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2章
68話「炎獄の谷」
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翌日。
俺はルッセルさん、エリクさん、セフィアさん、アリアさんと共に炎獄の谷に向かう事になった。
炎獄の谷自体、エリクさん達はとっくの昔に行った事があるとの事で、エリクさんの転移魔法により何の苦労もする事無く辿り着いた。
谷の入り口は燃え盛る火炎に覆われており、中を覗いてみるとその炎に触れる事無く奥へ進む事は不可能に思える。
鉄が溶ける程に高温の炎に見えないが、少なくとも炎に耐性の無い衣服なんかは簡単に燃え尽きてしまいそうだ。
いや、防具が耐え切れたとしても熱は身体に向けて伝達する訳だから金属製の防具を身に纏っていた所で本人は無事では済まないだろう。
また、ここが谷だけあって見上げれば人力で登る事の出来ない高さの岩壁に囲まれており、飛翔の術でも使わない限り崖の上部に辿り着くのは不可能に思える。
だが、この燃え盛る谷の何処かに【闘神の斧】が眠っている事を考えるとなんだかわくわくしてくる。
「相変わらず暑いわね~砂漠なんかとは比にならないわ」
セフィアさんの言う通り、谷の入り口前にも関わらずヴェストタウン近郊の砂漠エリアよりも暑さを感じる。
「フッフッフ、ここで僕の出番ですよ!」
人差し指をチッチッチっと左右に振らしながらドヤり気に言うエリクさんだ。
何だろう、分かってるんだけどこの違和感。
ああそうか、語尾に『ワン』と付いてないせいか。
「御託は良いから早くしてくれると有難いんだけどねー」
セフィアさんの言う通り、砂漠の比ではない熱が既に身体をむしばんでいるせいで正直な所立ってるのも辛くなって来たな。
ルッセルさんとアリアさんの様子が気になってチラっと見ると、二人共平然な顔をしている。
「良いじゃないですか、僕だって少し位カッコ付けたい時はありますよ、ルッセルさんもアリアさんも熱耐性装備を完備してる訳ですし」
エリクさんが珍しくすねた空気を出しながらも『氷防壁(アイスバリア)』を完成させみんなに掛けると、みんなの身体を薄青色の膜が包み込んだ。
やっぱり何だかんだ言ってエリクさんは凄いな、この魔法のお陰で今まで身体を襲っていた熱が嘘みたいに無くなってひんやりとした心地良い冷たさを感じる様になった。
「それもそうねぇ? アリアちゃんなんて美人を目の前にしたら誰だってカッコの一つ位つけたくなるわね」
セフィアさんが、俺はカッコ付けなくて良いの? と言わんばかりに視線を送って来た。
「そういうモンなのですか?」
「やっぱりアイドルは考える事が違うのねぇ」
セフィアさんは何処か面白おかしく言った。
「アイドル? ルッセルさんの事ですか?」
確かにセフィアさんの言う通りイケメンギルドマスターのルッセルさんはアイドルと言われれば納得が出来るしこの場にアイドルに該当するのは彼しか居ないと思う。
「全く、この流れでマスターの名前がでてくるのは不思議で仕方が無いわ」
しかし、俺の考えとは裏腹にセフィアさんは物凄く呆れているみたいだ。
「そうですか? ルッセルさんは年齢がダメでしたか? 俺には十分若く見えますけど」
「ははは、カイルさん、お世辞が上手いですね、残念ながら私はアイドルとは無縁ですよ」
ルッセルさんはそう言うけど、神に誓ってお世辞じゃないと言えるけどさ。
あれ? 何かセフィアさんとアリアさんがルッセルさんを見つめ出したぞ? こんな美女の視線を独占出来るなんて、ほら、やっぱり俺の思った通りじゃん?
