Ex冒険者カイル

うさぎ蕎麦

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1章

61話「わんわん☆ぱらだいす2」

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「ワンワン、ワンワン、ワワワンワン(暇だなー国王サマは娯楽施設を作って儲けるって言ってたけどニンゲンが来ると思わないんだなー)」
「ワンワンワン、ワワン(国王サマに逆らうとご飯抜きにされるぞー)」
「ワワンワン、ワンワンワン(それは嫌だなー、でもニンゲンなんて誰も来ないんだなー)」
「ワワワワン、ワン(真面目にやってるフリはしよーぜ)」
「ワンワン(そうだなー、おや? ニンゲンの臭いがするんだなー)」
「ワンワンワワン(まさか? ホントだ近くに人間が居るぞ)」
「ワワンワン(緊張するんだなー)」

 ここで2匹のコボルドの会話が途切れた。
 ルッドはコボルドの会話内容が理解出来たらしく、ここでカイル達の元へ戻った。

「フフフ……どうやら彼等は我々に敵対する意思は無さそうですね……」

 ルッド君は俺達に対してコボルド達の会話を説明した。
 冒険者ギルドの方では、コボルドは問答無用で討伐対象にしていたみたいだけど彼等の話を盗み聞きした限り人間と共存をする方針で平和的に集落を形成したみたいだ。
 そうなるとコボルドキングを討伐する意味も理由も感じられないんだけど。
 
「はわわわ、私達の敵じゃないのにあのワンちゃん達を倒さなきゃダメなんですか?」

 ルミリナさんが悲し気な声をしている。

「私も同意したいところなんだけどね、残念だけどこれは冒険者ギルドからの依頼なのよ」

 ルッカさんからは複雑な気持ちを抱きながらも、冷徹にならなければならないと覚悟を感じる。
 
「ガッハッハ、こまけぇこたぁ気にせず入ろうぜ!」

 デビッドは何も考えてい無さそうだ。

「ククク……カイル殿、冒険者ギルドの依頼は必ず成功させる必要はありませんよ……」

 ルッド君が意味深な事を言う。
 確かに魔物とは言え敵対する気の無い相手を討伐するには少々気が引ける。
 依頼書を見た限りコボルドキングが住民への被害をもたしている情報は無い。
 ルミリナさんじゃないけどコボルドが可愛いって要素が無視できない。
 しかし、討伐に成功しなければ報奨金は手に入らないし、冒険者としての信用等何かしらの悪影響があるかもしれない。
 ルッド君の言葉が気にするなら、デビッドの言う通り、入るだけ入ってみて次の事を考えて良いかもしれない。

「これだけじゃ情報が少ないし、入ってからまた考えよう」

 俺の意見は誰も反対せず、俺達は『わんわん☆ぱらだいす』の入り口に向かった。
 
「わんわん☆」
「わわんわんわん♪」

 俺達が近付くと、門番のコボルドが目をキラキラと輝かせながら、わんわん吠えている。
 しっぽもフリフリしてるところからも、ルッド君の言う通り彼等が敵対する意思は無さそうだ。
 
「おお、俺達を歓迎してるみたいだな!」
「クク……それで間違いありませんよ……」
「なら入ってみよう」

 デビッドは兎も角、ルッド君の意思を尊重し俺達は『わんわん☆ぱらだいす』の中へ入ろうとする。
 
「わんわん!」

 と、コボルドが入り口をふさいで手を伸ばした。
 
「フフフ……入場料が必要みたいですね……」
 
 確かにテーマパークみたいな雰囲気だからな。
 俺は道具袋をあさりお金を取り出し門番に手渡す。

「わんわん」

 お金を受け取ったコボルドは中に入れと言う仕草を見せた。
 
「ククク……ルッカ殿、携帯性の高いお菓子は持ち合わせていませんか……?」
「少し位あるわよ? ルッド君? お腹空いたの? 早く言ってくれれば良かったのに」

 ルッカさんは道具袋の中からクッキーを取り出しルッド君に手渡した。
 
「クク……大した物じゃありませんが……」

 ルッド君はルッカさんから受け取ったクッキーを門番のコボルドに、入場料と一緒に渡した。
 
「わんわんわん☆」

 コボルドは目を輝かせ、よだれを垂らしながらクッキーを受け取ると半分仲間に渡し早速食べた。
 
「フフフ……彼等は獣人ですからね、お金も大事ですけど食べ物も大事なのですよ……さて、コボルド殿、中の案内をして頂いてもよろしいですかね……」
 
 ルッド君の言葉は後半部分がよく分からない言語が並べられた気がしてよく分からなかったが。
 なるほど、確かにルッド君の言う通りだ。
 彼の、こういう細かい気遣いは凄いと思う。

「何処かの誰かもルッド君見習ってほしいモノね」

 とルッカさんが普段よりも小さいが周囲には十分聞こえる声でルミリナさんに言う。
 
「うぐっ、お、俺だって配慮しているつもりだぜ!」

 ルッカさんの言葉が胸を貫いたのか、デビッドが息絶え絶えに言葉をつむぎだした。
 
「あら? 聞こえちゃったの? ごめんなさいね、私は貴方に言ったつもりは無いわ、安心して下さい」

 ルッカさんはどこか刺々しい言葉でデビッドを迎撃した。
 あれ? 今の言葉デビッドに対してじゃないの? なら俺の事?気遣いか。確かにこのおかげで門番のコボルドに中の案内してもらえる様になったし、覚えておいて損が無いのかな?
 うん? デビッドの奴、また地面にひざまづいてるぞ? ルッカさんは謝ってるのに、不思議な奴だ。

「ククク……コボルド殿は中を案内してくれるみたいですよ……ルッカ殿の調理手腕は手練れているみたいですね……」
「あらそう? それなら残ってるクッキーはルッド君にあげるよ?」

 平静を装っている様だけど、何処か嬉しそうな雰囲気を隠し切れないルッカさんは、ルッド君にクッキーを渡した。

「ぐうぅ、お、俺にもクレ」

 と深淵から気合と根性を振り絞って立ち上がろうとするデビッドであるが。

「今度ルミリナちゃんから貰えば良いんじゃない?」

 何故かデビッドをばっさりと斬り捨てないルッカさんだ。
 ルミリナさんが作るクッキーと言えば、最早|暗黒物質(ダークマター)と化した黒い物体だけど。
 でも、エリクさんは美味しいと言って食べてたんだ。
 ならば、ルミリナさんが作ってくれたクッキーならデビッドは喜んで食べるだろうね。
 なるほど、実はデビッドに対して可愛い女の子に触れる機会を作ってくれたのか。
 へぇ、ルッカさん、ああ見えて意外と優しい一面があるんだな。
 俺はルッカさんの一面に対し感心した訳だが、

「あわわわわ!? わ、わたしクッキーの作り方分かりません、その、ご期待にそえる事が出来無くてごめんなさい」

 物凄い勢いで、デビッドに向かってペコペコと何度もお辞儀をしながら謝る、ルミリナさんだ。
 急にクッキーの作り方を忘れてしまったのは歩き疲れたからなのだろうか?
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