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3章
21話「複雑な感情と」
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「その、す、すみません! 実はあのネクロマンサーは僕の知り合いです!」
エリクさんが力強く言ったところで俺はネクロマンサーの姿をじっくりと見た。
それは、魔術師が着る黒色のローブに、三日月形のアクセサリーが付いた黒いとんがり帽子を被り黒ぶち眼鏡を掛けた女性の姿が目に映る。
シュバルツ・サーヴァラーでエリクさんを誘拐した女ウィザード、セリカさんだ。
その隣には、致命的な毒撃を受けたご主人の身を案じ必死にすり寄る黒猫、みー太君の姿もあった。
「今回の依頼はあのデカ物をどうするか、ネクロマンサーに関しての記述は無かったわ」
あの時エリクさんが言っていた女の子と察知したセフィアさんが、エリクさんにウィンクを見せる。
その隣ではルッカさんが、ジャイアントゾンビに目掛け『炎球(ファイアボール)』を放っている。
「あ、ありがとうございます!」
エリクさんが嬉々とした表情で返事をする。
「エリク君! ちゃっちゃとこのデカ物を倒すわよ! ネクロマンサーの救護はボウヤに任せるわ!」
セフィアさんは、解毒剤の入った小瓶を俺に向け投げ渡した。
解毒剤を受け取った俺は、身体中を毒が巡り刻一刻と状態が悪くなってゆくセリカさんの元へ駆け寄った。
それに対し彼女はジャイアントゾンビに呼吸を乱しながら自らを守れと命令を下す。
命令を受けジャイアントゾンビはゆっくりと反転するが、セフィアさん、エリクさん、ルッカさんからの波状攻撃を前に阻止されてしまう。
「こ、これを飲んで下さい!」
俺は彼女に解毒剤を手渡す。
「みゃーーーーーお!」
だが、ご主人様を守る使い魔、みー太君が物凄い声を上げ俺に襲い掛かった。
解毒剤を手渡す事は失敗だ。
俺は、みー太君の襲撃を回避しながらセリカさんに解毒剤を渡す手段を考える。
そうだ、信用を作り上げればッ!
どうする? 何がある? 急がないと毒が回り切ってしまう!
ええい! 考えるな、思い付いた事を兎に角やってみるんだ!
「くっ、ごめん!」
俺は『解毒(アンチドーテ)』の発動を試みた。
俺の手の平から淡い緑色の光が溢れだし、セリカさんの肩部を包み込む。
ネクロマンサーの表情が一瞬だけ和らぐが、すぐ苦痛に歪む顔に戻ってしまう。
クソッ! やはりセフィアさんが錬成する強力な毒相手に俺のアンチドーテが効く訳無い!
せめて、アリアさんみたいなプリーストが使うアンチドーテならッ!
違う! そんな事考える暇があるなら次の手を考えるんだ!
「おま」
セリカさんが苦痛に顔を歪めながらも俺を睨みつけ何かをしゃべろうとしたが上手くしゃべれなかった。
彼女は上手くしゃべれない? つまり毒で体力を消耗してる?
だったら今度はこれだ!
俺は『治療術(ヒーリング)』を彼女に施した。
「お前は、私に何がしたい?」
ヒーリングのお陰で辛うじてしゃべる事が出来る体力を取り戻したセリカさんが、息を荒らしながらもゆっくりと言葉を紡ぎ出した。
「た、助けたいんです! エリクさんが貴女の事を大切に思ってるからです!」
俺は、もう一度ヒーリングを唱えながら答えた。
「人を、殺そうとして、グッ」
「それは、距離が遠く誰であるか認識出来なかったからです、すみません」
俺はもう一度彼女に向け解毒剤を差し出した。
彼女に対し治療の意思を示した上でまだ拒絶されるのであれば別の手を考える必要はあるが。
「ふざけんな」
セリカさんが力無く呟くと俺が手にしている小瓶を掠め取り口にした。
その間も俺は彼女が失った体力を取り戻す為ヒーリングを掛け続けた。
「みゃーお?」
みー太君が心配そうにご主人様に擦り寄った。
「こんちくしょーがーーー!」
しばらく経ち、解毒剤の効果があらわれたところで突然セリカさんが立ち上がると俺へ痛烈な平手打ちを放った
「うっ」
突然の出来事に対し、俺は軽く飛ばされてしまった。
「お前の仲間から狙撃されたのは私の落ち度だ! あの犬っころが強い癖にこんな不味い緊急任務を請けやがる事を計算しなかった私のミスだ! なのにどうして助けやがったんだ!」
