【完結】死に戻り王女は男装したまま亡命中、同室男子にうっかり恋をした。※R18

かたたな

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美味しいご飯

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 犯罪歴のある人材を受け入れ厳重に管理し発展する歴史の中で、トロルゴアの国民は管理したり警備する事に長けているそうだ。「まるで大きな監獄都市だ。」と私を一時保護する部屋へ案内する人が笑って話していた。

 そういう都市だからこそ、トロルゴアの学園では何らかの事情により能力があっても学校へ通えない子供達の保護と受け入れをしているそうだ。
 歩く度にジャラジャラと鎖が音を立てる私を見て、案内人は哀れむ視線を私に向けた。

 「お前みたいな子供にそんな重罪人の手枷を着けるなんて・・・。確か13歳だったか?試験合格したらいっぱい食って立派な男になれよ。」

 学園長が私を案内人に引き渡す際、13歳の男で学園試験中である事を説明していた。
 試験の合否が分かるまでは身元を隠していてくれる様だ。

 「お心遣い、ありがとうございます。」

 「おう、頑張れよ。
 さぁ、着いた。食事はもうすぐ届く。風呂はまだ準備に時間がかかる、汚れをすぐに落としたいと思うが我慢してくれ。
 他の収容者とも仲良くな、同じ学校に通うかもしれないからな。」

 気さくな案内人に通されたのは綺麗な牢獄という印象の部屋だった。

 壁際にシンプルなベッドと机。机の上にはペンと紙と古い本の山。誰かを呼ぶ為の呼び鈴。
 各部屋は鉄格子で区切られている。同じ空間に居る収容者同士のプライバシーは一切無さそう。

 部屋までの通路を歩けば他の収容者がチラリとこちらを見る。

 割り当てられた牢獄に入ると、入り口がしっかり閉まるのを見届けた。

 部屋を見渡して、一度目の人生で投獄された風景が甦る。
 疲れなのか記憶のせいなのか、ふらついて床に手を着くけど、あの時の冷たく不衛生な床じゃない。清潔に掃除された床で安心する。
 処刑を待つあの部屋とは違うんだと自分を宥める様に体を擦った。大丈夫、大丈夫。

 「大丈夫?」

 鉄格子で区切られただけの隣の部屋から低く落ち着いた男性の声がする。

 「・・・疲れてるだけだと思います。すみません。」

 せっかく気遣ってくれたのに気の効いた言葉が出なかった。ごめんなさいと思いながら目すら合わせる事なくベッドの上に横たわるとそのまま寝てしまった。


◆◆◆◆
 
 
 ガラガラガラガラ。


 良い香りと共に金属のぶつかる音。小学校の給食当番を思い出す音と香り。

 「今日も力作だからさ、いっぱい食べてねー。お代わりもじゃんじゃん有るから。」

 元気な声のおばちゃんだ。
 各部屋の収容者達がお礼を言う言葉や軽い雑談をする声が聞こえる。
 目が覚めたけど狸寝入りを続けて様子を伺っていると、私の部屋にも配膳が行われた。
 
 「疲れて寝てるのねー。こんな姿になるまで可愛そうに。泥だらけで一瞬ベットに土の山が有るのかと思った。早くお風呂に入って支給の服に着替えられると良いわね。
 あ、でもこの子が着けてる枷って重罪人のかしら?色々あったでしょうねー。気になるわぁ。」
 「やっぱり、その人の手枷って重罪人用なんですね。何やらかしたんだろう。魔力暴走で町1つ飛ばしたとか?」
 「どうだろ、弱そうだよソイツ」
 「でも人は見た目によらないからなー。といっても泥の塊にしか見えないけど。」

 寝ているフリの私に散々な事を言う他の収容者。
 話の種になっている所でタイミングを逃して起きれず、料理のお礼を言えないまま配膳係りのおばちゃんは行ってしまった。
 皆が食事に集中したのか、話題が私ではなくなってから起き上がる。周囲ではそれぞれ机に食事を持って行き美味しそうに食べている。私もそうしようと配膳された料理の元へ行き、お盆に乗せられ床に置かれた料理を運ぼうと屈むけれど。

 「っ・・・。」

 目の前の物は美味しそうな温かい料理なのに、一度目の牢獄で食べた料理を思い出してお腹を擦る。
 一度目の牢獄で食べた料理は本当に酷い物で悪くなっていたのか毒が入っていたのか、食べた後は必ず腹痛が起こった。

 「食べられそう?」

 再び声を掛けられたのは寝る前も声を掛けてくれた隣の人だった。そう言えばこの人は私の話題に入っていなかったな。

 「食べたいのですが食べれなくて。」

 料理を持つ手が震え、持てそうに無かったので再び元あった場所へ置く。
 
 「あぁ。手枷のせいかな?重そうだよねソレ。あーんしてあげようか?」

 そう言う彼は机で食べていた料理の器を一つ取り、私のすぐ近くまでやって来た。鉄格子の間から差し出されたのは彼の食べていた料理を乗せた彼の使ったスプーン。
 この人はさっきまでこの料理を食べていてとても元気そう。
 目の前の自分用に配膳された料理より、毒が無いと分かっているソレはとても信用出来る気がした。
 トロルゴアにたどり着くまで木の実と川魚でしのいだ私はとても飢えていてソレが食べたくて仕方なかった。

 「なんて・・・俺のを食べるのは無理か。でも君の料理は俺から届かないしな。」

 グダグダしているうちに手が引っ込めてしまいそうになって慌てて彼のスプーンに乗った物を食べる。

 今までの生活で誰かの食べ掛けなんて食べた事ない。それだけ餓えていた。

 多分、彼は冗談だったのだろう。
 とても驚いている気がする。
 だけどとても美味しかった。
 本当に涙が出る程に。
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