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〈第3章〉エルフの森へ
族長、グロリア
しおりを挟むふと気づいたことに、初めであった妖精、ルリの一言に考えが改まった。この世界に来た来訪者と言うのはどうかと思っていたからだ。そこで嘘をついてみることにした。相手がどう反応をするのか探るために。
「初めに…あの武器は不意に手に持った者。一体どうして私の手元へ来たのかわかっていません。刀を持つたび自分じゃない。そんな気がする。」
族長とアーデスはその1つ1つの話に耳を傾けてくれた。話のすべてとは行かないが一通り話したキリの話を聞いて族長が頷き共感してくれた。
「なるほど。それは、お辛い旅路だったでしょう。私はこの国の族長言わば一番上に立つ者です。グロリア、そうお呼びください。この青年は私の倅であります。」
「(倅…か。どうりで偉そうなわけだ。)この地に穂希仁、と言う英雄がいたとか…何度か酒場で耳にしたことがあります。」
キリは警戒して穂希仁の話題を出したが多くは語らず相手の出方を様子見していた。
「ええ、そうです、彼は英雄でありこの地に繁栄と秩序をもたらした。そしてその刀をあなたは持ってきてくださった。」
「(日記によれば穂希仁はこの地であるエルフと恋に落ちて戦争で彼女を亡くし現世へと戻ったと書かれてた気がするが…)確かエルフと恋に落ちたとか?」
「その通りです!よくご存じで!この地でエルフ族と恋に落ちて恋仲となりそして子を授かったのです。その子はこの地で暮らしそして姿を消したのですよ。」
日記になかった伝承を知り疑問を抱くキリは待ったをかけた。
「ちょっと待て、子供がいただと?」
「さようです。」
「おかしいじゃないか。こっちの伝承では彼1人があちら側へ帰ったと…(しまった。つい熱くなった。)」
「もしや、あのお方の伝承をおもちで?ぜひ聞かせていただきたい。」
「いえ。少し噂で耳にしただけです。もしかしてこの刀とも関係が?」
「えぇ。おそらく。私どもはそう睨んでおります。こちらの伝承では、刀があり、その一つが穂希様が持ち去ったという…」
「その一つと?もう一つあるの?」
「えぇ、まあ、ただの伝承話ですが。」
「けど、あの刀は本物なんじゃないの?」
「そうですね、ですが本来、刀には特徴がございます。あなた様がお持ちの刀は確かに穂希様の物と似ておりますが。あの刀ではない。」
「……そう。じゃあここでの穂希様の伝承を聞かせて?」
「えぇ、よろしいでしょう。ではまず、立ち話もなんです。腰がかけれるところへ。何せ、ご老体なもので…」
「わかった。(そうも見えないけど。)」
場所を移動し木で作られた長いテーブルに椅子がいくつもある場所へと案内されそこに腰掛けた。すると長、グロリアが昔話を話始めた。
この国には白い肌を持つエルフと、褐色に近い黒い肌を持つエルフに分かれている。初めは共闘したり共存して住処まで共にしていたこともあった。だがそれはある日突然失われた。人間がこの森に侵入してからエルフたちの小競り合いが耐えなくなったからだ。それもその人間というのが穂希仁だった。その話を聞いた瞬間キリは疑問に思った事を口にした。
「じゃあその小競り合いが生まれたのも100年前?」
「そうだ。怪我を負い疲れ切った彼を休ませるべきだと我々は言ったのだ。だがそれを聞き入れようとしないエルフ達は怒りこの森を出て行ってしまった。それが褐色の肌の持ち主であるダークエルフの誕生だ。」
アーデスも話に入り付け足してくるがキリは疑問に思った。彼、穂希仁の影響が原因とは思えないと。
「…穂希仁に原因があるとは思えないけど。」
「えぇ。彼はただ単に迷ってこの森へ来ただけ。盗賊などの輩ならば我々が侵入を許すでしょうか?」
「そうだな、今回でわかったけど警戒心は強いようだね。エルフってのは…」
「エルフを知っておいでのようだ。もしや冒険者の中にお仲間がいるのでしょうか?」
「会ってすぐ仲良くなったわ。」
「ほほう、イイ友をお持ちだ。さて、では話を続きをしましょう。その人間を森に入れたが故にダークエルフとの共存は出来なくなり彼らはやがて人間を各地で殺し回るようになった。」
