Ex冒険者カイル

うさぎ蕎麦

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3章

22話「届かぬ想い」

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 俺の提案は一蹴された。
 どこか彼女に迷いが生じている気がするが。

「でも、それじゃ君は」
「うるさい! 学校を出た程度のひよっこに何が出来る!」

 セリカさんの言う通り俺には何も出来ない。

「カイルさん!」

 エリクさんが俺の元へ走って来た。
 ジャイアントゾンビを倒したのだろう

「ちっくっしょーーー! 犬っころめ! あたしが召喚したゾンビを倒しやがって!」

 セリカさんはやり場の無い怒りの矛先をエリクさんへ向ける。

「す、すみません。 ですが我々も冒険者として依頼を請け、こなしただけですから」
「ふ、ふざけんな! お前さえいなければ!」

 正論を言われ、返す言葉に詰まったセリカさんは勢いに任せた言葉をエリクさんにぶつける。

「いえ、我々が居なくとも他の冒険者がどうにかしているでしょう」
「どーしてあたしの邪魔をするんだッ!」

 セリカさんの感情的な発言に対してエリクさんは少し悩むと、

「それはセザールタウンの平和を守る為です」
「うっ、くぅっ」

 言葉が引き出せないセリカさんは、唇を噛み締めたままエリクさんを睨みつけている。

「彼女の塩梅は、問題無さそうね、保護した方が良いのかしら?」

 エリクさんが少し悩んだ理由を察知したセフィアさんが、エリクさんの肩を叩きながらそっと言った。

「ふざけんなッ! 誰がお前等の世話になるか! いくよ! みー太君!」

 セフィアさんの言葉を受け、セリカさんはみー太君と共に転移魔法でその場から姿を消した。
 セリカさんには、シュバルツ・サーヴァラーからの恩義が上回っているのかもしれない。

「随分とプライド高そうな娘だったわね」
「そうですね、ははは、はぁ、僕は何をやってるんでしょうかね」

 二度と会えないと思って居た人物に折角会えたにも拘らず何も出来なかったエリクさんは深いため息を付いて落胆している。

「お互いの環境が噛み合って無さ過ぎるわ。追いかけたくても転移魔法じゃ、ね」
「はぁ、やっぱり諦めなくちゃダメなのでしょうか?」

 エリクさんは瞳を潤ませながらセフィアさんを見上げる。

「彼女を追う事で代償が何も無いなら諦めなくても良いんじゃないかしら? お互いが生きている限り可能性は必ず存在するわ」

 まるで、セフィアさんが過去を思い出したかの様に言う。

「はい、諦めたくありません」
「フフ。 頑張りなさい」

 セフィアさんがエリクさんの肩にそっと手を乗せた。

「さっ、ヴァイスリッターに戻りましょう」

 依頼を終えた俺達はヴァイス・リッターへ戻った。


―シュヴァルツ・サーヴァラー―


 カイル一行により作戦を失敗させられたセリカは、自分がどうなるのか分からないと知りつつもダストへの報告を行った。

「ああ? テメェ! 何のこのこと帰って来やがんだぁ!」
「申し訳、ありません」
「無能はイラネェつってんだよ!」

 ダストは机を派手に叩いた。
 周囲に響かせた音はセリカを委縮させるには十分な効果があった。

「俺様は賢神の石で忙しいつってんだろ! 無能に構ってる暇はねぇ! けどよぉ? 無能でも魔力はあんだよなぁ? 賢神の石を手にするには生きた人間の魔力が必要だぜ?」

 ダストは、ケケケと気味の悪い笑みを浮かべると詠唱を始めた。

「ふぎゃーーー!」

 それがご主人様に向けられた悪い事を本能的に察知したみー太君が全身の毛を逆撫でさせ威嚇して見せるが、

「うるせぇ、カス猫ガッ! テメー等仲良く揃って独房にでも入ってやがれ!」

 みー太君の応戦も空しく、ダストはみー太君共々セリカに転移魔法を掛けた。
 セリカは魔法で抵抗を試みるもダストの魔力には無力であり転移させられてしまった。

「みー太、君?」

 薄暗い一室へ転移させられたセリカは細々とした声で使い魔の名を呼んだ。

「にゃーお」

 主の問い掛けに対し、みー太君はしっぽをフリフリさせながら答えた。

「戻らない方が良かったのかな?」
「みゃー、お」

 セリカはダメ元で魔法の力で閉鎖された入り口の開放を試みるもそれは無駄な足掻きだった。

「こうなるのは分かってたのに、馬鹿ね、私って」

 セリカは犬っころ、と呟くと頬に一筋の涙を流した。

「にゃーお?」

 壁に背を持たれかけさせ軽く瞳を閉じる主をみー太君は心配そうに見つめていた。


 ―ヴァイス・リッター―


 ジャイアントゾンビを討伐した翌日。

「ねぇ、カイル?」
「うん?」

 ルッカさんが、俺の袖を引っ張りながら上目気味の視線で呟いた。

「エリクさん大丈夫かな?」
「そうだね、昨日色々あったし、心配だね、俺様子見て来るよ」

 俺はエリクさんが居ると思われる勉強ポイントへ向かった。

「ははは、昨日はこんな事があったんですよ!」
「そう」

 勉強ポイントには、アリアさんに対して意気揚々と話すエリクさんの姿があった。

「いやーはっはっは、これはこれはカイル君じゃないですか! 丁度良い所に来ましたね」

 俺に気が付いたエリクさんは随分とご機嫌な様子で応対した。

「ルッカさんに言われて来ただけですけど」
「またまたご謙遜なさって、アリアさんへのアピールは大事ですから仕方ありませんけどね」

 俺はそんなつもりは全くないが。
 あ、アリアさんの凍て付く視線がエリクさんにぶつけられてらぁ。

「まぁ、元気そうで何よりです、それでは俺は」

 と昨日のエリクさんを見ている俺は少々アホらしくなりルッカさんの元へ帰ろうとする。

「いや~丁度これからアリアさんに攻撃魔法を実践形式で教える所だったんですよ」

 それを引き留めるかの様に言うエリクさんだ。
 しかし、それなら一緒に鍛錬するのは良さそうだ。

「分かりました、折角なのでお願いします」

 俺の了承を確認したエリクさんは、

「そこで、僕の魔法がジャイアントゾンビに直撃して」
「そう」

 昨日の話をアリアさんに対して武勇伝として語っている。
 語られているアリアさんは本を読みながら話半分に聞いて適当に相槌を打っているだけだが。
 それにしても、プリーストのアリアさんがわざわざ攻撃魔法を覚えたいのは気になる所だ。
 1つ思い当たる事があるとするなら、プリーストの持つ治療や補助魔法とウィザードが持つ攻撃魔法を扱いこなせる上級クラス、セイジを目指す事だけど。

「ですが、助けれそうな人を助けられませんでした、僕は攻撃魔術しか扱えませんから」
「はい」

 考え事をしていたら、エリクさんがセリカさんを助けられなかったことを悔やむ話を始めた。
 ここでアリアさんが僅かに表情を変化させた。
 どこか話に興味を持ったように感じるが、

「ははは、終わった事を悔やんでも仕方ないですよね! さ! 行きましょう!」
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