Ex冒険者カイル

うさぎ蕎麦

文字の大きさ
55 / 105
1章

62話「対面、コボルドキング」

しおりを挟む
「ハッハッハ、作り方が分からないならしょうがないよな!」

 ルミリナさんをフォローするデビッドだ。
 その近くから「チッ残念ね」とルッカさんが小さく呟いたのは気のせいだろうか?
 
「ねぇ、カイル? クッキーが1枚残ってたの」

 どういう風の吹き回しか分からないがルッカさんが唐突にクッキーを1枚差し出した。

「え? 俺? 別にお腹空いてないから要らないよ? ぎゃーーーーー!?!?!?」

 い、と言い切った瞬間ルッカさんの手が俺の腰に触れたかと思った瞬間俺の全身を電流が駆け巡る!
 行き成りの出来事に対し、俺は思わず腰を抑えながらその場にうずくまった。

「カイル? どうしたの? 腰を痛めちゃった? ルッセルさんに相談したら優秀なプリーストを紹介してくれるんじゃないかしら?」

 何食わぬ顔で心配そうにいうルッカさん。
 
「ルッカさん? 俺にはどう考えても【襲来(ライトニングボルト)】を零距離で放たれたように思えるんですけど?」

 無詠唱且手加減はしてるみたいで、ダメージ自体は無いんだけど。

「えー? 何の事かしら? 私はカイルの腰がなんとなーく痛そうな気がしたから撫でてあげただけなのに~?」

 ルッカさんが、目を泳がせながら口笛をひと吹きし、同意を求めるようルッド君に目で合図を送る。

「ククク……カイル君、相変わらずですね……フフフ、ルッカさんの魔法をわざと受けたいとお見受け致します……」
「ルッド君? 俺、そんな趣味無いんだけど」

 魔法を受けて電撃の痛みが残る患部を左手でさすっていると、
 
「はわわわ、わ、私やっぱりクッキーの作り方思い出しました、またお作りしますから食べて下さい!」
 
 ルミリナさんが両手をぱたぱたさせてあわあわとしている。
 ルミリナさんの気持ちは嬉しいんだけど、ルミリナさんのクッキーを食べたいかと言われたら正直……。
 俺は、ひざまいたまま居るデビッドの肩をポンと手を乗せ、

「良かったじゃん、デビッド」
「おうよ! 忘れちまうのは仕方ないからな! 楽しみにしてるぜ!」

 デビッドは顔を上げウィンクとサムズアップをルミリナさんに見せるが、当のルミリナさんは俺の方をちらちらと見ると、
 
「や、やっぱりヴァイスリッターの食材を使うのは良く無いです」

 俺の背中に隠れながら、デビッドに対して申し訳無さそうに言うルミリナさんだ。

「ハッハッハ、クッキーに使う材料位俺が用意するぜ!」

 デビッドが嬉しそうに言うが、ルッカさんは彼をジト目でルッド君は飽きれた表情で彼を見ている。
 
「そ、そんなの申し訳無いです」

 ルミリナさんが俺の背中からひょっこりと顔を出し、力無く返事をする。
 
「ククク……カイル殿もデビッド殿も罪深いモノですね……」
「はぁ、ホントそうよね」

 ルッカさんが呆れながらため息を一つ。
 デビッドは兎も角罪深い事と言われても、俺に心当たりは全く無いんだけど。
 
「と、兎に角中に入ろう、ほら、コボルド達を待たせるのも良く無いと思うしね?」
「クク……それもそうですね、中に入りましょう」

 俺達は『わんわん・ぱらだいす☆』の中へ入った。

「はわわ、コボルドさん達物凄く可愛いですね」

『わんわん☆ぱらだいす』の中に入るとルミリナさんが目をきらきらと輝かせながら、思わずよだれがこぼれてしまいそうな表情をしている。
 その視線の先には、大きなつぶらなひとみでこちらを見つめる数匹の仔コボルドの姿がありヒジョーに可愛らしい姿を見せている。

