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〈序章〉異世界からの迷子
蝶を追いかけた先は異世界。
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……この世界が本当かどうかは自分の目で確かめるまではおとぎ話かと思っていた。それがまさか現実に起きるなんて思っていなかった。これは運命の始まりにすぎない物語。とある少女と青年の話。
父は畑仕事に出かけ母親は家で子供を見ながら家事をこなしていた。当たり前の日常が続いていくはずだった。母が力の持つ者と知るまでは何ら変わらないどこにでもいる仲良し夫婦だった。母は異世界からこの地スウェーデン奥地の山間に現れ父と出会った。父は登山家でトレジャーハンターでもあった。二人は仲睦まじく日々の暮らしをしていた。そしてやがて子供を宿し新たな命を育んでいくことになった。エルフの血と人間の血を併せ持つ彼女キリは健やかに育ち小さくも5歳の誕生日を迎え元気に暮らしていた。そんな愛娘の成長を見守りながら二人は2人が出合った森の中に一軒家を建て生活を始めた。キリはエダに似て好奇心が旺盛でドコへでも走り回れるが少し目を離すと危険地帯まで行ってしまうためいつも2人が聞こえる範囲で遊びなさいと言いつけられていた。手首には小さな鈴をつけていて歩くと家の周りで音がして居場所を知らせた。それに母親も安心して外の仕事や中の仕事をしていた。
いつものようにご飯の支度をしてキリを見ているエダ。そこへ畑仕事を終えて帰宅してきた父リトにキリは勢いよく飛びついた。
「おかえりなさい!お父さん!!」
「おぉー元気か?キリ。」
「うん!お仕事お疲れ様ー!」
「あぁ、出迎え、ありがとうな。」
「ねえねえ、外出てもいい?」
「いいぞ、エダ、キリを外へ連れてくよ。まだ家の仕事が終わってないだろ?」
「いいえ、もう終わるわ、リト。久しぶりにみんなで散歩でもしましょうか。」
「おう、そうだな。行くか。」
ちょうどエダも料理が終わったようで3人で夕方の散歩に出かけることになった。キリはエダとリトの前を走り茂みに寝転んだりして一人でに遊ぶ子供の姿を夫婦は楽しげに眺めていた。
「ずいぶん大きく成長したな。」
「えぇ、前は小さかったのにね。」
「君との出会いは不思議だったんだ。彼女がキリがいつ不思議な力に目覚めるのも時間の問題とか心配してるんじゃないか?」
「リト…そうね、もともとは私、違う世界の人間なんだもの。」
少し思い詰めたように顔を暗くして答えるエダにリトは彼女の前に立ち手の甲に口付けをし彼女を慰めるように頭を撫でて髪をそっととがった耳にかけながら話しかけた。
「俺は魔法なんてものは使えないがあの子にはその素質はあるんだろ?」
「えぇ、だからこれからが心配なの。普通の子みたいに学校へ行って勉強ができるのだろうかってね。」
「大丈夫さ。俺がフォローしてみせるさ。」
「えぇ。」
「だからそんな顔はやめてあの子の成長を見届けよう。」
涙を流す彼女の目を拭いキリを見つめたが彼女の姿がドコにも見当たらず声をかける。
「あれ?キリ?」
「どうしたの?」
「いない。お前、あいつに鈴は?」
「今日は訓練って…散歩へ行く前にあなたが。」
「っと、そうだったな。まずいな…」
「とにかく探してみましょう?」
そろそろ日が暮れ出した頃、懸命に声を上げてキリの名を呼ぶが彼女はその頃小さな蝶々を追いかけて森の奥地へある洞窟へと足を踏み入れていた。届きそうで届かないその蝶に手を伸ばしながらたまにジャンプをしてみても届かずその蝶々を追いかけ洞窟を通り過ぎていく。その頃キリを探していたエダがふと何かを思い出したかのように呟いた。
「まさか、あの子この先の森へ行ったんじゃ!」
「危険すぎるな。最近じゃ生き物も出てこない場所だ。何かあると思って調査はしてみるつもりだったが早い目にしておけばよかったな。」
「急いでキリを探しましょう!」
「あぁ、そうだな。」
夫婦二人は総出で森に入りキリの名を呼んで探し回った。その最中エダはふと何かの気配に導かれるがまま一つの洞窟へ視線を向けた。
