が、一人一人の顔を射抜いていく。
バルトは、カインの前に進み出ると、深々と、長く頭を下げた。
「ギルドマスター。…俺たちの完敗だ。そして、あんたの目は正しかった。あいつは…ルシアンは、本物だ」
それは、ただの報告ではない。銀ランクのベテラン冒険者のプライドの全てを懸けた、最大の賛辞だった。カインの隣に立つルシアンを、エリアナは誇らしげな、そして「当然でしょう?」とでも言いたげな表情で見つめている。
カインは、その言葉に表情一つ変えず、フン、とだけ短く鼻を鳴らした。だが、その瞳の奥に、ほんの一瞬、探るような色とは違う、確信に近い光が宿ったのをルシアンは見逃さなかった。カインは、今回の「試練」の真の目的を語り始めた。
「あの廃鉱山は、強欲な『商人ギルド』の連中が狙っていた土地だ。奴らの幹部であるギデオンという男は、特に強硬でな。奴らと事を構えるにあたり、圧倒的な実力を持ち、かつ相手に貸しを作れる『切り札』が欲しかった」
そして、と言葉を続ける。
「同時に、お前の器も見ていた。ただ強いだけの殺戮者か、それとも弱者を守る意志を持つ者か。お前は、俺の期待を遥かに超える答えを出してくれた」
カインは、机の引き出しから二つの物を取り出した。
「故に、お前には新たな役目を与える。これは、ギルドマスターとしての命令だ」
一つは、商人ギルドの紋章が刻まれた、重厚な封蝋がされた紹介状。
「まず、商人ギルドのギデオンに会え。今回の件の落とし前は、そいつとつけさせる。お前なら、奴らと対等以上に渡り合えるだろう。これは、そのための交渉役という指令だ」
そして、もう一つは、一枚の羊皮紙だった。
「次に、あの鉱山にいたはぐれ者たちだ。奴らはお前を『主』と見なすだろう。…奴らの面倒を見ろ。それが、お前の継続依頼だ」
カインが差し出した羊皮紙は、街の外れにある広大な土地の権利書だった。
紹介状と土地の権利書。その二つが持つ意味の重さに、ルシアンは言葉を失う。ただ平穏な生活を求めていただけのはずが、否応なく、一つの「コミュニティの長」という、重すぎる役割を背負わされてしまったのだ。
◇
ギルドを出ると、夕焼けがクロスロードの街並みを茜色に染めていた。
重い沈黙の中、先に口を開いたのはエリアナだった。
「大変なことになっちゃったね。でも、ルシアンなら大丈夫」
彼女は、ルシアンの腕をそっと掴むと、輝くような笑顔で言った。
「私がそばにいるから」
その言葉に、ルシアンの心にのしかかっていた重圧が、少しだけ和らぐのを感じた。
彼は、手にした権利書を強く握りしめる。
それは、ただの紙切れではない。50名以上の民の命運を託された、自らの「国」の最初の領土だった。
平穏を求め、力を隠してきた少年は、その強すぎる力の故に、最も平穏から遠い宿命へと導かれた。
ルシアンは、予期せぬ形で自らの民と領地を得て、名もなき少年から、名もなき「王」への第一歩を、今、踏み出してしまったのだった。
カインから与えられた最初の「試練」。それは、銀ランクのパーティーですら尻込みするような危険な任務だった。
【依頼内容:廃鉱山『錬金術師の揺り籠』の調査】
【目的:内部で消息を絶った先行調査隊の捜索と、原因の排除】
指令書を握りしめるルシアンの隣で、エリアナは悔しさに唇を噛んでいた。ギルドの酒場に渦巻く、嫉妬と侮蔑の視線と囁き声が、容赦なく彼女の耳に届く。
「おい、見たかよ。あいつが噂の魔力ゼロだぜ」
「ギルドマスターに取り入って、一日で銀ランクに成り上がったっていう…」
「どうせ、何か汚い手を使ったに決まってる」
「なんなの、あの人たち…! ルシアンがどれだけ命を懸けて戦ったかも知らないで!」
憤りを隠せないエリアナの手を、ルシアンはそっと握った。
「エリアナ。仕方ないことだ。俺たちがこの街に来て、まだ数日しか経っていない。魔力ゼロの俺が、たった一日で銀ランクになったんだ。混乱するなという方が無理な話さ。それに、噂が広まるのは、それだけ俺たちが注目されている証拠でもある」
彼の声は、驚くほど穏やかだった。