セリカさんが物凄い剣幕で捲し立てながら俺に詰め寄った。
「エリクさんが、貴女を死なせたくなかったからですよ」
「犬っ頃の分際で! だったらどうして、何で狙撃を止めなかったんだ!」
「冒険者ギルドから誰がゾンビを操ってるかまで聞かされてなかった。 ネクロマンサーは普通邪教徒だから発見次第狙撃しただけです」
「だったらっ! 犬っころがどうこう言われただけでどうしてお前が、セザールタウンに対して敵対行動を取った私を助けた! 間に合わなかったで良いだろ! 解毒剤をみー太が叩き割って助けれなかったとでも言えば良いだろ!」
感情的になっているせいか、セリカさんは支離滅裂な事を言う。
セリカさんと目を合わせる事に耐えれなくなった俺は一瞬だけ視線を逸らした。
その先ではジャイアントゾンビとの交戦が続いている。
既に両腕を破壊され、それでも主を守ろうと俺の元へ向かおうとするが、エリクさん、セフィアさん、ルッカさんの手によって完全に阻まれ一向に叶わない。
「自分のせいで人が死ぬのは嫌だから。 明確な敵では無い事が分かった以上助けない理由はありません」
「ふざけんな! 何偽善ぶってるんだ! お前はこれ以上女にモテて何がしたいんだ! 何人の女を泣かせたいんだ! 私に問い詰められながらヒーリング掛けるなバカヤロー!」
「俺は、セフィアさんの命令に従っただけですよ」
これが正しい回答であって欲しい。
「シュバルツサーヴァラーはお前達ヴァイスリッターを敵対視してるんだぞ!」
「人の命を奪い合う戦争してる訳じゃありませんよね? だったら関係ありませんよ」
「どうしてお前達は! 犬っころ含めてそれを自覚しないんだ! まるで私達なんか眼中に無いと言う態度をとりやがる!」
「俺には分かりません」
「私はどうすれば良いんだ! このまま帰ればダスト様に何されるか分からないんだぞ! お前達が情けを掛けたせいでっクソッ!」
セリカさんは怒りの感情を何処にぶつければ良いのか分からない様に見える。
今回、俺達が依頼を請けたせいで彼女が成果を上げられないのかもしれない。
しかし、他のBランク冒険者達が応対すれば済む話。
いや? もしかして、Bランク相手ならば勝てたのかもしれない。
潔く死にたいという気持ちと生きたいという本能の間で戸惑っているのだろうか?
「なら、ヴァイスリッターに」
「お前は馬鹿か! ダスト様に何されるか分からないって言っただろ!」
エリクさんが力強く言ったところで俺はネクロマンサーの姿をじっくりと見た。
それは、魔術師が着る黒色のローブに、三日月形のアクセサリーが付いた黒いとんがり帽子を被り黒ぶち眼鏡を掛けた女性の姿が目に映る。
シュバルツ・サーヴァラーでエリクさんを誘拐した女ウィザード、セリカさんだ。
その隣には、致命的な毒撃を受けたご主人の身を案じ必死にすり寄る黒猫、みー太君の姿もあった。
「今回の依頼はあのデカ物をどうするか、ネクロマンサーに関しての記述は無かったわ」
あの時エリクさんが言っていた女の子と察知したセフィアさんが、エリクさんにウィンクを見せる。
その隣ではルッカさんが、ジャイアントゾンビに目掛け『炎球(ファイアボール)』を放っている。
「あ、ありがとうございます!」
エリクさんが嬉々とした表情で返事をする。
「エリク君! ちゃっちゃとこのデカ物を倒すわよ! ネクロマンサーの救護はボウヤに任せるわ!」
セフィアさんは、解毒剤の入った小瓶を俺に向け投げ渡した。
解毒剤を受け取った俺は、身体中を毒が巡り刻一刻と状態が悪くなってゆくセリカさんの元へ駆け寄った。
それに対し彼女はジャイアントゾンビに呼吸を乱しながら自らを守れと命令を下す。
命令を受けジャイアントゾンビはゆっくりと反転するが、セフィアさん、エリクさん、ルッカさんからの波状攻撃を前に阻止されてしまう。
「こ、これを飲んで下さい!」
俺は彼女に解毒剤を手渡す。
「みゃーーーーーお!」
だが、ご主人様を守る使い魔、みー太君が物凄い声を上げ俺に襲い掛かった。
解毒剤を手渡す事は失敗だ。
俺は、みー太君の襲撃を回避しながらセリカさんに解毒剤を渡す手段を考える。
そうだ、信用を作り上げればッ!
どうする? 何がある? 急がないと毒が回り切ってしまう!
ええい! 考えるな、思い付いた事を兎に角やってみるんだ!