「し、仕方無いわね私が撫でてあげようじゃないかしら」

 ルッカさんも仔コボルドの可愛さには勝てないみたいで、はやる気持ちを必死に抑えながらもゆっくりと仔コボルド達に近付いていく。
 
「ククク……我々は姫方のお邪魔にならぬよう致しましょうか……」
「そうだね、俺達は適当にくつろいでいようか」

『わんわん☆ぱらだいす』の中は樹々にあふれている。
 柔らかな風が頬をなで、小鳥のさえずりも響きく。
 空より差し込む太陽の光も何処か心地が良く、このまま草むらに寝っ転がり森林浴をたしなめばすぐにでも夢の世界へ連れて行ってくれそうだ。

「わんわんわん」

 案内役のコボルドが何かを言っている。
 これをルッド君が通訳して、

「そうですか……我々は王様と会って欲しいと……」
「それなら会いに行こう」

 ルッド君がコボルド語で案内役に話した。
 俺達からするとルッド君も「わんわん」と言ってる様にしか聞こえなかったが、コボルド達にしか分からない細かな違いがあるのだろう。
 森林浴をしたい気持ちを抑え、俺はコボルドに従い彼が案内する先へ目指した。
 仔コボルドとのふれあいひろばから暫く離れた場所に木製の小屋が建っていた。
 人間からすれば大した事無い小屋であるが、それ以外の小屋と比べれば豪勢であり一応は王様の居城として認める事が出来そうだ。
 案内役がドアをノックし、入り口が開けられた。
 中から出て来たのは従者に値するコボルトの様で、案内役と「わんわん」言い合った所で建物の奥へと案内された。
 ルッド君いわく、我々人間が行っている対応とほとんど変わらないとの事だった。
 建物自体はあまり広く無いのか、入ってすぐ人間からみれば少し良いと思える木製の椅子に座るちょっと偉そうなコボルドの姿が目に移った。
 どうやら彼がコボルドキングの様だ。
 
 コボルドキングは、俺達が近付いた所で椅子から立ち上がると、

「ようこそいらっしゃいましただワン、私がコボルドキングだワン」

 王様にふさわしくない丁重なお辞儀と共に挨拶をした。
 王様とは言え、人間の言葉を話す事が出来る事に少しばかり驚いたが、
 
「カイル・レヴィンと申します、この度は素晴らしき楽園を堪能させて頂いた事を有難く存じます」

 相手方の丁重な対応に対し、俺は丁重な対応で返す。
 
「ククク……やりますね、カイル殿、セザール学園トップはだてではありませんね……」

 ルッド君が、不敵な笑みを浮かべながら同じく丁重なお辞儀を返す。
 
「おう! 俺は、ぐっ、なんだ、身体がしびれ」

 デビッドは相変わらずぶっきらぼうな挨拶をしかけるが、どうやらルッド君がそれを見こしていたらしく、デビッドが口を開いた瞬間懐から吹き矢を取り出しデビッドの首筋に放っていた。
 この間わずか0.2秒、さすがはニンジャの成せる業だろう。
 ルッド君が放ったしびれ薬のぬられた吹き矢を受けたデビッドはそのまま動く事もしゃべる事も出来ず直立不動になる事しか出来なかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

お好きになさって下さい、私は一切気にしませんわ

Kouei
恋愛
婚約者のクレマンド様は、いつも私との約束を破ってばかり。 理由は決まって『従妹ライラ様との用事』 誕生日会にすら来なかった彼に、私はついに告げた。 「どうぞ、私以外のご令嬢をエスコートするなり、お出かけするなり、関係を持つなり、お好きになさって下さい。私は一切気にしませんわ」 二人の想いは、重なり合えるのだろうか …… ※他のサイトにも公開しています。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

【完結】悪役令嬢ですが、断罪した側が先に壊れました

あめとおと
恋愛
三日後、私は断罪される。 そう理解したうえで、悪役令嬢アリアンナは今日も王国のために働いていた。 平民出身のヒロインの「善意」、 王太子の「優しさ」、 そしてそれらが生み出す無数の歪み。 感情論で壊されていく現実を、誰にも知られず修正してきたのは――“悪役”と呼ばれる彼女だった。 やがて訪れる断罪。婚約破棄。国外追放。 それでも彼女は泣かず、縋らず、弁明もしない。 なぜなら、間違っていたつもりは一度もないから。 これは、 「断罪される側」が最後まで正しかった物語。 そして、悪役令嬢が舞台を降りた“その後”に始まる、静かで確かな人生の物語。

処理中です...