Ex冒険者カイル

うさぎ蕎麦

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1章

44話「魔将軍出撃」

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 ―魔王城―


 魔王は謁見の間中央部に、配備される玉座に鎮座し目の前には部下である魔闘将ルカンが片膝を付き敬意を示している。

「魔闘将よ、うぬは【闘神の斧】に興味はあるか?」
「はっ、御座います」
「ならば【闘神の斧】はうぬに任せよう、入手方法はダストに聞くが良かろう」

 魔王が指を鳴らし謁見の間、壁際に待機するダストへ合図を送る。
 合図を確認したダストが、少々気怠そうな雰囲気をまといながらもルカンの隣へやって来た。

「チッ、俺様は療養しろと言われたっつーのに」

 【賢神の石】を持つ慢心からか元の性格か分からないが、ダストは魔王を目の前であるにもかかわらず悪態を取った。

「【闘神の斧】の在処はどこだ?」
「態々呼び出したと思ったらそんな下らねぇ事かよ、チッ、しかたねぇ、ルッセルに復讐する為に教えてやるだけだからな? 勘違いするんじゃねぇぞ?」

 ダストは【賢神の石】に触れ意識を集中させ斧のアーティファクト【闘神の斧】の在処を探る。
 
「炎獄の谷だ、そこに【闘神の斧】がある。どうせこの斧はルッセルの野郎も目を付けてるだろ、奴が見付けた所を奪っちまえ」

 ダストはケッケッケとルッセルを嘲笑する

「フン、小癪な戦術だな、俺はその様な事は好かん」

 闘将であるが故に正義感とやらが健在する為か、ルカンはダストが提案した【闘神の斧】略奪の案に反対の様だ。

「なんだぁ? おめぇ魔族の癖に甘っちょろいぜ? テメーが見付けたってルッセルの野郎は正義だのなんだの振りかざしてテメーをぶっ殺してでも奪うに決まってんだろ」

 どんな綺麗事を並べても、やっている事の根本は変わらない。
 そう考えたダストは、人間とはなんと愚かなモノなのかと考えを過らせる。
 その為、少しばかりイラつきを覚えてしまった様だ。
 
「ふむ。貴様の言い分も一理あるな」
「全くふざけた話だ、俺様みてぇに汚い言葉を吐けば何をやっても悪者扱いで、ルッセルの野郎みてぇに綺麗な言葉吐けば何をやっても正義扱いだかんな」

 ダストは腕を組み人間がいかに理不尽な生物かと言いたげに右足で地面をコツコツとならす。

「貴様にしては珍しく興味深い話をしてくれる」
「ハッ、俺様をおだててた所で何も出さねぇぞ」

 魔将軍に褒められたダストは調子が狂うと言わんばかりに首を左右に小さく振った。
 
「そんなつもりは無いがな、では【闘神の斧】がある場所に向かうとする」
「ふん、転移魔法程度なら掛けてやらんことも無いぞ」

 ダストは魔将軍ルカンに向けていた視線を少しそらしながら小声で言った。

「フッ、では準備が整い次第ありがたく掛けてもらおうとしよう。丁度俺もその場所に辿り着く方法を悩んでいたところだ」

 魔闘将ルカンはどこか不器用なダストの背中をポン、と叩くと【闘神の斧】を入手する為の準備を整える為謁見の間を後にした。


―ヴァイスリッター―


 ヴァイスリッターの会議室には、ルッセルとエリクとセフィアが部屋の中央に配置されてる円卓に適切な位置で座っていた。

「お二人共、炎獄の谷はご存じですね?」
「あら? マスター? あんな暑い場所に行くなんて、ピクニックにでもするのかしら?」

 どうやらセフィアにとって炎獄の谷は無価値なのだろう。サラっと茶化した。
 
「ははは、炎獄の谷でのピクニックも面白そうですね」
「まさか? 冗談よ? 砂漠でさえ暑くて適わないわよ」
「フフッ。私も冗談ですよ」

 ルッセルが人差し指を立てながら笑顔を見せる。

「それもそうね。 それで? わざわざ私とエリク君を呼んだのだから重要な事があるのでしょう?」
「はい。学長より、どうやら2つ目のアーティファクト【闘神の斧】が炎獄の谷にあるとの報を受けました」
 
 ルッセルの口より放たれたアーティファクトと言う単語に対し、セフィアとエリクが顔を強張らせ緊張の色を見せる。
 
「炎獄の谷、ねぇ?」
 
 セフィアが1つため息をつき、

「私達が行く必要あるかしら? Aランクの冒険者なら余裕で行けるわよ?」
「セフィアさんの言う通り、しっかりとしたパーティならBランクの冒険者でも大丈夫です」
「なら、どうして?」

 セフィアが疑問に思い、ルッセルに尋ねると代わりにエリクが少々得意気に答えた。

「フフフ。それは、魔族と繋がるスパイがいるかも知れないから信用の出来る我々に依頼が舞い降りたのですよ!」

 得意気に説明するエリクとは裏腹に、セフィアは少々冷めた気配をまといながら、

「エリク君の言う通り、スパイの可能性はあるわね」
「ベテランレンジャーのセフィアさんがその事に気が付かないのは意外ですね」
「しかたないじゃない、暑い上に楽しくもない場所に行かされる事を考えるだけで憂うつになるんだから」

 またしても、セフィアはため息をつく。
 お宝を探す事を生業とするレンジャーにとっては仕方のない事なのだろう。
 
「ははは。セフィアさんらしいですね。今回の作戦に私も同行します。また、修行を兼ねてカイルさんも同行させますが、異論はありますか?」
「無いわ」
「僕もです」

 セフィアもエリクも、カイルの同行について悩む事無く賛同した。

「予想通りで何よりです。続いて、アリアさんの同行について如何でしょうか?」
「確かに悩むわね。アリアちゃんプリーストなのよね」
「そうですね。しかし、一般的なパーティに1人は欲しい存在です」
 
 アリアの同行に関して、ルッセルが迷う様にセフィアも迷いを見せている。

「アリアさんに関しては僕の方でウィザードの魔法を教えてます。僕の支援魔法もありますし大丈夫だと思います」

 エリクが真面目に言うが、

「へぇ? エリク君? アリアちゃんと一緒に冒険したいもんねぇ?」

 セフィアがクスクスと笑いながらエリクの腕をつつき、からかう。

「それは否定しませんよ、クールビューティーで美しき少女! アリアさんと共に冒険するのは僕達男の憧れですから!」

 こぶしを握り締め、鼻息を荒くしながら力説するエリクである。

「ふーん? セリカちゃんは良いのかしら?」
「セセセ、セリカさんは特別ですよ! アリアさんの魅力の話は別ですって!?」

 セフィアより痛い所を付かれたエリクは身振り手振りであたふたとし出す。

「ははは。アリアさんは美しいですからね、魅了されてしまう事は仕方がありません。エリクさんが私情で物事を判断するとは思えませんし、アリアさんの同行も問題無いでしょう。それでは、近い内に出発しますので宜しくお願いします」

 打ち合わせを終えた3人は会議室を後にしたのであった。
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