その頃キリは森の中を飛ぶ不思議な色をした蝶を追いかけていた。もう少しで手が届きそうでも届かない場所にいる蝶を追いかけてどんどん山奥へと入りいつのまにか洞窟を越え別次元へと超えていた。
ふわふわと飛び回る蝶を追いかけまた手を伸ばしかけたその時危険を知らせる声が聞こえた。
『危ない!』
その声にやっと我を取り戻したキリが下を見れば崖になっていて奥深い谷間に蝶が下りていった。追いかけることが無理になってようやく自分がどこかに迷い込み自分が今どの辺りにいるのかわからないでいた。草を踏む足音が聞こえ振り返ると小さな姿をしながらも醜い顔が印象的な生き物と出合った。その生き物はキリを見てにやりと笑みをこぼし手を差し伸べてくる。
『おいで、俺と帰ろう。』
「何を言ってるの?きゃ!!」
『ここは森、お前の行く場所はこっち。さあおいで。」
有無を言わさず腕を掴み連れて行こうと彼女の手を握り引きずってでも行こうとするその生き物がだんだん怖くなってきた彼女は拒否するように声を上げた。
「やだ!怖い!助けて、パパ!!」
その叫び声に慌てた生き物がキリの口を塞いで脇に抱えるとどこかへと連れて行こうとしていた。その時だった馬の鳴き声と走ってくる音が聞こえた。自分を投げ捨てるとその生き物が何かに向かって威嚇をしてる声が聞こえ始めた。だがそれは悲鳴に変わり怖くて目を瞑っていた彼女がそっと目を開けるとそこにはマントを着た男が血のついた剣を拭いながら立ち尽くしていた。そしてこちらに目を向けてきて怖がるキリに男は剣を納めてゆっくりと近づき視線を合わせるようにしゃがみ声をかけた。
「怖い思いをしたな。ほら、怖くないからおいで?」
手を広げ安心させるように声をかけてくれる。なぜか言葉はわかったのだ。キリは恐る恐るその手を取れば男は優しく微笑んでくれた。
「やあ、こんにちは。怪我はないかい?」
その問いに首を縦に振るキリを見てそうかと頭を撫でてくれた。そして急に抱き上げるもので焦ったキリは手足をばたつかせてみせた。
「おいおい、そんなに暴れちゃ落っこちるぞ?大丈夫だ、何もしないから。」
トントンと背中を優しく叩かればたつかせていた手足を止めてじっと男を見る。髭が生えたその顔は少しばかり老けていた。じっと見ていた男の元に馬が一頭ゆっくりと近づき嫉妬するかのように彼に鼻頭を押し付けてきた。
「お、何だ?嫉妬か?ジルバート。」
荒々しく鼻息を鳴らし前足で地面をかいていた。子供抱き上げたまま馬に近づきトントンと撫でてやる。興味津々に馬を見つめる彼女に男は声をかけた。
「なんだ?馬を見るのは初めてか?」
コクリと頷く彼女を見て急に自分より高い位置に抱き上げたかと思えば馬の背中へ乗せて自分もその馬へ乗った。するとまたどこからか馬のいななき声と足音が聞こえた。音のする方を見やればまだ自分よりは年上でも幼い青年の姿だった。
「シェードか。見廻りか?」
「ミハイル!こんな所にいたのか。みんなが探しているぞ。早く基地に…そのガキは?」
青年はミハイルと言われた男の腕の中にいる子供に目をやった。キリは不安そうにミハイルの腕にすがりついていた。そんな彼女の頭をそっと撫でたミハイルは答えた。
「ゴブリン族がここらにいるのはわかっていたが子供があいつらのおもちゃにされるのが嫌でな。つい、手助けをしてしまった。」
そう言うとシェードは呆れたようにため息を吐いた。
「なら、時期に仲間が死体の匂いをたどって集まってくる。騒動にならないうちに出よう。それにみんな心配してる。いなくなったから新入りの俺が探す羽目になった。」
「いい感を持つようになったな。シェード。その調子だとお前ももうじき見習い剣士では無く本当の剣士になれるだろう。俺は誇りに思う。」
「なぁ。早く行くぞ。みんなが待ってる。」
シェードと言われた青年は恥ずかしそうに鼻をかいて照れ臭そうにした。シェードを先頭に馬を歩かせミハイルが後方でキリを乗せてついてきていた。拠点へ近づくと見張りの1人の兵士が2人に気づいたのか他の兵士に声をあげる。
「おーい!ミハイルとシェードが帰ってきたぞー!」
皆はわらわらと集まり良かったなーと笑う奴、全くと呆れる奴の顔ぶりをキリはミハイルの腕の中で見つめていると1人が声をあげる。
