14 / 16
BOSSあらわる
しおりを挟む
トーマスの元へ追加のシフォンケーキが並べられていく。
結局、全種類を制覇することになったようだ。
私たちの席の周りには、先程シーセルの周りにいた女の子達が聞き耳を立てているようだ。
貴族の令嬢たちが並んでまで席を勝ち取る姿勢には感服する。
「私の為に送られて来たというのはどういうことですか?」
横目でトーマスの満面の笑みをチラ見しながらも、シーセルへと真っ直ぐ目を向けた。
シーセル様は美しいけど直視するには眩しすぎるし、トーマスの幸せそうな笑顔と交互に見るくらいが目に優しい気がする。
「そのままの意味です。シュエトン嬢が来るかも分からない剣術大会には参加しないと断ったら、シュエトン嬢宛のチケットが私に送られて来たのですよ」
「それは…」
運営からの無言の圧力って事じゃない!
私が行かないそぶりでも見せれば、当日連行されそうな気配すら感じられる。
さらに言えば、今も全方位から殺気を浴びせられている。
「どちらかといえば、私は2人で行きたいと思うのですがどうですか?普通の席のチケットですが、立ち見は避けられますし是非一緒に…」
「いっいえいえ!折角プレミアムチケットをいただいたので、マーサー卿の試合を是非見たいですわ」
全方位からすでに浴びせられている殺気の中、呑気にミルクティーを注文するトーマスは流石としか言いようがない。
断っても断らなくても殺されそうな雰囲気に、ならばせめてシーセルの勇姿を全員で堪能できる方法を選択して命乞いをする。
ーー私の代わりになってくれるなら喜んでこの席を譲るのに…
「え、一緒に行けばいいんじゃない?プレミアム席は堅苦しいってリーリエも…」
いつのまにか持ち帰り用のシフォンケーキまで積み上げられて、脳が砂糖に侵されてしまったトーマスがとんでもないことを言い出して焦る私の前に、白いドレスに似合わない短刀を帯刀した見慣れた格好が視界に入った。
「リーリエ、シーセル様、ご機嫌麗しゅう」
急いできたのか少しばかり息の上がった声がする。
動きやすいようにスカートは軽さを重視してボリュームは控えめ。こんな格好をする人は1人しか知らない。
トーマスのお皿の横で積み上がっている賄賂からゆっくりと目線を移しながらその格好一つ一つを目で確認しながら顔を見上げると、思った通りシェーラが立っていた。
「クロスシード侯爵令嬢、奇遇ですね。お茶を飲む時間があるようなら、同席なさいませんか?」
「クロスシード嬢か!今日は学校も休んでいたのに本当に奇遇だね」
あわあわと口を震わしているだけの私を置いて、シーセルとトーマスがシェーラを私の横の椅子にエスコートする。
ーー実質の親玉登場じゃない!
周り一面をシーセルのファンで固められ、さらに敵味方はあれどシーセルのファンの行動を抑え込んでいるシェーラがそのど真ん中に乗り込んできた。
これは剣術大会に一緒に行くとか、誘いを断ったとか、いやもうそれこそ剣術大会に誘われていたとか、そもそも一緒にお茶しているとか、なにか逆鱗に触れて落とし前を取らされるのでは?と思うと震えが止まらない。
私とシーセルの結婚を望んでいるというのもどこまで本気で、どこまでを望んでいるのか読めないのも怖い。
「シェーラ様、今日はお会い出来ないと思っていましたわ。街に出ていらしたのですね」
周りの痛いほどの視線の中、シェーラに失礼な態度を取れるはずもなく、猫をかぶるしかない。
それが貴族であるし、それが階級制度の中でのマナーというものだ。
「あぁ。リーリエ、そんなに畏まらなくていい。変なことを言うヤツは私が喉元を掻っ切ってやるから普通に話せ」
「そ、そんなこと出来るわけないでしょー!」
シェーラはそれでもいいけど、私みたいな子爵家が間に受けて気軽に話しかければ、一生身の程知らずの無礼者扱いされて爪弾きにされる。
下級貴族の肩身の狭さを舐めてもらっては困るのだ。
リーリエは扇で口元を隠しつつ、シェーラにこっそりと耳打ちした。
これが私のできる抗議の精一杯だ。
結局、全種類を制覇することになったようだ。
私たちの席の周りには、先程シーセルの周りにいた女の子達が聞き耳を立てているようだ。
貴族の令嬢たちが並んでまで席を勝ち取る姿勢には感服する。
「私の為に送られて来たというのはどういうことですか?」
横目でトーマスの満面の笑みをチラ見しながらも、シーセルへと真っ直ぐ目を向けた。
シーセル様は美しいけど直視するには眩しすぎるし、トーマスの幸せそうな笑顔と交互に見るくらいが目に優しい気がする。
「そのままの意味です。シュエトン嬢が来るかも分からない剣術大会には参加しないと断ったら、シュエトン嬢宛のチケットが私に送られて来たのですよ」
「それは…」
運営からの無言の圧力って事じゃない!
