ウルフカーバン帝国

紀利クルーガー

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〈第一章〉出会いと冒険

人狩り吟遊詩人

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馬を歩かせて数キロ歩いた場所に小さな村を見つけた。村の入り口を通ればどこか古びすぎて人々も貧しそうだった。少々古びた家々の中に酒場が一つありそこで一休みすることを後ろで見ていたダリエルが提案してきた。
「ふむ。あそこに酒場があるな。こういう場合酒場で情報を収集した方がいいんじゃないか?」
「そうね、ダリエル。じゃ何も言わず私についてきて。」
釘を刺すように言うと馬を下りた。馬は賢いのかキリ達を下ろすと森の中へと消えていった。グラニ、という馬を呼ぶときはどうしたら良いのだろうかと考えながらも酒場へと2人は向かうことにした。酒場はこじんまりしていながらも賑わっていた。中に入れば武器を持った武将ひげを生やした男達の姿だった。キリは者ともせずにカウンターの女に声をかけた。キリのそばを狼であるハティは離れず辺りを警戒していた。
「こんにちわ、ここは一体どの辺りになるのか教えてくれない?」
そう訪ねると無愛想にジョッキを二つ取り出しキリとダリエルの前に置いた。そして答えてくれた。
「ここはウルフカーバン帝国の町外れの村、ギュリ村ってんだ。」
「へー、これは何?」
「これはこのギュリ村で採れたぶどう酒さ。味は保証するよ。」
「本当だ!うまい!!」
純粋に酒を飲み干して言うダリエルにキリは呆れた顔をして睨んだ。だがそれで気を良くしたのか酒場の奧さんは笑顔を向けてきて聞いてきた。
「あんたら見たところ旅人だね。その狼を連れてるって事はそうなんだろう。」
「狼ってすぐわかるんだ。どうして?」
「そりゃそうさ。ここにいる世界の皆が連れているんだもの。」
「そうなのか。」
と話酒を一口飲んだ。すると何か違和感を感じたのか酒を見つめる。そして周囲の男達にも変化が訪れた。自分達の逃げ場がないように入り口を固め始めたのだ。キリは素知らぬ顔でその飲み物を口から吐き出し奧さんに聞いた。
「ねえ一つ聞きたいんだけどあんた達人売りか何か?」
その言葉に女の顔つきはすぐに代わり焦ったような表情を見せる。周囲の男が武器を持って近づいてきた事に気づくとキリはため息を吐いた。
「はあ、そんなことだろうと思った。見たところこいつらに言うことを聞かされているんだろ?奧さん?」
そう言うとキリは背後にいた男達に向き直った。ダリエルはというともうすでに居眠りをこいていた事に気づくとキリは何も武器を持たずに腕を構え直した。
じりじりと近づいてくる男達に一切隙を見せずに睨んでいると男の一人が彼女を宥めるように声をかける。
「お嬢さん、悪いことは言わねえ。とっ捕まれば楽なんだぜ?」
「そうそう、人に売りつけると言っても女は娼婦に、男は重労働に尽かすだけさ。」
「まあ、あんたのようなべっぴんさんを抱けるなんてめったにねえがな。」
「四の五の言わずに掛かってきたら?まるで子供みたいなあおり方だ。」
冷酷な返しに頭にきた一人の若い男が顔を赤くして怒り怒号を浴びせた。
「んだと!!このアマ!!」
独りが酒瓶を持ってキリに殴りかかったがそれを簡単に受け止めると足を払って地面に転げさせた。普段怖がってすぐに捕まる女のはずがなかなかの手練れに怖じ気づく男達は距離を取った。
「さあ、次はどいつが相手?」
煽るように手招きをすると独り、また独りと男達が襲いかかってきた。キリは得意のジークンドウであっという間に伸していったがその途中、眠りこけたダリエルを人質に取られてしまった。
「う、動くな!!こいつがどうなってもイイのか!!」
ナイフを向けた男が叫んだ。その声で勢いづいてたキリの動きが止まりその男を見据える。男は余裕になったのか笑みを浮かべて金歯を見せるとキリにこう言った。
「両手を上に上げて膝をつけ!そうすりゃ、こいつは見逃してやるよ。」
「ち…」
キリは言われたとおりそうするために両手を挙げ跪いた。そんな騒動など知らずにまた店の扉が開いていた。そんなことを気にせず男はキリに近づき、じとじとっと体を見つめ顔を見つめた。
「へへ、物覚えがいいな。お前はこのまま俺が飼ってやってもいいんだぜ?奴隷になるよりここにいる連中の慰めになればいいだろ?なあ、どうだ?」
顔を近づけそう言う男にキリは何も言わず顔をそらすがあまり抵抗をしすぎるとダリエルに被害が及ぶため大人しくしていた。今度は男が体を触ろうとした瞬間のことだったどこからか酒瓶が飛んできて男の頭に直撃した。
「いだ!てえな!何しやがる!!」
「あんたらこそ、こぞって良い度胸だね。全員ここにいたなんて驚きだわ。おかげで探るテマが省けた。」
男が怒鳴る先に視線を向けたキリ。そこには背の高い女が酒瓶を片手投げして入り口付近に立ち尽くしているのが見えた。
