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1章
60話「わんわん☆ぱらだいす」
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―セザール平原―
コボルドキングの討伐へ向かった俺、ルッカさん、ルミリナさん、デビッド、ルッド君の5人は目的地に向け歩き続け3時間程経過していた。
セフィアさんやエリクさんと同行してる時は、転移アイテムや魔法の力で目的地まであっという間だった事が少しばかり恋しく思ってしまう。
長距離歩行も訓練の一環と割り切ろうと俺は割り切ったのだけど。
「なぁ、ルッド、目的地はまだか?」
ツンツン頭の、脳筋ファイターデビッドが額に流れる汗を拭いながらぼやく。
確かに、デビッドの言う通り目的地の具体的な場所と移動時間を把握していない。
ゴールが見えない状況で歩き続けるのは精神的にキツイ気がする。
「ククク……もうじき付きますよ……」
異国のレンジャー職、ニンジャとやらを研究し目指している黒装束に身をまとうルッド君が遠くを指差した。
「もうじき着く? まっ、こまけぇこたぁいいぜ、とっととコボルドキングをとっちめてやろうぜ!」
デビッドはルッド君の言い回しの違和感に気付いたみたいだが何事も無かったかの様にスルーした。
「カイルさんは鎧を着てますし大変ですよね、私はプリーストだから身軽ですけど……」
俺を気遣ってくれるルミリナさんだ。
これ位どうって事無いんだけど、それでも気遣われるだけでどこかルミリナさんが天使に見えて来る様な気がしてくる。
「有難う、この位……」
俺がルミリナさんへ返事の途中でルッカさんが俺とルミリナさんの間に割り込んで、
「ルミリナちゃん? あのカイルがこの程度で何とも思うワケ無いわよ? あんな奴の心配する自体時間の無駄よ?」
何だか心にチクチクと突き刺さる様な事を言われてしまう。
「そうだね、クイック使って歩行速度上げたりパワーアップ使って筋力量増やして装備重量の負担を軽減してるし」
「そうだそうだ、ルッカちゃん。カイルを心配するだけ時間の無駄だぜ」
デビッドが、しれーっとルッカさんの肩に触れようとするが。
「ねぇ、ルッド君。この人誰? 私思い出せないんだけど」
華麗な身のこなしを見せ、デビッドから距離を取りルッド君の耳元で囁いた。
「うぅ、くそぅ、どうせ俺なんて」
デビッドは地面にひざまづき項垂れた。
物凄く精神的ダメージを受けているかのように見えるデビッドであるが、学生時代の彼はエリクさんと似た様に大の女好きで、エリクさんとは違うが積極的に女の子にアプローチをし、即お断りされていた。
その数500とかなんとか。
あくまで俺が知る限りの話だから実際にはもっと多かったのかもしれない。
それでもめげずに挑戦し続ける根性は凄いと思うが。
「ククク……日ごろの行いは正直ですからね、仕方ありません……」
ルッド君がさりげなく鋭い一撃を放ちデビッドに追撃を入れた。
ルッド君の一言が致命傷になったのか、デビッドは力尽き地面に対しうつ伏せに倒れる形となった。
「えっと、その、デビッドさん? 地面で寝てしまうと風邪を引いてしまいますよ?」
ルミリナさんが、デビッドを腫れ物の様に扱うかの様に後退りながらも気遣いの意を見せる。
幾らデビッドとは言え、目の前で倒れる人間を無下に出来ないのはルミリナさんの優しさなのだろう。
「心配しなくても大丈夫だよ。デビッドの精神力はセザール学園一だからさ」
「ククク……僕の計算では後30秒もあれば彼は起き上がりますよ……何事も無かったかの様に……」
「そういう事。おしりの軽い男なんてほっとけば良いのよ」
デビッドの扱いに慣れている俺達が、ルミリナさんに対し遠回しに気遣わないで良い事を告げる。
「はい、皆様がおっしゃるのでしたら、その、大丈夫ですよね」
ルミリナさんが、デビッドから更に距離を取り視線を上げた。
そこで、何かに気が付いたのか遠くを指差しながら表情を明るくさせた。
「あの、遠くに可愛いワンちゃんが見えます」
ルミリナさんが指差した先を見ると犬の姿が見えた。
ただし、レザーアーマー等装備品を身に付けた2足歩行であるが。
「ルミリナさん? あれはワンちゃんじゃなくてコボルドですよ?」
「カイル? 可愛い女の子がワンちゃんって言ってるのよ? 素直にワンちゃんって言ったらどうなの?」
ルッカさんの口調が少々キツイ。
「そうだぞ! カイル、ルッカちゃんが言う通り、ルミリナちゃんに合わせないのは男としてどうかと思うぞ!」
デビッドが急にむくりと立ち上がり、ここぞと言わんばかりにルッカさんの味方をしやがる。
「ククク……丁度30秒ですね」
ルッド君が呟きが俺の耳に入る。
「ルミリナちゃん。やっぱりコボルドをワンちゃんなんて可愛く言うのはナシね、あいつ等はあくまで獣人なんだから、甘く見たらだめよ」
急に手の平を返すルッカさん。
まさか、デビッドと同じ意見なのが気に入らなかったのだろうか?