「大切なのは、ここで反論することじゃない。俺たちがこのクロスロードで活動を続け、平穏に暮らすために、信頼を得ることだ。だから、見せるしかないんだ。俺たちの力を、そして俺たちが信頼に値する人間だってことを」
諭すようなルシアンの言葉に、エリアナはハッとして、握りしめていた拳の力を抜いた。
指定された酒場で待っていたのは、中堅パーティー「蒼き隼」の三人だった。リーダーの戦士バルトは、腕を組み、あからさまに不機嫌な顔でルシアンたちを見据えている。
「忠告しておく、小僧。足手まといになるなよ。レイジ・ベアを倒したのは、何か奇跡的な幸運が重なっただけだろう。お前らみたいな新人が、まぐれで生き残れるほど、この世界は甘くねえ」
癒し手のセーラも、心配と疑念が入り混じった表情で口を開く。
「本当に大丈夫なの? あのレイジ・ベアの件は聞いているわ。でも、あなたの回復力は異常だし、まともな戦い方じゃなかったって…。無茶は禁物よ」
斥候のリックは、無言でルシアンを観察している。その目は、品定めをするような冷ややかさを帯びていた。
エリアナが何か言い返そうとするのを、ルシアンは視線で制した。そして、バルトたちに向き直り、静かに頭を下げる。
「お気持ちは理解できます。俺たちの状況が普通でないことは、俺たち自身が一番わかっていますから。ですが、ギルドマスター直々の任務です。俺たちは、この任務を全力でやり遂げるつもりです。どうか、この任務が終わるまで、皆さん自身の目で俺たちを判断していただけませんか」
そのあまりに謙虚で、理路整然とした態度に、バルトは一瞬、言葉を失った。
「……フン、口だけなら何とでも言える。まあいい、ギルドマスターの特命だからな。だが、勘違いするな。俺たちは、お守りをするつもりはねえぞ」
バルトはそう吐き捨てたが、その声色から、最初のあからさまな敵意は少しだけ和らいでいた。
◇
クロスロードの街門を抜け、一行は廃鉱山へと続く街道を歩いていた。
「……ルシアン、ネロは大丈夫?」
小声でエリアナが聞く。ルシアンは背負っている少し大きめのバッグを軽く叩いた。
「ああ、少し窮屈で不機嫌になってるけどな」
バッグの中から「クゥン…」と、抗議するような小さな鳴き声が聞こえた。
まだ、信頼のおける人以外にネロの能力を見せたくない。
一方、前を歩くルシアンとエリアナから少し距離を置き、「蒼き隼」の三人はひそやかに言葉を交わす。
「おい、どう思う、あいつら」
バルトが忌々しげに切り出した。
「態度は妙に落ち着いてるけど…やっぱり、ただの新人(ルーキー)にしか見えないわ。特にルシアン君の方は、魔力が全く感じられない。本当に普通の少年よ」
セーラが心配そうに眉を寄せる。
「ああ。それでレイジ・ベアを倒したってんだから、話がわからねえ。一体、どんな奇跡が起きたんだ?」
バルトの疑問に、斥候のリックが冷静に分析を口にした。
「仮説はいくつか立てられる。例えば、レイジ・ベアが別の強力な魔物との縄張り争いで、すでに瀕死の重傷を負っていた可能性。あるいは、落盤や地割れのような、偶然の事故に巻き込まれた可能性だ」
「なるほどな。そこに、たまたま居合わせたこいつらが、とどめだけ刺したってわけか」
「それが最も現実的な推論だ。報告では、あのお嬢ちゃん(エリアナ)の魔法が暴走したともある。それも何かの引き金になったのかもしれない。いずれにせよ、彼ら自身の純粋な戦闘能力によるものではないと考えるべきだ」
リックの言葉に、バルトは深く頷いた。
「だよな。よし、認識を合わせておくぞ。今回の任務、俺たちはスリーマンセル(三人組)で動く。あいつらは、あくまで荷物だ。最悪、守る対象が増えただけだと考えろ。リックは索敵に集中。セーラは俺たちの援護を最優先。あいつらに構うな。いいな?」
「了解」
「わかったわ、バルト」
彼らは、ルシアンの実力を「奇跡によって生じた結果」と断定し、その戦闘能力を限りなくゼロに近いものとして、作戦行動の前提を固めた。その冷徹な判断が、この後、根底から覆されることになるとは、まだ誰も知らなかった。
◇