「団長、そいつは?」
「あぁ。この森に迷い込んだ迷い人だ。おそらく来訪者だろう。」
「へー大分前から来訪者なんてこなかったんだがな。もう異界の門が閉じたと思っていた。それに珍しいのが混ざってるみたいだ。」
皆興味津々にこちらを見るためキリは恥ずかしさから顔をミハイルにくっつき顔を見せなくなった。困り果てたミハイルだがそんなそぶりを見せる彼女に周囲は笑いに包まれていった。
「はは!ずいぶんと懐かれているようだな!ミハイル!」
「まあな。危ないところを救ったからな。」
「ゴブリンにでも襲われていたのか?」
「あぁ。あのまま放っておけばいずれ危なかっただろう。」
そう言うと口々に子供に声をかける仲間達。無事でよかっただとかかわいい子だなとかそんな言葉がキリには聞こえていた。さすがに視線の的になっているキリをこれ以上いさせるのもかわいそうと思いミハイルはキリの頭にそっと手を置いて宥めると彼女はおもむろにミハイルを見つめた。彼は優しく微笑むと馬から下りてしまった。そして次に彼女を抱きかかえて下ろすとテントの中へと入っていった。彼女をテントへ入らせるなり視線を合わせるために跪いてくれた。
「さて、嬢ちゃんの名前を聞いていなかったな。お嬢さんお名前は?」
「……キリ。キリ・ブラント」
短くそう呟くと彼は笑顔を見せて頭を撫でて褒めた。
「良い子だ。君はどこに住んでいるかわかるかい?」
「スウェーデンの森の近くに住んでるの。」
「聞いたこともない名だな。やはり来訪者のようだね。」
「ねえ、お家へはどう帰るの?もしかしてもう帰れないの?」
泣きはじめた彼女を宥めてかわいい顔の涙を拭うとミハイルは優しくまた微笑み答えた。
「キリ、怖がることはない。今はもう夕暮れ時だ。親も心配しているだろうが帰してやれるのは朝になってからだ。」
「……じゃあどうすればいいの?」
「俺のテントにいなさい。ここならお前を守ってやれるから。約束だ、必ず、君を元いた世界へ帰そう。」
彼女と指切りをすると彼女は泣くのをやめてうなずいた。それをミハイルは褒めるように頭を撫でた。
「良い子だ。君は知らない土地でも肝が据わってるな。」
そう言われキリは不思議そうにミハイルを見だのだった。その後ミハイルのテントで温かなスープを飲み一息ついたキリは彼の仕事の様子を見ていた。そして今頃母親達は探しているのだろうかと不安にも思った。
父は畑仕事に出かけ母親は家で子供を見ながら家事をこなしていた。当たり前の日常が続いていくはずだった。母が力の持つ者と知るまでは何ら変わらないどこにでもいる仲良し夫婦だった。母は異世界からこの地スウェーデン奥地の山間に現れ父と出会った。父は登山家でトレジャーハンターでもあった。二人は仲睦まじく日々の暮らしをしていた。そしてやがて子供を宿し新たな命を育んでいくことになった。エルフの血と人間の血を併せ持つ彼女キリは健やかに育ち小さくも5歳の誕生日を迎え元気に暮らしていた。そんな愛娘の成長を見守りながら二人は2人が出合った森の中に一軒家を建て生活を始めた。キリはエダに似て好奇心が旺盛でドコへでも走り回れるが少し目を離すと危険地帯まで行ってしまうためいつも2人が聞こえる範囲で遊びなさいと言いつけられていた。手首には小さな鈴をつけていて歩くと家の周りで音がして居場所を知らせた。それに母親も安心して外の仕事や中の仕事をしていた。
いつものようにご飯の支度をしてキリを見ているエダ。そこへ畑仕事を終えて帰宅してきた父リトにキリは勢いよく飛びついた。
「おかえりなさい!お父さん!!」
「おぉー元気か?キリ。」
「うん!お仕事お疲れ様ー!」
「あぁ、出迎え、ありがとうな。」
「ねえねえ、外出てもいい?」
「いいぞ、エダ、キリを外へ連れてくよ。まだ家の仕事が終わってないだろ?」
「いいえ、もう終わるわ、リト。久しぶりにみんなで散歩でもしましょうか。」
「おう、そうだな。行くか。」
ちょうどエダも料理が終わったようで3人で夕方の散歩に出かけることになった。キリはエダとリトの前を走り茂みに寝転んだりして一人でに遊ぶ子供の姿を夫婦は楽しげに眺めていた。
「ずいぶん大きく成長したな。」
