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9話 心のかけらたち2
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「レ、レヴィ様のパートナー?」
自分に対しては、塩対応のレヴィと夜会でどうすごせばいいのだろうと絶句し、アリスの告げた言葉を反芻した。
だけど。
これはレヴィの本心を聞くいい機会だと閃いて、エリンはこくりと頷く。
「エリン! やっとレヴィとの結婚を決意したのね!」
満面の笑みを浮かべたアリスは、がしっとエリンの腕を掴んだ。アリスの笑みが怖くて、エリンは引き攣らせた微笑を浮かべて、俯いた。
「違います。レヴィ様の気持ちを知りたいんです、私のことをどう思っているか……」
自信なさげにぼそぼそと小さな声で呟いたエリンの目の前ににんまりと微笑んでいるアリスがいた。
「まあ」
扇で口許を隠しているが、アリスはエリンがレヴィのことを気にかけていることを見抜いていた。ほんの小さな変化もこの元社交界の華と呼ばれたダグラス夫人は見逃さない。ふふふと喜びの声を漏らす。エリンや使用人たちが居なければ、狂喜乱舞して踊りだしていたかもしれない。
(相変わらず、個性的で面白い方……)
外見は薔薇のような美しいが、中身はミーハーで社交界の噂話に飛びつくのが大好きだ。普段は注意深く猫を被って隠している。だが、身内にはばれていた。
「アリスおば様、レヴィ様や私で遊ぼうと思ってませんか?」
この個性的なダグラス夫人とは五年の付き合いだ。エリンは、アリスの心の中を見抜いていた。アリスの息子レヴィは、表向きは塩対応をして、心の声はエリンへの好きという気持ちで溢れていた。母親が母親なら息子も息子で変わっている。ちらりと牽制するようにアリスへ視線を送った。自分の胸の内を当てられたアリスは、ぎくっとして誤魔化すように扇で風を送る振りをした。
(アリスおば様もレヴィ様も外見は麗しいのに、中身は変!)
エリンは、レヴィ親子が変だと声を大にして言いたかった。
エリンは、ダグラス邸から箱馬車に乗り、父親に話をしようとスミス邸へ急がせた。箱馬車から降りて、父親の執務室へと足を向ける。父親のベンにダグラス家で行われる夜会に招待されたことを言わなければと急いでいたのが悪かった。いつもならば注意している筈の存在を忘れていたのだ。すっと足を引っ掛けるように出されて、エリンは強かに転んだ。
「あら。エリンお姉様、ダグラス家の夜会に招待されたんですって?」
くすくすとクロエが、扇を口許を隠して笑う。瞳と同じ色彩の水色の可憐なレースをあしらったドレスを身に纏っていた。外見だけは可憐な美少女であるクロエに良く似合っている。しかし、どこからダグラス家主催の夜会の話を聞いたのだろうとエリンは不思議に思った。
「お姉様、大嫌いな婚約者であるレヴィ様のエスコートなんて嫌でしょう? 私がかわりに出てあげるわ」
エリンを見下すように微笑む。以前ならエリンは喜んでレヴィのパートナー役をクロエと交代したであろう。
だけど。
今は違う。
エリンは、レヴィの本当の心の中を知りたかった。表の塩対応が真実か、それとも心の声が真実か。夜会に出ることでレヴィの心の真実を見極めたかった。平然を装い、立ち上がると膝に付いた服の汚れをぱんぱんと払う。
「結構よ。私はレヴィ様が苦手よ。でも大嫌いではないわ」
クロエをきっと睨みつけた。今までにない強気のエリンにクロエは、一瞬圧倒される。しかし、優位なのは自分だと疑っていないのであろう、扇を片手に愛くるしく微笑する。
「ふーん。今までになく強気ね。お姉様……。でもレヴィ様はどうかしら? 外れのエリンなんてエスコートしたくないんじゃないの?」
くすくすと可愛らしい笑い声が廊下に響き渡る。自分の中の不安を言い当てられて、エリンは黙り込んだ。
「レヴィ君は、エリンのことを嫌ってなどいない。エリンを望んだのはレヴィ君だ」
二人の後ろから男性の声がする。
「ベンお父様!」
「お義父様!」
ベンは緑色の瞳を怒りに染めていた。
「クロエ、エリンにわざと足を引っ掛けたな。ハリーには聞いていたが、本当に酷い。お前は暫く自室で謹慎していなさい」
「お義父様……。違います、エリンお姉さまが……自分で……」
「黙りなさい。ハリー、よく教えてくれた」
ベンの後ろからハリーがぴょこんと現れる。
「ハ、ハリー! 覚えてないなさいよ!」