「お、お前は………人狩り吟遊詩人!!」
「人聞きの悪い。ただの冒険者だよ。それにしてもあんた、強いね!今なら本気出せるんじゃない?私は味方って思ってくれて構わないよ。」
そう言って酒瓶を放り投げその割れた音が合図となりキリが口笛を鳴らすとダリエルのそばにいた狼ハティがキリの近くにいた男の腕に噛みついた。痛みで叫び声を上げる男をよそに別で襲ってきた男の攻撃を避けていた。途中参戦の彼女もキリに近づいてきながら攻撃してくる男達を蹴りや弓を使って対処していった。
最後の独りを互いのパンチで倒すと息切れをしながら見つめ合って笑顔を見せた。
「あんた、総統の手練れだね。」
「剣やナイフは初めてだけど、慣れてるんだ。」
「どういうこと?」
「忘れてくれ。それより、助かった。ありがとう。」
「いいのよ。ちょうど人売りを探ってた所だったの。」
「調査してたのか?」
「えぇ、こいつらが娼婦に出入りして女を売りつけたり男を重労働へとかり出したりしているのを依頼で聞いてね。」
下に伸びている男の頭を掴み上げ睨み付ける女。男は怖がってすみませんしか言っていなかった。
「す、すみみゃしぇん・・・もうしやせん・・・」
「だめだ。あんたらは一緒に冒険者ギルドから王都に引き渡さなきゃならない。」
「冒険者ギルド?」
「おや?知らないのかい?ここらの治安を少しでも良くしようと活動してるギルドのことさ。情報が欲しかったりしたらこんな酒場より、ギルドにいた方が集まるってものだよ。」
「そうだったのか。旅の途中で何も知らないんだ。」
女は何か思い着いたのかキリの顔をもっとよく見つめ笑うと答えた。
「あんた、うちのギルドに来ないかい?」
「は?」
「ここじゃまた変なのが屯するかもしれないからね。安全を考えたいなら私についておいで。」
「だ、だけどいきなり見ず知らずの私達が行って良いのか?」
「良いってギルドの旦那には私から話すから。それにそこで伸びてる知り合いも安全なところで寝かせたいだろ?」
そういってカウンターの方を見る女につられキリもカウンターへと視線を向けた。そして眠りこけているダリエルを見つめため息を吐いた。ため息を吐くキリをクスッと笑って伸びてる連中のそばを通りカウンターにいる酒場の女に声をかけた。
「世話をかけたね。こいつらを引き渡すために荷車が一つほしい。馬はこっちが持ってるから。これで譲ってくれないかい?あと縄も。」
そう言って資金をカウンターに置くと女は首を縦に振った。
「も、もちろんです!でも、私も罪人なのでは?」
「一般市民のあんたらを脅迫して従わせたこいつら人買いどもが悪い。王都ではあなた達もそうなるって言うが私はそうは思わない。これでしばらくは安全に店をやっていけるだろう。」
「ありがとうございます!」
「何か騒ぎがこの後合ってもなんだ。ギルドに帰ったらここのお酒うまかったと広めておくよ。」
「確かに、薬入りじゃなければ絶品だよ。また自分の旅が落ち着いたらよらせてもらうよ。」
「はい、あなた達には本当に悪いことをしたね。」
「いいって、あんたの目が私を突き動かしたんだよ?」
 店の亭主にそう微笑みかけたキリに冒険者の女はまた声をかけてきた。
「さて、あんた馬はあるのか?」
「あぁ、自分のを持ってる。」
「まあそれじゃ大丈夫か。手伝ってくれ、こいつら全員ギルドに連れて行くぞ?」
「わかった。なあ、あんた名前を聞いていなかった。私はキリ・ウルク。あんたは?」
「私かい?私はルナ・リア。あんた達もただ者じゃない気配はするね。長年の私の感がそう言ってる。」
「感・・・」
「さ!手伝ってくれ!」
少し強めに背中を叩かれ変な事を言うルナという女にキリは顔をしかめ首をかしげたが気にせず伸びている連中を順序よく縛っていく。そして全員荷車に乗せると酒場の女に挨拶をして村を出た。
「じゃあね!」
荷車を揺らしながら冒険者ルナと冒険者ギルドへ行く事になった2人だった。
眠りこけて全く起きないダリエルをルナの馬が引く荷車に乗せ呆れた様子でその男を撫でるキリ。ルナはそんな彼女を見て話しかけてくる。
「恋人?それとも友達?」
「さあね、どっちなのかも私はわからないわ…けど、長年一緒に無理やってきたから相棒もいいところなんだけど。」
「ふぅーん…てっきり恋人かと思ったよ。」
「な!そんなんじゃない。仕事の仲間よ。仕事仲間!」
「はは、ごめんごめん。少し関係が気になっただけさ。」
照れた様子はなくそう言い張るキリにルナが謝っていると前方に見えた大きめの建物を発見すると指を指して話題を変えた。
「ほら、もうついた。ここが我ら冒険者ギルドの拠点地点。ホリホック亭だ!」
前方に見える大きな木の門をくぐるとそこにはいろんな冒険者やいろんな色をした狼がいた。その光景を目にしたキリは目を輝かせて辺りを見渡した。
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