ウルフカーバン帝国

紀利クルーガー

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〈第3章〉エルフの森へ

沈黙の森にて

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エルフの森へ向かう途中にある森、沈黙の森。そこへたどり着いたキリ、シェード、ダリエルはそびえ立つ黒く不気味な沈黙の森を見つめ立ち止まっていた。見えない森の奥。霧と茂った森が囲い苔が生い茂り湿気ていた。
「ねえ…本当に、ここ?」
「地図見ててくれたんじゃないのか?」
「いや、見てたけど…こんな湿地帯が広がってるなんて描いてない。」
「そうだろうな。だがおそらく正解だ。」
シェードが正解と言う場所…そこがエルフの森へと続く道だからだ。疑問に思ったキリはそのままシェードに投げかけた。
「なぜわかるの?」
「俺は1度来た事があるからだ。」
「一様、後ででイイから冒険者の地図も更新しておいてよ。これじゃ遭難者が出っぱなしになる。」
「更新はしない。エルフ族との約束だからな。だから通って良いのは戦の時のみだ。」
「戦?戦があるの?」
「あぁ。去年、あった。大勢が犠牲になった。」
「・・・そう。さ、いきましょ?ここがそうならエルフの森も近いはず。」
キリはシェードにそれ以上は聞かなかった。深入りしてもそこまで自分には関係するほどのことではないと思っているからだった。スコルが鼻をきかせ森の匂いを嗅がせる。キリは一体何をしているのかとシェードへ疑問をまた投げかけた。
「ねえ、何してるの?」
「エルフ達がここら一帯を侵入者から守っている。罠がそこかしこに張り巡らせてある。」
「それをスコルに嗅がせて見分けるの?」
「そうだ。」
スコルは道行きが決まったのか振り返ってシェードに合図を送る。
「決まったようだ。行こうか。」
シェードは馬を歩かせスコルの後をついて行く。キリが指示したわけもなくスコルを手伝うようにハティが隣を歩きお互いが注意をしながら周囲への警戒を怠らなかった。彼らを先頭について行く3人。キリはシェードの馬に乗せられダリエルはキリの馬グラニに跨がり歩いていた。ダリエルはびびりながらも2人の後をついて行く。
「ひえ。奇妙な森だな。というか…どうして2人は一緒なんだ?」
『奪っちゃえ…」
「ひ!な、なんだ!?」
いきなり聞こえた声にびびり振り返るが後ろには誰もいない。気のせいだとため息を吐くが馬のグラニはびびるダリエルを気にせず主人のいる方へちゃんとついて行った。だがダリエルと同じくキリもなぜこの男と馬を乗らなければ行けないのかと不思議に思っていたのでその疑問を思いっきり口にしてみた。
「ねえどうして私はあなたと乗っているの?」
「さっきから質問が多いぞ。お前があいつを連れて逃げる恐れがあるからな。念のためだ。」
「何それ逃げないって。」
「どうだか。実際俺とウォルター達を撒いて逃げようとしただろ?」
「う、でも予想外の奴も来て逃げれなかったんだよ。」
「そうだよ。ありゃ一体誰だ?昔の俺を見てるようで気持ちが悪いぜ。」
ダリエルが後ろから声を上げてキリの言葉に付け足した。だがキリは違うことをダリエルに行ってきた。
「そんなすぐに性格が変わるとは思わないけど?」
「なんだって!?キリ!!俺変わっただろ!?」
「全然?」
「酷い…」
するとシェードがボソリと何かを言い初めは聞き取れずにいたキリは聞き返した。
「…だ。」
「え?」
「俺の弟だ…」
「え…じゃあ弟から逃げてきたの?」
「違う。その後ろ盾にうんざりしてるからだ。」
「後ろ盾?」
「もういいだろう。この話は。」
勿体ぶるような話し方をするシェードにだんだん隠し事をする彼に腹が立ってきたキリは条件を突きつけた。
「じゃあ取引しない?私がなぜここに来たのか。この力を持つのかすべて教えてあげる。着いてきたらの話だけど。」
条件をつけてきたキリにシェードはめんどくさそうにため息を吐いた。この娘はどこか自分を見透かしてるようでいけ好かない奴だとジト目で睨んでいると彼女はまた子供のような笑みで話しかけてきた。
「さ!話す気になった?」
