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2章
71話「魔闘将ルカン、炎獄の谷にあらわる」
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「もし落ちたらどうなるのかしら?」
とセフィアさん。
普通に考えれば全身が燃え尽きる以外の回答は無いと思いたいが、エリクさんの話聞いた限りそれは無さそうだ。
「そうですね! クイック等の補助魔法が掛かってる状態でしたら水中と同じ感覚で特に不自由の無い移動が可能と思いますよ、あ、その時はウィンドバリアの展開で呼吸の確保を忘れずにして下さい」
まるで、折角なので落ちて溶岩の川を泳いでる姿を見たいと言いたげだ。
「へぇ、それは面白そうな話ね」
こちらはこちらで、見ている分にはと言いたげなセフィアさん。
俺は愛想笑いを浮かべつつ、万が一の事を考慮し『風防壁(ウィンドバリア)』を全員に掛けておいた。
そこから更に奥地に進み、様々な炎属性の魔物と俺だけひいひい言いながら対峙させられた。
しかし、その都度エリクさんから便利なアイテムを支給され俺の身体は心身共に問題の無い状態に回復されるのだった。
「それにしても、例のブツは何処にあるのかしら?」
セフィアさんがぽつりと言う様に、炎獄の谷に入ってからかなりの時間が経過するが、闘神の斧が姿を見せる気配すら無い。
「アーティファクトですからね、最深部にあるんじゃないですか?」
ここが何度も調査しているエリアであり、学術的な発見のない状況に置かれてエリクさんの意欲も薄れてきているみたいだ。
「それもそうねぇ、だからと言って転移魔法でパパっと行って実は道中に落ちてましたとかあるのよねぇ」
セフィアさんも同じく意欲が薄れてきているみたいだ。
「アーティファクトレーダーなんてものがあったら便利ですよねぇ」
「そうね、出来れば精度の高いモノがあれば言う事無いわね、それがあるだけで無駄な調査も不要になるわ」
非常にやる気のない声で会話をする二人に対しルッセルさんが、
「それは名案ですね、一度上の方に提案してみたら面白そうです」
「あ、いえ、ただの冗談ですから」
「そうですか? セフィアさんの言う通り無駄な調査を省けますし、本国の学者が力を合わせれば実現出来る可能性は十分ありますよ、何より提案するだけならタダですし」
謙遜するエリクさんに対し、ルッセルさんは本気の様だった。
「ははは、そうですね、もし実現出来たのでしたら我々ももっと早く動けますしね」
こう言った些細な情報もしっかりと拾う事もルッセルさんの良いところなのだろう。
そう考えながらふと視線を上げると滞空する何かの影を視界に捉えた。
「あそこにどこかで見た事ある魔族が見えるんですけど」
「魔族ですか? 火の鳥じゃなくて?」
俺の言葉に対してエリクさんが疑問に思いながらも目を凝らしてみている。
「あら? 本当ねぇ? 魔族みたいなのが居るわ、こんな所に何の用かしら?」
セフィアさんはレンジャーだけあってすぐに捉えたみたいだ。
「ふむ、もしかしたら闘神の斧を探しに来た魔族かもしれませんね、セフィアさん狙撃は出来ますか?」
「ダメね、私達の気配に気付かれたみたいで逃げられたわ」
「そうですか、それは仕方がありませんね、魔族の部隊が居る事を想定して行動しましょう」
ルッセルさんが注意喚起をし、俺達は更に先に進む事になった。
*魔闘将ルカン*
「るるる、るかんさまぁああああ! 人間の部隊を見付けましたぁぁぁ」
先程カイル達が見付けた魔族が自らの上官、魔闘将ルカンに報告をしに戻って来た。
「貴様、部隊を離れるなと言っただろう、迂闊な行動は死を招くだけだぞ!」
「ひ、ひいいい、申し訳ありません、ですが人間の部隊がああああ」
ルカンに叱責された魔族は更に取り乱している。
「そうか、だが人間の部隊がここを訪れるのは珍しくないぞ」
「そそそ、そうですけどー! なんか、すっげー強そうな奴等だったんですよ! わたくしめがこの前戦った奴を同行させてたんですからそいつ等は絶対強いんですって!」
「何が言いたいのだ?」
「ですから、ここに来るには弱い人間を引き連れてる人間は強い訳でして!」
「そうか、貴様をここに引き連れた俺と同じと言う訳か」
「そうですそうです、そんな感じであります!」