やがて一行の眼前に、目的地の「錬金術師の揺り籠」がその巨大な口を開けていた。山肌を刳り貫いた、まるで巨獣の顎のような入り口。ここは数十年前、一人の高名な錬金術師が巨万の富を投じて拓いた鉱山だったが、落盤事故と謎の瘴気の発生により放棄され、今では腕自慢の冒険者すら避ける不吉な場所として知られていた。
入り口付近には、先行調査隊のものと思われる無数の残骸が散らばっていた。へし折れた剣、引き裂かれた鎧、そして地面にこびりついた黒ずんだ血痕。
「ひどいな…」リックが顔をしかめる。「一方的な蹂躙だ。抵抗の跡はあるが、全く歯が立たなかったと見える」
内部へと足を踏み入れると、ひんやりとした空気が肌を刺す。鼻をつくのは、湿った土の匂いと、油と錆が混じったような不快な金属臭。静寂の中、どこか遠くから、キィ、…キィ、と金属が擦れるような微かな音が聞こえてくる。それは、一行の緊張を否が応でも高めていった。
最初の広大な空洞に出た、その時だった。
リックが鋭く叫ぶ。「――来るぞ! 全員、迎撃態勢!」
その言葉を合図にしたかのように、広間に散らばっていた鉄屑や廃材が、磁石に引かれるように一箇所に集まり、轟音と共に複数の巨体を形成していく。「ジャンク・ゴーレム」の出現だ。
「俺が前衛だ! リックは足止め、セーラは俺の守りを固めろ!」
バルトが即座に指示を飛ばす。銀ランクパーティー「蒼き隼」の、練り上げられた連携が始まった。
「シールドバッシュ!」
バルトが一体のゴーレムに突進し、大盾で殴りつける。凄まじい衝撃にゴーレムがよろめいた、その一瞬の隙をリックが見逃さない。
「そこだ!」
懐に潜り込み、膝の関節部に短剣を突き立てる。だが、硬い装甲に阻まれ、浅い傷しか与えられない。
「セーラ、光を!」
「ええ! ホーリーライト!」
セーラの放った聖なる光がゴーレムを怯ませるが、それも束の間。ゴーレムの腕がバルトを薙ぎ払い、リックを壁際まで吹き飛ばす。
「くそっ、キリがねえ!」
一体を集中して叩いても、他の個体が死角から襲い来る。彼らの連携は確かに一流だった。しかし、ゴーレムの圧倒的な物量と再生能力の前に、じりじりと追い詰められていく。決定打を欠いていた。
「まずい、バルトの体力が…!」
セーラの悲鳴が響く。バルトの盾を持つ腕は限界に達し、リックも深手を負っている。もはや、全滅は時間の問題だった。
誰もが、最悪の結末を覚悟した。その時だった。
「――そこまでです」
静かな声が、絶望に満ちた空気を切り裂いた。
いつの間にか前線に立っていたルシアンが、二体のゴーレムが同時に振り下ろした鉄腕を、その両の腕で、こともなげに受け止めていた。
ゴッ、と空気が震える。
「馬鹿な!?」
バルトが、信じられないものを見る目で叫んだ。
ミシリ、バキィッ! けたたましい音を立て、ゴーレムの腕が内側から砕け散る。ルシアンは、そのままの勢いでゴーレムの胴体に手をかけると、力任せに引き裂いた。
「うそでしょ…?」
セーラの声が震える。
「解体してるのか…」
リックが、呆然と呟いた。
残りのゴーレムが、新たな敵と認識したルシアンに殺到する。だが、その全てが、彼の前では等しく鉄屑に還るだけだった。殴り、掴み、捻じ切り、投げ飛ばす。それは戦闘ではなく、ただの一方的な破壊だった。
やがて静寂が戻った空洞で、「蒼き隼」の三人は言葉を失っていた。彼らのプライドと、これまでの経験則、その全てが目の前で木っ端微塵に砕け散ったのだ。
◇
ルシアンに促され、一行はさらに鉱山の奥へと進んだ。すると、そこには信じられない光景が広がっていた。
広大な空洞が、ささやかながらも生活の息吹が感じられる「村」となっていたのだ。粗末な家々、畑、そして武器を持ちながらも怯えた目をした、大勢の人々。そのほとんどが、様々な部族の獣人たちで、中には人語を解する亜人種も混じっている。彼らこそ、社会から弾かれ、行き場を失った「はぐれ者」たちだった。
リックの目が、鋭く一点を捉えた。
「バルト、あれを」
彼が指差す先には、集落の一角に掲げられた、ボロボロの布があった。それは紛れもなく、クロスロードの冒険者ギルドが先行調査隊に持たせた隊旗の一部だった。
