4 / 130
思惑
1
しおりを挟む
コンコンとノックの音が聞こえた気がして自分が寝ていたことに気がついた。
部屋の壁に10年いた天使が、太腿の上から微笑みかけていた。
ベッドの柵にもたれ掛かるようにして床に座って天使を眺めていた昨夜、もう私の天使ではなくなるのだと、壁から額縁を外したシュゼインは天使の微笑みをしまうことがどうしても出来ず、絵を抱えて再び座り込んでいた。
「シュゼイン様?朝食の時間になりますが、お支度はどうされますか?」
返事がないことから起こすために部屋へ入ってきたであろう侍女が、思わぬところに座っているシュゼインに目を見開いた。
しかし教育が行き届いているからなのか、声に動揺の色はなく、優しく声をかけていた。
現実に引き戻されたようだった。
新しい1日が始まってしまった。天使を失う日は今日なのかもしれない。もう、2度と会えないのかもしれない。
しかしそれは自分が撒いた種。受け入れるしかなかった。
「あぁ、朝食は持ってきてもらえるかな。しばらく学園へも行かないから私がいる時は食事はこちらへ用意して欲しい」
謹慎を言い渡されたが、軟禁されているわけでもない。
ただ部屋から出る気になれなかった。
いつ話に行くのだろうか。いつクロッカとの縁が切れてしまうのだろうか。知らせが届くのはいつだろうか。
死刑宣告を待つように項垂れていた。
「かしこまりました」
それだけ言うと侍女はたった一歩踏み出した歩を戻してドアを引いた。
「黄色いチューリップとハルジオンを用意してくれないか」
ドアが動いたのを目で追いながら出てきたのは渡す機会があるのか分からない花の名前だった。
「……少しお時間をいただくかもしれませんが手配してみます」
声をかけた瞬間にピタリと止まったドアをもう一度開け、一瞬の沈黙の後侍女が答えた。
戸惑うのも無理はない。今考えればチューリップの時期ではないし、もしかしたら彼女も花の意味に気づいたのかもしれない。
一礼して今度こそ閉じた扉を確認して、天使を抱きしめた。
会いたいと、みじめにも願ってしまっている。
「なぜ…」
答えは自分で持っていた。
私が未熟だったからだ。自分が思っているよりもずっと私は愚かだったのだ。
それでも思う。何故と。
そんなことを思う資格すらないということは分かっているのにそれでも浮かんでくるのだ。
「なぜ…」
部屋の壁に10年いた天使が、太腿の上から微笑みかけていた。
ベッドの柵にもたれ掛かるようにして床に座って天使を眺めていた昨夜、もう私の天使ではなくなるのだと、壁から額縁を外したシュゼインは天使の微笑みをしまうことがどうしても出来ず、絵を抱えて再び座り込んでいた。
「シュゼイン様?朝食の時間になりますが、お支度はどうされますか?」
返事がないことから起こすために部屋へ入ってきたであろう侍女が、思わぬところに座っているシュゼインに目を見開いた。
しかし教育が行き届いているからなのか、声に動揺の色はなく、優しく声をかけていた。
現実に引き戻されたようだった。
新しい1日が始まってしまった。天使を失う日は今日なのかもしれない。もう、2度と会えないのかもしれない。
しかしそれは自分が撒いた種。受け入れるしかなかった。
「あぁ、朝食は持ってきてもらえるかな。しばらく学園へも行かないから私がいる時は食事はこちらへ用意して欲しい」
謹慎を言い渡されたが、軟禁されているわけでもない。
ただ部屋から出る気になれなかった。
いつ話に行くのだろうか。いつクロッカとの縁が切れてしまうのだろうか。知らせが届くのはいつだろうか。
死刑宣告を待つように項垂れていた。
「かしこまりました」
それだけ言うと侍女はたった一歩踏み出した歩を戻してドアを引いた。
「黄色いチューリップとハルジオンを用意してくれないか」
ドアが動いたのを目で追いながら出てきたのは渡す機会があるのか分からない花の名前だった。
「……少しお時間をいただくかもしれませんが手配してみます」
声をかけた瞬間にピタリと止まったドアをもう一度開け、一瞬の沈黙の後侍女が答えた。
戸惑うのも無理はない。今考えればチューリップの時期ではないし、もしかしたら彼女も花の意味に気づいたのかもしれない。
一礼して今度こそ閉じた扉を確認して、天使を抱きしめた。
会いたいと、みじめにも願ってしまっている。
「なぜ…」
答えは自分で持っていた。
私が未熟だったからだ。自分が思っているよりもずっと私は愚かだったのだ。
それでも思う。何故と。
そんなことを思う資格すらないということは分かっているのにそれでも浮かんでくるのだ。
「なぜ…」
1
あなたにおすすめの小説
結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。
しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。
友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。
『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。
取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。
彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
皇太子夫妻の歪んだ結婚
夕鈴
恋愛
皇太子妃リーンは夫の秘密に気付いてしまった。
その秘密はリーンにとって許せないものだった。結婚1日目にして離縁を決意したリーンの夫婦生活の始まりだった。
本編完結してます。
番外編を更新中です。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。
尾道小町
恋愛
登場人物紹介
ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢
17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。
ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。
シェーン・ロングベルク公爵 25歳
結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。
ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳
優秀でシェーンに、こき使われている。
コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳
ヴィヴィアンの幼馴染み。
アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳
シェーンの元婚約者。
ルーク・ダルシュール侯爵25歳
嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。
ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。
ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。
この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。
ジュリエット・スチール公爵令嬢18歳
ロミオ王太子殿下の婚約者。
ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳
私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。
一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。
正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?
砕けた愛
篠月珪霞
恋愛
新婚初夜に男に襲われた公爵令嬢エヴリーヌは、不義密通の罪を被せられた。反逆罪に問われた彼女の一族は処刑されるが、気付くと時間が巻き戻っていた。
あなたへの愛? そんなものとうに、砕け散ってしまいました。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる