Ex冒険者カイル

うさぎ蕎麦

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2章

69話「可愛いワンちゃん? と言う名のヘルハウンド」

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「さっ、みなさん、昔話はここまでにして闘神の斧を探しに向かいましょう」

 俺達はルッセルさんの合図と共に炎獄の谷の中に向けて歩き出した。
 
「あら? 可愛いワンちゃんねぇ」

 谷の中をしばらく歩いた所でセフィアさんが嬉しそうに指をさす。
 可愛いワンチャン? まさかコボルドキング達がこんな所にまで来てる? それともファイア・コボルドなんて種族が住み着いてる?
 少々疑問に思いながらも俺はセフィアさんが差す指の先をながめる。

「ぼ、僕の方が可愛いですよ!」

 目標のワンちゃんを見つけたエリクさんが意味深な事を述べる。
 で、俺の視界にその可愛いワンちゃんとやらが映った訳ですよ。
 えーっとこのワンちゃん、全身に炎を身に纏ってますね。
 で、その形相もコボルド達みたいな愛くるしい瞳をしたワンちゃん、何かじゃなくって明らかに獲物を見据える殺意に満ちた瞳をしてるんですけど。
 狼? 野犬? そういう類に近いと思うんですよ僕は、可愛いワンちゃんって言葉がお似合いな飼い犬じゃなくってさ!
 でさ、コイツの特徴踏まえると俺の知識上、地獄犬(ヘルハウンド)が該当するんですけど! エリクさん? セフィアさん? 何でそんな呑気にしてられるんですか

「ちょ! あれ!」
「どうしたのボウヤ? |可愛いワンちゃん(ヘルハウンド)じゃない? ケルちゃんに比べたら可愛いわよ?」

 ケルちゃん? すっげー可愛く呼んでるんですけど、なんか嫌な予感しかしないんですが?
 
「そうですね、|地獄の番犬(けるべろす)に比べたら可愛いですよ」

 って、ケルベロスですか? それがケルちゃんですか? あの3本頭で炎吐くだのなんだのって凶暴な生物に対して何でそう愛玩的に呼べるんですか!

「可愛くてもペットにしたいとは思わないけどねー」
「そうですね、何かあったらすぐ火事になっちゃいますもんね」
「そうそう、せめて炎に包まれて無ければね」

 二人は、まるで新人冒険者達が仔コボルドを見付けた時の様に言ってくれる。
 
「そ、それはそうと」

 俺はあの魔物をどうにかしてくれと言おうとするが、
 
「折角だしボウヤも戦ってみたらどう? 炎はエリク君の魔法で何とかなるでしょ? 炎さえなければボウヤでもどうにか出来る強さでしか無いわ」
「はい、僕も大丈夫だと思います、アリアさんは物理攻撃の耐性の問題がありますから後ろでカイルさんの援護を」

 えええ! 何で俺があんな凶暴そうな魔物と戦わなければならないんですか! 俺はまだ学校を出たばかりで冒険者としての経験は浅いんですけど!

「分かりました」

 幾らセフィアさんやエリクさんが言ったから! なんて疑問すら抱かずアリアさんは|可愛い?ワンちゃん(ヘルハウンド)との戦いに応じた。
 うーむ、アリアさんは俺の後ろに居るセフィアさん達よりも後方って凄く安全な位置に居るし、そうなるかな?
 でも、これがルミリナさんだったらガタガタ震えてそうな気がする。
 これが姉の強さと言う奴なのだろうか?
 俺が考え事をしていると、アリアさんが完成させた『防御障壁(プロテクション)』が俺にかけられた。
 緑色の光が俺の身体を包み込むと、エリクさんが掛けた魔法と合わさりエメラルドグリーンの光へ変わった。
 どことなく、俺が書ける魔法よりも効果が高い感じがする。
 その辺り、さすがは支援魔法専門職であるプリーストと言った所か。

「アリアさん自身にも掛けておいてください、後カイルさんの方でもプロテクションをお願いします、同じプロテクションでも術者が違えば効果は重複(じゅうふく)しますから」
 
 そう言えばそうだった。
 エリクさんに言われ、俺は防御壁(プロテクション)を自分とアリアさんに施した。
 エリクさんですら、ちょうふくをじゅうふくと間違えるんだ、と思いながら。

「行きますよっ!」

 俺は抜刀し、剣を構えながら地獄犬(ヘルハウンド)に向かい地面を蹴った。
 
「ガルルルルッ」

 俺の敵意を探知した地獄犬(ヘルハウンド)は口を大きく開くと燃え盛る炎を吐き出した!
 それに対し俺は反射的に盾をかざし炎を受け止めようとする。
 待て、鉄性の盾では炎を受け止めるのは無理じゃないか!? それどころか下手すれば溶けてしまう!
 炎は俺の考えなど無視して襲い掛かったが、

「熱くない!?」

 炎を受けた俺の身体からも左手に持つ盾からも熱を一切感じ取れなかった。
 エリクさんが掛けたアイスバリアのお陰だ。
 炎を無効化した俺は地獄犬(ヘルハウンド)の懐に潜り込み斬りかかった。

「グルルルルッ!」

 だが、地獄犬(ヘルハウンド)は鮮やかなステップを見せながら俺の剣撃を回避した。
 
「やはり、機動性は足りてませんね、アリアさん、カイルさんに機動増加(クイック)を」

 エリクさんの指示を受けたアリアさんが、俺に『機動増加(クイック)』を掛けた。
 黄色の光が包み込み、自分の身体が軽くなった事を感じ取った。
 やはり、アリアさんが掛ける奴は自分が掛けるそれより効果は高そうだ。

「でやぁぁぁぁ!」

 今度こそ、と機動性の上がった俺は地獄犬(ヘルハウンド)に対し剣での連撃を仕掛ける。
 ザクッ、ザクッ、スカッ、スカッ、ザクッ。
 多少なりとも攻撃を命中させる事が出来る様になったものの、鉄製の剣では厳しいのか相手に対して有効打を与えてる気がしない。

「ガオオオオオ!」

 俺の連撃が終わった所に待ってましたと言わんばかりに地獄犬(ヘルハウンド)が前足の爪を立て飛びかかって来た。
 俺は盾を前に出し攻撃を受け流そうとするが、物理的なダメージこそ防げたものの、巨体が産み出す威力までは減衰させる事が出来ず後方へ向け大きく吹っ飛ばされてしまった。

「なるほど、筋力もまだ不足してますね、ではアリアさん、筋力向上(パワーアップ)をカイルさんに」

 エリクさんがアリアさんに指示を出し俺は『筋力向上(パワーアップ)』の魔法を受けた。
 俺は再び地獄犬(ヘルハウンド)の懐に潜り込み連撃を仕掛ける。
 威力が増した俺の斬撃を受けた地獄犬(ヘルハウンド)は表情を曇らせ一旦後退した。

「逃すか!」

 俺は地獄犬(ヘルハウンド)が距離を取る為後退した着地に合わせ『氷矢(アイスアロー)』を放つ。
 俺の魔法を受けた地獄犬(ヘルハウンド)は一瞬苦痛な表情を見せると、俺では無くそれより奥に対してにらみを利かせた。
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