「…そういうことか」
バルトの顔が、氷のように冷たくなる。「調査隊を襲い、隊旗を戦利品として飾っていたとはな。こいつらが、この鉱山の『原因』で間違いない」
バルトが剣の柄に手をかける。殺気が立ち上り、はぐれ者たちが恐怖に後ずさった。
一人の老いた獣人が、震えながらも一歩前に出て、必死に首を振る。
「ち、違う!我々は何も…!」
だが、状況証拠はあまりに決定的だった。「蒼き隼」の三人は、既に彼らを討伐対象と断定していた。
その、一触即発の空気の中、ルシアンだけが冷静だった。
「待ってください」
彼は、敵意を剥き出しにするバルトと、恐怖に怯えるはぐれ者たちの間に立つと、まっすぐに問題の隊旗へと歩み寄った。
「ルシアン君、危ない!」
セーラの制止も聞かず、彼はそのボロボロの布を手に取り、静かに観察を始めた。
「バルトさん。これは、戦利品ではありません」
「何だと? それ以外に何だというんだ!」
「見てください」と、ルシアンは布の一部を指し示した。「この裂け目は、剣で切り裂かれたものではない。意図的に、綺麗に引き裂かれています。それに、この黒い染みは血痕ですが、その周りを見てください。すり潰された薬草が付着している。…これは、旗じゃない。巨大な止血帯として使われたんです」
その言葉に、バルトたちは息を呑んだ。
ルシアンは、老いた獣人に向き直る。
「あなた方は、調査隊の誰かを助けようとした。違いますか?」
老人は、目に涙を浮かべて何度も頷いた。
「はい…はい! 我々は、あの鉄の人形に襲われ、深手を負っていた冒険者様を一人、ここに運び込みました。持っていた薬草を全て使い、この布で傷口を縛って、必死に介抱したのです。しかし、その甲斐なく、その方は…」
老人が指差す先には、村の片隅に作られた、真新しい一つの墓があった。
さらに老人は語る。この鉱山の最深部に巣食う「何か」が、時折、彼らを襲い、仲間を連れ去っていくのだと。先行調査隊も、おそらくその「何か」の犠牲になったのだろうと。彼らは、侵略者と戦っていたのではなく、ただ恐怖に怯えていただけだった。
その時、ルシアンが前に出た。彼は武器を収めると、懐から干し肉と水袋を取り出し、老人の前にそっと置いた。
「まずは、これを。話は、それから聞きましょう」
その分け隔てのない、あまりに自然な振る舞いに、老いた獣人は目を見開いた。バルトたちも、彼の行動に意表を突かれる。
「怪我人や、病気の者はいますか? こちらには、優秀な癒し手がいます」
ルシアンがセーラに視線を送ると、彼女はハッとして頷き、杖を握り直した。ルシアンは、ただ敵を排除するのではなく、目の前で助けを求める者たちに、手を差し伸べようとしていた。その姿は、バルトたちの胸に、力の強さとはまた違う、別の種類の衝撃を与えた。
「若者よ…あなたは、一体…?」
老人の問いに、ルシアンは静かに答える。
「ただの冒険者です。そして、この鉱山の問題を解決しに来た。あなたたちを脅かす『何か』も、俺が必ず排除します」
その言葉には、絶対的な自信と、揺るぎない意志が込められていた。はぐれ者たちの目に、微かな希望の光が灯る。そして、バルトたちもまた、ルシアンという少年への認識を、ここで完全に改めることになった。彼は、規格外の力を持つだけでなく、真実を見抜く慧眼と、弱者に寄り添う王の器すら感じさせる、深く、大きな何かを宿しているのだと。
◇
はぐれ者たちの案内でたどり着いた鉱山の最深部。そこは、広大な空洞の中央に、禍々しい瘴気を放つ巨大な祭壇が鎮座する、異様な空間だった。周囲には、無惨に命を落とした先行調査隊の亡骸が転がっている。
その、祭壇の上から、ゆっくりと一体の人影が立ち上がった。
それは、先行調査隊のリーダーだった男の亡骸。しかし、その瞳には理性の光はなく、代わりに昏く、冷たい知性と、純粋な悪意が宿っていた。生前の剣技と強力な闇の魔術をその身に宿した、まさに「死の王」――コープス・ロードが、一行を睥睨していた。
バルトは叫んだ。
「ルシアン、エリアナ! お前たちは絶対に手を出すな! ここは俺たち『蒼き隼』の戦場だ!」
それは、先程までの戦いで砕かれた、銀ランク冒険者としてのプライドを取り戻すための咆哮だった。
三人は、息の合った最高の連携でコープス・ロードに襲いかかる。しかし、その決意は、あまりに冷酷な現実の前に脆くも崩れ始めた。
バルトの渾身の一撃は、コープス・ロードに軽くいなされ、逆に放たれたカウンターの一閃が彼の鎧を深く切り裂く。
「ぐっ…!?」
あまりの速さと重さに、バルトの体勢が崩れる。それを見逃さず、ルシアンが一歩前に出た。
「バルトさん、加勢します!」
「下がるんだ、小僧ッ!」バルトは、背後からの声に怒鳴り返した。「これは俺たちの戦いだと言ったはずだ!」
まだだ、まだやれる。俺たちの連携をもってすれば、必ず隙は生まれるはずだ。
しかし、その希望的観測は、コープス・ロードの圧倒的な戦闘能力の前に、ただただ蹂躙されていく。リックの奇襲は全て読まれ、セーラの聖なる光は強力な瘴気によって霧散させられる。攻撃は当たらず、防御は破られ、じりじりと、しかし確実に、彼らは死の淵へと追い詰められていた。
バキィッ! という鈍い音と共に、バルトの誇る大盾が、ついに両断された。
「なっ…!?」
がら空きになった胴体に、闇の魔力をまとった蹴りが叩き込まれ、バルトは壁際まで吹き飛ばされる。
「バルト!」
セーラの悲鳴が響く。深手を負ったバルトを見て、ルシアンが再び前に出ようとする。
「もう限界です! 俺も戦う!」
「来るなァッ!」
血反吐を吐きながらも、バルトは叫んだ。その瞳に宿るのは、もはや意地だけだった。銀ランクパーティー「蒼き隼」が、魔力ゼロの、それもルーキーの少年に助けられてたまるか。そのちっぽけなプライドが、彼に現実を直視することを許さなかった。
だが、コープス・ロードは、そんな感傷に浸る時間を許してはくれなかった。
闇の魔力が渦を巻き、三人を同時に捉える範囲攻撃が放たれる。リックとセーラは衝撃に吹き飛ばされて意識を失い、最後の力を振り絞って立ち上がったバルトも、その身に受けたダメージでついに膝をついた。
コープス・ロードが、冷酷な視線で、地に伏したバルトを見下ろす。その手に持つ黒き剣が、とどめを刺さんと、ゆっくりと振り上げられた。
万事休す。
砕け散ったプライド。無残に転がる仲間たち。そして、絶対的な死の気配。
その、絶望の淵で、バルトは見た。
仲間たちが倒れ伏すこの地獄絵図の中、ただ一人、静かに、そして怒りを湛えた瞳でこちらを見つめる少年の姿を。
ああ、そうか。俺は、間違っていた。
意地やプライドなど、仲間の命の前では、何の意味も持たないクズみたいなものじゃないか。
俺たちが信じるべきだったのは、そんなくだらないものではなく、目の前にいる、この少年の圧倒的な「本質」だったのだ。
バルトは、最後の力を振り絞って叫んだ。
「ルシアンッ…! 頼むッ…!」
声に、視線に、全ての想いを込める。
「俺たちの…プライドも、意地も…もうどうでもいい…! こいつは…俺たちの手には負えねえ…! お前に、全てを託すッ!!」
それは、敗北宣言であると同時に、パーティーの未来、いや、自分たちの命運そのものを、一人の少年に委ねるという、全幅の信頼を込めた絶叫だった。
バルトは、傍らに転がっていた己の愛剣を、ルシアンへと投げ渡した。
◇
カキン、と軽い音を立ててルシアンが剣を掴んだ、その瞬間。
――空気が、凍った。
それまでただの少年だったはずのルシアンから、生物としての根源的な恐怖を呼び覚ますような、絶対強者のオーラが放たれる。コープス・ロードですら、その異様なプレッシャーに動きを止め、目の前の存在を測りかねるように警戒を強めた。
「エリアナ、下がっていて」
ルシアンは振り返らず、静かに、しかし有無を言わさぬ声で言った。エリアナは、その言葉に一瞬の迷いもなく頷き、後方へと退避する。彼女の表情には、ルシアンが必ず勝利するという、絶対的な信頼が宿っていた。
次の瞬間、ルシアンの姿が掻き消えた。
「――!?」
コープス・ロードが驚愕に目を見開く間もなく、背後で銀閃が迸る。
ズバッ!