「くっ、ごめん!」
俺は『解毒(アンチドーテ)』の発動を試みた。
俺の手の平から淡い緑色の光が溢れだし、セリカさんの肩部を包み込む。
ネクロマンサーの表情が一瞬だけ和らぐが、すぐ苦痛に歪む顔に戻ってしまう。
クソッ! やはりセフィアさんが錬成する強力な毒相手に俺のアンチドーテが効く訳無い!
せめて、アリアさんみたいなプリーストが使うアンチドーテならッ!
違う! そんな事考える暇があるなら次の手を考えるんだ!
「おま」
セリカさんが苦痛に顔を歪めながらも俺を睨みつけ何かをしゃべろうとしたが上手くしゃべれなかった。
彼女は上手くしゃべれない? つまり毒で体力を消耗してる?
だったら今度はこれだ!
俺は『治療術(ヒーリング)』を彼女に施した。
「お前は、私に何がしたい?」
ヒーリングのお陰で辛うじてしゃべる事が出来る体力を取り戻したセリカさんが、息を荒らしながらもゆっくりと言葉を紡ぎ出した。
「た、助けたいんです! エリクさんが貴女の事を大切に思ってるからです!」
俺は、もう一度ヒーリングを唱えながら答えた。
「人を、殺そうとして、グッ」
「それは、距離が遠く誰であるか認識出来なかったからです、すみません」
俺はもう一度彼女に向け解毒剤を差し出した。
彼女に対し治療の意思を示した上でまだ拒絶されるのであれば別の手を考える必要はあるが。
「ふざけんな」
セリカさんが力無く呟くと俺が手にしている小瓶を掠め取り口にした。
その間も俺は彼女が失った体力を取り戻す為ヒーリングを掛け続けた。
「みゃーお?」
みー太君が心配そうにご主人様に擦り寄った。
「こんちくしょーがーーー!」
しばらく経ち、解毒剤の効果があらわれたところで突然セリカさんが立ち上がると俺へ痛烈な平手打ちを放った
「うっ」
突然の出来事に対し、俺は軽く飛ばされてしまった。
「お前の仲間から狙撃されたのは私の落ち度だ! あの犬っころが強い癖にこんな不味い緊急任務を請けやがる事を計算しなかった私のミスだ! なのにどうして助けやがったんだ!」
セリカさんが物凄い剣幕で捲し立てながら俺に詰め寄った。
「エリクさんが、貴女を死なせたくなかったからですよ」
「犬っ頃の分際で! だったらどうして、何で狙撃を止めなかったんだ!」
「冒険者ギルドから誰がゾンビを操ってるかまで聞かされてなかった。 ネクロマンサーは普通邪教徒だから発見次第狙撃しただけです」
「だったらっ! 犬っころがどうこう言われただけでどうしてお前が、セザールタウンに対して敵対行動を取った私を助けた! 間に合わなかったで良いだろ! 解毒剤をみー太が叩き割って助けれなかったとでも言えば良いだろ!」
感情的になっているせいか、セリカさんは支離滅裂な事を言う。
セリカさんと目を合わせる事に耐えれなくなった俺は一瞬だけ視線を逸らした。
その先ではジャイアントゾンビとの交戦が続いている。
既に両腕を破壊され、それでも主を守ろうと俺の元へ向かおうとするが、エリクさん、セフィアさん、ルッカさんの手によって完全に阻まれ一向に叶わない。
「自分のせいで人が死ぬのは嫌だから。 明確な敵では無い事が分かった以上助けない理由はありません」
「ふざけんな! 何偽善ぶってるんだ! お前はこれ以上女にモテて何がしたいんだ! 何人の女を泣かせたいんだ! 私に問い詰められながらヒーリング掛けるなバカヤロー!」
「俺は、セフィアさんの命令に従っただけですよ」
これが正しい回答であって欲しい。
「シュバルツサーヴァラーはお前達ヴァイスリッターを敵対視してるんだぞ!」
「人の命を奪い合う戦争してる訳じゃありませんよね? だったら関係ありませんよ」
「どうしてお前達は! 犬っころ含めてそれを自覚しないんだ! まるで私達なんか眼中に無いと言う態度をとりやがる!」
「俺には分かりません」
「私はどうすれば良いんだ! このまま帰ればダスト様に何されるか分からないんだぞ! お前達が情けを掛けたせいでっクソッ!」
セリカさんは怒りの感情を何処にぶつければ良いのか分からない様に見える。
今回、俺達が依頼を請けたせいで彼女が成果を上げられないのかもしれない。
しかし、他のBランク冒険者達が応対すれば済む話。
いや? もしかして、Bランク相手ならば勝てたのかもしれない。
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