白花の君

キイ子

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闇の大陸へ

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 光の大陸を出るにあたって、ワープを試みる。
生前の私なら特段詠唱や魔法陣など描かなくても行えたそれも、今の体では出来ないようだ。
魔法の発動を妨害する塔も無いのに、そんな事すら出来なくなってしまった。
悔しいことだ。

 魔法の施行は好奇心と発想力そして魔法への理解度がものを言う。
今までの方法で出来ないのなら、出来る方法を探すだけのこと。
こういう、理論に基づいた試行を繰り返すのはダイアンが上手だった。
私やライルそれからルカは、言ってしまえば天才肌にあたる人間だったから、考えてトライアンドエラーを繰り返すよりは感覚に従ってしまった方が良い結果を産んだ。
もちろん、他者に教えを享受する立場として魔法に対する理解を捨てることは無かった。

 ダイアンはその点、理論的に物事を考える能力に長けていたから魔法を扱う上で非常に優秀な魔法使いの一人であったと言えるだろう。
ダイアンには圧倒的な才能は無かった。凡人並みの魔力と、凡人並みのコントロール力しかない彼は、それでも誰よりプライドが高く誰よりも強い魔法使いになりたがっていた。
そんな彼が天才に追いつき、そして凌駕するために突出させたのが魔法に対する理解と発想力、そして好奇心だった。

 地面に魔法陣を描こうと、その辺に落ちていた枝を拾い上げる。
爆発と炎上に巻き込まれたその枝は半分程煤けて黒くなっていた。

 魔法陣を描くときに、何を使ってどこに書くかというのは割と重要である。
今回は土に描き、目的はワープ。ここではない所への移動であるわけだ。
さて、土に相性が良く移動に長けると言えば……水か?
枝の、焼かれていない木の方を用いて転移のための魔法陣を描いていく。
このペン代わりに使う枝にも属性があり、それも魔法陣を構成する要素の一つになる。
煤は、水と相性の悪い火の元素になる。今回はこっちは使わずに、土と水両方に相性の良い木の元素を使う。

 魔法自体は、何でどう描こうとも力技で施行はできる。
ただ、その効率は全然変わるのだ。
相性の悪い元素を三つ使って魔法陣を描けば、それぞれが反発しあうためそれを押さえるため三つそれぞれに魔力を与えてさらにそれらを自分の魔力を接着剤にして繋げて動かさなくてはならない。
逆に相性のいい元素同士で組めばそれぞれが勝手に組み付いて一つの輪になる。その時に送る魔力は一つ分のみで大丈夫なのだ。
多くの魔法使いはこうして自分で最適解を探し送る魔力を極力減らして魔法を行使する。

 魔法というものはとても奥深く学ぶことが尽きない。
最適解とされていたものでも、突き詰めればもっと効率の良い組み合わせが見つかったりもするし、相性が悪いからこそ威力が上がるパターンもある。
物質そのものの性質自体によって最適なものが変わることもあるのだから面白いことこの上ない。

 描き上げた魔法陣の溝に水を張る。
ついでに気持ちで、血を一滴。
私の血以上に、魔法を使う上で良い触媒はおそらくないだろう。

 完成した魔法陣へ魔力を流す。
一切の引っ掛かりも無く、するりと廻る魔力が心地よい。輝き始めた魔法陣の中央へ。
ぐにゃりと空間が歪み、体が浮くような感覚に陥る。
思い浮かべるのは遠き故郷。

 私が生きた、あの優しい場所へ。

 そうして、心を弾ませながら光に包まれた視界の先に見えたのはまったく見覚えのない風景だった。
感傷に浸るどころか、ただ茫然と、目の前の巨大な建物を見つめる。
見たことも無い建材で作り上げられたその建物には、あちこちから魔法の気配を感じた。
……その魔法もまた、私の知りえないものばかり。
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