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討論大会
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ベレンガリアの懸念は不要なものだった。
存外に有意義な討論会となった。
当然のように観客の入る本戦の場にアルベルトを含む六人はいた。
後に生徒会長となる公爵家のキリル・エンリケス
文学界の新星として新刊を出したばかりの侯爵家のイリア・ロベール
隣国アイナス帝国からの留学生で王位継承権8位の王子ホルス・リタ
商会の売り上げにより爵位を買い取り、資金力はその辺の伯爵家より有すると言われる男爵家のキャサリン・ルフェーベル
立場の異なる五人を見ると、話をまとめるのは難しいのではないかと予選では思われていた。
異なる意見が出過ぎても話は平行線で終わってしまう。
だが、本戦に立った6人を見ても、もう誰も心配することはなかった。
本戦での議題は貴族制度についてだった。
扱うには慎重さを選ぶ議題に、関心は高かった。
隣国の王子と、この国の王子が席につくのだから尚のこと観客は溢れるように多くなった。
ホルスが隣国の貴族制度と比較して述べ、ベレンガリアは王族視点から帝国の貴族制度を王国に当て嵌められない理由を上げ、しかし帝国の貴族制度のメリットを上げればキリルが疑問を投げかける。
元平民だからこそ経験した貴族の疑問点をキャサリンがあげれば、皆でそれは私も幼い頃から疑問に思っていたと笑い合い、イリアが史実を元に本当に能力のない者は領地を持つべきではないと言えば、アルベルトがどのような者が能力がないと言えるのかと投げかける。
議論は白熱し、では領地を持たない貴族は不要なのかと別の話に移り、最終的に皆が納得したところでアルベルトがそろそろ観客からも意見を聞きたいところですねと、時間の終わりを告げた。
その時には5人ともが息を乱すほどだった。
夢中になりこの国の制度について自分の意見を言う機会なんて誰もなかっただろう。
ベレンガリアも後継者教育を兄と共に受ける中で、自分の内に秘めた思いはあったが、それを話し意見される場はなかった。
そしてアルベルトから求められ、観客から意見を投げ掛けられると、さらに深く掘り下げて話が進み、後から来た観客が、ここは議会の場なのか?と思うほどの出来栄えだった。
「現制度でも貴族を監視するシステムはあるが、大罪でなければ罰することが出来ない。民からの意見が一定以上揃えば、領主をおろすことが出来る制度など、この場で出た新しい制度案はこの国の可能性を感じさせるものでした。今回は良い討論となり、この国の貴族の一員として皆が国のために考えていると分かりました。そんな機会をいただけたことに感謝いたします。ありがとうございました」
アルベルトが締め括ると、異例とも言える拍手が巻き起こっていた。
突拍子もない意見や議論が翳り始める気配がするとスッと話を別のものへとすり替え、時には煽り、話はすっかりアルベルトの手のひらの上で転がっていた。
パネリストに選ばれた5人はそのアルベルトの掌の中での議論が快感だった。突拍子もない意見の裏にある想いを汲み取り、適切な場を作り上げ、アルベルトに促されてもう一度その意見を挟むと突拍子もないと自分でも思っていた意見が自然と受け入れられる。
高揚感すら感じていた。
その時の審査員の1人が後にアルベルトが補佐を務めることになる内務大臣だった。
アルベルトはパネリストとしても予選から同級生上級生問わず多くの討論の場に呼ばれていた。
成績優秀であるから選ばれたようなものもあったし、中にはアルベルトの知識についていけない他のパネリストとの、議論にならないようなつまらないものもあった。
しかし、アルベルトはこの討論大会を楽しんでいた。
サロンへ行ってもここまで多くの意見を言い合えることはない。
学園という大きな場だからこそ得られる経験に満足していた。
当然のようにアルベルトは上級生を抑えコーディネーターとして優勝した。
そして予選からの総合ポイントで順位の決まるパネリストとしても3位という好成績を残していた。
アルベルトのパネリストを務めた5人もパネリストとして入賞こそしなかったが、高い評価を得ていた。
来年からは依頼が殺到することが容易に予想できた。
そしてコーディネーターとして4位に入ったのは、キリル・エンリケスだった。
彼はアルベルトのように器用にパネリストに語らせることは出来なかったが、自らが観客の代表者のように話の中心となり議題について意見を求めていき、安定した進行が評価された。
ベレンガリアも本戦に進んだが、僅かに入賞には届かなかったが、作戦を変え、来年こそはと意気込んでいた。