おや? デビッドの奴、またひざまづいて項垂れてるぞ? ショックを受けたのか?
「ククク……ルミリナ殿の言う事はあながち間違いでは無いかも知れませんね……」
ルッド君に言われ、目を凝らしてみると『わんわん☆ぱらだいす』と書かれた看板が見えた。
どうもそれがコボルド達の集落への入り口みたいで、近くには門番らしきコボルドが居る。
しかし、彼等はあくびをしたり雑談していたりと門番としてのやる気を感じられない。
ちょっとばかりふぬけた感じでペットと言われてしまったら思わずうなずいてしまいそうだ。
なんだか愛くるしく見えて来たな、ルミリナさんが言う通り可愛いワンちゃんって言葉が似合うよ。
「えーっと、こいつ等討伐するんだよな?」
冒険者ギルドから依頼を請けた以上、可愛いからと討伐をためらうのは冒険者としてはよろしくないと思うんだけど。
俺の考えと同じくルミリナさんとルッカさんも討伐に乗り気じゃなく、デビッドはひざまずいてる中何故かやる気満々な空気を出して、ルッド君は相変わらず何考えてるか分からない。
「ククク……僕が様子を伺って参りますよ……」
ルッド君はスッと周りの景色と同化すると『わんわん☆ぱらだいす』の入り口を守るコボルドの門番へ近付いた。
コボルドキングの討伐へ向かった俺、ルッカさん、ルミリナさん、デビッド、ルッド君の5人は目的地に向け歩き続け3時間程経過していた。
セフィアさんやエリクさんと同行してる時は、転移アイテムや魔法の力で目的地まであっという間だった事が少しばかり恋しく思ってしまう。
長距離歩行も訓練の一環と割り切ろうと俺は割り切ったのだけど。
「なぁ、ルッド、目的地はまだか?」
ツンツン頭の、脳筋ファイターデビッドが額に流れる汗を拭いながらぼやく。
確かに、デビッドの言う通り目的地の具体的な場所と移動時間を把握していない。
ゴールが見えない状況で歩き続けるのは精神的にキツイ気がする。
「ククク……もうじき付きますよ……」
異国のレンジャー職、ニンジャとやらを研究し目指している黒装束に身をまとうルッド君が遠くを指差した。
「もうじき着く? まっ、こまけぇこたぁいいぜ、とっととコボルドキングをとっちめてやろうぜ!」
デビッドはルッド君の言い回しの違和感に気付いたみたいだが何事も無かったかの様にスルーした。
「カイルさんは鎧を着てますし大変ですよね、私はプリーストだから身軽ですけど……」
俺を気遣ってくれるルミリナさんだ。
これ位どうって事無いんだけど、それでも気遣われるだけでどこかルミリナさんが天使に見えて来る様な気がしてくる。
「有難う、この位……」
俺がルミリナさんへ返事の途中でルッカさんが俺とルミリナさんの間に割り込んで、
「ルミリナちゃん? あのカイルがこの程度で何とも思うワケ無いわよ? あんな奴の心配する自体時間の無駄よ?」
何だか心にチクチクと突き刺さる様な事を言われてしまう。
「そうだね、クイック使って歩行速度上げたりパワーアップ使って筋力量増やして装備重量の負担を軽減してるし」
「そうだそうだ、ルッカちゃん。カイルを心配するだけ時間の無駄だぜ」
デビッドが、しれーっとルッカさんの肩に触れようとするが。
「ねぇ、ルッド君。この人誰? 私思い出せないんだけど」
華麗な身のこなしを見せ、デビッドから距離を取りルッド君の耳元で囁いた。
「うぅ、くそぅ、どうせ俺なんて」
デビッドは地面にひざまづき項垂れた。
物凄く精神的ダメージを受けているかのように見えるデビッドであるが、学生時代の彼はエリクさんと似た様に大の女好きで、エリクさんとは違うが積極的に女の子にアプローチをし、即お断りされていた。
その数500とかなんとか。
あくまで俺が知る限りの話だから実際にはもっと多かったのかもしれない。
それでもめげずに挑戦し続ける根性は凄いと思うが。
「ククク……日ごろの行いは正直ですからね、仕方ありません……」
ルッド君がさりげなく鋭い一撃を放ちデビッドに追撃を入れた。
ルッド君の一言が致命傷になったのか、デビッドは力尽き地面に対しうつ伏せに倒れる形となった。
「えっと、その、デビッドさん? 地面で寝てしまうと風邪を引いてしまいますよ?」
ルミリナさんが、デビッドを腫れ物の様に扱うかの様に後退りながらも気遣いの意を見せる。
幾らデビッドとは言え、目の前で倒れる人間を無下に出来ないのはルミリナさんの優しさなのだろう。
「心配しなくても大丈夫だよ。デビッドの精神力はセザール学園一だからさ」
「ククク……僕の計算では後30秒もあれば彼は起き上がりますよ……何事も無かったかの様に……」
「そういう事。おしりの軽い男なんてほっとけば良いのよ」
デビッドの扱いに慣れている俺達が、ルミリナさんに対し遠回しに気遣わないで良い事を告げる。
「はい、皆様がおっしゃるのでしたら、その、大丈夫ですよね」
ルミリナさんが、デビッドから更に距離を取り視線を上げた。
そこで、何かに気が付いたのか遠くを指差しながら表情を明るくさせた。
「あの、遠くに可愛いワンちゃんが見えます」
ルミリナさんが指差した先を見ると犬の姿が見えた。
ただし、レザーアーマー等装備品を身に付けた2足歩行であるが。
「ルミリナさん? あれはワンちゃんじゃなくてコボルドですよ?」
「カイル? 可愛い女の子がワンちゃんって言ってるのよ? 素直にワンちゃんって言ったらどうなの?」
ルッカさんの口調が少々キツイ。
「そうだぞ! カイル、ルッカちゃんが言う通り、ルミリナちゃんに合わせないのは男としてどうかと思うぞ!」
デビッドが急にむくりと立ち上がり、ここぞと言わんばかりにルッカさんの味方をしやがる。
「ククク……丁度30秒ですね」
ルッド君が呟きが俺の耳に入る。
「ルミリナちゃん。やっぱりコボルドをワンちゃんなんて可愛く言うのはナシね、あいつ等はあくまで獣人なんだから、甘く見たらだめよ」
急に手の平を返すルッカさん。
まさか、デビッドと同じ意見なのが気に入らなかったのだろうか?
おや? デビッドの奴、またひざまづいて項垂れてるぞ? ショックを受けたのか?
「ククク……ルミリナ殿の言う事はあながち間違いでは無いかも知れませんね……」
ルッド君に言われ、目を凝らしてみると『わんわん☆ぱらだいす』と書かれた看板が見えた。
どうもそれがコボルド達の集落への入り口みたいで、近くには門番らしきコボルドが居る。
しかし、彼等はあくびをしたり雑談していたりと門番としてのやる気を感じられない。
ちょっとばかりふぬけた感じでペットと言われてしまったら思わずうなずいてしまいそうだ。
なんだか愛くるしく見えて来たな、ルミリナさんが言う通り可愛いワンちゃんって言葉が似合うよ。
「えーっと、こいつ等討伐するんだよな?」
冒険者ギルドから依頼を請けた以上、可愛いからと討伐をためらうのは冒険者としてはよろしくないと思うんだけど。
俺の考えと同じくルミリナさんとルッカさんも討伐に乗り気じゃなく、デビッドはひざまずいてる中何故かやる気満々な空気を出して、ルッド君は相変わらず何考えてるか分からない。
「ククク……僕が様子を伺って参りますよ……」
ルッド君はスッと周りの景色と同化すると『わんわん☆ぱらだいす』の入り口を守るコボルドの門番へ近付いた。
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