自分の意図が伝わったと感じた魔族はルカンに対し敬礼をした。
「俺と同じ強さの人間か、ふっ、この冒険に1つ楽しみが出来たな」
「るるるルカン様!? つ、強そうな人間は全部で3人居ましたよ! ナイトって呼ばれる奴にレンジャーにウィザードに、それも強そうな奴ですよ!?」
「ほう? 3体1か、それも悪く無かろう」
「ひいいい、む、無茶ですよ!? あいつ等のオーラはやばかったっすよ!? あ、そ、そうですよね! 残り二人は弱そうでしたからそいつ等を人質に取るんですね!」
魔族はルカンに名案を提示したつもりだが、
「貴様ッ! 俺を愚弄するつもりかッ!」
ルカンの逆鱗に触れてしまい一喝されてしまう。
「ももも、申し訳ありませんッ、その様なつもりは御座いませんんんッ」
魔族は土下座をし、ルカンの許しを乞うた。
「ふん、俺を案じて言った事は評価してやる」
ルカンは小型の玉を取り出した。
「あ、有難うございますッ」
「ダストから帰りはこれを使えと貰っている、転移魔法が込められた玉だ。 いざとなればこれを使い帰るつもりだ」
「そうですよね、そうで御座いますよね、流石ルカン様でございます! 準備は万全でありますよね!」
「フッ、あまり部隊から離れるなよ」
魔族の賛美に対し気を悪くし続けるのも良く無いと思ったルカンは魔族の肩にそっと手をおいた。
「ハッ! かしこまりましたであります!」
魔族は再度敬礼をすると、引き続き部隊上空からの視察を続けた。
*
炎獄の谷の最深部は、周囲を炎で包まれた崖に囲まれたエリアだった。
ここでしか産み出されない特殊な鉱石があるらしく、セフィアさんは一応それを採取し懐にしまい込んだ。
彼女からしたら殆ど価値を感じられないが何も手に入れないよりはマシとの事だった。
エリクさんいわく、やはりこの炎獄の谷にも分不相応な挑戦だの準備不足だのが原因で全滅してしまうパーティもそれなりに居るとの事だった。
ウィザードを連れて行かずにアイスバリアもウィンドバリアも展開されないまま魔物の襲撃等が原因となり崖から転落し、溶岩の川に落ちてしまう冒険者も居るみたいだ。
当然転落してしまった冒険者は命を落す事になるが、中には気合と根性で生還したファイターも居るとかなんとからしい。
とセフィアさん。
普通に考えれば全身が燃え尽きる以外の回答は無いと思いたいが、エリクさんの話聞いた限りそれは無さそうだ。
「そうですね! クイック等の補助魔法が掛かってる状態でしたら水中と同じ感覚で特に不自由の無い移動が可能と思いますよ、あ、その時はウィンドバリアの展開で呼吸の確保を忘れずにして下さい」
まるで、折角なので落ちて溶岩の川を泳いでる姿を見たいと言いたげだ。
「へぇ、それは面白そうな話ね」
こちらはこちらで、見ている分にはと言いたげなセフィアさん。
俺は愛想笑いを浮かべつつ、万が一の事を考慮し『風防壁(ウィンドバリア)』を全員に掛けておいた。
そこから更に奥地に進み、様々な炎属性の魔物と俺だけひいひい言いながら対峙させられた。
しかし、その都度エリクさんから便利なアイテムを支給され俺の身体は心身共に問題の無い状態に回復されるのだった。
「それにしても、例のブツは何処にあるのかしら?」
セフィアさんがぽつりと言う様に、炎獄の谷に入ってからかなりの時間が経過するが、闘神の斧が姿を見せる気配すら無い。
「アーティファクトですからね、最深部にあるんじゃないですか?」
ここが何度も調査しているエリアであり、学術的な発見のない状況に置かれてエリクさんの意欲も薄れてきているみたいだ。
「それもそうねぇ、だからと言って転移魔法でパパっと行って実は道中に落ちてましたとかあるのよねぇ」
セフィアさんも同じく意欲が薄れてきているみたいだ。
「アーティファクトレーダーなんてものがあったら便利ですよねぇ」
「そうね、出来れば精度の高いモノがあれば言う事無いわね、それがあるだけで無駄な調査も不要になるわ」
非常にやる気のない声で会話をする二人に対しルッセルさんが、
「それは名案ですね、一度上の方に提案してみたら面白そうです」
「あ、いえ、ただの冗談ですから」
「そうですか? セフィアさんの言う通り無駄な調査を省けますし、本国の学者が力を合わせれば実現出来る可能性は十分ありますよ、何より提案するだけならタダですし」
謙遜するエリクさんに対し、ルッセルさんは本気の様だった。
「ははは、そうですね、もし実現出来たのでしたら我々ももっと早く動けますしね」
こう言った些細な情報もしっかりと拾う事もルッセルさんの良いところなのだろう。
そう考えながらふと視線を上げると滞空する何かの影を視界に捉えた。
「あそこにどこかで見た事ある魔族が見えるんですけど」
「魔族ですか? 火の鳥じゃなくて?」
俺の言葉に対してエリクさんが疑問に思いながらも目を凝らしてみている。
「あら? 本当ねぇ? 魔族みたいなのが居るわ、こんな所に何の用かしら?」
セフィアさんはレンジャーだけあってすぐに捉えたみたいだ。
「ふむ、もしかしたら闘神の斧を探しに来た魔族かもしれませんね、セフィアさん狙撃は出来ますか?」
「ダメね、私達の気配に気付かれたみたいで逃げられたわ」
「そうですか、それは仕方がありませんね、魔族の部隊が居る事を想定して行動しましょう」
ルッセルさんが注意喚起をし、俺達は更に先に進む事になった。
*魔闘将ルカン*
「るるる、るかんさまぁああああ! 人間の部隊を見付けましたぁぁぁ」
先程カイル達が見付けた魔族が自らの上官、魔闘将ルカンに報告をしに戻って来た。
「貴様、部隊を離れるなと言っただろう、迂闊な行動は死を招くだけだぞ!」
「ひ、ひいいい、申し訳ありません、ですが人間の部隊がああああ」
ルカンに叱責された魔族は更に取り乱している。
「そうか、だが人間の部隊がここを訪れるのは珍しくないぞ」
「そそそ、そうですけどー! なんか、すっげー強そうな奴等だったんですよ! わたくしめがこの前戦った奴を同行させてたんですからそいつ等は絶対強いんですって!」
「何が言いたいのだ?」
「ですから、ここに来るには弱い人間を引き連れてる人間は強い訳でして!」
「そうか、貴様をここに引き連れた俺と同じと言う訳か」
「そうですそうです、そんな感じであります!」
自分の意図が伝わったと感じた魔族はルカンに対し敬礼をした。
「俺と同じ強さの人間か、ふっ、この冒険に1つ楽しみが出来たな」
「るるるルカン様!? つ、強そうな人間は全部で3人居ましたよ! ナイトって呼ばれる奴にレンジャーにウィザードに、それも強そうな奴ですよ!?」
「ほう? 3体1か、それも悪く無かろう」
「ひいいい、む、無茶ですよ!? あいつ等のオーラはやばかったっすよ!? あ、そ、そうですよね! 残り二人は弱そうでしたからそいつ等を人質に取るんですね!」
魔族はルカンに名案を提示したつもりだが、
「貴様ッ! 俺を愚弄するつもりかッ!」
ルカンの逆鱗に触れてしまい一喝されてしまう。
「ももも、申し訳ありませんッ、その様なつもりは御座いませんんんッ」
魔族は土下座をし、ルカンの許しを乞うた。
「ふん、俺を案じて言った事は評価してやる」
ルカンは小型の玉を取り出した。
「あ、有難うございますッ」
「ダストから帰りはこれを使えと貰っている、転移魔法が込められた玉だ。 いざとなればこれを使い帰るつもりだ」
「そうですよね、そうで御座いますよね、流石ルカン様でございます! 準備は万全でありますよね!」
「フッ、あまり部隊から離れるなよ」
魔族の賛美に対し気を悪くし続けるのも良く無いと思ったルカンは魔族の肩にそっと手をおいた。
「ハッ! かしこまりましたであります!」
魔族は再度敬礼をすると、引き続き部隊上空からの視察を続けた。
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炎獄の谷の最深部は、周囲を炎で包まれた崖に囲まれたエリアだった。
ここでしか産み出されない特殊な鉱石があるらしく、セフィアさんは一応それを採取し懐にしまい込んだ。
彼女からしたら殆ど価値を感じられないが何も手に入れないよりはマシとの事だった。
エリクさんいわく、やはりこの炎獄の谷にも分不相応な挑戦だの準備不足だのが原因で全滅してしまうパーティもそれなりに居るとの事だった。
ウィザードを連れて行かずにアイスバリアもウィンドバリアも展開されないまま魔物の襲撃等が原因となり崖から転落し、溶岩の川に落ちてしまう冒険者も居るみたいだ。
当然転落してしまった冒険者は命を落す事になるが、中には気合と根性で生還したファイターも居るとかなんとからしい。
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