クロッカ・マーガレット・ハイランスの婚約破棄は初恋と共に

佐原香奈

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開かれた道

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結局、男性からの心象が悪いためなのか、クロッカの順位は2位という結果に終わった。


しかし女性達からの支持は絶大であった。
ユージェニー殿下の婚約者であるテレーズが後ろについているので、不満を隠しきれない男性も表面上それを見せる事はない。


クロッカから討論大会を見に来て欲しいと誘われていたイリアもあまりの彼女の大胆で素早い行動に驚かされていた。そのクロッカの活躍を見たイリアは、早速次の日の新聞の一枠を買い取り、討論大会での一幕について随筆を載せた。



それは会場にいなかった貴族や庶民の目に留まり、国民の心に留まることとなった。


「いやぁ、女に勝てる男なんていないよなぁ」


「うちのかぁちゃんに逆らってみろ、家を追い出されちまう」


特に庶民の間では、よく働く女性の強さは当たり前に認められており、もちろん女性を蔑むものもいたが、それは男として情けないと受け取られるものであった為、領主たちは領民を敵に回すまいと公の場で話題にする事はなかった。


このジェンダーフリーの思想は洪水により下火となっていた改革派と保守派の争いを激化させることに繋がっていった。


あまりの過熱ぶりに、ユージェニー殿下の婚約者であるテレーズを守る為、王妃は早々に今後の女性の活躍を支援すると表明するに至った。


これにより保守派を押し黙らせることになり、改革派が一気に勢力を増していくことなる。


王妃の声明に庶民は湧き上がり、高位の女性貴族達はこれまで貴族の義務として公表することのなかった婦人会の活動実績を公にし、その活動は広く称賛されることとなった。



そして討論大会後のクロッカはというと、無事に推薦状が届いており、悔しいながらも自分の未来を掴むために更なる努力を誓っていた。


学園に推薦状を提出し、特別クラスへの編入を希望したのだが、その間に騒動は過熱の一途を辿っており、特進科への編入者の発表は一時延期となっていた。
クロッカは護衛がいなくては外へ出られないほどで、安全を確保出来ないことから、暫し自宅待機を学園から言い渡されることとなった。



イリアの随筆は評判により仕事として定期的に寄稿するようになっていた。
その紙面を見てはため息を吐いていたのがアルベルトだった。




「君のところのお嬢様はものすごいことをしてくれたね」



「……イリア・ロベールも一枚噛んでいる。これは革命運動だ」



キリルは興味深いというようにアルベルトの持つ新聞を後ろから眺める。
根回しも何もなく、貴族学園の討論大会での議論が女性達の革命運動へと発展していく。
それは来るべくして来た未来だったのかもしれない。


改革派の中でも保守派の中でも女性の社会進出については賛否両論。あらたな派閥争いが生まれようとしていた。


「あの時は冷静そうに見えたけど、よっぽど腹に据えかねていたんだろうね」




「これは俺に対しての当て付けということか」


 
くっきりとアルベルトの眉間には皺が寄る。
しっぺ返しにしては壮大すぎる企画だ。


「いや、君も含めてこの世の中全ての男に対して嫌気が差したということだろう。まぁそこまで考えていたかは分からないけど、このイリア・ロベールの寄稿文を読んで、後ろめたさを感じない男はこの世にいないことは確かだ」


「どちらにせよ、彼女に歯が向かない様に対策をするしかない。まだ形だけは婚約者だ。堂々と手が出せるのは救いだったな」


この時まだ、アルベルトはこの騒動のせいで婚約破棄の話を進めることが出来ないのだと思っていた。


アルベルトは王都のハイランス家に護衛騎士を派遣し、警備の増強を助けていた。
その一方で外出のできないクロッカに人気の菓子や本、アクセサリーを差し入れとして届けさせた。


「まぁ、もらえるものはもらっておきますか」



どれもクロッカの好みであるため目の前に出されれば手が伸びないわけがなかった。



軟禁状態となっているクロッカだったが、特に不自由を感じることもなく、寧ろこの状況は臨んだ以上の結果だったと満足すらしていた。
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