Ex冒険者カイル

うさぎ蕎麦

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3章

18話「束の間のひと時」

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 エリクは自分の魔力を奪ったと思われる元凶がいなくなっている事に気が付いた。
 周囲を見渡すもみー太君の姿を見付ける事が出来ず、飼い主の元へ帰ったのだろうとエリクは考えた。

「どうしたのかしら?」

 不意に遠くを見つめだしたエリクに対しセフィアが疑問を投げかけた。

「あ、い、いえ、なんでもありませんよ?」

 セフィアに指摘され、エリクは慌てて視線を戻すが、

「ふーん? 女の子の事でも考えてたのかしら?」

 セフィアがニヤニヤとしながらエリクを尋ねる。

「ま、まさか! 僕に限ってそんな事ありませんよ!」

 エリクは慌てて否定するが、彼の行動を知るセフィアとルッカは冷たい視線を彼に送った。

「そうですよね」
「本当にそうなの?」

 ルッカからは、今日こっそりと監視していた事を隠すより真実を探求したい好奇心の方が高いと伺える。

「あら? 魔術の勉強だけじゃなく、少し位女の子の勉強をしても罰は当たらないわよ?」

 エリクに対して意味深な事を言うセフィア。

「あわわわ! 本当ですから! 僕は真面目ですから女の子の勉強なんて!?」

 普段アリアさん達にアプローチをしているが、何故か全力で否定するエリクだ。
 それに対しカイルとルッカはお互い顔を見合わせて大きな溜息をついて肩を落とした。

「エリク君はホント真面目よね、さ、一旦私達のギルドに戻りましょう」

 カイル達はヴァイス・リッターへ戻った。


-シュヴァルツ・サーヴァラー-


 エリクの胸元からこっそりと抜け出したみー太君が主であるセリカの元へすり寄って来た。

「みー太君! 良かった、無事だったんだ!てっきりあの小汚い犬っころと一緒に落ちたって思ってたんだ」
「みゃー!」

 みー太君はご機嫌そうにセリカの周りをくるくる回っている。
 セリカはそんなみー太君を抱き上げ頬にすり寄せた。

「うんうん、すごい爆発だったよね? あの犬が窓から飛び降りてその先に仲間がいたからみー太君は離脱したの?」
「みゃー」
「あの犬野郎から魔力を奪えたの? やったね! すごいよみー太君!」
「みゃー」
「うんうん。何これ、すごい魔力じゃない!?クソ犬の分際で沢山魔力を持ってやがったのは気に入らないけど、これならラクショーで召喚出来そうね!いくよ! みー太君!」

 セリカは自室に戻ると、壁に掛けてあったマントを取り外し身に纏い、その隣に立て掛けられていた杖を取り転移魔法を発動させた。

-ヴァイス・リッター-

 翌日の事だ。

「はぁ」

 エリクさんの深い溜息だ。
 虚ろな表情を浮かべながらぼんやりと窓の外を眺めている。
 俺が考えられる限りでは、折角エリクさんに近付いて来た女の子が居たと思ったら罵倒された事位だけど。

「あら? エリク君? どうしたのよ?」

 同じくエリクさんが落胆している事に疑問に思ったセフィアさんが彼に近付いた。

「いえ、その、色々ありまして」
「ふぅん? 色々ねぇ?」

 セフィアさんが今日の記憶を辿っている様だが、思い付く節は無さそうだ。

「はぁ、そうですよね」

 エリクさんは再び深いため息を付いた。

「ふぅん? その様子だとエリク君の眼鏡に適う女の子がいたのかしら?」

 セフィアさんがエリクさんの眼鏡を指差しながらクスクスと笑った。

「うぐぐ、はい、実は」

 エリクさんはシドロモドロしながら細々と返事をした。
 うん? 眼鏡に敵う女の子がいたって?でもなぁ、街中に居た女の子でアリアさん以上に美人な娘居たっけ?
 いや、セリカさん結構な美人だったが。

「ふーん、よくある話ねぇ?」
「そ、そうなんですよ!」
「でも、あのギルドってウチのギルドと仲が悪いのよねぇ」

 セフィアさんは、他の場所から探せば? と言わんばかりな態度を示す。

「はうぅぅ、でもあの娘よりいい娘なんて居ませんよ!」
「あら? アリアちゃんがいるじゃない?」

 セフィアさんはしれっとアリアさんの名前を出したが、確かに彼女の言う通りアリアさんの方が良いと思うが、アリアさんはエリクさんを相手にしているとは思えない。

「いえ、その、性格というかその」
「へぇ、中身が大事ねぇ? アンタもたまには良い事言うじゃないの?」

 性格? 確かにサッとしゃべっていた所を見る限り良さそうだったなぁ。

「そうなんですよ! だから、その」
「ふぅん、まぁ、エリク君が望むならイイんじゃないかしら? エリク君がシュバルツサーヴァラーに入ってダストから徹底的にシバかれるってのもありじゃない?」

 セフィアさんが、しれーっとその女の子の為のギルド移籍を肯定しているが、しれーっとダストから何されるか分からないと警告しているのはなんか面白い気がする。

「いえ、その、ヴァイスリッターを離れるまでしたいとは思わないです」
「うふ、冗談よ、冗談」
「はうぅ、僕、これからどうすれば良いでしょう?」
「ギルドに所属しているのは分かってるし、その内なんとかなるんじゃないかしら?」
「はうぅぅ」

 エリクさんは、情け無い声をあげながらがっくりと肩を落とした。

「お昼を食べながら考えましょ」
「そ、そうですね」

 俺達はお昼ご飯を食べにギルドハウスを後にした。

「さぁ、何にしましょう?」

 飲食店が立ち並ぶこのエリアではお昼休みと思われる人達で溢れ返っている。
 学生の人達は楽しそうに、雑仕事を請けていると思う冒険者の人達は少しばかり疲れてそうに、中には人生に疲れた顔をしている人もいるが、彼等がどんなことをしているのか少しだけ疑問になる。

「僕は何でもいいですよ」
「私はアレがいいです」

 セフィアさんの問いかけに対し、俺とルッカさんが返す。
 ルッカさんが指差した先には、パスタ料理を扱う店があった。

「えへへ」

 エリクさんの返事がないと少し疑問に感じていたら、少し間をおいてよく分からないあやしい声が聞こえて来た。
 気になった俺がエリクさんをチラッと見ると、俺達とは別の誰かを凝視しながらニヤニヤしていたのだった。
 で、エリクさんが向ける視線の先には、すらっとした美人の女性の姿があった。 
 っておーい! 今しがたとある女ウィザードを気にしていたのは何だったんだよ!
 なんて思わず言葉に出したくなるが、俺は優しいから黙っておく事にするよ。
 そう思いながらも俺はチラッとルッカさんの顔を見ると、その事に気が付いているのか物凄く呆れた仕草をしている。

「良い意見ね、賛成よ」

 俺達はルッカさんの提案通りパスタを食べる事にした。
 パスタ店に入り席に案内され、注文をして暫く待つと各々の目の前に熱々のパスタが並べられた。

「それにしてもエリク君、一人に絞る事は出来ないのかしら?」

 セフィアさんがミートスパゲティを食べながらエリクさんに尋ねた。
 その口振りではやっぱりエリクさんが別の女性に対してニヨニヨしていた事に気が付いている様だ。
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