Ex冒険者カイル

うさぎ蕎麦

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4章

92話「アリナ・ルーツ」

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―カイル視点―


 アリアとルミリナの帰りを、不安な気持ちを必死に堪えながら待つカイルの前にまばゆい光が溢れ出した。

「どういう事!?」

 俺は思わず、神殿内に響き渡る大声で叫んでしまった。
 今の光、間違いなく聖神の杖の試練が終わって二人が戻って来たモノだと思うんだけど。
 俺の目の前には聖神の杖しかない!
 二人は何処に行ったんだ!?

『心配する事は無いぞ』

 そんな事言われても、二人の姿が確認できないのにどうやって!

『ふむ、お主は案外せっかちじゃ、まるでどこかの誰かみたいじゃ』

 だから、この状況で焦らない人間ってルッド君並みに淡々として無きゃ無理でしょ!
 
『フン、ワシがせっかちで悪かったのぉ!』

 闘神の斧が不満気に言う。
 
『おやおや闘神の斧かい、私はあんたの事とは言っておらんぞよ。 私のやりたい事は知っているんだろう? ヒント位喋っても良かったんじゃないかい?』
『だ~れが言うかい! ワシが余計な事を言ったら3倍で返って来るじゃろ! 黙ってる以外やる事無いわい!』

 どうも闘神の斧は聖神の杖が苦手みたいだが、それよりも、アリアさんとルミリナさんは!
 『心配するなと言っておるじゃろう、しばしまたれい、ほれっ』

 すると聖神の杖からまばゆい光が溢れ出し、それが収まると1人の少女の姿が俺の目の前に現れた。
 1人? 何が心配させるなだ! これじゃあ片方が犠牲になったって言うじゃないか!

『うげぇぇぇぇ! 気持ち悪いわい! ピー歳のお前が何で小娘の姿になってるんじゃい!』

 一体どういう事だ?
 闘神の斧の言葉からは彼が知っている人間が目の前に現れた様に聞こえるが。
 俺は怒りで頭から湯気が出そうな精神を深呼吸に加え、軽い氷魔法を頭に向け発動させた後、改めてその少女を見据える。

「ふぁっふぁっふぁ! どうじゃ? 可愛いじゃろ! ワシがまだぴっちぴちの16歳だった頃の姿じゃ!」

 腰に手を当て自慢気に言う少女。
 その姿はアリアさんでも無い。
 ルミリナさん、でも無い。
 この二人とは口調が違い過ぎる。
 しかし、その容姿からは何処かアリアさんとルミリナさんの面影を感じる。

『ひ孫をだまくらかして現世に戻るっちゃ相変わらず悪趣味じゃのぉ』

 ひ孫? つまり、今いる少女? はアリアさんとルミリナさんのひい婆さんって事?

「ふぉっふぉっふぉ! 褒めても何も出ぬぞ! 最もお主はおのこにしか興味が無いがのぉ!」
『フン! そんな貧相な身体、ワシがおなごずきでも興味湧かんわい!』

 と言う闘神の斧だが、誰がどう見ても凄まじくスタイルが良い様に見えるのだけど。
 それも、スタイルがかなり良いと思うリンカさんよりも。
 
「お? お? なんじゃ? 本当は挟まれたかったのかい? 全く、素直に言ってくれれば」

『ちがわい! ワシはムキムキマッチョマン一筋じゃ!』

 あのー、ムキムキマッチョマンってかなりの数が居ると思いますが。
 それよりも、いいかげんアリアさんとルミリナさんの安否が知りたいんですが。

「ふぁっふぁっふぁ! ほれ少年、これを持てい!」

 少女は手に持つ聖神の杖を俺に手渡した。
 今度は少女から光が溢れ出したかと思うと、二人の人影が現れた。
 アリアさんとルミリナさんだ。
 二人はお互いを見合わせると、
 
「お、お姉ちゃん!? わーーーーん、怖かったよぉーーー」

 ルミリナさんは、アリアさんに抱き着くとわんわん大声をあげて泣き出した。
 
「はぁ、全くルミったら。 いつも言ってるでしょ? 犠牲になるのはお姉ちゃんだけで良いって」

 アリアさんは優しく微笑みながら仔猫の様に泣きじゃくるルミリナさんの頭をそっと撫でた。

「だって、だってぇ。 えっぐ、えっぐ」

 よっぽど怖い事があったのだろう。
 姉妹の絆を見せる二人を前に俺が出来る事は何も無さそうだ。
 『ふぁっふぁ、子どもは良いモノじゃ』
『そんな事言わずとも種位明かしたらどうなんじゃ?』

 聖神の杖に対し、闘神の斧がため息交じりに言う。
 
『まったく、お主はせっかちじゃ、言われずとも教えるに決まってるわい』

 聖神の杖が深呼吸をし、10秒程の間を作った。
 
『ワシは聖神の杖じゃ。 それ故清き美しい心の持ち主以外扱わせる気は無い。 例えそれがワシの血を引くひ孫達であってもじゃ。 子ども、孫達の影響で心の穢れた人間になってる可能性は十分過ぎるほどある。 血筋が聖女だからと悪い事をする輩は腐る程おるんじゃ』
『ほぉ~お前さんらしくない事言うのぉ?』