「えぇ、前は小さかったのにね。」
「君との出会いは不思議だったんだ。彼女がキリがいつ不思議な力に目覚めるのも時間の問題とか心配してるんじゃないか?」
「リト…そうね、もともとは私、違う世界の人間なんだもの。」
少し思い詰めたように顔を暗くして答えるエダにリトは彼女の前に立ち手の甲に口付けをし彼女を慰めるように頭を撫でて髪をそっととがった耳にかけながら話しかけた。
「俺は魔法なんてものは使えないがあの子にはその素質はあるんだろ?」
「えぇ、だからこれからが心配なの。普通の子みたいに学校へ行って勉強ができるのだろうかってね。」
「大丈夫さ。俺がフォローしてみせるさ。」
「えぇ。」
「だからそんな顔はやめてあの子の成長を見届けよう。」
涙を流す彼女の目を拭いキリを見つめたが彼女の姿がドコにも見当たらず声をかける。
「あれ?キリ?」
「どうしたの?」
「いない。お前、あいつに鈴は?」
「今日は訓練って…散歩へ行く前にあなたが。」
「っと、そうだったな。まずいな…」
「とにかく探してみましょう?」
そろそろ日が暮れ出した頃、懸命に声を上げてキリの名を呼ぶが彼女はその頃小さな蝶々を追いかけて森の奥地へある洞窟へと足を踏み入れていた。届きそうで届かないその蝶に手を伸ばしながらたまにジャンプをしてみても届かずその蝶々を追いかけ洞窟を通り過ぎていく。その頃キリを探していたエダがふと何かを思い出したかのように呟いた。
「まさか、あの子この先の森へ行ったんじゃ!」
「危険すぎるな。最近じゃ生き物も出てこない場所だ。何かあると思って調査はしてみるつもりだったが早い目にしておけばよかったな。」
「急いでキリを探しましょう!」
「あぁ、そうだな。」
夫婦二人は総出で森に入りキリの名を呼んで探し回った。その最中エダはふと何かの気配に導かれるがまま一つの洞窟へ視線を向けた。
その頃キリは森の中を飛ぶ不思議な色をした蝶を追いかけていた。もう少しで手が届きそうでも届かない場所にいる蝶を追いかけてどんどん山奥へと入りいつのまにか洞窟を越え別次元へと超えていた。
ふわふわと飛び回る蝶を追いかけまた手を伸ばしかけたその時危険を知らせる声が聞こえた。
『危ない!』
その声にやっと我を取り戻したキリが下を見れば崖になっていて奥深い谷間に蝶が下りていった。追いかけることが無理になってようやく自分がどこかに迷い込み自分が今どの辺りにいるのかわからないでいた。草を踏む足音が聞こえ振り返ると小さな姿をしながらも醜い顔が印象的な生き物と出合った。その生き物はキリを見てにやりと笑みをこぼし手を差し伸べてくる。
『おいで、俺と帰ろう。』
「何を言ってるの?きゃ!!」
『ここは森、お前の行く場所はこっち。さあおいで。」
有無を言わさず腕を掴み連れて行こうと彼女の手を握り引きずってでも行こうとするその生き物がだんだん怖くなってきた彼女は拒否するように声を上げた。
「やだ!怖い!助けて、パパ!!」
その叫び声に慌てた生き物がキリの口を塞いで脇に抱えるとどこかへと連れて行こうとしていた。その時だった馬の鳴き声と走ってくる音が聞こえた。自分を投げ捨てるとその生き物が何かに向かって威嚇をしてる声が聞こえ始めた。だがそれは悲鳴に変わり怖くて目を瞑っていた彼女がそっと目を開けるとそこにはマントを着た男が血のついた剣を拭いながら立ち尽くしていた。そしてこちらに目を向けてきて怖がるキリに男は剣を納めてゆっくりと近づき視線を合わせるようにしゃがみ声をかけた。
「怖い思いをしたな。ほら、怖くないからおいで?」
手を広げ安心させるように声をかけてくれる。なぜか言葉はわかったのだ。キリは恐る恐るその手を取れば男は優しく微笑んでくれた。
「やあ、こんにちは。怪我はないかい?」
その問いに首を縦に振るキリを見てそうかと頭を撫でてくれた。そして急に抱き上げるもので焦ったキリは手足をばたつかせてみせた。
「おいおい、そんなに暴れちゃ落っこちるぞ?大丈夫だ、何もしないから。」
トントンと背中を優しく叩かればたつかせていた手足を止めてじっと男を見る。髭が生えたその顔は少しばかり老けていた。じっと見ていた男の元に馬が一頭ゆっくりと近づき嫉妬するかのように彼に鼻頭を押し付けてきた。
