Ex冒険者カイル

うさぎ蕎麦

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2章

67話「ルッカの想い」

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 会議室の中にある円卓に配備されている椅子に座って居ると、エリクさんがセフィアさんとアリアさんを連れ中に入って来た。

「エリクさんありがとうございます。これで皆様お揃いですね」
「いえいえ、とんでもありません、僕は皆様をお連れしただけですから」

 エリクさんが、セフィアさんとアリアさんを空いてる席に座る様に促すと自分も残りの席に座った。
 しかし、今さっきのエリクさんを見た後だと本来真面目で好青年なウィザードであるエリクさんに対して違和感を覚えてしまう。

「それでは、皆様にこれからやって頂きたい事の説明を致します、エリクさんとセフィアさんは既にご存じですが【闘神の斧】と言うアーティファクトの入手をお願いしたいと思います」

 ルッセルさんがゆったりと物腰柔らかな口調で言った。
 
「アーティファクトですか? そんな重要なモノを取りに行くのに俺なんかが同行していいのですか?」
「はい、カイルさん、アリアさんの成長を兼ねての判断です。 目的の場所は炎獄の谷・・・・と言う場所で、普通の冒険者からしたら難しい場所ですが、私、エリクさん、セフィアさんからすれば楽な場所ですので我々の援護の元カイルさん達に同行してもらう訳です」

 炎獄の谷、いかにも暑そうな場所だけど、この無茶振りは裏でカオス学長が噛んでる気がしなくもない。
 
「分かりました、どうせ学長の命令でしょうから俺に拒否権は無いと思いますし」
「ははは、よく分かってますね、流石セザール学園首席な事はあります。 勿論、アリアさんは厳しいと思うのでしたら却下して頂いて構いません、最近入りましたウィザードの方々もコバルトリングのお陰で魔力が戻ったそうですし、彼女達に打診します」

 やっぱりカオス学長が噛んでたか。 まっ、ルッセルさんからお褒めの言葉を頂いたのは良い気分だしいっか。
 と、思わず鼻歌を歌ってしまいそうな高揚な気分に浸ると。
 セフィアさんがアリアさんに対してボソッと、ボウヤ、女の子に対して鈍感なのにねーと言ってる事が聞こえて来た。
 その言い回しだと、それ以外は敏感に聞こえなくも無いが。

「いえ、私も参加させて頂きます」

 アリアさんは、セフィアさんからの軽口に対し適当な相槌を打つとルッセルさんに対し今回の作戦へ参加の意思を示した。
 
「あら? アリアちゃんは相変わらず勇敢なのね」
「ルミを守る力が欲しいだけです」
「そう、貴女がそう言うなら無理しない範囲で頑張りなさい」

 セフィアさんの言葉に対しアリアさんは黙って頷くと、視線をルッセルさんの方へ戻した。

「分かりました、作戦の参加に感謝致します。 それでは明日の明朝に出発しますのでそれぞれ準備を済ませて下さい」

 これにてルッセルさんからの連絡事項は終わった。
 各々会議室を後にすると、明日の準備に取り掛かった。


―調理室―


 ルッセルにより、アリアとセフィアが呼び出されしばらくした所でルッカは調理室に向かった。
 その足取りは何処か荒かったせいか、気になったルミリナは彼女の後を追い同じく調理室に入ったのであった。

「クソッ、ふざけんな! どいつもこいつもどうしてカイルばっかり見るのよ!」

 ルッカはお菓子を作る為に必要な生地を八つ当たり気味に叩き付けていた。
 そんなルッカに対し、ルミリナは少しばかり恐怖心を抱きながらも恐る恐る陰から眺めている。
 
「私の方が先に出会ってるってのに! 学校に居る時だって他の女生徒出し抜くのにドレだけ苦労したと思ってるのよッ!」

 幾らお菓子作りに必要な工程とは言え、生地派手な音を立て叩き付ける様子は他の人が見ていたら誰もが引いてしまうだろう。

「大体、どうしてアイツは鈍感なのよ! 全部鈍すぎるアイツが悪いんだからッ」

 ルッカは肩で大きく息をしながら自らが叩き付けた生地を眺めている。

「ムカつくっ、私が苦労してライバル出し抜いたってのに、アイツに追い付きたいから学校の勉強だって頑張ったのにっ、料理の勉強だってやったのにっ! どーして冒険者ギルドに教科書通りの女プリーストが現われるのよッ! どーしてそのお姉さんまで美人でプリーストなのよッ!」

 カイルに対する内に秘めた感情が爆発したルッカは、調理場の壁に目掛けて拳を叩き付けた。
 お菓子の生地を叩き付けた時以上に派手な音が部屋内に響き渡り、身を潜めていたルミリナは驚きのあまり思わず「ひゃっ」と小さな声を上げてしまった。
 
「つっ、誰かいるの!」

 ルッカは右手に残る痛みを堪えながら声がした辺りを探った。
 
「あの、その、ごめんなさい、ルッカさんが心配でしたからつい」

 ルッカから鬼の形相で睨まれたルミリナは、今にも泣きだしそうな目をしながら恐る恐る答えた。

「そっか。他人に気を遣わせる真似をしたのは私のミスね、ごめんね」

 ルッカは目の前の恋敵(ライバル)に対し暴発しそうな感情を必死に抑えながら言葉を紡ぎ出した。

「その、カイルさんの事を」

 一部始終を聞いていたルミリナがカイルから手を引く旨を伝えようとするが、ルッカはそれを遮って。
 
「うるさい! アナタが何をどう思おうがカイルがアナタを選んだら私はそれ以上出来ないのよ!」
「ひぃっ、そ、その、私は」
「私は何よ? アナタの気持ちはその程度な訳? ライバルを打ち倒して勝たなければ意味が無い事位分からない? アナタは私に勝ってでもカイルを手にしたいと思わないの?」
「分かり、ません」
「アナタのお姉ちゃんがカイルが欲しいって言ったらアナタは差し出す訳?」
「お姉ちゃんがそう言うなら私はそれで構いません、私が今居られるのはお姉ちゃんのお陰ですから」

 ルミリナは声を震わせ、大粒の涙を流しながら細々とルミリナの問いに答えた。
 ルミリナの涙を見たルッカは、ハッと冷静さを取り戻し、
 
「ごめん、言い過ぎた」
「いえ、私が勝手に後を付けたせいですから」
「そっか、今日の事は私がカイルに勝てないからムカついたって事にして欲しい、どうせカイルはルッセルさんと一緒にレベルの高い場所に連れていかれると思うから」

 今度はルッカが少しばかり悲し気な表情を見せた。

「はい、分かりました、それでは私は失礼します」
「うん、私はお菓子作りの続きするから、今度時間があったら一緒に作ろ?」

 ルッカはぎこちない笑みを見せながらルミリナに言った。
 
「はい、その時は、お願いします」

 ルミリナはルッカに対し微笑むと調理室を後にした。
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