ウルフカーバン帝国

紀利クルーガー

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〈第一章〉出会いと冒険

トレジャーハントキリ

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スウェーデンの奥地、ここは彼女が暮らしていた場所。トレジャーハントとして戻ってきた彼女は異世界へと誘われる。彼女が5歳の頃の話はこの前にしたがそれから数十年と時が流れキリ自身が成人になってからの出来事。
風が酷くカタカタと窓をノックするように吹き荒れる家の中でテントをはり狼を横に寝転ばせて本を読んでいたキリは誰かが入ってくる気配に視線を向けず声をかける。
「何か見つけたの?ダリエル。」
「いいや、ただ君の顔を見に来た。また本を読んでいるのか?」
「あぁ。」
「名前は~穂希仁の冒険禄。こんなのどこで?」
「昔住んでいた家にあったの。」
と冷たくあしらいまた本へ集中するがそれを阻止するようにダリエルと言われた男がすり寄る。その行為にうんざりしながら受け入れているが行為が及ぶ前にすぐそばに置いていた銃を手にして彼に突きつけた。
「今は任務中、仲良くおねんねしたければ任務が終わってからにして」
と脅しを欠けると彼は悔しがるようにテントから出て行きキリはまた読書へふけりだしまた溶けるように時間が過ぎていった。
彼女が今調査している場所はかつて家だった場所の残骸。大きな災害に見舞われこの場所も大きく地形が変化してしまった。キリが探しているのは父が探していた彼の刀剣、穂希仁がこの地で隠したとされる刀剣を見つけるのが任務だった。
彼女が20歳を過ぎた頃父親のリトはこの世を去った。凍える冬空の最中登山してトレジャーハントをしていた時に不慮の事故で転落してしまいそのまま帰らぬ人となった。遺書たるものは無かったが彼の残したこの本三冊だけが彼女を突き動かす動機には十分だった。それを頼りにキリは大学を出て父親の意志を継ぐようにトレジャーハントを目指した。そしてこの本を読み始めたのだ。一体彼がこの世界に行ってどんな旅をしたのかどんな出会いをしたのか知れば知るほど面白くなった。ダリエルとは数年前に出合い恋中ではあっても彼からの一方的な求愛が多くキリはうんざりしていた。もちろん、恋愛になど興味すら持たない彼女からすればうざったい男である。
ダリエルは金持ちである父親の客人として来訪していたキリを酷く気に入り父に妻にするため交渉を飲むよう頼んだのだ。父親はいくら昔のよしみである男の娘だとしてもありもしないお伽話の刀を見つけるなど無駄なこと、と考え始めは協力者になる事を断り冷たくあしらった。だが自分の息子の頼みとなれば別だった。実子にして一人息子、小さい頃から夢はなんでも叶えてきていた。返答を聞いたときには初めの冷たくあしらう態度とは違い素直に協力に応じたのだ。交渉相手の行動にキリは初めすら喜んだが後でダリエルの思惑と知った。だがここで断れば今までの交渉も破綻することになると知り大人しく従うことにしたのだった。
気分屋だが彼女の行く先々の手配はしてくれて調査もキリとダリエルのみ。他は勧誘しないというのが条件で彼を世界各国へと連れ回していったのだ。初めは彼も嬉しそうについて行くがだんだん彼女の行く先々でいざこざが起きるとそのたびに彼女を盾に逃げていた。でもキリは一様相棒であるダリエルを敵襲である盗賊や妙なマフィア連中から守り抜いていた。今では彼女の名は裏社会で有名である。
そんな彼女の長年相棒を務めている狼がいる。名はハティ。スウェーデンの神話に出てくる狼に似ていると言うことからそう親であるリトが名付けてくれた。周りには狼のような犬と言っているが獣医からは口外しないよう口止めされていた。彼女ハティは凜々しく勇猛果敢で心強い相棒だった。遠い昔誰かに聞かされたお伽話は自分しか知らず神の使いが自分の元へ来てくれたのだと今もキリは信じていた。
翌日になり日記の調査もかねて森の中へ入り調査を開始、黙々と進んでいく後ろをダリエルがふらふらになりながらついて行く。日記を頼りに森に異常が無いかを確かめに来た。
「一体こんな所に何があるってんだよぉーキリ。」