私が行かないそぶりでも見せれば、当日連行されそうな気配すら感じられる。
さらに言えば、今も全方位から殺気を浴びせられている。
「どちらかといえば、私は2人で行きたいと思うのですがどうですか?普通の席のチケットですが、立ち見は避けられますし是非一緒に…」
「いっいえいえ!折角プレミアムチケットをいただいたので、マーサー卿の試合を是非見たいですわ」
全方位からすでに浴びせられている殺気の中、呑気にミルクティーを注文するトーマスは流石としか言いようがない。
断っても断らなくても殺されそうな雰囲気に、ならばせめてシーセルの勇姿を全員で堪能できる方法を選択して命乞いをする。
ーー私の代わりになってくれるなら喜んでこの席を譲るのに…
「え、一緒に行けばいいんじゃない?プレミアム席は堅苦しいってリーリエも…」
いつのまにか持ち帰り用のシフォンケーキまで積み上げられて、脳が砂糖に侵されてしまったトーマスがとんでもないことを言い出して焦る私の前に、白いドレスに似合わない短刀を帯刀した見慣れた格好が視界に入った。
「リーリエ、シーセル様、ご機嫌麗しゅう」
急いできたのか少しばかり息の上がった声がする。
動きやすいようにスカートは軽さを重視してボリュームは控えめ。こんな格好をする人は1人しか知らない。
トーマスのお皿の横で積み上がっている賄賂からゆっくりと目線を移しながらその格好一つ一つを目で確認しながら顔を見上げると、思った通りシェーラが立っていた。
「クロスシード侯爵令嬢、奇遇ですね。お茶を飲む時間があるようなら、同席なさいませんか?」
「クロスシード嬢か!今日は学校も休んでいたのに本当に奇遇だね」
あわあわと口を震わしているだけの私を置いて、シーセルとトーマスがシェーラを私の横の椅子にエスコートする。
ーー実質の親玉登場じゃない!
周り一面をシーセルのファンで固められ、さらに敵味方はあれどシーセルのファンの行動を抑え込んでいるシェーラがそのど真ん中に乗り込んできた。
これは剣術大会に一緒に行くとか、誘いを断ったとか、いやもうそれこそ剣術大会に誘われていたとか、そもそも一緒にお茶しているとか、なにか逆鱗に触れて落とし前を取らされるのでは?と思うと震えが止まらない。
私とシーセルの結婚を望んでいるというのもどこまで本気で、どこまでを望んでいるのか読めないのも怖い。
「シェーラ様、今日はお会い出来ないと思っていましたわ。街に出ていらしたのですね」
周りの痛いほどの視線の中、シェーラに失礼な態度を取れるはずもなく、猫をかぶるしかない。
それが貴族であるし、それが階級制度の中でのマナーというものだ。
「あぁ。リーリエ、そんなに畏まらなくていい。変なことを言うヤツは私が喉元を掻っ切ってやるから普通に話せ」
「そ、そんなこと出来るわけないでしょー!」
シェーラはそれでもいいけど、私みたいな子爵家が間に受けて気軽に話しかければ、一生身の程知らずの無礼者扱いされて爪弾きにされる。
下級貴族の肩身の狭さを舐めてもらっては困るのだ。
リーリエは扇で口元を隠しつつ、シェーラにこっそりと耳打ちした。
これが私のできる抗議の精一杯だ。
0
あなたにおすすめの小説
婚約破棄に、承知いたしました。と返したら爆笑されました。
パリパリかぷちーの
恋愛
公爵令嬢カルルは、ある夜会で王太子ジェラールから婚約破棄を言い渡される。しかし、カルルは泣くどころか、これまで立て替えていた経費や労働対価の「莫大な請求書」をその場で叩きつけた。
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
「犯人は追放!」無実の彼女は国に絶対に必要な能力者で“価値の高い女性”だった
佐藤 美奈
恋愛
セリーヌ・エレガント公爵令嬢とフレッド・ユーステルム王太子殿下は婚約成立を祝した。
その数週間後、ヴァレンティノ王立学園50周年の創立記念パーティー会場で、信じられない事態が起こった。
フレッド殿下がセリーヌ令嬢に婚約破棄を宣言した。様々な分野で活躍する著名な招待客たちは、激しい動揺と衝撃を受けてざわつき始めて、人々の目が一斉に注がれる。
フレッドの横にはステファニー男爵令嬢がいた。二人は恋人のような雰囲気を醸し出す。ステファニーは少し前に正式に聖女に選ばれた女性であった。
ステファニーの策略でセリーヌは罪を被せられてしまう。信じていた幼馴染のアランからも冷たい視線を向けられる。
セリーヌはいわれのない無実の罪で国を追放された。悔しくてたまりませんでした。だが彼女には秘められた能力があって、それは聖女の力をはるかに上回るものであった。
彼女はヴァレンティノ王国にとって絶対的に必要で貴重な女性でした。セリーヌがいなくなるとステファニーは聖女の力を失って、国は急速に衰退へと向かう事となる……。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
[完]本好き元地味令嬢〜婚約破棄に浮かれていたら王太子妃になりました〜
桐生桜月姫
恋愛
シャーロット侯爵令嬢は地味で大人しいが、勉強・魔法がパーフェクトでいつも1番、それが婚約破棄されるまでの彼女の周りからの評価だった。
だが、婚約破棄されて現れた本来の彼女は輝かんばかりの銀髪にアメジストの瞳を持つ超絶美人な行動過激派だった⁉︎
本が大好きな彼女は婚約破棄後に国立図書館の司書になるがそこで待っていたのは幼馴染である王太子からの溺愛⁉︎
〜これはシャーロットの婚約破棄から始まる波瀾万丈の人生を綴った物語である〜
夕方6時に毎日予約更新です。
1話あたり超短いです。
毎日ちょこちょこ読みたい人向けです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる