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2章
70話「前衛としての甘さ」
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どういう事だ? と疑問に思うも、俺は立て続けに『氷矢(アイスアロー)』を放った。
「グオオオオ!」
地獄犬(ヘルハウンド)は俺の魔法を避ける為に地面を強く蹴り上空へジャンプした。
俺を狙うにしては妙に高いと思うと、
「あらあら? このワンちゃん、お利口さんじゃない?」
「そうですね、恐らくアリアさんがカイルさんの魔法力を上昇させる支援魔法を掛けると踏んでアリアさんを狙いましたね」
冷静に解説する二人。
しまった、その解説を聞いた俺は相手の行動を読み切れてない事を悔しく思いながらも慌てて俺は後方を振り返り魔法の狙いを定める。
「ギャーーーーオーーーー」
俺が狙いを定めた頃には、セフィアさんが撃ったクロスボウの矢が地獄犬(ヘルハウンド)の急所を直撃、エリクさんが放った無数の『氷槍(アイスランス)』が地獄犬(ヘルハウンド)の身体を串刺しにしていた。
二人の攻撃を受けた地獄犬(ヘルハウンド)は空中から地上に落下し、暫くけいれんした後に事切れたのであった。
「お二人共、お見事ですね」
いつの間にかアリアさんを守る様に立ちふさがっていたルッセルさんが二人をねぎらった。
「ははは、大した事じゃありませんよ、アリアさんに攻撃を通してしまうのは良くありませんからね」
もっともっと褒めて下さいよと言いたげなオーラを纏うエリクさんだ。
「私もエリク君と同じね、後衛が襲撃された時の経験を積ませる事もありかもしれないけど、危険だから止めたわ」
エリクさんとは真逆にセフィアさんはさらっと流している。
「いえ、私は出来る限りの経験は積みたいと思います」
「そうね、アリアちゃんの気持ちは分かるけど、前衛が崩壊して後衛が狙われる状況を作った時点で終わりよ、今回みたいなケースとしても、すぐに前衛が助けに来れる状況でないのは前衛がダメなのか貴女が前衛から離れすぎているかのどっちかなのよ。 だから今この経験を積む価値は殆ど無くって最悪命を落す危険の方が高いと判断したの」
セフィアさんの説明を受け、アリアさんは納得した様だ。
「ご安心ください、もし経験を積みたいのでしたら後日考えますよ」
「勉強熱心なのは良い事なんだけどね」
セフィアさんはアリアさんの肩をそっと叩きながら優しく言った。
「それでは皆さん、先に進みましょう」
ルッセルさんの合図と共に俺達は炎獄の谷の奥へと向かった。
炎獄の谷の奥へは遠くから見たイメージ通りだった。
エリクさんが掛けた魔法のお陰で熱さは感じないが、頻繁に飛び交う炎を纏った小石が時折身体にぶつかると僅かながら痛みを覚える。
また、炎獄の谷奥にも様々な魔物が生息している。
地獄犬(ヘルハウンド)同様全身に炎を身に纏った火の鳥。
こいつに対して俺は魔法攻撃力を増強させてもらった後地上から、当たるまで『氷矢(アイスアロー)』を撃つ事になった。
これがまた、中々当たらず10回以上魔法を使う羽目になった。
やっとの思いで撃ち落とすと、2匹目、3匹目に対してセフィアさんもエリクさんもそれぞれ1射目で射止めたのであった。
どうやら俺はまだまだ命中関連の修行も足りないみたいだ。
セフィアさんいわく、この火の鳥の肉は高級料理店で扱うとの事で、調理の際は氷属性の魔法を使う事で美味さを引き立てるとの事だった。
そのまま食べる事も可能であるが、全身を火に纏っている癖に可食部は何故か生らしく、高い鮮度を保った状態でなければ数時間後にはトイレの住人となってしまうとの事だった。
火の鳥だから火は通っていると勘違いして腹を下す冒険者意外と多いらしい。
次に現れたのは炎岩巨人(ファイアゴーレム)だった。
全身が岩石で出来ており、当然剣による攻撃は効果が薄い。
エリクさんは、アリアさんと俺に大量の魔力回復薬を手渡すと、後は頑張って下さいと告げルッセルさんとセフィアさんと談笑を始めた。
高さ5M程、横幅は4M程の岩石の巨人は見た目の大きさ通り移動だけでなく攻撃等あらゆる動きが遅かった。
その鈍重な機動性では『機動増加(クイック)』により大幅に機動力が上がった俺とアリアさんを攻撃範囲内に全く捉える事が出来なかった。
俺とアリアさんは十分な距離を保ち次に現れたのは炎岩巨人(ファイアゴーレム)をぐるぐる回りながら『氷矢(アイスアロー)』を撃ち続けた。
何十発、いや何百発撃ったのか分からない。
エリクさんから貰った魔力回復薬をどれだけ飲んだのか分からない。
延々と短調作業をさせられているみたいで脳の感覚がマヒして戦い続けた所で大きな音が響いた事を認識出来た。
ハッ、と我に返るとそこには、必死に俺達を捉えようと自転を続けた末、最後の最後まで俺とアリアさんを捉える事が出来ず力尽き崩れ落ちた炎岩巨人(ファイアゴーレム)の巨大な亡骸だった。
ゴォゴォと音を立て燃え盛っていたその身体は、何百発もの『氷矢(アイスアロー)』を受けた末に消えてしまった。
エリクさんが言うには、氷や水属性の魔法を使わずに絶命させる事が出来ればその後も身体を纏う炎が消える事無く、燃える岩石として採取が可能との事だった。
これもまた市場に出回っており、石自身が燃え盛っている事もあり薪と比べてはるかに優秀な暖房道具として冬場の寒さを凌ぐ為使われる事が多い。
今回は炎が消えてしまっている為ごく一般的な石材以上の価値は無いとの事だった。
駆け出し冒険者の俺からしたら一般的な石材を売ったお金で良いから欲しいと思うのだが、運搬の事を考えると諦めるしか無さそうだ。
その次に現れた魔物は、木人の癖に何故か炎に包まれている魔物だった。
普通に考えれば炎に弱い筈だしあっという間に黒炭にでもなりそうだと思うのだが。
エリクさんいわく、炎獄の谷の環境に適応する為に進化した結果との事だった。
やはり、長きにわたり燃え続ける木は重宝されているみたいで、主にたいまつに使われるとの事だった。
世の中にはこの魔物の身体を使って小屋を建ててるモノ好きも居るらしいが、住む事が出来るかまでは謎だ。
この魔物もまた、適当に氷魔法を連打する事でそこらへんで採取されるものと変わらない木材と変化させたのだった。
「相変わらず崖の下は溶岩が流れてるわねぇ」
セフィアさんの言う通り、下の方を眺めると溶岩の川が見えて来た。
「ふっふっふ、僕のアイスバリアがあれば溶岩の中でもへっちゃらですよ!」
と自信満々に言うエリクさんであるが、幾ら熱を遮断されると聞いた所で自分から進んで溶岩の川で泳ぎたいとは思わない。
「グオオオオ!」
地獄犬(ヘルハウンド)は俺の魔法を避ける為に地面を強く蹴り上空へジャンプした。
俺を狙うにしては妙に高いと思うと、
「あらあら? このワンちゃん、お利口さんじゃない?」
「そうですね、恐らくアリアさんがカイルさんの魔法力を上昇させる支援魔法を掛けると踏んでアリアさんを狙いましたね」
冷静に解説する二人。
しまった、その解説を聞いた俺は相手の行動を読み切れてない事を悔しく思いながらも慌てて俺は後方を振り返り魔法の狙いを定める。
「ギャーーーーオーーーー」
俺が狙いを定めた頃には、セフィアさんが撃ったクロスボウの矢が地獄犬(ヘルハウンド)の急所を直撃、エリクさんが放った無数の『氷槍(アイスランス)』が地獄犬(ヘルハウンド)の身体を串刺しにしていた。
二人の攻撃を受けた地獄犬(ヘルハウンド)は空中から地上に落下し、暫くけいれんした後に事切れたのであった。
「お二人共、お見事ですね」
いつの間にかアリアさんを守る様に立ちふさがっていたルッセルさんが二人をねぎらった。
「ははは、大した事じゃありませんよ、アリアさんに攻撃を通してしまうのは良くありませんからね」
もっともっと褒めて下さいよと言いたげなオーラを纏うエリクさんだ。
「私もエリク君と同じね、後衛が襲撃された時の経験を積ませる事もありかもしれないけど、危険だから止めたわ」
エリクさんとは真逆にセフィアさんはさらっと流している。
「いえ、私は出来る限りの経験は積みたいと思います」
「そうね、アリアちゃんの気持ちは分かるけど、前衛が崩壊して後衛が狙われる状況を作った時点で終わりよ、今回みたいなケースとしても、すぐに前衛が助けに来れる状況でないのは前衛がダメなのか貴女が前衛から離れすぎているかのどっちかなのよ。 だから今この経験を積む価値は殆ど無くって最悪命を落す危険の方が高いと判断したの」
セフィアさんの説明を受け、アリアさんは納得した様だ。
「ご安心ください、もし経験を積みたいのでしたら後日考えますよ」
「勉強熱心なのは良い事なんだけどね」