「酷い…でもどうして?そんなに人間が嫌いなの?」
「ダークエルフ、つまり彼らは化け物へと変化が出来るのです。我々エルフとは違い黒魔術に長けている。あの騎士団の男もまたダークエルフと人間の血を受け継いでいるのです。」
「あの騎士って?」
「あなたもこの道中まで一緒にいたではありませんか。」
「まさか、」
「えぇ。おそらく彼はそうでしょう。もし、彼と共に行動をなさっているのなら気をつけておいた方が…」
「でも、どうして?」
「昨日の夜の騒動、アレで示しがつく。まだ警戒態勢で森を見張っているがダークエルフは1人も発見できずにいる。」
「と言うことは昨日の遠吠えも彼の仕業って言い切るの?」
「えぇ、彼は極めて危険な種類。あなた様が森へ行ってからは恐れを成して逃げて言ったようだが…」
「(まさか、じゃあ昨日出合った狼って。)」
深々と考えているキリにグロリアは心当たりがあるとみて声をかけてみた。
「何か。心当たりがおありのようですね。」
「いいえ。無いわ。」
「嘘を。あなたのその考えよう、彼に昨日一度会っておられるはずだ。」
「いいえ。会ってない。」
「困りましたねぇ。こうなっては答えを出そうにも出しづらい。」
「もし、森で彼を見つけてどうなるの?」
「…そうですね。騎士の方はここへ入ってしまった以上、掟を我々の掟を守らなければなりません。」
「掟?」
「ここへ2度も侵入を許した。彼は我々の掟に従い命を絶たねばなりません。」
「は?何…言ってる?」
「掟は掟。彼もわかった上でここへ踏み入れたのでしょう。」
「そんな、私が踏み入ったんだぞ?!しかも、あの刀の力を解き明かすために!!」
「あなた様は違う。あなた様は我々の英雄の子孫です。」
話が少しもかみ合わない長に腹が立ち歯を食いしばったキリは大きな声を上げて否定した。
「だからそうじゃないって言ってるだろう!!!」
そう叫んだ瞬間大空は暗くなり雷が鳴り風が吹き荒れた。いきなりの大声と大風に見舞われた部屋でキリの瞳は光っていた。光輝く瞳に驚いた長グロリアは唖然とキリを見つめた。キリは怒りに身を任せ波動のような覇気を使ったのだグロリアの表情を見て一体何が起きたのかわからず我に返った。
「一体何が…」
「驚いた。あなた様には隠し持たれた才能がありますね。」
「才能?いや…ただ私は」
「あなたの力についても話すべきだ。」
混乱してきたキリに狼が近づき声をかけるように心配の鳴き声をあげる。赤みがかった茶色い狼に視線を向けたキリはその狼をそっと撫でてみると狼も嬉しそうに尻尾を振り始めた。その行動を見てグロリアも驚いたように声をかける。
「これはこれは、随分と好かれているようだ。私の相棒でさえあなたには全く敵意を向けず触らせるとは…」
「よくわかってないんだが狼には好かれてる…みたいなんだ。」
「それは、もしやするとあなた様が高貴人と思っているからでしょうか?」
「…高貴人?貴族とかそんなのか?」
「いいえ違います。それよりももっと上の存在。神に近い存在です。」
「神に近い…いや、俺は…と。すまない。つい癖だ。私は神じゃない。ただの人間だ。」
「本当に、そうでしょうか?現に今あなたにとりついている者がいます。それを取り付かせているのになぜ神ではないと?」
「そんな力が無いからだ。今のところ自覚がない。」
「はは、作用でしたか。では、その力の一端をお見せできることが出来る。」
「見せる?どうやって…」
「では、我らが力を示すときにお見せする道場へいらっしゃいませ。そこで力を見せましょう。あなたも、軽装で来られよ。」
そう言ってグロリアが立ち上がれば狼も離れていった。言われたとおりに狼とグロリアについて行く。当然途中女中が現れ着替えを促してきた。もちろん素直に従ったキリは一度着替えに女中達と消え準備されていた軽装に着替えてさっさと出て来た。自分で着れると言いつつも手伝いたいエルフ達の好意に断るわけにも行かず素直に手伝いをお願いしていた。腰には刀を差し着流しのような服装をすると出て来たときグロリアはおおっと声を上げて彼女の服装を褒めてくれた。
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