Ex冒険者カイル

うさぎ蕎麦

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4章

25話「遺跡を目指して」

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 翌朝。
 何か知らないけどやっぱり今日もルッカさんが俺の家に押しかけて来て朝ご飯を作ってくれた。
 朝ごはんを確保し、そのまま一緒にギルドハウスにやって来て。
 ギルドハウス入り口のドアを開けるとそこには、遠足当日を向かえてウッキウキな子どもでも見てるかの様なエリクさんと、それを見て呆れるセフィアさんが居て。

「おはようございますカイルさん、はぁ、朝から態々非モテの僕に見せ付けるなんてひどいじゃないですか」

 俺とルッカさんを見るや否や深い溜息と共に、急に馬車の運転手が『やっぱり時代は騎乗だ!』と書かれた辞表を提出したせいで馬車の運転手が居なくなって遠足が中止になった事を聞かされ、地の底まで落胆する子どもの様な素振りを見せられた。
 さて、そんなものを見せられてしまったら一体俺が何をエリクさんに見せ付けたんだろう?

「ルッカさん、分かる?」
「それ、今ここで私に聞く?」
「じゃ、セフィアさん、分かる?」
「ウフフ、今日はエリク君をいじりたい気分じゃないのよ」

 うん? 今聞いたらまずい? よく分からん。
 で、聞いたらエリクさんをいじる事になる?
 ますます分からん。

「学校で君がトップだった理由がホント分からない」
「あら? トップだからこそじゃないかしら?」
「そうかもしれませんね」

 この二人が何を言いたいのか俺にはさっぱり分からない。

「うぅ、僕も学生の頃可愛い女の子ともっと触れ合いたかった」
「別に俺も学生時代女性と接して無いですけど」
「そうねッ! カイル、君は勉強熱心だったからね!」
「あら? エリク君も勉強熱心だったじゃない?」
「うぅ、そうですけど」
「ボウヤと同じなんだから気にしたって仕方無いわよ、マスターから小言貰う前にさっさと行きましょ」

 セフィアさんの合図の下、俺達はヴェストタウン近郊にある遺跡の調査へ出発した。
 セザールタウンから南に向かって伸びる街道を歩き続けると、景色が緑溢れる平原から黄色く包まれる砂地へと変貌する。
 そこから更に南へ進むと、砂漠のオアシスと言えるにヴェストタウンの入り口が見えてくる。
 今回の調査対象である遺跡は、そこから広がる砂漠地帯を更に進んだ場所にある。

「さすがね、エリク君」
「いえいえ、僕位のウィザードになればこれ位朝飯前ですよ」

 セフィアさんに褒められて得意気になるエリクさんだ。
 俺達は移動だけでも本来なら1ヶ月近く掛かるだろう道のりを転移魔法の力を使って一瞬で来た以上、エリクさんってすごいんだなぁと改めて思う。

「それにしても暑いわねぇ」

 セフィアさんが服をパタパタとさせながらぶっきらぼうに言い放った。
 この砂漠エリア一帯は日差しを遮る物が全く無く、太陽の光が容赦無く俺達を襲い掛かる。

「そうですか?」
「そうですよ、エリク君?」
「ハハハ、アイスバリアを展開しているからですかね?」

 そうだね、俺もここに着いた瞬間に『氷防壁(アイスバリア)』の魔法を掛けたよ。
 だって、鎧を着てる俺がこんなカンカン照りな日差しを受けたら脱水症状で死んじゃうからね。

「こんなんだから女の子からモテないのよ? ねぇ? お嬢ちゃん?」
「私もそう思います」

 ルッカさんは、俺にべったりとくっつきながらしれーっと答えた。

「お嬢ちゃん?こんな暑い中よくもまぁ、くっつけるわねぇ?」
「カイルですから、まさか、カイルが女の子に対してわざわざ気を遣ってくれる訳ないですよ、どうせ自分にだけアイスバリア掛けてるに決まってますから、それでも魔法の範囲内に入れれば涼しいですよ」

 ルッカさんは、セフィアさんも試してみたら? と言いたげに説明をした。

「フフッ、それもそうね、たまにはこう言うのも悪くないわね」

 セフィアさんがフフッと笑みを見せエリクさんの腕を組もうとした所で、

「アイスバリア! これで皆さん涼しくなれますよ! カイルさんにも掛けてあげましたから! 僕の方が効果高いと思いますよ!」

 エリクさんがみんなに対して『氷防壁(アイスバリア)』を掛けてくれた。
 本来ならエリクさんの厚意に対して皆が感謝をすると思うけど。

「あら? 若い女性じゃなくてごめんなさいね」
「セフィアさん? 僕はセフィアさんも魅力的で素敵な女性と思ってますって!?」

 いやーまぁ、魔法の発動タイミングが悪かったしこれはセフィアさんがからかってるだけだと思うけど、その事に気が付いてないのかエリクさんは妙に慌てた素振りを見せている。
 で、それはそうと、未だに俺にべったりとくっついているルッカさんが気になるんだけど。
 今さっきまで自分達にしか使ってなかったのなら分かるけど、エリクさんがみんなに使ってくれたのだからその必要は無くなったんじゃ? 

「ねぇ、ルッカさん?」
「なぁに~?」

 ルッカさんは嬉しそうな顔をしながら振り向いた。

「いや、何でもない」
「ふ~ん? そう?」
「クスクス、相変わらずボウヤは鈍感ねぇ?」

 近くに居たセフィアさんが小声で呟き、

「うぅ、カイルさんばっかり」

 エリクさんはがっくりと肩を落として口から魂が排出されているかの様にうつむき黄色い砂地に落書きを始めた。

「エリク君、アリアちゃんよ!」

 セフィアさんが虚空を指差した。

「え? え? どこ? 何処ですか!!」

 その僅か0.3秒後、エリクさんはセフィアさんが指差した先をキョロキョロ眺めアリアさんを探し出した。

「嘘よ、嘘、さっ、気を取り直して先に行きましょう」
「はぁ、酷いですよセフィアさん、別に良いですけど」

 エリクさんは深いため息をつくと、ズボンに付いた砂を払いながら立ち上がった。
 セフィアさんの掛け声を受け俺達は調査ポイントへ向かって歩き出した。
 暫く歩いた所で砂漠特有の昆虫型の魔物が姿を現した。
 が、魔物を見るや否や、セフィアさんが颯爽と魔物を狙撃し、エリクさんが魂の抜けた表情で魔法を完成させ攻撃、一瞬の内に魔物達を魔石へ変化させた。

「相変わらず凄いですね!」

 流石ベテラン冒険者の二人だ。
 俺が魔物を見つけて攻撃を始めようと思った頃には殲滅が終わっていたのだから。

「そうねぇ、この辺の魔物はただの雑魚狩りとも言えるけどね」

 俺の言葉を受けて余裕を見せる返事をするセフィアさんと、

「ル、ルッカさん? 見てました? 是非ともお友達に僕の活躍を広めてください」

 魂の戻らないエリクさんが半笑いしているエリクさんだ。
 
「善処致します」

 それから暫くの間砂漠の道を歩き続けた。
 クイックのお陰で比較的快適に移動する事は出来たが、時折見かける空飛ぶ鳥達を眺めながら自分達も空を飛べたら快適だろうなと思っていた。
 それにしても、ルッカさんは相変わらずくっついたままで、エリクさんに至っては延々とネガティブワードを垂れ流しながら魂が戻ってないみたいだ。
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