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4章
93話「拮抗した戦い」
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神殿の外ではルッセル達が魔族と交戦を続けている。
しかし、形勢が良いとは言えなかった。
「クッ、まだこの程度の事でっ!」
ルミナスの炎魔法を直撃したルッセルは、闘気の力で自らの身体を焼かんとする炎を打ち消した。
だが、ルッセルの消耗は激しく剣を構える位置がわずかながらに下がっている。
「随分とすばしっこいじゃない?」
ルミナスが魔法を放った時に生じる硬直を的確に狙い撃つセフィアであるが、ルッセル同様に攻撃力が足りないのか命中させる事はで来ても大きな傷を負わせる事が出来ない。
「ざぁんねん★ もっと頑張りましょうね★」
セフィアからの攻撃を被弾し傷を負ったルミナスは、彼女をあざ笑いながら高度を上げ『治療術(ヒーリング)』を発動させる。
小さいながらとは言え与えた傷はあっさりと癒されてしまう。
「うるさいわねっ!」
同族嫌悪を感じているのか、珍しくセフィアは声を荒げている。
それでも次の矢を装填し、ルミナスに狙いを定め発射する。
今度は毒が塗られた矢だ。
「あらぁん★ ぴりぴりするわぁん★」
セフィアが放つ毒矢を右腕に掠めたルミナスは、やはりセフィアを子馬鹿にした声を上げる。
「せめて、カイルさんで良いですから支援魔法を貰えれば違うんですけど」
セフィアの隣に居たエリクがルミナスに向け氷魔法を放つ。
ルミナスを中心に氷の嵐(アイスストーム)が発生し、無数の氷のつぶてがルミナスに直撃する。
「ああん★ 気持ちいいわぁ★」
ルミナスは、氷のつぶてを請けながらも術者であるエリクに色目を送った。
エリクの魔法力ですらルミナスの魔法防御力を前には無力である事を見せつけられている。
「これでどうです!」
エリクの魔法により、ルミナスの視界が不明確になった所をルッセルが上手く突いた。
闘気のエネルギーを攻撃力に注いだルッセルの一撃がルミナスの肩口を襲う。
「きっ、貴様ッ!」
確かな手応えだ。
ルッセルの一撃を受けたルミナスの肩口からはおびただしい量の血があふれ出した。
受けたダメージを証明するかの如く、鬼の様な形相でルッセルを見つめたルミナスは、攻撃後の不安定な態勢をしているルッセルの腹部目掛けて鋭い蹴りを放った。
「ぐわっ!?」
ルミナスの蹴りをもろに受けたルッセルは大きく吹っ飛ばされ、神殿の壁に激突。
派手な音を立て周囲に砂埃をまき散らした。
「ルッセルさん!」
ルッセルの身を案じたエリクが彼の元に駆け寄る。
「これしきの事、問題ありません」
ルッセルは剣を杖の代わりにし、肩で大きく息をしながら立ち上がった。
ルッセルの言葉通り、闘気の力のお陰で見た目ほどのダメージは負っていない。
しかしながら、額からはスーッと一筋の赤い血が流れだしている。
「チッ、痛いのは好きじゃねぇんだよ」
ルミナスが声を荒げながら、『治療術(ヒーリング)』を掛けルッセルから受けた傷を元通りにし、わざと忘れていたかの様に『異常治癒(キュア)』も施しセフィアから受けた毒の治療も行った。
「くそぅ! 僕に神聖魔法が扱えれば!」
自分の魔法が通用しなかった怒りをルミナスにぶつけるエリクだが、
「言って無かったかしら? あたしは魔聖将ルミナスよ? 神聖魔法は痛くもかゆく無いわよ」
「だったら、暗黒魔法」
言いかけた所で相手は魔族と気付き言葉を止めた。
「残念ねぇ? あたしは魔族よ? 暗黒魔法も通用しないわ」
ルミナスは、エリクに対し己の無力さを突き付けるかの様に言う。
「せめて、賢神の石の力が」
それが口に出しては行けない言葉だと言う事に気づくのは言葉にした後だった。
「あらあらぁ? ダストきゅんみたいに人間裏切っちゃうのかしら? あたしは歓迎するわよ?」
エリクに向けて妖艶な笑みを浮かべるルミナス。
彼女の身体がうっすらとあわいピンク色の光があふれ出す。
「この馬鹿ッ!」
セフィアが、エリクの肩に向け手持ちの中で最も威力の低い矢を放つ。