「ぐだぐだ言ってないで、着いてきて。」
日記ではこう書かれていた。森に生き物の気配や異様な霧が出るときそれは異世界への入り口と言うこと…小さい頃に1度だけ自分は迷子になったことがある。それだけは覚えていて何かに導かれるようにどこかへと行ったのは覚えているがそれ以外は何も覚えていなかった。その道順を忘れているかと思って来てみたが何故か道筋を覚えていたキリはあっという間に洞窟の前にたどり着いた。緑苔がたくさん生えて奥は暗く湿気が立ち込めていた。
「こ、この中を照らすのか?」
「そうだ。ついてきて。」
キリは恐れることなく懐中電灯を灯し中へと進んだ。湿気た洞窟には暗闇とネズミの鳴き声しかしなかった。しばらく歩いていると行き止まりにたどり着いた。洞窟の奥深くには白骨死体やら色々と転がっていた。その中を進むと水がしたたる場所が姿を現した。一体どんな場所なのかと水に手を入れると少し冷たさを感じた。
「ただの水たまりにしては大きくないか?」
「さあね。もっと奥に何かあるかもしれない。行ってみよう。」
そう言って進んでいると開けた場所に出て目の前に鳥居と小さなお堂があった。壊れかけのお堂を見てダリエルは怖がりながらも近づこうとするキリに声をかけた。
「な、なあ!危ないんじゃ…」
「ちょっと確認するだけよ。心配しないで、ダリエル。」
鳥居をくぐり小さなお堂に近づくと淡く緑に光る者が見えた。それを手に取ると勾玉が光輝きより一層輝いて見せた。驚いたキリはその勾玉を落としお堂から引き下がった。
「何だ?それ…」
「日本にあると言われている勾玉よ。一体どうして、こんなスウェーデンの奥地に神社まであるの?しかも、今光った…」
「さあね。とにかく今わかるのは、逃げよう。ここから!嫌な予感がする!!」
「…汝、このお堂をみつけし時、異空間の扉開かん…」
お堂に彫り込まれた言葉を読むとどこからかゴトンという音が聞こえ地響きがなり始めた。その音に警戒してキリは落とした勾玉を手に取りダリエルに逃げるよう言った。
「逃げよう。何か、良くない事が起きる。」
「そうだな。賛成だ。」
「ハティ?どうしたの?おいで!」
お堂前に立ち尽くし何か気配を感じているのか耳を立ててその場から動こうとしなかった。だが手段としてキリは口笛を鳴らせばその音にやっと反応してキリとダリエルのもとへ向かい始めた。洞窟をゆっくりと闇を照らしながら進んでいるとどこからか地鳴りにも似た音が聞こえ始めた。
「なんの音?」
と声をかけるキリにダリエルは
「わからない」
と首を振る。すると何かに気付いたのか狼のハティが暗闇に向かって吠え出した。
「なあ、キリ。一体なんだと思う?」
「さあ、でもあまりよくないものとしか思えないね。走って!!」
その地鳴りは大きくなり水へと変貌した。走って逃げようとキリが声を掛けてなんとか逃げてはいるものの一向に先ほど入った出口にはたどり着けない。
「なあ!この道本当にさっきの道か!?」
「さあね!うわ!!」
「キリ!!」
濁流から逃げるもそれは叶わず2人と一匹は濁流に呑み込まれてしまった。
息もままならず苦しみもがいているダリエル。キリはどこかに繋がる水の通り道があるかと落ち着いて調べてみることにした。懐中電灯を使って辺りを照らすキリは木の棒が瓦礫に挟まっていることに気づいた彼女はそれを掴み勢い任せにそれを引き抜いた。瓦礫が崩れて死んでも可笑しくないがそれを抜いた途端一気に水がその抜いた隙間から流れ始めた。それを利用してキリは木の棒を瓦礫に突き刺してはどける事を繰り返している内に瓦礫が崩れ水と共に2人と一匹は流れ落ちたのだった。水中でなんとか意識を失ったダリエルを抱えたが体力がないため近づいてきてくれたハティに捕まり岸辺へと運んでもらった。そこで彼と自分の体を引き上げるとそこで力尽きて意識を手放した。
ドーンっと水柱が上がり湖の近くにいた女性は驚いて見つめているとその湖から女が男を連れて這い上がってきたのだ。その光景に驚きながらもそっと木の上から降りて来て2人に近づいた。その2人をのぞき込む水色髪の女性は物珍しそうに見つめ小さく呟いた。
『あら…来訪者だわ。』
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