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〈第3章〉エルフの森へ
グロリアの思惑
しおりを挟む装服に違和感を覚える。中世の鎧ではあるがあまりにも白く金が施されていた鎧を着て道場へと赴けば新品のようにしつられた自分の刀を持って待っていた長グロリアが待っていた。自分の軽装姿を見ておおっと声を上げ褒めてくれた。
「よくお似合いで。では試す相手は我が息子にしましょう。」
「ちょっと、大丈夫?体格差も力の差も違うけど…」
「安心召されよ。これでも彼は強靱な体を持っているのです。」
「いや、男と女では体格差があるだろう。」
「ご安心を彼も手加減をいたします。」
「・・・わかった。」
キリは刀を鞘から引き抜き刀その刀剣の美しさを引き出した。彼女が引き抜いた瞬間、彼女の周囲に風が舞い上がり彼女に味方をするようだった。アーデスはその光景を目の当たりにして唖然と見つめているといきなりキリが攻撃をしてきた。アーデスも慌てて剣の攻撃を受け止めるがキリの表情に驚いた。こちらを認識せずただ撃ち混んできていた。
「待て!キリ。」
その声でやっと気がついたのかハッと我に返りアーデスを見つめた。彼もほっとため息を吐いて一息ついた。キリに忠告するように言葉を投げかけた。
「君はその刀の力に飲み込まれている。自分で振るったことはないのか?」
「…?どういうことだ。私はいつもこれを抜くと浮遊感に襲われて気づけば敵が切れて死んでいる。」
「驚いた。長よ。この方に力その者の使い方をお教えしなければ行けないのでは?」
「ふむ。刀の力に飲み込まれていると…確かに、今のキリ様には何か懐かしい気配が感じられる。」
キリはふと自分がシェードを助けた頃の事を思い出した。確かあの時、自分が放った斬激のおかげで彼は助かっていた。
「(そういえばあの時も自分ではよくわからず技を出していた…)」
「何か心当たりでも?」
「いや…考え込んでいた。」
「もしもその力を使いこなすのであれば何か力を抑える技を身につけねば…」
「制御…か…(制御、そういえばお堂で拾った勾玉。まだ持っていたな…)」
キリは思い出したかのように首に提げていた金属の首飾りと共に下げていた勾玉を手にした。興味津々にその勾玉を見つめるエルフの長にキリは刀をしまいながらも質問をした。
「一つ聞きたい。この辺りに神社と呼べる者…あぁ~そうだな、お堂のようなものは存在しないか?これをあなた達に見せれば何かわかると思って。」
懐から取り出した勾玉は光こそしていないが霊気を感じ取った長グロリアは驚いた表情のままキリから手渡された勾玉を見つめる。
「この宝石はあちらの世界じゃ勾玉と言って和という国では神の物とされてきていた。この似た作りものを知らないか?それか神様を祭る場所なんかも知っていたら教えてほしい。」
「ふむ…神を祭る場所、と言うより…この村でも見かけておりませんかな?穂希仁の銅像を。そのもう一体の銅像がこの森の深い場所に存在します。それにこの勾玉から気配を感じます。」
「…気配?どんな?」
「もちろん、穂希様の気配です。」
「そんなまさか。彼は100年前に死んだんだろ?」
「えぇ、そう…なのですが…これは驚いた、本当にご子息が現れるとは…」
急に独り言を言うように言い出したグロリアにキリは不審に思い声をかけた。
「本当のご子息って?」
「いえ、あなたは…穂希様の血を引いておられるのだと…」
「だからそれはさっきも言ったけど…」
「いいえ、わかるのです。少し、調べ物をさせてください。この宝玉はお返しします。今宵はこれでお引き取りを。アーデス、其方は残れ。話がある。」
「は。キリ、衛兵を呼ぼうか?」
「いいよ。ちょうど…」
ドタバタと荒れた音が聞こえ扉が開いたと思えばダリエルが血相変えて入ってきたのだった。呆れた顔をしたキリは腰に手を当ててため息を吐いたが嬉しそうに笑って見せた。
「お前、起きたのか!?」