アルベルトの人生の分岐点はこの日だった。
存外に有意義な討論会となった。
当然のように観客の入る本戦の場にアルベルトを含む六人はいた。
後に生徒会長となる公爵家のキリル・エンリケス
文学界の新星として新刊を出したばかりの侯爵家のイリア・ロベール
隣国アイナス帝国からの留学生で王位継承権8位の王子ホルス・リタ
商会の売り上げにより爵位を買い取り、資金力はその辺の伯爵家より有すると言われる男爵家のキャサリン・ルフェーベル
立場の異なる五人を見ると、話をまとめるのは難しいのではないかと予選では思われていた。
異なる意見が出過ぎても話は平行線で終わってしまう。
だが、本戦に立った6人を見ても、もう誰も心配することはなかった。
本戦での議題は貴族制度についてだった。
扱うには慎重さを選ぶ議題に、関心は高かった。
隣国の王子と、この国の王子が席につくのだから尚のこと観客は溢れるように多くなった。
ホルスが隣国の貴族制度と比較して述べ、ベレンガリアは王族視点から帝国の貴族制度を王国に当て嵌められない理由を上げ、しかし帝国の貴族制度のメリットを上げればキリルが疑問を投げかける。
元平民だからこそ経験した貴族の疑問点をキャサリンがあげれば、皆でそれは私も幼い頃から疑問に思っていたと笑い合い、イリアが史実を元に本当に能力のない者は領地を持つべきではないと言えば、アルベルトがどのような者が能力がないと言えるのかと投げかける。
議論は白熱し、では領地を持たない貴族は不要なのかと別の話に移り、最終的に皆が納得したところでアルベルトがそろそろ観客からも意見を聞きたいところですねと、時間の終わりを告げた。
その時には5人ともが息を乱すほどだった。
夢中になりこの国の制度について自分の意見を言う機会なんて誰もなかっただろう。
ベレンガリアも後継者教育を兄と共に受ける中で、自分の内に秘めた思いはあったが、それを話し意見される場はなかった。
そしてアルベルトから求められ、観客から意見を投げ掛けられると、さらに深く掘り下げて話が進み、後から来た観客が、ここは議会の場なのか?と思うほどの出来栄えだった。
「現制度でも貴族を監視するシステムはあるが、大罪でなければ罰することが出来ない。民からの意見が一定以上揃えば、領主をおろすことが出来る制度など、この場で出た新しい制度案はこの国の可能性を感じさせるものでした。今回は良い討論となり、この国の貴族の一員として皆が国のために考えていると分かりました。そんな機会をいただけたことに感謝いたします。ありがとうございました」
アルベルトが締め括ると、異例とも言える拍手が巻き起こっていた。
突拍子もない意見や議論が翳り始める気配がするとスッと話を別のものへとすり替え、時には煽り、話はすっかりアルベルトの手のひらの上で転がっていた。
パネリストに選ばれた5人はそのアルベルトの掌の中での議論が快感だった。突拍子もない意見の裏にある想いを汲み取り、適切な場を作り上げ、アルベルトに促されてもう一度その意見を挟むと突拍子もないと自分でも思っていた意見が自然と受け入れられる。
高揚感すら感じていた。
その時の審査員の1人が後にアルベルトが補佐を務めることになる内務大臣だった。
アルベルトはパネリストとしても予選から同級生上級生問わず多くの討論の場に呼ばれていた。
成績優秀であるから選ばれたようなものもあったし、中にはアルベルトの知識についていけない他のパネリストとの、議論にならないようなつまらないものもあった。
しかし、アルベルトはこの討論大会を楽しんでいた。
サロンへ行ってもここまで多くの意見を言い合えることはない。
学園という大きな場だからこそ得られる経験に満足していた。
当然のようにアルベルトは上級生を抑えコーディネーターとして優勝した。
そして予選からの総合ポイントで順位の決まるパネリストとしても3位という好成績を残していた。
アルベルトのパネリストを務めた5人もパネリストとして入賞こそしなかったが、高い評価を得ていた。
来年からは依頼が殺到することが容易に予想できた。
そしてコーディネーターとして4位に入ったのは、キリル・エンリケスだった。
彼はアルベルトのように器用にパネリストに語らせることは出来なかったが、自らが観客の代表者のように話の中心となり議題について意見を求めていき、安定した進行が評価された。
ベレンガリアも本戦に進んだが、僅かに入賞には届かなかったが、作戦を変え、来年こそはと意気込んでいた。
アルベルトの人生の分岐点はこの日だった。
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