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3章
24話「ルミリナのアピール」
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「えへへ、カイルさん? またクッキー焼いたんですけど、食べませんか?」
ルミリナさんが皿に乗せられた黒い物体を手で指しながらにこやかに勧めた。
え? はい? これ、クッキー!?
えーっと、ココアパウダーまぶしてるにしても、チョコレートが入ってるにしてもそれを越える黒色をしているぞ!?
つまり、導き出される結論は派手に焦がしたと言う事になるが。
かと言って目の前には一生懸命作りました☆ と言わんばかりに嬉しそうにしているルミリナさんと、その隣には姉のアリアさん。
出来る事ならそっと気配を消す様に抜け出したいところではあるが無理そうだ。
「なんですと!? へへへ、折角だし僕にも一つ」
と考えてるとエリクさんがすっげー嬉しそうにダークマターと言う言葉がお似合いなクッキーらしき物体に手を伸ばした。
「どうぞ☆」
悪意など欠片も感じられない純白の天使の様な笑顔を浮かべるルミリナさん。
エリクさん、貴方の骨は後で拾ってあげます。
その勇敢な行いは後世までお伝えいたします。
「う」
エリクさんが、無垢な天使が産み出したダークマターを口に含んだ瞬間呻き声を出した。
「え? エリクさん!?」
こ、これってもしやヤバイ事になるんじゃないか!?
俺はテーブルの上に置かれている、水の入ったコップに手を伸ばした。
「うまい! ルミリナさん凄いですよ! この前と言いこんなに美味しいお菓子を作れるなんて! それもこの前は白で今日は黒、色も違って視覚的な楽しみも考慮されてますよ!」
俺の意に反してエリクさんはダークマターに対し美味しいと言う評価を下した。
そうなると、実はこの黒いのは焦げでは無く真っ黒な食材を使ったと考えられるのだが。
「はい♪ お姉ちゃん? あれれ? お姉ちゃんは? もーしょうがないなー、えへへ、カイルさんもどうぞ☆」
何かを察したのか、アリアさんは気配すら見せずこの場を去っていた。
つっ、アリアさんがそうなら俺も抜け出しておけば良かったのかッ!
だがしかし、エリクさんは美味しいと言った。
ルミリナさんの嬉しそうな表情を見る限り、俺もエリクさんに続かねばなるまい。
大丈夫だ、悪いのは見た目だけ、そう、エリクさんが美味しいと言ったんだ!
俺は意を決し、目の前に差し出された暗黒物質へと手を伸ばし口に運ぶ。
「うっ」
「どうですか? カイルさん、美味しいですよね?」
口の中に広がる言葉に出来ない味。
何故これをうまいと言ったのだろう? 俺に教えてくれエリクさん。
嗚呼エリクさんの声がうっすらと聞こえてくるが何を言っているのか分からない。
バタッ!
薄れゆく意識の中、俺は地面に倒れこんだ。
「カイルさん? お昼寝ですか? そんなところで寝てしまったら風邪ひいちゃいますよ?」
「カイルさんも疲れてますからね、僕がベッドまで運びますよ!」
エリクさんとルミリナさんが何か言っているみたいだ。
俺は誰かに担がれて。
ここで俺の意識は遠のいた。
「ここは?」
気が付くと天井が見えた。
「ヴァイスリッターの休息室、カイル? 君は一体何をしたのかしら? 聞いた話だと、ルミリナさんのクッキーを食べたら床で寝始めたらしいけど」
ルッカさんが、少しばかり心配そうに顔を覗き込んだ。
「いや、その」
どうする? 正直に言うとルミリナさんの名誉を傷付けてしまいそうだが。
「どうせ、あの娘が作ったトンでもない物を食べたらこうなったんじゃないの?」
妙に鋭い。
「別に良いわ、ギルドマスターにお願いされて仕方なく君の所にやって来ただけだから、明日エリクさん、セフィアさんと一緒に遺跡の調査を行ってくれだって」
仕方なくって割には心配そうな顔していたけど、本人がそういうのならそうなんだろう。
「分かった、有難う」
「ご飯まだでしょ? ここに置いてあるから、それじゃあね」
用件を終えたルッカさんはそそくさと立ち去った。
ご飯、かぁ、そう言えば腹減ったなえっと、あれはサンドイッチだね。
有難く頂戴しよう。
美味いって何なんだろう? 少しだけ疑問に思う。
当たり前の様に作られる当たり前の味、違和感無く食べる事が出来る味。
分かる様で分からないな。
それはそうと、遺跡の調査、一体何をするんだろう?