闇の魔力で編まれたマントが、一瞬で切り刻まれ霧散した。
「グオォォ!?」
初めて感じる脅威に、コープス・ロードは狂ったように剣を振り回す。闇の魔弾を全方位に乱射する。だが、その全てが空を切る。ルシアンは、その暴風の中心で、まるで戯れるかのように舞っていた。エリアナは、その信じられない光景を、ルシアンなら当然だとでもいうように、微動だにせず見守っている。
スキル【ブレードダンス】。
それは、死線を舞う銀色の竜巻だった。
閃!斬!裂!
回避と攻撃が完全に一体化した、人知を超えた剣技の嵐。
ルシアンの姿は、もはや銀色の軌跡となって、コープス・ロードの四肢を、胴を、魔力の源を、目にも留まらぬ速さで蹂躪していく。
コープス・ロードの動きに、初めて「焦り」と「恐怖」が混じり始めた。この魔物もまた、理解したのだ。目の前の存在は、断じて自分では敵わない、捕食者であると。
逃走を図ろうと背を向けた、その一瞬の隙。
それこそが、招かれた死への入り口だった。
「――終わりだ」
冷徹な声と共に、ルシアンはコープス・ロードの懐に潜り込み、天を突くかのような、渾身の斬撃を放った。銀色の光が、闇を寸断する。
ズギャアアアアアンッ!!
けたたましい轟音と共に、コープス・ロードの巨体が、頭から足先まで、見事に真っ二つに両断された。黒い瘴気が爆発的に四散し、魔物の絶叫が虚しくこだまする。そして、残骸は音を立てて地面に崩れ落ちた。
激しい戦いの余韻が残る中、ルシアンは静かに周囲を見渡した。バルト、リック、セーラの三人は、先程の攻撃で意識を失い、地に伏せている。ルシアンは彼らの無事を確認すると、背負っていた少し大きめのバッグを下ろした。
「ネロ、すまない。少しの間、狭かったな」
そう呟きながら、バッグの中から、漆黒の毛並みをした、小さな影狼を取り出す。ネロは、解放されると同時に、ルシアンの足元に擦り寄り、小さく鳴いた。その瞳は、先程まで強大な魔力を放っていたコープス・ロードの残骸を、飢えた獣のように見つめている。
ルシアンは、ゆっくりと両断されたコープス・ロードの傍らに近づき、意識のない三人の冒険者から、その黒い残滓が離れていくのを確認した。そして、ネロに向かって小さく頷いた。
漆黒の影は、主の合図を待ちわびていたかのように、瞬く間にコープス・ロードの残骸へと飛びかかる。貪るように、その黒い魔力を、まるで吸い込むように吸収していく。ネロの小さな体から、徐々に強大な魔力が満ちていくのが、傍目にも明らかだった。
エリアナは、その一連の信じられない光景を、ただ静かに見守っていた。彼女にとって、ルシアンの力はもはや驚くべきものではなく、当然のものとして受け入れられているようだった。
やがて、コープス・ロードの残骸は完全に消滅し、ネロは満足そうにルシアンの足元に戻ってきた。その小さな体には、先程までの弱々しさはなく、確かな力が宿っている。
「これで、終わりだ」
ルシアンはそう呟くと、再びバッグにネロをそっとしまい、意識を失ったままの「蒼き隼」の三人を見下ろした。彼らが目覚めた時、この廃鉱山で何が起こったのか、理解できるだろうか。そして、自分たちが託した、少年の圧倒的な力とは何だったのかを。
◇
クロスロードへの帰路、その雰囲気は行きとは全く異なっていた。
意識を取り戻した「蒼き隼」の三人は、道中、ほとんど口を開かなかった。ただ、時折ルシアンに向けられる彼らの視線には、もはや疑念や侮りの色はなく、畏怖と、そして命を救われたことへの計り知れない感謝だけが込められていた。バルトは、自分たちが気を失っている間に、あの強大な魔物の残骸が跡形もなく消え失せていたことについて何も問わなかった。もはや、この少年の周りで常識外れの何が起ころうと、驚きはしなかった。
