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子牛を乗せて
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「あっ!リーリエきたわね!おはよう」
アカデミーに着くと、友人である伯爵家の娘、カナリアに声をかけられた。
「カナリア様、おはようございます」
「はいはい。その堅苦しい挨拶はいいから、あの新聞記事のこと、ごっそり詳しく教えなさいよ」
カナリアと2人きりの時は話し方も砕けるのだが、学園や他者のいるお茶会などでは、階級の違いからしっかりと話し方を変える。
私たちがいくら仲が良くても、第三者からしたら私の教養がないと捉えられるからだ。
「え、もしかして今朝の記事のことが私のことだって分かったの?」
そんなまさか…噂話にしても情報があまりにも早すぎる。
思わず口調が戻ってしまう。小声でよかった。
「何言ってるのよ。あんな記事が出たら、親が真っ先にどこの家か調べるわ。自分と取引のある家だったら大きな損失が出る恐れがあるもの」
家名を伏せても突き止められるだろうとは思っていたが、ここまで早いとは思わなかった。
わざわざ家名を伏せたのは、もしかしたら興味をそそるようにするためだったのかもしれない。
隠された方が、むしろ情報が迅速に広く伝わる可能性すらある。
私たちの仲の良さは有名だったのに、終わりというのは呆気ないものだ。そして、驚きもしないカナリアに、私の方が驚く。
「カナリア様は、驚かなかったのですか?」
「もちろん父から聞いた時はまさかと思ったわよ?でもねぇ…テンサー卿って何となく頼りないし、彼と結婚してリーリエは大丈夫かなー?とは常々思っていたわけ。そんな彼がリーリエに婚約破棄だなんて、地獄に堕ちろって感じ」
「ふふっ。カナリア様、そう言ってくださると傷物になった私の心も癒えますわ」
私たちは2人で教室に向かう。
「あぁ、先に聞いておけばよかったわ」
ポツリとカナリアが呟いて、何が?と思って彼女の視線の先を追うと、遠くから決して走ってはいないが、滑るように歩いてくる姿が見える。
ドレスの下で足がどう動いているのか気になる。
「リーリエー!遅いじゃないか!」
教室まで後一歩だったのだが、その到着も待ちきれなかったのかもしれない彼女は、友好国であるシルベマヤ国の侯爵令嬢である。
彼女が妙技まで披露して声を掛けてきた理由に心当たりはある。
ありすぎる。困った誤解をしていないことを祈りつつ、「ごきげんよう、シェーラ様」そう畏まった。
「はいはい。それはもういい。これがどういうことか説明してもらおうか」
やっぱりどうして、彼女が右手に持っているのは今朝の新聞である。
彼の名前が出ていたのなら、私も朝一番に彼女たちにことの顛末を記した手紙を送ったのだが、如何せん私は会ってから話せばいいと油断していたのだ。
「まぁまぁ、それはこれから説明しますわ」
「ふんっよかろう。授業どころではない。行くぞ」
あっという間に連れ去られる私を哀れそうな目で見つめているカナリアも、ため息を吐きながら着いてきてくれた。
持つべきものは友だ!
何を隠そう、シェーラはシーセル・マーサーの大ファンで、彼を見たさに異国の地に追っかけしに来ているファンの中のファンである。
こんな事なら昨日、彼女を内密に呼び出せばよかった…
興奮のあまりヘタを打った昨日の自分を恨みつつ、引きずられるようにして私はシェーラに中庭へと連れて行かれている。
ドナドナと、どこからか声が聞こえてくるようだった。
悲しそうな瞳をしたリーリエには翼はない。
アカデミーに着くと、友人である伯爵家の娘、カナリアに声をかけられた。
「カナリア様、おはようございます」
「はいはい。その堅苦しい挨拶はいいから、あの新聞記事のこと、ごっそり詳しく教えなさいよ」
カナリアと2人きりの時は話し方も砕けるのだが、学園や他者のいるお茶会などでは、階級の違いからしっかりと話し方を変える。
私たちがいくら仲が良くても、第三者からしたら私の教養がないと捉えられるからだ。
「え、もしかして今朝の記事のことが私のことだって分かったの?」
そんなまさか…噂話にしても情報があまりにも早すぎる。
思わず口調が戻ってしまう。小声でよかった。
「何言ってるのよ。あんな記事が出たら、親が真っ先にどこの家か調べるわ。自分と取引のある家だったら大きな損失が出る恐れがあるもの」
家名を伏せても突き止められるだろうとは思っていたが、ここまで早いとは思わなかった。
わざわざ家名を伏せたのは、もしかしたら興味をそそるようにするためだったのかもしれない。
隠された方が、むしろ情報が迅速に広く伝わる可能性すらある。
私たちの仲の良さは有名だったのに、終わりというのは呆気ないものだ。そして、驚きもしないカナリアに、私の方が驚く。
「カナリア様は、驚かなかったのですか?」
「もちろん父から聞いた時はまさかと思ったわよ?でもねぇ…テンサー卿って何となく頼りないし、彼と結婚してリーリエは大丈夫かなー?とは常々思っていたわけ。そんな彼がリーリエに婚約破棄だなんて、地獄に堕ちろって感じ」
「ふふっ。カナリア様、そう言ってくださると傷物になった私の心も癒えますわ」
私たちは2人で教室に向かう。
「あぁ、先に聞いておけばよかったわ」
ポツリとカナリアが呟いて、何が?と思って彼女の視線の先を追うと、遠くから決して走ってはいないが、滑るように歩いてくる姿が見える。
ドレスの下で足がどう動いているのか気になる。
「リーリエー!遅いじゃないか!」
教室まで後一歩だったのだが、その到着も待ちきれなかったのかもしれない彼女は、友好国であるシルベマヤ国の侯爵令嬢である。
彼女が妙技まで披露して声を掛けてきた理由に心当たりはある。
ありすぎる。困った誤解をしていないことを祈りつつ、「ごきげんよう、シェーラ様」そう畏まった。
「はいはい。それはもういい。これがどういうことか説明してもらおうか」
やっぱりどうして、彼女が右手に持っているのは今朝の新聞である。
彼の名前が出ていたのなら、私も朝一番に彼女たちにことの顛末を記した手紙を送ったのだが、如何せん私は会ってから話せばいいと油断していたのだ。
「まぁまぁ、それはこれから説明しますわ」
「ふんっよかろう。授業どころではない。行くぞ」
あっという間に連れ去られる私を哀れそうな目で見つめているカナリアも、ため息を吐きながら着いてきてくれた。
持つべきものは友だ!
何を隠そう、シェーラはシーセル・マーサーの大ファンで、彼を見たさに異国の地に追っかけしに来ているファンの中のファンである。
こんな事なら昨日、彼女を内密に呼び出せばよかった…
興奮のあまりヘタを打った昨日の自分を恨みつつ、引きずられるようにして私はシェーラに中庭へと連れて行かれている。
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悲しそうな瞳をしたリーリエには翼はない。
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