なんて言い出すキリにシェードは輝かせてくる目をしたキリを見つめ負けたことを認めて話す気になったのか条件を承諾した。
「わかった。話す。話すから。」
「よし!私の勝ちね!」
勝ち誇ったようにキリはどや顔をシェードに見せた。この2人はいつの間にこんなに仲良くなったのか…シェードがぼやきながら今回の任務のことを話始めた。
「ち、ガキかよ…はぁ…俺が請け負った任務は王の病気のためだと言っただろ?」
「そうね。」
「王は長らく奇病にかかっておられる。その名前は龍人病。感情にまかせ怒り出すと体が竜へと変化していってしまう。」
「その症状はいつからなの?」
「俺より前の団長の時からだ。その頃は戦も多かったからな。」
「何か、術…のようなものを駆けられたとかは?」
「それはないな。現に掛かったのはある日突然だったんだ。」
「突然…ねぇ。」
「なんだ。」
だが返事はなく真剣に考えるキリにシェードはもう一度声をかける。
「おい、聞いてるのか?」
「聞いてるよ。ほら、この前一騒動あった湖の化け物の話。」
「あぁ、お前のおかげであの沼地が一気に観光地として蘇ったな。」
「え?そうなの?」
「そうだ。それで、その騒動がどうかしたのか?」
「発端は近くの村に住む娘がフジツボを生やしたという依頼から始まった。そのフジツボの印はその村では湖の主につけられそれが増え続けるとその湖の主の嫁になってしまうというのを聞いたの。」
その話を聞き入りシェードは黙って話しているキリに耳を傾けた。
「主を倒さないとフジツボは消えない。だから討伐をしたんだ。現にその後フジツボがなくなったという話を娘親共々に聞いてとても感謝してくれた。」
「そんな知恵ドコで?」
「その考えに気づかせてくれたのがお宅の気弱げな彼。確か名前は…アーサーだったか。」
「アーサーだと?まだ白魔法師の見習い使い手だぞ?」
「なぜかはわからないけどそこでヒントを得てたどり着いた。」
「それと王の病気と関係があるのか?」
「いいや、だって王様に会ったことないし。会う気ない。」
「なんだと?貴様。」
「あくまで冒険者の知恵よ。元騎士団長殿?」
馬に2人で乗りながら2人の世界になりつつある空気にダリエルがまたため息を吐いた。忘れられた存在として後ろから見守ることが何より気に食わなかった。そんな彼に魔の手が忍び寄った。
『困らせなよ。そんであの女をいただけば問題無い。』
また囁き声が聞こえ振り返るが誰もいない。不審がってグラニを止めようと手綱を引っ張るがグラニは首を振って嫌がる。それに苛立ちながらもう一度手綱を引くとグラニは落ち着かない様子になった。
「おい、止まれって良い子だから:」
だが次の瞬間グラニは大きく蹄を上げてダリエルを振り落としてしまった。グラニがいきなり嘶きをあげたおかげでキリもシェードも異変に気づき振り返った。キリは慌ててシェードの馬から下り落ち着かないグラニの元へ向かい暴れる彼の手綱を握り鼻頭を触り落ち着かせた。
「しーどうしたの?大丈夫、大丈夫だからね。」
キリに触れられ安心したのか落ち着きだし大人しくなった。馬が落ち着いたのを確認しシェードは落馬したダリエルの元へ駆け寄った。
「おい、平気か?」
そう聞いた瞬間彼の顔つきが変わりシェードの手を振り払った。何か取り憑いた表情に気づいたシェードは一瞬驚くが冷静に話しかけた。
「お前、何か可笑しいぞ。」
だが次は普通に表情戻り何もなかったようにシェードを見てきた。
「え?別に…何も?」
「ダリエル、どうかした?大丈夫?怪我は?」
キリが近づきダリエルに話しかけると彼はすっと表情を変えキリに笑顔で話しかける。
「あぁ。大丈夫だ。この通り怪我もない。」
その表情の変わりようにシェードも警戒心を解かず何かあると彼を睨むように見つめていた。急に態度が変わる様子を見て可笑しいと思ったのだ。辺りを見渡し近くの沼地に視線を向けて2人に声をかけた。
「疲れもあるんだろう、夜がもうすぐ来る。今日はここで野営だ。」
「あぁ、そうだな!賛成!」
料理はもちろんダリエルの手作り。おいしいご飯にお腹を膨らませ一息ついた3人は眠りについた。
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