Ex冒険者カイル

うさぎ蕎麦

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2章

8話「アリア・ルーツ」

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「ぎゃああああ!!」

 俺の右足に鈍痛が走る!

「ねぇ、カイル、急に大声を出して一体どうしたの?」

 俺の目をまじまじと見つめ、物凄く心配そうな声を上げるルッカさん。

「ルッカさん? 俺の足をぐりぐりしているのは何でかなぁ?」
「え? ごめんね、わざとじゃないよ?」

 そっぽを向きながら口笛を吹きだすルッカさんだ。

「ウフフ、随分と仲の良いボウヤ達ね」

 俺達の様子を見てニヤニヤしながら見届けるセフィアさん。

「別に仲良い訳じゃないですよ」
「ククク……レヴィン君とランティスさんには面白い噂が立ってますからね……」

 ルッド君はルッド君で、薄気味悪い笑みを浮かべている。

「面白い噂って何さ」
「フフフ……秘密ですよ……」
「そうですか」
「ボウヤ達はここへ何しに来たのかしら?」
「私達はヴァイスリッターへ向かう途中で偶々ここに来ただけです。お姉さんはここのギルドの方ですよね? 私達はレンジャーじゃありませんので、失礼します」

 ルッカさんからは敵意を感じる。

「あら? ごめんね、お嬢ちゃんのカレシクンを奪う趣味は無いから安心して良いわ」
「誰がこんな奴!」

 セフィアさんの言動に対し、ルッカさんは顔を真っ赤にして否定した。

「そうですね、ルッカさんからは勝手にライバル扱いされてるだけです」
「何よっ! そうよ! こいつとはただのライバルですから!」

 おかしいな、ルッカさんはさらに怒り出したぞ?
 俺としては助け舟を出したつもりだけど。

「ふーん? そう?」

 セフィアさんは何かを悟ったらしいのか、怪しげな笑みを見せている。

「ククク……セフィア姐さん、からかうのもその辺で……」
「それもそうね。私もヴァイスリッターに所属しているのよ、宜しくねボウヤ」

 ウィンクを見せるセフィアさんだ。

「こちらこそ宜しくお願いします」

 ルッカさんはムスッとしたまま何も言わなかった。

「フフッ、若いわね。ヴァイスリッターには私が案内するわ」
「ククク……僕はやらなければならない事が多々あります故ここでお暇させて頂きますね……」

 ルッド君が言い終わった時、まるでその存在が無かったかの様にすっと姿を消したのだった。
 俺とルッカさんはセフィアさんにヴァイス・リッターへ案内される事になった。
 セフィアさんに案内された先には、白をベースに配色された美しい木製の建物があった。

「ここがヴァイスリッターよ、この中には大体200人位入る事が出来るわ。 部屋も沢山あるし調理設備やある程度の勉強用資料もある。 何なら一日中ここに居ても快適な位に設備が整ってるの」
「凄いですね」
「そうでしょ? ここまで便利なギルドハウスも中々無いわ」

 自信満々に言うセフィアさん。外から見たこの建物の感想だけでもその自信に嘘は無さそうだ。
 続いて俺達はギルドハウスの中へ入った。

「セフィアさん!? カイルさんとルッカさんじゃないですか!」
「こんにちは、エリクさん、先程振りですね」

 ギルドハウスの中に入り俺達を出迎えてくれたのはエリクさんだった。

「そうですね。ささっ、ヴァイス・リッターの中を案内しますね!」

 俺とルッカさんは、エリクさんに続いてヴァイス・リッターを案内してもらった。
 ギルドハウスの中には結構な数の人がいて、くつろいだり談笑したりしている。
 職業のバランスは大体均等位に見える。
 セフィアさんやエリクさんと同じく上位クラスの人と思われる人達も居た。

「あの奥のはなんですか?」

 その道中で、ふと建物の片隅にテーブルが置かれている事に気が付いた俺はエリクさんに尋ねてみた。

「あの場所は主に勉強をしたい人が座る場所になってます」

 エリクさんに言われて改めてみると、近くに本棚があった。

「だから目立たない場所にあるのですね」
「はい、出来るだけ雑音から遠ざける形になってます」
「ところであの人は?」
「ふっふっふ、カイル君、君もあの女性の魅力のトリコになったのですね! いやー初対面でその魅力に気付くなんて、カイル君! やっぱり噂通り素晴らしい人ですね!」

 俺の両肩を叩いてすっげーハイテンションで語るエリクさん。
 俺は一人だけ勉強してる人が気になっただけなんだけど。

「ふーーーーーん? カイル? 君はプラチナブロンドヘアーが好きなのかしらぁ?」

 と、ルッカさんが凄く嫌みたらしく言って来た。

「何の事だよ」
「べっつにーーー?」
「更にアリアさんは、小型で可愛らしい眼鏡も掛けてるんですよ! まさに知的で可憐な美少女! そんな美しい女性に興味を持たない男性なんてこの世に居ない訳ありません!」

 拳を握りしめ力説するエリクさんには申し訳ないけど、興味を持たない男性がここに居ますが。

「カイル? 眼鏡掛けた女性なんて興味無いよね? ほら、冒険者ギルドのあのおばさんだって君は無関心だったよね?」

 ルッカさんが頬を膨らませ、むすーっとしながら言う。

「うん、別に無いよ?」
「ふっふっふ、ルッカさん、実は冒険者ギルドの受付嬢、リンカお嬢様は一部コアな男性に大人気なのですよ!」

 話の流れをガン無視して、エリクさんがビシッと指を差して力説する。

「眼鏡が似合う知的な水色ヘアーの美女。 しかもスタイル抜群ですよ! そんな美女がドギツイ言葉で締め上げて来る、まさにご褒美じゃありませんか!」

 エリクさんが眼鏡をキラリと光らせた。

「ねぇ? カイル?」

 その様子にドン引きしたルッカさんが俺の背中をツンツンとつつきながら耳元で囁いた。

「そう言う趣味なんじゃない? でも、オーガとかそういうの相手に舞い上がってる訳じゃないし、リンカさん性格がキツイだけで美人でスタイル良いのは間違ってないし」

「ふーーーーん? そぉ?」

 ルッカさんがじとーっとした目つきで俺を見据える。
 妙に威圧感を覚えるのは何故だ?

「さて、リンカお嬢様のお話が終わった所でカイルさん、あの方が、我がヴァイスリッターのアイドル『アリア・ルーツ』嬢で御座います!」

 なんかこう、スポットライトが急に照らし出されて周りの人達が「わーーーー」っと騒ぎ出すかの勢いで勝手に一人で盛り上がってるエリクさんだ。
 彼の勢い虚しく、隣には冷めた態度のルッカさん。
 このまま俺が冷めた視線を送るのは先輩に申し分が立たなそうだ。
 これは俺のキャラじゃないが仕方無い、

「わーーーーアリアさーーーん」

 エリクさんのテンションに合わせ、全く持って興味を抱かない初対面女性の名前を叫んだ。

「ふわふわプラチナブロンドのロングヘアー、更にッ! 彼女はなんとプリーストですよ! 男性冒険者なら誰もが憧れる美人プリーストによる治療、彼女に『ヒーリング』を掛けてもらう為にわざと怪我する男性が続出してます!」

 エリクさんのアリアさん推しが止まらない。
 人間不思議なもので、こうやって積極的に推されると段々と興味が湧いて来なくも無い。
 エリクさんに乗せられテンションが上がった俺が次の一声を掛け様と大きく息を吸い込んだところで。
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