「幾ら何でも無縁は無いと思います」
淡々と言うアリアさんだけど、何か疑問を抱いている気がしなくもない。
「はぁ、謙虚って奴かしら? 確かに自信満々にずけずけ言うのもどうかと思うけど、そう言えばマスターも異性関係で浮いた話は全くなかったわね」
「そうですね、私の場合仕事が第一でしたし皆様の噂は所詮噂以上の感情を持ち合わせていませんでしたよ」
ルッセルさんが銀色の髪をわずかながらもなびかせながら話すその姿は男の俺からしてもやはり魅力的だった。
「そう言われてみればそうねぇ? 他の男が女性に浮ついてる中マスターは日々鍛錬を行っていたわねぇ、そんなんで面白いの? って気になる所ね」
セフィアさんの言い回しは、一昔前自分のアプローチも華麗にスルーされた事があるかの様なモノだった。
「ははは、十分面白いですよ? 今の地位があるのはその鍛錬のお陰と思いますし、他の人がやる事やって遊んでいる時間も私は鍛錬に費やした成果である事も感じています。勿論女性と濃密に過ごす時間も恐らく面白いのではないかと推測出来ます」
何の迷いも無くはきはきと言うルッセルさんだ。 この人も女性に興味が無いのだろうか?
「そう言えば、昔許嫁と死に別れったんですよね」
エリクさんがボソッと呟いた。
「そうですね、そんな過去もありました」
エリクさんは周りに聞こえない様に言ったつもりであったがルッセルさんは聞こえたらしく、隠す気は無いのだろう、迷うことなく返事した。
「難しい話ね、あれから随分と経つしあの娘だってもう許してくれるんじゃないかしら?」
エリクさんの呟きから昔の事を思い出したセフィアさんが柔らかな絹に触れるかの様にそっと呟いた。
「ははは、人間そう簡単に割り切れたら苦労しませんよ、良くも悪くも人間は難しいモノですから」
「それもそうね、どんな美人や可愛い娘を紹介しても微動だしなかったわね。 並みの男なら絶対になびく様な女の子達だったんだけど」
セフィアさんが遠くを見詰めながら、遥か昔の事を思い出すかのように呟く。
「その節は感謝致しますよ、お陰で随分と楽になった事もまた事実ですから」
ルッセルさんが当時言いそびれたであろうお礼を述べる。
「それなら良かったわ。 私も少しお節介だったと思ってたのよ」
あの時の自分は若かったと言いたそうなセフィアさんだ。
「カイルさん、マスターは人生の伴侶と決めた相手を作った以上それは覆す訳には行かないって言ってたんですよ。 カッコいいですよね、僕には真似できませんよ」
と、俺に耳打ちするエリクさん。
確かにエリクさんがそう言うと物凄い説得力がある、悪い意味になるけども。
俺はルッセルさん、エリクさん、セフィアさん、アリアさんと共に炎獄の谷に向かう事になった。
炎獄の谷自体、エリクさん達はとっくの昔に行った事があるとの事で、エリクさんの転移魔法により何の苦労もする事無く辿り着いた。
谷の入り口は燃え盛る火炎に覆われており、中を覗いてみるとその炎に触れる事無く奥へ進む事は不可能に思える。
鉄が溶ける程に高温の炎に見えないが、少なくとも炎に耐性の無い衣服なんかは簡単に燃え尽きてしまいそうだ。
いや、防具が耐え切れたとしても熱は身体に向けて伝達する訳だから金属製の防具を身に纏っていた所で本人は無事では済まないだろう。
また、ここが谷だけあって見上げれば人力で登る事の出来ない高さの岩壁に囲まれており、飛翔の術でも使わない限り崖の上部に辿り着くのは不可能に思える。
だが、この燃え盛る谷の何処かに【闘神の斧】が眠っている事を考えるとなんだかわくわくしてくる。
「相変わらず暑いわね~砂漠なんかとは比にならないわ」
セフィアさんの言う通り、谷の入り口前にも関わらずヴェストタウン近郊の砂漠エリアよりも暑さを感じる。
「フッフッフ、ここで僕の出番ですよ!」
人差し指をチッチッチっと左右に振らしながらドヤり気に言うエリクさんだ。
何だろう、分かってるんだけどこの違和感。
ああそうか、語尾に『ワン』と付いてないせいか。
「御託は良いから早くしてくれると有難いんだけどねー」
セフィアさんの言う通り、砂漠の比ではない熱が既に身体をむしばんでいるせいで正直な所立ってるのも辛くなって来たな。
ルッセルさんとアリアさんの様子が気になってチラっと見ると、二人共平然な顔をしている。
「良いじゃないですか、僕だって少し位カッコ付けたい時はありますよ、ルッセルさんもアリアさんも熱耐性装備を完備してる訳ですし」