「おはよ。ずいぶん遅い登場ね。ダリエル。」
「何してたんだよ。」
「色々話は終わったわ。詳しくは部屋へ戻って話しましょ。丁度ウチの友が来たんだ。見張りをこれ以上つけるなら俺もそれなりの手段で抜け出す。」
「ではまた明日に。」
「あぁ、また。行こう。ダリエル。」
ダリエルはふと2人の目が可笑しいことに気づいた。恨めしそうな目つきでこちらを見ていたのだ。少し恐怖を感じたダリエルはキリに駆け寄って見せた。妙にひっつくダリエルにキリは驚き声をかける。
「ねえ、どうしてそんなにひっつくの?」
「い、いや…と、とにかく…部屋へ戻ろう。」
言ってしまった2人を見つめたままグロリアがアーデスに声をかけた。
「あの娘を物にしろ。穂希様の子ならば純血のお前と一緒になれば純血を守ることが出来る。」
「…長よ。それは、穂希様への冒涜かと…」
「戯け。これ以上エルフの純血を減らさぬためだ。」
「何も、彼女を手籠めにする必要はありません。」
「気でも狂ったか。明日には話をつけるぞ。」
「…御意。」
グロリアには思惑があった。それは純血のエルフをこれ以上減らさないため。と言っても次の長を担うであろうアーデスのための花嫁候補として睨んでいたのだ。アーデスは早く花嫁を見つけるようにとせかされてもいた。花嫁になる話などまったくそんなことを知らずキリはダリエルを連れて部屋へと戻れば今までの事情を彼に話した。
「つまり、お前が持ってるその勾玉も、刀も、俺とお前が向こう側で探していた宝物って訳か?」
「まあ、そう解釈したらいいけど…彼らは私が穂希の子孫だと言い張るんだ。」
「孫だって?一体全体どういう…」
「だって、可笑しいと思わない?私があの手帳を見つけてからこの旅は始まった。トレジャーハントになって冒険者にまでなって彼はこの世界へ連れてきたかった理由は何?」
「それがわかれば、ここへは来なかったものな。」
「えぇ。この世界には穂希仁の英雄譚がぎっしりと根付いている。仁がかいていた日記にはエルフ族のこと、妻の事しか、かかれていなかったわ。なのに今更子供がいたなんて事実信じられる?」
ダリエルは少し考えた後一つ思い着いたことに気づいた。
「1つ、言うならな?お前の父親はどうなんだ?」
「え?」
「もしかりにこの世界で生まれ、育ったとして向こう側でもやっていける能力が備わったとしよう。人間の中に紛れて細々と暮らすことだって出来る。山奥に家を残すくらいだ。祖父をたどっていけばそうなりうる可能性がある。」
「…でもそれを鑑定できない。だとすると、穂希仁の伝承や噂話を聞いて回るほかないって事?」
「そうなる。」
「面倒な旅になりそうね。」
「俺はドコまでもついて行くよ。お前の家族の謎を解くのが端から見てて楽しくなってきた。」
「本当に言ってる?あれだけびびっていたくせに。」
「怖いのは怖いさ。けど、お前が守ってくれるだろ?」
「何。それ…」
今彼女に必要なのは事情を知っている人物。こうして向こう側の話を出来るのはダリエルがいてくれたからだった。ダリエルは次にどう行動するのかキリに問いかけることにした。
「それで?次はどう行動するんだ?」
「…とにかく森で逸れたシェードさんを探さないと。」
「なるほどな。確かにそれは正解だ。」
「そこからお堂があるって言う穂希仁の銅像を見つけないと。」
「この都にもあるじゃないか。」
「いいえ、アレは違う。また違う物があるらしい。そこに次なるヒントが隠されてるから。」
「へぇ、あのうさんくさい連中が親切なことだな。」
コンコンと扉のノックオンが聞こえキリが開けに行けばアーデスが少し驚いたようにキリを見下ろしていた。だがすぐに顔色を変え深刻そうな顔をキリに向けてきた。キリはよくわかっておらず首をかしげたがアーデスを部屋へ入れた。
この都、夜な夜な不気味な鳴き声と悲鳴が聞こえるのはいずれわかる事。
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