ギルドマスター室の重厚な扉を前に、バルトは一度だけ深く息を吸い、仲間たち、そしてルシアンとエリアナを振り返った。そして、覚悟を決めたように扉をノックした。
室内で一行を迎えたギルドマスター・カインは、腕を組み、何もかもを見通したような厳しい表情で一行を待っていた。その鋭い視線が、一人一人の顔を射抜いていく。
バルトは、カインの前に進み出ると、深々と、長く頭を下げた。
「ギルドマスター。…俺たちの完敗だ。そして、あんたの目は正しかった。あいつは…ルシアンは、本物だ」
それは、ただの報告ではない。銀ランクのベテラン冒険者のプライドの全てを懸けた、最大の賛辞だった。カインの隣に立つルシアンを、エリアナは誇らしげな、そして「当然でしょう?」とでも言いたげな表情で見つめている。
カインは、その言葉に表情一つ変えず、フン、とだけ短く鼻を鳴らした。だが、その瞳の奥に、ほんの一瞬、探るような色とは違う、確信に近い光が宿ったのをルシアンは見逃さなかった。カインは、今回の「試練」の真の目的を語り始めた。
「あの廃鉱山は、強欲な『商人ギルド』の連中が狙っていた土地だ。奴らの幹部であるギデオンという男は、特に強硬でな。奴らと事を構えるにあたり、圧倒的な実力を持ち、かつ相手に貸しを作れる『切り札』が欲しかった」
そして、と言葉を続ける。
「同時に、お前の器も見ていた。ただ強いだけの殺戮者か、それとも弱者を守る意志を持つ者か。お前は、俺の期待を遥かに超える答えを出してくれた」
カインは、机の引き出しから二つの物を取り出した。
「故に、お前には新たな役目を与える。これは、ギルドマスターとしての命令だ」
一つは、商人ギルドの紋章が刻まれた、重厚な封蝋がされた紹介状。
「まず、商人ギルドのギデオンに会え。今回の件の落とし前は、そいつとつけさせる。お前なら、奴らと対等以上に渡り合えるだろう。これは、そのための交渉役という指令だ」
そして、もう一つは、一枚の羊皮紙だった。
「次に、あの鉱山にいたはぐれ者たちだ。奴らはお前を『主』と見なすだろう。…奴らの面倒を見ろ。それが、お前の継続依頼だ」
カインが差し出した羊皮紙は、街の外れにある広大な土地の権利書だった。
紹介状と土地の権利書。その二つが持つ意味の重さに、ルシアンは言葉を失う。ただ平穏な生活を求めていただけのはずが、否応なく、一つの「コミュニティの長」という、重すぎる役割を背負わされてしまったのだ。
◇
ギルドを出ると、夕焼けがクロスロードの街並みを茜色に染めていた。
重い沈黙の中、先に口を開いたのはエリアナだった。
「大変なことになっちゃったね。でも、ルシアンなら大丈夫」
彼女は、ルシアンの腕をそっと掴むと、輝くような笑顔で言った。
「私がそばにいるから」
その言葉に、ルシアンの心にのしかかっていた重圧が、少しだけ和らぐのを感じた。
彼は、手にした権利書を強く握りしめる。
それは、ただの紙切れではない。50名以上の民の命運を託された、自らの「国」の最初の領土だった。
平穏を求め、力を隠してきた少年は、その強すぎる力の故に、最も平穏から遠い宿命へと導かれた。
ルシアンは、予期せぬ形で自らの民と領地を得て、名もなき少年から、名もなき「王」への第一歩を、今、踏み出してしまったのだった。
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