取り合えずエリクさんの元へ向かおう。
―シュヴァルツ・サーヴァラー―
「おいテメェ! もっとマシなモンはねぇのかよ!」
以前ネクロマンス法を扱う事の出来る杖を渡された悪魔に対し悪態を突くのはダストだ。
「無いな、お前達の魔力ではあれ以上の力を持つ物は無い」
「ケッ! 使えねぇ奴だなッ!」
「そう急かすな。 お前が調査してる賢神の石の在処が分かった」
悪魔は賢神の石の在処をダストに伝えた。
「チッ。封印されてるなんざ、使えねぇ野郎だ」
「魔王様の言う通り貴殿は魔族よりも魔族らしいな」
「ハッ。俺様を褒めても何も出ねぇぞ」
ダストは魔族の皮肉に気が付いていない様だ。
「封印解除の道具を集めるか、他の人間が封印解除した所を強奪する事を勧める」
「フン。オメーも悪魔だけの事はあんだな」
「左様であるか」
ダストの誉め言葉を受け取った悪魔は照れ隠しをした様だ。
「まっ、他の奴等が封印解くまでテキトーにしてよーぜ」
「仰せのままに」
ダストは引き続き賢神の石についての調査を始めた様だ。
―ヴァイス・リッター―
「カイルさん、起きましたか? 床で寝たら駄目ですよ? 眠くなったら休息室で休んで下さいね」
「は、はい」
休息室から戻ると、エリクさんが心配そうにしてくれた。
少なくともアレを美味いと言ったエリクさんの前で、今回の件がルミリナさんのせいだと言うのはどうも気が引ける。
仕方ないがここは黙っておくしかないみたいだ。
「えっと、ルッカさんから聞いたと思いますが」
ここから明日の調査についてエリクさんから説明を受けた。
なにやらこの遺跡から強力な魔力を感知したらしく、その要因を調べてくれとの事だ。
俺達の仕事は、その要因が魔物であるか道具であるかを調べるだけでよく、討伐や回収と言う作業は別との事だった。
で、明朝ここへ集合し、目的の遺跡へ向かい調査をするとの事だ。
うーん、遺跡から発せられる強大な魔力、ねぇ? 1000年前の何かとかが原因だったらどうしよう? って気にはなる。
ルミリナさんが皿に乗せられた黒い物体を手で指しながらにこやかに勧めた。
え? はい? これ、クッキー!?
えーっと、ココアパウダーまぶしてるにしても、チョコレートが入ってるにしてもそれを越える黒色をしているぞ!?
つまり、導き出される結論は派手に焦がしたと言う事になるが。
かと言って目の前には一生懸命作りました☆ と言わんばかりに嬉しそうにしているルミリナさんと、その隣には姉のアリアさん。
出来る事ならそっと気配を消す様に抜け出したいところではあるが無理そうだ。
「なんですと!? へへへ、折角だし僕にも一つ」
と考えてるとエリクさんがすっげー嬉しそうにダークマターと言う言葉がお似合いなクッキーらしき物体に手を伸ばした。
「どうぞ☆」
悪意など欠片も感じられない純白の天使の様な笑顔を浮かべるルミリナさん。
エリクさん、貴方の骨は後で拾ってあげます。
その勇敢な行いは後世までお伝えいたします。
「う」
エリクさんが、無垢な天使が産み出したダークマターを口に含んだ瞬間呻き声を出した。
「え? エリクさん!?」
こ、これってもしやヤバイ事になるんじゃないか!?
俺はテーブルの上に置かれている、水の入ったコップに手を伸ばした。
「うまい! ルミリナさん凄いですよ! この前と言いこんなに美味しいお菓子を作れるなんて! それもこの前は白で今日は黒、色も違って視覚的な楽しみも考慮されてますよ!」
俺の意に反してエリクさんはダークマターに対し美味しいと言う評価を下した。
そうなると、実はこの黒いのは焦げでは無く真っ黒な食材を使ったと考えられるのだが。
「はい♪ お姉ちゃん? あれれ? お姉ちゃんは? もーしょうがないなー、えへへ、カイルさんもどうぞ☆」
何かを察したのか、アリアさんは気配すら見せずこの場を去っていた。
つっ、アリアさんがそうなら俺も抜け出しておけば良かったのかッ!
だがしかし、エリクさんは美味しいと言った。
ルミリナさんの嬉しそうな表情を見る限り、俺もエリクさんに続かねばなるまい。
大丈夫だ、悪いのは見た目だけ、そう、エリクさんが美味しいと言ったんだ!
