炎の魔女は妖精の瞳を持つ男爵に恋をする~愛の囁きは危険な恋の始まり?~

清里優月

文字の大きさ
10 / 42

9話 不思議な魔女と妖精の瞳1

しおりを挟む
 ハリーが失神して、シエナはハリーの両親の所へ行き、助けを求めた。シエナは、ハリーの両親に責められると考えていたが、二人は苦笑するだけだった。子どもの頃、ハリーは猫に噛まれて失神したらしい。どうせまたラブに引っ付かれて、失神したのだろうと笑っていた。



 ダドリー伯爵家の四階のシエナに宛がわれた部屋で、ラブを前に落ち込んでいた。

「ハリー。失神しちゃったわ。大丈夫かな……」

 いつもの明るいおおらかなシエナとは違っていた。シエナは、魔法書の『愛の囁き』の部分全てに目を通さないでハリーに魔法をかけたのだ。あまりにそそっかしすぎた。肩を落として、しゅんとしている。そこへラブが傷口を広げるかのような台詞を口にした。



『そりゃあ、人間ならびっくりするわよ。いきなり妖精が見えて、人間以外の動物の声が聞こえたら。かわいそうに』

 ラブの言葉にシエナの良心がちくりと痛む。

「そ……う……よね」

 自分の想いだけをハリーに押しつけ気味だった自覚はあったシエナは、しょぼんと肩を落とした。

『でも、アイツ、けっこういい奴よね』

 人間嫌いのラブが珍しく人間を誉めたものだから、シエナは嬉しくなる。

 

「え、人間嫌いのラブが」

『だって、アイツ、魔女や妖精を嫌いって言わなかったわ。むしろ好きだと言ってたわ。シエナ、あなたがハリーに恋したのが少しは理解できるわ。アイツ、純情で素直ないい奴そうだし』

「ラブ! そうなの! ハリーを初めて見た時、瞳が透明に澄んで見えたの! 魔女には人間の本質が視えるわ!」

 相方である使い魔が理解を示してくれて、幸せ過ぎてシエナは言葉をまくしたてた。



 興奮したシエナに圧倒されつつ、ラブは注意をするのを忘れない。

『シエナ、あなたがハリーをどれだけ好きなのかはわかったわ。でも最初から距離を詰め過ぎよ。少し距離を取ってあなたのいい所を知ってもらいなさい』

「そ、そうよね。反省したわ」

 子どものようにしゅんとするシエナに、ふうとラブは苦笑した。



『シエナ。ハリーが目覚めるまでついていてあげたら。心配でしょう』

 ラブは尻尾を振りながら、笑っている。それはラブが機嫌のいいときにする仕草だ。ラブもハリーが気に入ったらしい、それがわかったシエナは嬉しそうに頷いた。



「う、うん! ありがとう! ラブ!」

 自分の部屋を勢いよく開けて、バタバタ出ていくシエナにラブが呆れたのは言うまでもない。シエナは違う階のハリーの部屋をそうっと開けた。中には侍女のエラがいた。



「まあ、シエナ様。どうしたのですか?」

 笑顔で接してくれるエラに、シエナは申し訳なさそうに言葉を紡いだ。

「ハリー様、大丈夫かしら」

 エラはぷっと噴き出す。

 

「大丈夫ですよ! それにしてもラブが近づいてのに驚いて、失神したとは、ハリー坊ちゃま。情けない……」

 一応、シエナとラブで打ち合わせをした理由だったが、ハリーには悪い気がして、シエナは項垂れた。

「言わないで上げて。ラブに慣れて欲しくて、私が我が侭を言ったの」

 しょぼんとする様に、エラは苦笑していた。



「う……」

 ハリーの声に気が付いて、ぎゅっと手を握る。

「ハリー様! 大丈夫ですか?」

 シエナが至近距離に顔を近づいていたものだから、ハリーはぎょっとしていた。

「はっ! シ、シエナ」

 シエナは更にハリーの両手を握りしめていて者だから顔を真っ赤にしている。



「ハリー! ハリー様! ごめんなさい。私、あなたを驚かせてしまって……」

 シエナも無意識に両手を握りしめていたことに気が付き、手を離した。

「……い、いや。私こそ、今日一日、あまりに色々ありすぎて、驚いてしまって失神するなど恥ずかしい」

 うっすらと頬を朱色に赤らめているのは恥ずかしいのだろうかと思案していた。



「それじゃあ、看病はシエナお嬢様に任せて、私は席を外しますわ。お二人で仲良くお話して下さい」

 二人は視線を合わせて、はっとする。男女が二人でひとつの部屋にいるなど、許されない。だが、シエナの魔法で二人は婚約者同士となっているから、エラはさっさと部屋を出ていく。



「エ、エラ! まっ……」

 ハリーは、必死に声を上げていたが、エラはくすくす笑って部屋の扉を閉めていった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

虚弱姫はコワモテ将軍の筋肉に触りたい

隙間ちほ
恋愛
◼︎無骨な英雄×病弱な筋肉フェチ姫 ◼︎辺境伯の末娘エルナは、領軍の英雄マテウスとの結婚が決まった。政略結婚――のはずが、実は姫は将軍の熱烈なファン。姫がノリノリで嫁ぐ一方、当のマテウスは「か弱い姫君に嫌われている」と思い込み、距離を取ってしまう……。 ◼︎筋肉と鼻血とすれ違いラブコメ。 ◼︎超高速展開、サクッと読めます。

