Ex冒険者カイル

うさぎ蕎麦

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3章

16話「エリク救出作戦」

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 しかし、彼女の魔法を受けた俺は急速に力が抜けていく感覚に襲われ、ガクッと膝を地面に着けた。
 状態異常を起こす魔法だろうか?
 この感覚を治せそうなキュアの魔法を詠唱しようと試みるも、僅かながらであるが意識が混濁し集中出来ない。
 これはマズイ。
 クソッ、攻撃魔法ならまだ耐えた後にヒーリングを発動させればどうにかできたんだけどっ!

「行きましょう」
「え? え? ちょ、ちょっと待ってください! 転移魔法ですか!? カイルさんが!」

 セリカさんはエリクさんの手にスッっと触れると、淡く黒い光と共にその姿を消し去った。
 クソッ、助けに行きたくても助けに行く事もままならない。

「カイル!」

 今は兎も角自分の回復を待とうと考えていた所、俺の名を叫びながら遠くから駆け足でやってくる女性が居た。

「ルッカ、さん?」
「あら? どうしたの、ボウヤ?」
「グッ、エリクさんが、さらわれまし、た」
「どう言う事?」
「そんな事よりカイル、君は、強い筋力集中力低下魔法を受けてるよ」
「大丈夫、だ、大した事ねぇ、俺よりもエリクさんの方が」

 ルッカさんの姿を見た瞬間、俺は無意味に強がってしまった。
 彼女の指摘通りセリカさんから受けた魔法のせいでまともに歩く事すらままならないのに。

「君は馬鹿なの? 私よりも出会ったばかりの人の方が大事なの?」
「ルッカさんは関係無い」

 俺は訳の分からない事をいうルッカさんを、歯を食いしばりながらにらみ付けた。
 一方のルッカさんも負けじとにらみ返した。

「ハイハイ、喧嘩はそこまでよ? その感じだと魔法が使えれば大丈夫そうね?」
「はい」

 セフィアさんの絶妙な仲裁のお陰で一触即発の危機は回避出来た。

「別に喧嘩してる訳じゃない」
「そう、ならもう少し素直になると良いわよ?」
「私は素直です!」
「フフッ、ボウヤも大変ね」

 セフィアさんは、クスッと笑うと俺にウィンクを一つ見せた。
 俺が大変? 一体何が大変なんだ?

「これを使って!」

 ルッカさんが道具袋の中から薬草を取り出した。

「これは?」
「集中力向上効果がある薬草!」
「有難う」
「別に、あんたの為にやってる訳じゃないから!」

 俺に薬草を手渡すとルッカさんは、ツン、とそっぽを向いた。

「にがっ」

 薬草を口にした所、物凄い苦味が口の中に広がった。

「それは仕方ないね」
「ル、ルッカさんも試さないか?」
「ごめん、在庫が無い」

 この苦さをルッカさんにも味わって貰いたいと思った訳だが、残念ながら道具袋を探す素振りすら見せずノータームで却下されてしまった。

「あら? 男の捌き方になれてるのね?」

 隙を突いてセフィアさんが茶化して来た。
 言われてみれば確かに鮮やかな断り方に感じる。
 そう言えば、ルッカさんを狙う男子生徒が結構居て、その度にばっさりと斬り捨てていた事を思い出した。

「そんな事ありませんよ」
「確かに、ばっさり斬り捨ててるだけだったっけ?」
「カイル? 私剣術出来ないでしょ?」
「そーゆー意味じゃないんだケド」
「ならどういう意味?」

 もしかして、ルッカさんは迫ってくる男を結構キツイ言葉で追い返してた事に対して自覚がないのだろうか?

「ほら、自分に迫る男性を」
「あら? 随分と即効性がある薬草だったじゃない?」
「え?」

 俺が一々説明をするのが面倒だと思っている事を察知してくれたのか、セフィアさんがそう言ってくれた。
 確かにセフィアさんの言う通り、ルッカさんと流暢に会話をしている事考えたら薬草の効果が出たと思う。

「後は筋力の回復ね」
「そ、そうですね」

 セフィアさんに促され、俺は『筋力増加(パワーアップ)』を自分に施した。
 黄色い粒子状の光が俺を包み込み、暫くすると自分の筋力が増強している感覚を掴んだ。
 ウィザードから筋力低下魔法を受けた手前、学卒ナイトの俺が使うその魔法では通常時と同じ筋力量まで回復する事は出来なかった。
 それでも、今身に着けている装備品を外す事無く動く事は可能だ。

「それで、沢山の女の子からボロボロに振られ続けたエリク君の事だけど」
「私、ああ言うお尻の軽い男の人好きじゃないよ?」

 うん? その言い回しだと俺とエリクさんの今までのやり取りを知っている様に感じるけど気のせいか?
 それにしても、セフィアさんは楽しそうな笑顔を見せて言ってる。

「エリクさんですか」
「ボク? せめて何でその事を知ってるのか位のリアクションをしてくれるとお姉さん嬉しいけどねぇ~?」
「カイルですから仕方ありません」

 セフィアさんの言動に対し、無表情のまま俺に対するフォローなのか分からない言葉を述べるルッカさんだ。

「いえ、特に疑問点は無かったので」
「まぁ良いわ、女の子からモテてたボウヤをからかっても面白くないもの」
「そうですか」
「私が見たところ、あの非モテで根暗なウィザードに何故か興味を示す奇特な女の子が居て、その子の誘惑を断ち切れないでボウヤを見捨てて女の子と二人っきりのデートに出掛けた感じかしら?」

 セフィアさんが髪をかきあげながら早口で言ったのだが、幾ら本人が居ないとは言えすっげー言い方してるなぁ。

「そんな感じです、一応その女性が無理矢理転移魔法を発動させていたみたいですが」
「ウィザードなのに随分と肉食な女の子なのね」

 セフィアさんは、てっきりエリクさんの方が仕掛けたものだと思っていた様だ。

「ウィザードって野菜しか食べない人が多いんですか?」
「カイル? 君はどうして全成績トップの成績が取れたの? 私不思議でしかたないんだけど」

 ルッカさんが怪訝な表情を浮かべながら俺の顔を覗き込んだ。
 そんな事言われても、肉食の反対と言われたら菜食以外ありえないと思うけど?
 
「そのウィザードが転移魔法使ってエリク君と一緒に転移した訳ね?」
「はい」
「初めてのデートおめでとうと言いたい所だけど、根暗なエリク君をわざわざデートに誘うと言うのは疑問に思うべきね、何か裏があると考えるべきだわ」
「裏ですか、デートじゃないとすればお金目当てですか?」
「そうねぇ、無くも無いけど、それならもっとお金を持っている人を狙うと思うわ」
「あれ? エリクさんって冒険者レベルが高くってお金も稼いでるんじゃないんですか?」
「お金は稼いでるんだけどねぇ、魔術の研究と言って沢山お金を使ってるのよ、彼魔術オタクだから」

 セフィアさんがクスクスと笑いながら、女性に対してお金使えば良いのにと言う。
 魔術オタク、ねぇ、別に自分が強くなる為の研究に対してお金を使うのは良い事とだと思うし、それこそ女性に使うよりも有意義と思わなく無いけど。

「そうなんですか? 女性に対してお金を使うと勉強するより良い事ってあるんですか?」
「ウフフ、勉強より良い事が沢山あるのよー?」

 セフィアさんがニコッと笑みを浮かべながらウィンクを見せた。
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