 闘神の斧が茶化す。
 その直後、彼の悲鳴が上がった。
 聖神の杖から何かされたのだろう。
 
『聖女たるもの、世界の平和を前に自らの犠牲をもいとわぬ精神が必要じゃ。 それは私の性能を最大限に発揮する以上二人共に求め無ければならないものじゃ。 最大限の力を発揮出来ぬなら、その力を縛り付け平穏に生きていけるようにするつもりじゃった。 ワシも今回の騒動に手を貸す事無く眠り続けるつもりじゃった』
『むふぅ、ワシと違って真面目なんじゃのぉ』
『ふらふらほっつくアンタが不真面目なだけじゃ』

 聖神の杖の言う通り、闘神の斧は溶岩の河の中に居た訳で彼が否定する事は出来なさそうだ。
 『ワシの使い方じゃ。 少年、どうやらお主は穢れの無い心の持ち主の様じゃ。 必要とあればワシを使うが良い』
『ふぉっ!? まさか、杖を武器にして敵を殴るのか!? それだったらワシがおるぞい! 攻撃力は絶対に杖より斧のが上じゃ!』
『だまらっしゃい! 脳筋チンパンジジイ!』
『おぉ、のぉ~』

 聖神の杖にしかられた闘神の斧が細々といつものギャグを言う。
 
『ぷっ、し、しかたない、許してあげるぞよ』

 どうやら、聖神の杖の笑いのツボに刺さっているみたいだ。

『そうじゃの、少年が私を使った場合は50%程の性能であるが恩恵を与えられる。 これでもそこらに転がって居るレアな武器を使うよりも遥かに高い効果を得られるじゃろう。 ヒーリング然り、補助魔法然り、神聖魔法や光属性の魔法の威力を跳ね上げさせることが出来る。 少年は光魔法は使えぬようじゃが私を身に付けてる間は使う事が出来るぞ』

 つまり、ルッカさんやデビッドみたいな脳筋チン〇ンジーと組んで俺が後方支援に回らされる時絶大な効果を発揮しそうだ。

『物理攻撃をしても、そこのジジイとは言わぬがそこら辺の武器よりも攻撃力はあるぞい』

 すごいな、武器として使っても高性能、流石はアーティファクトと言った所か。
 『次に、アリア、ルミリナ、お主がワシを扱う場合じゃ』

 アリアさんとルミリナさんは固唾を飲み聖神の杖の説明を聞く。

『お主等がそのまま使う場合は6~7割の性能を引き出せるはずじゃ。 その辺お主等の神聖魔力次第じゃからゆくゆくは100%も可能じゃ』
『ふむぅ、意外とケチじゃのぉ』

 聖神の杖にケチをつけた闘神の斧から再び悲鳴が聞こえた。
 
『次、私に二人の魂を預けた場合じゃ。 この場合はどちらか一方の肉体を残し戦う事が出来る。 現状8割位の性能を引き出せる』
『むふぅ、全く、よくもそんな凶暴な性格をしておいて旦那が見付かったのか不思議でたま』

 3度目の悲鳴だ。

『最後、二人の魂を私に預け、私自身を召喚する事。これが最も性能を引き出せる。二人の神聖魔力が伸びれば今の限界を超えた性能を発揮する事が出来る』
『ぶへぇ~最強がロリババアなんて酷い話じゃぞ!』
『女に興味が無いお主が何を言っておる。じゃがその辺は否定せぬわ。 肉体は兎も角精神はババアじゃ。かと言ってしわがれたババアを見たくなかろう』

 確かに16歳の少女とピー歳のお婆さんなら前者の方が良いけど。

『何よりも、身体能力に差があり過ぎるんじゃ。若い肉体の機敏さと言ったら一度味わうと戻れんくなるぞい』
 ああ、そうか。それを言われてしまったら絶対に若い肉体を選ぶ必要がある。

『そんな訳じゃ、外ではお主のお仲間が戦っておるじゃろう、助太刀と行こうじゃないか!』

 俺は聖神の杖をアリアさんに渡し、それを見たルミリナさんが続けて聖神の杖に触れる。
 まばゆい光が発した後、先程の少女が姿を現した。
 彼女達が下した決断は最大戦力で戦う、俺が考える限り最善の選択だった。
 
「いくわよ、私の事は二人のひ孫にちなんでアリナ、アリナ・ルーツと呼びな」

 俺達は、アリナさんの指示の元外で魔族と戦うルッセルさん達の元へ向かった。
 
 
 ☆アリナ・ルーツ

 ・聖神の杖の主でアリアさんとルミリナさんのひい婆さん。
  アリアさんとルミリナさんの力を合わせる事でこの姿になれる、杖の性能を最大限に発揮できる形態。
 
 ・肉弾戦は不得手ながらもある程度は可能。
  神聖、光魔術が最高クラスの性能。

 ・外見特徴。
  細身でリンカさんを超えるスタイルを誇る。

 ・身長、155cm

 ・体型、細身。

 ・髪、濃い緑のツインテール。
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