「うぐっ」
想定には有り得ない場所からの痛みを感じたエリクは、振り返り驚愕の表情を浮かべる。
「エリクさん! 魅了(チャーム)です!」
ルッセルが声を張り上げエリクに伝える。
「す、すみません」
ルッセルの声により我に返ったエリクは二人に謝る。
「あらやだ? そう言う事には敏感なのねぇ?」
ルミナスは上空で、ルッセル達を嘲笑する。
だからと言って大技を繰り出そうとする気配は無い。
ルッセル達に攻撃力が不足しているのと同様に、魔聖将であるルミナスもまたルッセル達に致命打を与える攻撃力を持ち合わせていない。
ルミナスとてルッセル達に勝ちたければ持久戦に持ち込むしか無いのだ。
「負ける訳には行きません!」
ルッセル達は、ルミナスの神殿侵入を阻止するだけで最低限の仕事をこなせる分まだ楽である。
だが、出来る事ならば自分達の力でルミナスを撤退、願わくば撃退させたいと言う気持ちが無い訳ではない。
例え相手が魔族だとしても、いつかどこかで魔力がそこ尽きるはずだ。
自分達には魔力を回復させる事が出来る薬がある。
いや、その前にカイル達が戻ってくれば、願わくば聖神の杖を手にした彼が戻ってくれば今の苦境を逆転出来る。
ルッセルは闘気を集め、発動、再度ルミナスに斬撃を仕掛ける。
「僕だって出来る事はあります!」
ルッセルが仕掛ける直前にエリクが再度氷魔法を発動させた。
先程と同じ様に自分の攻撃で直接ダメージを与える事が出来なくとも目くらましに使えるからだ。
「ベテランレンジャーの意地見せてあげるわ!」
セフィアは、エリクと共にルミナスを挟み込める位置に移動、背後から命中精度に優れた矢を選出し放つ。
いまさっきルミナスに対し通用した3人の連携攻撃だ。
当のルミナスも、同じ手と分かって居ながらも数の暴力を前に回避し切る事は出来ずルッセルの一撃をやはり、受けてしまう。
同じ様に反撃に成功するも魔法を得意分野とするルミナスの物理攻撃では闘気を身に纏ったルッセルに対し有効打は与えられない。
ルッセルを吹き飛ばしたルミナスは『治療術(ヒーリング)』を使い戦況を仕切り直す。
いつ終わるか分からない、先に根を上げた方が負けの持久戦が続けられる。
しかし、形勢が良いとは言えなかった。
「クッ、まだこの程度の事でっ!」
ルミナスの炎魔法を直撃したルッセルは、闘気の力で自らの身体を焼かんとする炎を打ち消した。
だが、ルッセルの消耗は激しく剣を構える位置がわずかながらに下がっている。
「随分とすばしっこいじゃない?」
ルミナスが魔法を放った時に生じる硬直を的確に狙い撃つセフィアであるが、ルッセル同様に攻撃力が足りないのか命中させる事はで来ても大きな傷を負わせる事が出来ない。
「ざぁんねん★ もっと頑張りましょうね★」
セフィアからの攻撃を被弾し傷を負ったルミナスは、彼女をあざ笑いながら高度を上げ『治療術(ヒーリング)』を発動させる。
小さいながらとは言え与えた傷はあっさりと癒されてしまう。
「うるさいわねっ!」
同族嫌悪を感じているのか、珍しくセフィアは声を荒げている。
それでも次の矢を装填し、ルミナスに狙いを定め発射する。
今度は毒が塗られた矢だ。
「あらぁん★ ぴりぴりするわぁん★」
セフィアが放つ毒矢を右腕に掠めたルミナスは、やはりセフィアを子馬鹿にした声を上げる。
「せめて、カイルさんで良いですから支援魔法を貰えれば違うんですけど」
セフィアの隣に居たエリクがルミナスに向け氷魔法を放つ。
ルミナスを中心に氷の嵐(アイスストーム)が発生し、無数の氷のつぶてがルミナスに直撃する。
「ああん★ 気持ちいいわぁ★」
ルミナスは、氷のつぶてを請けながらも術者であるエリクに色目を送った。
エリクの魔法力ですらルミナスの魔法防御力を前には無力である事を見せつけられている。
「これでどうです!」
エリクの魔法により、ルミナスの視界が不明確になった所をルッセルが上手く突いた。
闘気のエネルギーを攻撃力に注いだルッセルの一撃がルミナスの肩口を襲う。
「きっ、貴様ッ!」
確かな手応えだ。
ルッセルの一撃を受けたルミナスの肩口からはおびただしい量の血があふれ出した。