俺は意を決し、目の前に差し出された暗黒物質へと手を伸ばし口に運ぶ。
「うっ」
「どうですか? カイルさん、美味しいですよね?」
口の中に広がる言葉に出来ない味。
何故これをうまいと言ったのだろう? 俺に教えてくれエリクさん。
嗚呼エリクさんの声がうっすらと聞こえてくるが何を言っているのか分からない。
バタッ!
薄れゆく意識の中、俺は地面に倒れこんだ。
「カイルさん? お昼寝ですか? そんなところで寝てしまったら風邪ひいちゃいますよ?」
「カイルさんも疲れてますからね、僕がベッドまで運びますよ!」
エリクさんとルミリナさんが何か言っているみたいだ。
俺は誰かに担がれて。
ここで俺の意識は遠のいた。
「ここは?」
気が付くと天井が見えた。
「ヴァイスリッターの休息室、カイル? 君は一体何をしたのかしら? 聞いた話だと、ルミリナさんのクッキーを食べたら床で寝始めたらしいけど」
ルッカさんが、少しばかり心配そうに顔を覗き込んだ。
「いや、その」
どうする? 正直に言うとルミリナさんの名誉を傷付けてしまいそうだが。
「どうせ、あの娘が作ったトンでもない物を食べたらこうなったんじゃないの?」
妙に鋭い。
「別に良いわ、ギルドマスターにお願いされて仕方なく君の所にやって来ただけだから、明日エリクさん、セフィアさんと一緒に遺跡の調査を行ってくれだって」
仕方なくって割には心配そうな顔していたけど、本人がそういうのならそうなんだろう。
「分かった、有難う」
「ご飯まだでしょ? ここに置いてあるから、それじゃあね」
用件を終えたルッカさんはそそくさと立ち去った。
ご飯、かぁ、そう言えば腹減ったなえっと、あれはサンドイッチだね。
有難く頂戴しよう。
美味いって何なんだろう? 少しだけ疑問に思う。
当たり前の様に作られる当たり前の味、違和感無く食べる事が出来る味。
分かる様で分からないな。
それはそうと、遺跡の調査、一体何をするんだろう?
取り合えずエリクさんの元へ向かおう。
―シュヴァルツ・サーヴァラー―
「おいテメェ! もっとマシなモンはねぇのかよ!」
以前ネクロマンス法を扱う事の出来る杖を渡された悪魔に対し悪態を突くのはダストだ。
「無いな、お前達の魔力ではあれ以上の力を持つ物は無い」
「ケッ! 使えねぇ奴だなッ!」
「そう急かすな。 お前が調査してる賢神の石の在処が分かった」
悪魔は賢神の石の在処をダストに伝えた。
「チッ。封印されてるなんざ、使えねぇ野郎だ」
「魔王様の言う通り貴殿は魔族よりも魔族らしいな」
「ハッ。俺様を褒めても何も出ねぇぞ」
ダストは魔族の皮肉に気が付いていない様だ。
「封印解除の道具を集めるか、他の人間が封印解除した所を強奪する事を勧める」
「フン。オメーも悪魔だけの事はあんだな」
「左様であるか」
ダストの誉め言葉を受け取った悪魔は照れ隠しをした様だ。
「まっ、他の奴等が封印解くまでテキトーにしてよーぜ」
「仰せのままに」
ダストは引き続き賢神の石についての調査を始めた様だ。
―ヴァイス・リッター―
「カイルさん、起きましたか? 床で寝たら駄目ですよ? 眠くなったら休息室で休んで下さいね」
「は、はい」
休息室から戻ると、エリクさんが心配そうにしてくれた。
少なくともアレを美味いと言ったエリクさんの前で、今回の件がルミリナさんのせいだと言うのはどうも気が引ける。
仕方ないがここは黙っておくしかないみたいだ。
「えっと、ルッカさんから聞いたと思いますが」
ここから明日の調査についてエリクさんから説明を受けた。
なにやらこの遺跡から強力な魔力を感知したらしく、その要因を調べてくれとの事だ。
俺達の仕事は、その要因が魔物であるか道具であるかを調べるだけでよく、討伐や回収と言う作業は別との事だった。
で、明朝ここへ集合し、目的の遺跡へ向かい調査をするとの事だ。
うーん、遺跡から発せられる強大な魔力、ねぇ? 1000年前の何かとかが原因だったらどうしよう? って気にはなる。
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