セフィアさんはアリアさんの肩をそっと叩きながら優しく言った。
「それでは皆さん、先に進みましょう」
ルッセルさんの合図と共に俺達は炎獄の谷の奥へと向かった。
炎獄の谷の奥へは遠くから見たイメージ通りだった。
エリクさんが掛けた魔法のお陰で熱さは感じないが、頻繁に飛び交う炎を纏った小石が時折身体にぶつかると僅かながら痛みを覚える。
また、炎獄の谷奥にも様々な魔物が生息している。
地獄犬(ヘルハウンド)同様全身に炎を身に纏った火の鳥。
こいつに対して俺は魔法攻撃力を増強させてもらった後地上から、当たるまで『氷矢(アイスアロー)』を撃つ事になった。
これがまた、中々当たらず10回以上魔法を使う羽目になった。
やっとの思いで撃ち落とすと、2匹目、3匹目に対してセフィアさんもエリクさんもそれぞれ1射目で射止めたのであった。
どうやら俺はまだまだ命中関連の修行も足りないみたいだ。
セフィアさんいわく、この火の鳥の肉は高級料理店で扱うとの事で、調理の際は氷属性の魔法を使う事で美味さを引き立てるとの事だった。
そのまま食べる事も可能であるが、全身を火に纏っている癖に可食部は何故か生らしく、高い鮮度を保った状態でなければ数時間後にはトイレの住人となってしまうとの事だった。
火の鳥だから火は通っていると勘違いして腹を下す冒険者意外と多いらしい。
次に現れたのは炎岩巨人(ファイアゴーレム)だった。
全身が岩石で出来ており、当然剣による攻撃は効果が薄い。
エリクさんは、アリアさんと俺に大量の魔力回復薬を手渡すと、後は頑張って下さいと告げルッセルさんとセフィアさんと談笑を始めた。
高さ5M程、横幅は4M程の岩石の巨人は見た目の大きさ通り移動だけでなく攻撃等あらゆる動きが遅かった。
その鈍重な機動性では『機動増加(クイック)』により大幅に機動力が上がった俺とアリアさんを攻撃範囲内に全く捉える事が出来なかった。
俺とアリアさんは十分な距離を保ち次に現れたのは炎岩巨人(ファイアゴーレム)をぐるぐる回りながら『氷矢(アイスアロー)』を撃ち続けた。
何十発、いや何百発撃ったのか分からない。
エリクさんから貰った魔力回復薬をどれだけ飲んだのか分からない。
延々と短調作業をさせられているみたいで脳の感覚がマヒして戦い続けた所で大きな音が響いた事を認識出来た。
ハッ、と我に返るとそこには、必死に俺達を捉えようと自転を続けた末、最後の最後まで俺とアリアさんを捉える事が出来ず力尽き崩れ落ちた炎岩巨人(ファイアゴーレム)の巨大な亡骸だった。
ゴォゴォと音を立て燃え盛っていたその身体は、何百発もの『氷矢(アイスアロー)』を受けた末に消えてしまった。
エリクさんが言うには、氷や水属性の魔法を使わずに絶命させる事が出来ればその後も身体を纏う炎が消える事無く、燃える岩石として採取が可能との事だった。
これもまた市場に出回っており、石自身が燃え盛っている事もあり薪と比べてはるかに優秀な暖房道具として冬場の寒さを凌ぐ為使われる事が多い。
今回は炎が消えてしまっている為ごく一般的な石材以上の価値は無いとの事だった。
駆け出し冒険者の俺からしたら一般的な石材を売ったお金で良いから欲しいと思うのだが、運搬の事を考えると諦めるしか無さそうだ。
その次に現れた魔物は、木人の癖に何故か炎に包まれている魔物だった。
普通に考えれば炎に弱い筈だしあっという間に黒炭にでもなりそうだと思うのだが。
エリクさんいわく、炎獄の谷の環境に適応する為に進化した結果との事だった。
やはり、長きにわたり燃え続ける木は重宝されているみたいで、主にたいまつに使われるとの事だった。
世の中にはこの魔物の身体を使って小屋を建ててるモノ好きも居るらしいが、住む事が出来るかまでは謎だ。
この魔物もまた、適当に氷魔法を連打する事でそこらへんで採取されるものと変わらない木材と変化させたのだった。
「相変わらず崖の下は溶岩が流れてるわねぇ」
セフィアさんの言う通り、下の方を眺めると溶岩の川が見えて来た。
「ふっふっふ、僕のアイスバリアがあれば溶岩の中でもへっちゃらですよ!」
と自信満々に言うエリクさんであるが、幾ら熱を遮断されると聞いた所で自分から進んで溶岩の川で泳ぎたいとは思わない。
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