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〈第二章〉初めての依頼
2人はまた再会する
しおりを挟むこの世界ではあらゆる問題があるが一番深刻化しているのは邪悪な異形が闊歩するようになったことだ。魔物退治は前からあったが枯れた大地には魔力は宿らず負の溜まり場になっている。そこから魔物が生まれ人々に危害を加え困らせているのだ。その魔物たちを払うために結成された冒険者達は賞金をかけられた猛獣や魔物を狩ろうと躍起である。
キリがこの世界へ来てもう半年になる頃、一度王都でいざこざがあってからは王都には近づかず単独で旅をしていた。何度か魔法を使ってみせるがハティのようにうまくいかず魔力がつきてしまい何度かハティに助けられたことがあった。今回も大きな雄熊の退治の依頼を受けていた。
「ぐおぉぉ!」
「うわ!やば!」
キリは熊の攻撃をもろに受けてしまいなんとか倒したものの治癒もままならず応急処置だけしてホリホック亭へ帰る途中だった。ハティも相当疲れているようでグラニに歩かせて酒場を目指している途中で茂みに倒れ込んでしまったキリ。音に気がついてハティが近づき心配の声を上げキュウキュウと鳴く声にキリは小さく落ち着くようなだめる。
「大丈夫だから、少し疲れただろ?休もう。」
そう言うと素直にキリのそばに寄り添うように寝転んだハティ。馬であるグラニもまた彼女の背後に伏せて寝転がった。木々がざわめき昼過ぎを回った頃だろうか、小鳥の囀りに耳を傾けながらいるとどこからか馬の足音が聞こえた。そっとその足音の方へ視線を向けたが視界がかすれて誰なのかもわからないがその人物は馬から下りると慌ててこちらへ近づいてくるのがわかった。その頃ホリホック亭でキリの帰りを待っていたダリエルは頬杖をついて帰りを待ち望んでいた。
「遅いなー、キリ。」
「きっとすぐに帰ってくるさ。それにあんたが作ったご飯いっつも食べていってんだ。大丈夫だよ。」
「それがさ、あいつ夜通し何かを外でしてるみたいなんだ。それが気になってさ。」
「そうなのかい?」
のんきにマーサと会話をしていたダリエルだが外から馬の嘶きが聞こえ驚いた二人は外へでると珍しく門番のオルムが斧を構えて睨む人物達にマーサも騒然としながら口調を変えて怒ったように聖騎士団を睨んで腕を組み偉そうな態度を取って警戒した。
「おやおや、誰かと思えば。王都の騎士団様じゃないか。一体そんな連中がウチに何の用だい?」
「すまない、ここらで男を見かけなかったか聞きたいだけだ。君たちの仕事を邪魔するわけじゃ無い。」
「それで?探してる男ってのは?」
「俺らの団長ですよ。マダム。」
優しげに微笑むアレルにマーサはぷいと向こうを向き反論する。
「はん、青二才にマダムなんて言われたか無いね。」
今度はアーサーがアレルをどけて頼み込んできた。
「少しでも情報が欲しいだけなんです!ある日突然いなくなって、もう三日にもなるのに。」
「ふむ、団長さんが行方不明とは置いてかれでもしたかい?うちにはそんな情報がてんで入ってこないよ。」
そう付け足し酒場にいる冒険者に投げかけ笑いを促せば彼らも笑い出して騎士団をあざ笑った。そんな笑いにも怒らず付け足すようにウォルターが話し出した。
「団長と言っても元だがな…俺たちにとっては大事な存在なんだ。」
「ふぅーん…まあ、そのうち情報が流れてくるかも知れない。知らせをよこすから今日のとこは帰ってくれ。」
「いや、ここで泊まらせてくれ。」
「はぁ、わかってんのかい?宿泊ってことは色々とこの店を手伝ってもらうんだよ?それでもあんた達の上は許可とっているのかい?」
「とっている。頼む、団長を探すだけだ。」
「マーサさん、こいつら泊めるんですか?!」
「そうだよ、ダリエル、人数分の寝床と部屋の準備だ。早くしな!」
「は、はい!!」
言い訳を許さず少し怒った様子でマーサはそう叫んだ。門番であるオルムは普段の仕事へと戻って行った。
その頃ようやく目を覚ましたキリは虚な瞳で星空を見上げていた。呆然と見ながらゆっくり起き上がろうとすると背中と脇腹に激痛が走った。
「まだその調子では安静にしていろ。」
急にかけられた声に視線をやるとシェードがハティを触りながら焚き火の近くに座っていた。キリは驚いたようにシェードを見やるが彼はキリを見ようともせずハティを触り笑顔を浮かべていた。いつもは他の人に懐かないハティがシェードに気を許しているのはどうしてだろうと思っているとシェードが心を読むように尋ねた。
「どうしてこの狼が俺に懐いたか知りたいのか?」
「普段はあまり人に懐かない性格だからね、是非知りたい。」
「お前を助けたからだ。」
「え?それだけ?」
拍子抜けして言うとシェードは立ち上がってキリのいる所へ近づいてきた。何をされるのかと警戒するが彼は跪いて手を彼女の腹部辺りにかざすと黒い光と共に痛みが消えていったが同時に力が抜けていくのを感じたキリはまだある体力でシェードの腕を持って怒った。
「何を、したの?」
「安心しろ、治癒魔法をかけただけだ。俺が見張るからお前は眠っていろ。また明日な。」
「こんなの、聞いてない…」
「ずいぶんと強情だな。身を任せてみろ。すぐにお前の傷はよくなる。」
背中を優しく撫でられつかみかかった腕の力も抜け保っていた意識も手放してしまったキリ。それを見届けたシェードは少しばかり激痛を我慢するように耐えると大きくため息を吐いた。彼女を簡易寝床へ寝かせると自分もその隣に寝転び彼女の寝顔を見つめうっすらと思い浮かぶ記憶を思い出していた。
「は、まさかな。あいつがここにいるわけない。」
遠い遠い記憶の中にいるキリの姿と今の彼女の姿が違いすぎて気づいていないが今のこの時をもって二人はまた再会を果たしていた。
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