受けたダメージを証明するかの如く、鬼の様な形相でルッセルを見つめたルミナスは、攻撃後の不安定な態勢をしているルッセルの腹部目掛けて鋭い蹴りを放った。
「ぐわっ!?」
ルミナスの蹴りをもろに受けたルッセルは大きく吹っ飛ばされ、神殿の壁に激突。
派手な音を立て周囲に砂埃をまき散らした。
「ルッセルさん!」
ルッセルの身を案じたエリクが彼の元に駆け寄る。
「これしきの事、問題ありません」
ルッセルは剣を杖の代わりにし、肩で大きく息をしながら立ち上がった。
ルッセルの言葉通り、闘気の力のお陰で見た目ほどのダメージは負っていない。
しかしながら、額からはスーッと一筋の赤い血が流れだしている。
「チッ、痛いのは好きじゃねぇんだよ」
ルミナスが声を荒げながら、『治療術(ヒーリング)』を掛けルッセルから受けた傷を元通りにし、わざと忘れていたかの様に『異常治癒(キュア)』も施しセフィアから受けた毒の治療も行った。
「くそぅ! 僕に神聖魔法が扱えれば!」
自分の魔法が通用しなかった怒りをルミナスにぶつけるエリクだが、
「言って無かったかしら? あたしは魔聖将ルミナスよ? 神聖魔法は痛くもかゆく無いわよ」
「だったら、暗黒魔法」
言いかけた所で相手は魔族と気付き言葉を止めた。
「残念ねぇ? あたしは魔族よ? 暗黒魔法も通用しないわ」
ルミナスは、エリクに対し己の無力さを突き付けるかの様に言う。
「せめて、賢神の石の力が」
それが口に出しては行けない言葉だと言う事に気づくのは言葉にした後だった。
「あらあらぁ? ダストきゅんみたいに人間裏切っちゃうのかしら? あたしは歓迎するわよ?」
エリクに向けて妖艶な笑みを浮かべるルミナス。
彼女の身体がうっすらとあわいピンク色の光があふれ出す。
「この馬鹿ッ!」
セフィアが、エリクの肩に向け手持ちの中で最も威力の低い矢を放つ。
「うぐっ」
想定には有り得ない場所からの痛みを感じたエリクは、振り返り驚愕の表情を浮かべる。
「エリクさん! 魅了(チャーム)です!」
ルッセルが声を張り上げエリクに伝える。
「す、すみません」
ルッセルの声により我に返ったエリクは二人に謝る。
「あらやだ? そう言う事には敏感なのねぇ?」
ルミナスは上空で、ルッセル達を嘲笑する。
だからと言って大技を繰り出そうとする気配は無い。
ルッセル達に攻撃力が不足しているのと同様に、魔聖将であるルミナスもまたルッセル達に致命打を与える攻撃力を持ち合わせていない。
ルミナスとてルッセル達に勝ちたければ持久戦に持ち込むしか無いのだ。
「負ける訳には行きません!」
ルッセル達は、ルミナスの神殿侵入を阻止するだけで最低限の仕事をこなせる分まだ楽である。
だが、出来る事ならば自分達の力でルミナスを撤退、願わくば撃退させたいと言う気持ちが無い訳ではない。
例え相手が魔族だとしても、いつかどこかで魔力がそこ尽きるはずだ。
自分達には魔力を回復させる事が出来る薬がある。
いや、その前にカイル達が戻ってくれば、願わくば聖神の杖を手にした彼が戻ってくれば今の苦境を逆転出来る。
ルッセルは闘気を集め、発動、再度ルミナスに斬撃を仕掛ける。
「僕だって出来る事はあります!」
ルッセルが仕掛ける直前にエリクが再度氷魔法を発動させた。
先程と同じ様に自分の攻撃で直接ダメージを与える事が出来なくとも目くらましに使えるからだ。
「ベテランレンジャーの意地見せてあげるわ!」
セフィアは、エリクと共にルミナスを挟み込める位置に移動、背後から命中精度に優れた矢を選出し放つ。
いまさっきルミナスに対し通用した3人の連携攻撃だ。
当のルミナスも、同じ手と分かって居ながらも数の暴力を前に回避し切る事は出来ずルッセルの一撃をやはり、受けてしまう。
同じ様に反撃に成功するも魔法を得意分野とするルミナスの物理攻撃では闘気を身に纏ったルッセルに対し有効打は与えられない。
ルッセルを吹き飛ばしたルミナスは『治療術(ヒーリング)』を使い戦況を仕切り直す。
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