「お、何だ?嫉妬か?ジルバート。」
荒々しく鼻息を鳴らし前足で地面をかいていた。子供抱き上げたまま馬に近づきトントンと撫でてやる。興味津々に馬を見つめる彼女に男は声をかけた。
「なんだ?馬を見るのは初めてか?」
コクリと頷く彼女を見て急に自分より高い位置に抱き上げたかと思えば馬の背中へ乗せて自分もその馬へ乗った。するとまたどこからか馬のいななき声と足音が聞こえた。音のする方を見やればまだ自分よりは年上でも幼い青年の姿だった。
「シェードか。見廻りか?」
「ミハイル!こんな所にいたのか。みんなが探しているぞ。早く基地に…そのガキは?」
青年はミハイルと言われた男の腕の中にいる子供に目をやった。キリは不安そうにミハイルの腕にすがりついていた。そんな彼女の頭をそっと撫でたミハイルは答えた。
「ゴブリン族がここらにいるのはわかっていたが子供があいつらのおもちゃにされるのが嫌でな。つい、手助けをしてしまった。」
そう言うとシェードは呆れたようにため息を吐いた。
「なら、時期に仲間が死体の匂いをたどって集まってくる。騒動にならないうちに出よう。それにみんな心配してる。いなくなったから新入りの俺が探す羽目になった。」
「いい感を持つようになったな。シェード。その調子だとお前ももうじき見習い剣士では無く本当の剣士になれるだろう。俺は誇りに思う。」
「なぁ。早く行くぞ。みんなが待ってる。」
シェードと言われた青年は恥ずかしそうに鼻をかいて照れ臭そうにした。シェードを先頭に馬を歩かせミハイルが後方でキリを乗せてついてきていた。拠点へ近づくと見張りの1人の兵士が2人に気づいたのか他の兵士に声をあげる。
「おーい!ミハイルとシェードが帰ってきたぞー!」
皆はわらわらと集まり良かったなーと笑う奴、全くと呆れる奴の顔ぶりをキリはミハイルの腕の中で見つめていると1人が声をあげる。
「団長、そいつは?」
「あぁ。この森に迷い込んだ迷い人だ。おそらく来訪者だろう。」
「へー大分前から来訪者なんてこなかったんだがな。もう異界の門が閉じたと思っていた。それに珍しいのが混ざってるみたいだ。」
皆興味津々にこちらを見るためキリは恥ずかしさから顔をミハイルにくっつき顔を見せなくなった。困り果てたミハイルだがそんなそぶりを見せる彼女に周囲は笑いに包まれていった。
「はは!ずいぶんと懐かれているようだな!ミハイル!」
「まあな。危ないところを救ったからな。」
「ゴブリンにでも襲われていたのか?」
「あぁ。あのまま放っておけばいずれ危なかっただろう。」
そう言うと口々に子供に声をかける仲間達。無事でよかっただとかかわいい子だなとかそんな言葉がキリには聞こえていた。さすがに視線の的になっているキリをこれ以上いさせるのもかわいそうと思いミハイルはキリの頭にそっと手を置いて宥めると彼女はおもむろにミハイルを見つめた。彼は優しく微笑むと馬から下りてしまった。そして次に彼女を抱きかかえて下ろすとテントの中へと入っていった。彼女をテントへ入らせるなり視線を合わせるために跪いてくれた。
「さて、嬢ちゃんの名前を聞いていなかったな。お嬢さんお名前は?」
「……キリ。キリ・ブラント」
短くそう呟くと彼は笑顔を見せて頭を撫でて褒めた。
「良い子だ。君はどこに住んでいるかわかるかい?」
「スウェーデンの森の近くに住んでるの。」
「聞いたこともない名だな。やはり来訪者のようだね。」
「ねえ、お家へはどう帰るの?もしかしてもう帰れないの?」
泣きはじめた彼女を宥めてかわいい顔の涙を拭うとミハイルは優しくまた微笑み答えた。
「キリ、怖がることはない。今はもう夕暮れ時だ。親も心配しているだろうが帰してやれるのは朝になってからだ。」
「……じゃあどうすればいいの?」
「俺のテントにいなさい。ここならお前を守ってやれるから。約束だ、必ず、君を元いた世界へ帰そう。」
彼女と指切りをすると彼女は泣くのをやめてうなずいた。それをミハイルは褒めるように頭を撫でた。
「良い子だ。君は知らない土地でも肝が据わってるな。」
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