クロエは叫びながら部屋へと下がっていく。
ハリーがクロエに悪態をつくように舌を出した。
自分に対しては、塩対応のレヴィと夜会でどうすごせばいいのだろうと絶句し、アリスの告げた言葉を反芻した。
だけど。
これはレヴィの本心を聞くいい機会だと閃いて、エリンはこくりと頷く。
「エリン! やっとレヴィとの結婚を決意したのね!」
満面の笑みを浮かべたアリスは、がしっとエリンの腕を掴んだ。アリスの笑みが怖くて、エリンは引き攣らせた微笑を浮かべて、俯いた。
「違います。レヴィ様の気持ちを知りたいんです、私のことをどう思っているか……」
自信なさげにぼそぼそと小さな声で呟いたエリンの目の前ににんまりと微笑んでいるアリスがいた。
「まあ」
扇で口許を隠しているが、アリスはエリンがレヴィのことを気にかけていることを見抜いていた。ほんの小さな変化もこの元社交界の華と呼ばれたダグラス夫人は見逃さない。ふふふと喜びの声を漏らす。エリンや使用人たちが居なければ、狂喜乱舞して踊りだしていたかもしれない。
(相変わらず、個性的で面白い方……)
外見は薔薇のような美しいが、中身はミーハーで社交界の噂話に飛びつくのが大好きだ。普段は注意深く猫を被って隠している。だが、身内にはばれていた。
「アリスおば様、レヴィ様や私で遊ぼうと思ってませんか?」
この個性的なダグラス夫人とは五年の付き合いだ。エリンは、アリスの心の中を見抜いていた。アリスの息子レヴィは、表向きは塩対応をして、心の声はエリンへの好きという気持ちで溢れていた。母親が母親なら息子も息子で変わっている。ちらりと牽制するようにアリスへ視線を送った。自分の胸の内を当てられたアリスは、ぎくっとして誤魔化すように扇で風を送る振りをした。
(アリスおば様もレヴィ様も外見は麗しいのに、中身は変!)
エリンは、レヴィ親子が変だと声を大にして言いたかった。
エリンは、ダグラス邸から箱馬車に乗り、父親に話をしようとスミス邸へ急がせた。箱馬車から降りて、父親の執務室へと足を向ける。父親のベンにダグラス家で行われる夜会に招待されたことを言わなければと急いでいたのが悪かった。いつもならば注意している筈の存在を忘れていたのだ。すっと足を引っ掛けるように出されて、エリンは強かに転んだ。
「あら。エリンお姉様、ダグラス家の夜会に招待されたんですって?」
くすくすとクロエが、扇を口許を隠して笑う。瞳と同じ色彩の水色の可憐なレースをあしらったドレスを身に纏っていた。外見だけは可憐な美少女であるクロエに良く似合っている。しかし、どこからダグラス家主催の夜会の話を聞いたのだろうとエリンは不思議に思った。
「お姉様、大嫌いな婚約者であるレヴィ様のエスコートなんて嫌でしょう? 私がかわりに出てあげるわ」
エリンを見下すように微笑む。以前ならエリンは喜んでレヴィのパートナー役をクロエと交代したであろう。
だけど。
今は違う。
エリンは、レヴィの本当の心の中を知りたかった。表の塩対応が真実か、それとも心の声が真実か。夜会に出ることでレヴィの心の真実を見極めたかった。平然を装い、立ち上がると膝に付いた服の汚れをぱんぱんと払う。
「結構よ。私はレヴィ様が苦手よ。でも大嫌いではないわ」
クロエをきっと睨みつけた。今までにない強気のエリンにクロエは、一瞬圧倒される。しかし、優位なのは自分だと疑っていないのであろう、扇を片手に愛くるしく微笑する。
「ふーん。今までになく強気ね。お姉様……。でもレヴィ様はどうかしら? 外れのエリンなんてエスコートしたくないんじゃないの?」
くすくすと可愛らしい笑い声が廊下に響き渡る。自分の中の不安を言い当てられて、エリンは黙り込んだ。
「レヴィ君は、エリンのことを嫌ってなどいない。エリンを望んだのはレヴィ君だ」
二人の後ろから男性の声がする。
「ベンお父様!」
「お義父様!」
ベンは緑色の瞳を怒りに染めていた。
「クロエ、エリンにわざと足を引っ掛けたな。ハリーには聞いていたが、本当に酷い。お前は暫く自室で謹慎していなさい」
「お義父様……。違います、エリンお姉さまが……自分で……」
「黙りなさい。ハリー、よく教えてくれた」
ベンの後ろからハリーがぴょこんと現れる。
「ハ、ハリー! 覚えてないなさいよ!」
クロエは叫びながら部屋へと下がっていく。
ハリーがクロエに悪態をつくように舌を出した。
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