むにゃむにゃしてたら私にだけ冷たい幼馴染と結婚してました~お飾り妻のはずですが溺愛しすぎじゃないですか⁉~

景華
恋愛
「シリウス・カルバン……むにゃむにゃ……私と結婚、してぇ……むにゃむにゃ」 「……は?」 そんな寝言のせいで、すれ違っていた二人が結婚することに!? 精霊が作りし国ローザニア王国。 セレンシア・ピエラ伯爵令嬢には、国家機密扱いとなるほどの秘密があった。 【寝言の強制実行】。 彼女の寝言で発せられた言葉は絶対だ。 精霊の加護を持つ王太子ですらパシリに使ってしまうほどの強制力。 そしてそんな【寝言の強制実行】のせいで結婚してしまった相手は、彼女の幼馴染で公爵令息にして副騎士団長のシリウス・カルバン。 セレンシアを元々愛してしまったがゆえに彼女の前でだけクールに装ってしまうようになっていたシリウスは、この結婚を機に自分の本当の思いを素直に出していくことを決意し自分の思うがままに溺愛しはじめるが、セレンシアはそれを寝言のせいでおかしくなっているのだと勘違いをしたまま。 それどころか、自分の寝言のせいで結婚してしまっては申し訳ないからと、3年間白い結婚をして離縁しようとまで言い出す始末。 自分の思いを信じてもらえないシリウスは、彼女の【寝言の強制実行】の力を消し去るため、どこかにいるであろう魔法使いを探し出す──!! 大人になるにつれて離れてしまった心と身体の距離が少しずつ縮まって、絡まった糸が解けていく。 すれ違っていた二人の両片思い勘違い恋愛ファンタジー!!

愛しい人、あなたは王女様と幸せになってください

無憂
恋愛
クロエの婚約者は銀の髪の美貌の騎士リュシアン。彼はレティシア王女とは幼馴染で、今は護衛騎士だ。二人は愛し合い、クロエは二人を引き裂くお邪魔虫だと噂されている。王女のそばを離れないリュシアンとは、ここ数年、ろくな会話もない。愛されない日々に疲れたクロエは、婚約を破棄することを決意し、リュシアンに通告したのだが――

元恋人が届けた、断りたい縁談

待鳥園子
恋愛
シュトルム辺境伯の末娘ソフィに隣国の帝国第二皇子から届けられた『縁談』の使者は、なんと元恋人のジョサイアだった。 手紙ひとつで別れることになったソフィは、素直になれずジョサイアから逃げ回る。 「私に届けなければ、彼は帝国に帰ることが出来ない」 そう思いようやく書状を受け取ろうと決意したソフィに、ジョサイアは何かを言い掛けて!?

私を簡単に捨てられるとでも?―君が望んでも、離さない―

喜雨と悲雨
恋愛
私の名前はミラン。街でしがない薬師をしている。 そして恋人は、王宮騎士団長のルイスだった。 二年前、彼は魔物討伐に向けて遠征に出発。 最初は手紙も返ってきていたのに、 いつからか音信不通に。 あんなにうっとうしいほど構ってきた男が―― なぜ突然、私を無視するの? 不安を抱えながらも待ち続けた私の前に、 突然ルイスが帰還した。 ボロボロの身体。 そして隣には――見知らぬ女。 勝ち誇ったように彼の隣に立つその女を見て、 私の中で何かが壊れた。 混乱、絶望、そして……再起。 すがりつく女は、みっともないだけ。 私は、潔く身を引くと決めた――つもりだったのに。 「私を簡単に捨てられるとでも? ――君が望んでも、離さない」 呪いを自ら解き放ち、 彼は再び、執着の目で私を見つめてきた。 すれ違い、誤解、呪い、執着、 そして狂おしいほどの愛―― 二人の恋のゆくえは、誰にもわからない。 過去に書いた作品を修正しました。再投稿です。

届かぬ温もり

HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった····· ◆◇◆◇◆◇◆ 読んでくださり感謝いたします。 すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。 ゆっくり更新していきます。 誤字脱字も見つけ次第直していきます。 よろしくお願いします。

令嬢が眠る時

五蕾 明日花
恋愛
愛する婚約者と仲睦まじい元平民の男爵令嬢に嫉妬し、嫌がらせを続けた挙句に処刑された我儘で傲慢な公爵令嬢コーネリア。悪魔の力を借りて人生を繰り返していくうちに性格や言動を改め、〝完璧な令嬢〟と評されるようになっていく。しかしそうなっても婚約者は、男爵令嬢を選んでしまう運命は変えられない。濡れ衣を着せられ、結局はありもしない罪で処刑されてしまう。心が折れてしまいせめて処刑されてしまう運命だけでも変えたいコーネリアに、悪魔は〝仮死状態になり、死んだと誤解させた後でこっそり逃げ出してしまえばいい〟と提案する。 仮死状態(意識のみ有り)での性描写有り、嘔吐描写も一瞬 完結済。6話+エピローグ。♡マーク付きの話に性描写有り。 Nolaノベルにも同名義で投稿。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

処理中です...