ウルフカーバン帝国

紀利クルーガー

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〈第二章〉初めての依頼

彼女の力とは

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翌朝、元気になったキリは馬に乗ってとある場所を目指していた。それになぜか付き合うことになったシェードは不貞腐れながらも目の前で楽しそうに馬を歩かせる元気な姿になぜか釘付けになった。ようやくたどり着いたのは夕方すぎだったそこの湖は綺麗で清んでいて穏やかに風が波をうっていた。その場所に少し不思議に思うシェードだがキリはその場所に降り立つと声を上げて誰かを呼んだ。
「ルリー?いるー?」
だが読んでも返事はなくただ静けさがあった。彼女がいないことがわかると少し落ち込んだように呟いた。
「やっぱりいないか。」
「誰を呼んでいたんだ?」
キリにそう訪ねたシェードにキリは隠すこともなく答えてくれた。
「私の恩人だ。あんたには私の素性を話していなかったな。私はこの湖から墜ちてきたんだ。」
「墜ちてきた…だと?」
「そう。なぜか右手にこの刀を持ってね。この刀にも助けられたし相棒のハティも優秀で頼りになる子だ。」
刀を見つめそう言いつつもハティを撫でてみせる。シェードは何かを思ったのか不意に違う話を切り出した。
「お前はその生活に満足しているのか?」
「えぇ、ちょっと大変だけどね。」
「そうか。俺とは別の生活でさぞうらやましい。」
「そうなの?」
改めて思うと一階級の騎士団長がこうして自分と共に訳もなくお供してくれている方がおかしかった。なぜ自分といるのか気になり話しかけた。
「ねえ、どうして私についてきたの?今の生活が不満なの?」
「あぁ、不満といえばそうなるな…」
「ふぅーん…一階級の騎士様がそんなこと言うんだ。脱走は得意とみて良いわね。」
「なぜバレたんだ?」
「ふふん、顔に書いてあるから。」
体制を後ろへひねり振り返りざまにシェードと顔の距離を縮めて意地悪い笑みを浮かべたキリは煽るように話した。シェードは心を読まれたのかと少し下がったがキリは無邪気に笑みを浮かべながら先へと歩いて行く。そんな彼女をシェードは引き留め声をかけその場に跪いた。
「あなたこそが探し求めていた巫女だ。どうか、我らと共に来てもらえるだろうか?」
「我らって?」
「我ら王都、ウルフカーバン帝国の王は今病に伏せっていらっしゃる。代行の者が指揮を執り治安を維持している。」
「それと私にどう関係があるっていうんだ?」
「お前ならこの病を治せるほどの力があるだろう。」
「だがそれはあの時だけだ。」
「俺が王の傷を癒やすよりお前が治癒魔法を使った方が王は病から打診出来る。」
「あなたも癒やし手だったら私はいらないじゃない。」
「そんなことは!!!」
急に言葉を遮ったのはハティとスコルが同時に違う方角に向かって吠えたからだ。牙をむいて吠える方向を見れば無数の小さくも醜い姿。威嚇をするようにその醜い姿は近づこうとするがハティ達により近づけずにいた。無数の化け物に警戒してキリは剣を抜いて警戒した。
「あれは何?」
「あれはゴブリンだな。こんな神聖な場所にまで来るとは人の女欲しさに愚かな連中だ。」
「な、女?!どう言う事?」
「ゴブリンは人の女を好んで攫う。その後は、まあ言わなくてもわかるだろ?」
その言葉の意味にキリはゾッと顔を蒼白させた。ゴブリンが人の女を狙う理由それは子孫繁栄のためだということ。キリはふとあたりを見渡せばあちこちに人骨の骨の様なものが転がっていた。まさかルリ達もやられたのではないだろうかそう思いながら目の前にいる敵に剣を握り歯を食いしばり睨み付けた。すると一気に魔力に変化が起きキリを覆う魔力が暴走したように彼女をまとった。その瞬間を目撃したシェードは止めようとしたが止めるより早く光の速さで居合いを目の前にいた数匹のゴブリンに向けて放った。一斉に首が飛び散り転がる首に仲間のゴブリンは恐れたように一歩下がる。転がった一つの首を手に持ったキリはゴブリンに向けて投げつけこう吐き捨てた。
「こんな風になりたくなければここから立ち去れ。」
その一言に怯えたのか他のゴブリン達は睨み付けられた彼女の声と威圧に圧倒され逃げていってしまった。魔力がまだ有り余るキリは黄金色の瞳と翡翠色の瞳を光らせ湧き上がる魔力は収まる気配がなかった。シェードも声をかけようかと声を発そうとすれば後ろから口元を抑えられ止められてしまった。
「あら。忌み子が癒し子と一緒にいるなんてね。何かの吉報かしら?」
「お前は…」
「私はこの森の全土を守る泉の王。ルリ。しばらくここには近寄れなかったのよ。悪しき者が出るから。だから妖精王に依頼して払ってもらおうとしたのだけどその必要はなかったようね。」
キリを見つめ少し深刻な顔をしてそう言うルリとの間を押し抜けたのはグレンだった。いとも簡単にキリに近づき、いとも簡単にその手から刀を奪いキリの自我を再生させた。だが魔力の使いすぎで力がぬけたキリはその場に倒れ込むがグレンに抱き抱えられた。収まった魔力の渦と周囲を見つめたシェードは精霊のルリに聞く。
「彼女は。」
だが答えたのは彼女を抱きかかえて戻ってきたグレンだった。
「問題ない。気絶しただけだ。魔力の使いすぎでな。驚いた、これほどの力の持ち主とは。」
「ふふ、グレン言ったでしょ?私達の愛する癒しき子だと。」
「だが魔力の使い方がまるで追いついてないな。」
「えぇ、神であろう狼達は彼女をどうしたいのかしらね。」
そう言ってグレンが抱えるキリに近づき眠る彼女の頭をそっと撫でたルリ。シェードも状況は飲み込めてないが二人に警戒しながら声をかけた。
「一つ聞きたい、お前らは精霊その者と思って良いのか?」
「えぇ、この泉、この前この子が払ってくれた泉も私達の住処だった。この子はいわゆるこの世界の救世主になったわけよ。」
「我ら精霊王は彼女を心の底から敬愛しておられる。癒し子。としてな。」
「癒し子…それは。」
するとどこからか鈴の音色が聞こえ辺りが霧に包まれていく。それを時間と知ったルリとグレンはシェードにキリを返しその霧の中へと消えていこうとした。
「じゃあね、キリにも言っておいて。あなたが願えばまた会える。この泉を払ってくれた事ありがとう。ってね。それではウルフカーバン帝国の騎士団長殿、これにて我らは失礼いたします。」
そう言って双方一礼をすると霧が濃くなり晴れたときには彼女たちの姿は無かった。腕の中で眠る彼女を抱えていると空から雨脚が聞こえ始め近くの洞窟へ避難することにして雨がやまない中空を見つめていたシェードは濡れた体を乾かすため焚き火をした。洞窟を探すのに一番手間をかけたシェードはやっとの思いでたどり着いたのは湖からダイブ離れた場所に位置する洞窟だった。もちろんキリも体が濡れてしまったため焚き火のそばにマントを引いて寝かせていた。
「お前は、一体、何者なんだ…」
眠る彼女を見つめ大きなため息を吐いて何かこないか外を警戒していた。翌朝には雨も上がり朝日が二人を照らし始めていた。
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