エリクさんが珍しくすねた空気を出しながらも『氷防壁(アイスバリア)』を完成させみんなに掛けると、みんなの身体を薄青色の膜が包み込んだ。
やっぱり何だかんだ言ってエリクさんは凄いな、この魔法のお陰で今まで身体を襲っていた熱が嘘みたいに無くなってひんやりとした心地良い冷たさを感じる様になった。
「それもそうねぇ? アリアちゃんなんて美人を目の前にしたら誰だってカッコの一つ位つけたくなるわね」
セフィアさんが、俺はカッコ付けなくて良いの? と言わんばかりに視線を送って来た。
「そういうモンなのですか?」
「やっぱりアイドルは考える事が違うのねぇ」
セフィアさんは何処か面白おかしく言った。
「アイドル? ルッセルさんの事ですか?」
確かにセフィアさんの言う通りイケメンギルドマスターのルッセルさんはアイドルと言われれば納得が出来るしこの場にアイドルに該当するのは彼しか居ないと思う。
「全く、この流れでマスターの名前がでてくるのは不思議で仕方が無いわ」
しかし、俺の考えとは裏腹にセフィアさんは物凄く呆れているみたいだ。
「そうですか? ルッセルさんは年齢がダメでしたか? 俺には十分若く見えますけど」
「ははは、カイルさん、お世辞が上手いですね、残念ながら私はアイドルとは無縁ですよ」
ルッセルさんはそう言うけど、神に誓ってお世辞じゃないと言えるけどさ。
あれ? 何かセフィアさんとアリアさんがルッセルさんを見つめ出したぞ? こんな美女の視線を独占出来るなんて、ほら、やっぱり俺の思った通りじゃん?
「幾ら何でも無縁は無いと思います」
淡々と言うアリアさんだけど、何か疑問を抱いている気がしなくもない。
「はぁ、謙虚って奴かしら? 確かに自信満々にずけずけ言うのもどうかと思うけど、そう言えばマスターも異性関係で浮いた話は全くなかったわね」
「そうですね、私の場合仕事が第一でしたし皆様の噂は所詮噂以上の感情を持ち合わせていませんでしたよ」
ルッセルさんが銀色の髪をわずかながらもなびかせながら話すその姿は男の俺からしてもやはり魅力的だった。
「そう言われてみればそうねぇ? 他の男が女性に浮ついてる中マスターは日々鍛錬を行っていたわねぇ、そんなんで面白いの? って気になる所ね」
セフィアさんの言い回しは、一昔前自分のアプローチも華麗にスルーされた事があるかの様なモノだった。
「ははは、十分面白いですよ? 今の地位があるのはその鍛錬のお陰と思いますし、他の人がやる事やって遊んでいる時間も私は鍛錬に費やした成果である事も感じています。勿論女性と濃密に過ごす時間も恐らく面白いのではないかと推測出来ます」
何の迷いも無くはきはきと言うルッセルさんだ。 この人も女性に興味が無いのだろうか?
「そう言えば、昔許嫁と死に別れったんですよね」
エリクさんがボソッと呟いた。
「そうですね、そんな過去もありました」
エリクさんは周りに聞こえない様に言ったつもりであったがルッセルさんは聞こえたらしく、隠す気は無いのだろう、迷うことなく返事した。
「難しい話ね、あれから随分と経つしあの娘だってもう許してくれるんじゃないかしら?」
エリクさんの呟きから昔の事を思い出したセフィアさんが柔らかな絹に触れるかの様にそっと呟いた。
「ははは、人間そう簡単に割り切れたら苦労しませんよ、良くも悪くも人間は難しいモノですから」
「それもそうね、どんな美人や可愛い娘を紹介しても微動だしなかったわね。 並みの男なら絶対になびく様な女の子達だったんだけど」
セフィアさんが遠くを見詰めながら、遥か昔の事を思い出すかのように呟く。
「その節は感謝致しますよ、お陰で随分と楽になった事もまた事実ですから」
ルッセルさんが当時言いそびれたであろうお礼を述べる。
「それなら良かったわ。 私も少しお節介だったと思ってたのよ」
あの時の自分は若かったと言いたそうなセフィアさんだ。
「カイルさん、マスターは人生の伴侶と決めた相手を作った以上それは覆す訳には行かないって言ってたんですよ。 カッコいいですよね、僕には真似できませんよ」
と、俺に耳打ちするエリクさん。
確かにエリクさんがそう言うと物凄い説得力がある、悪い意味になるけども。
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