【完結】死に戻り王女は男装したまま亡命中、同室男子にうっかり恋をした。※R18

かたたな

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エロ本って。

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 大盛りご飯で有名なお店で普通の食事をしてから部屋に戻ると買ってきたジュースを二人で飲んだ。
 シュワシュワして美味しく甘酸っぱい。グラスを覗けばキラキラとした泡が綺麗に光る。

 「くぅー!!美味しいですねー!!」
 「うん、美味しい。」
 
 お酒は飲めなくても私達にはそれで十分で、街で見かけたあの店に今度行ってみようと話題が尽きなかった。

 「ヒスイは纏う魔力で魅力を判断されなくなったら俺がモテるって話していたけど、本心でそう思うの?」
 「コハクさんお面取ると凛々しくて格好いいじゃないですか。」

 自室ではお面を外してくれる今、コハクさんの表情はよく見える。
 また顔を、ポッと赤くする姿は乙女か!と言いたい程可愛い。
 こう、グイグイ引っ張ってくれる俺に付いてこい!っていう頼りになる男ってタイプでは無いけれど、人の行動をよく見てアシストしてくれる感じが優しさで包まれている気持ちになる。それが彼の良さだと思う。

 「ヒスイの好みは変わってるね。纏う魔力が無くても呪印そのものは有るし、ツノ持ちはモテない。」
 「何でですか?呪印はともかくツノなら獣人にも居る特徴じゃないですか。」
 「ツノを持つ獣人同士ならツノも悪くないのだろうけど、他には不評なんだ。恋人になって密着する機会が増えるとツノは邪魔らしい。」
 「密着すると邪魔になるって、キスでは邪魔になりませんよね?」

 アスティリーシャとして会い、キスした時も邪魔になる事はなかった筈だけど。

 「うーん、そのもっと先かな。ほら、こうやって・・・」
 
 狭いリビングで、椅子にすわる私にコハクさんが実演してくれる。
 お面もフードも無いコハクさんが私の肩に手を添えて鎖骨辺りに顔を埋めるフリをする。
 ギリギリ当たらない距離で息が首にかかりサラリとした髪が頬に当たるとゾクリとした。
 
 「キスしてから、こう次の段階に行く時に気を付けないとツノが当たって痛いだろ?」
 「確かに。顔の近くにツノがあると当たりそうで怖いですね。じゃあ、こうはどうですか?後ろからこうキスして・・・」

 気を取り直してコハクさんを立たせ、前に立つと手を持って私を抱き込む形にする。後ろを振り向けばコハクさんの顔が近くに見える。
 この流れは私の役得ではなかろうか。コハクさんに包まれて温かい。

 「出だしが後ろから抱き締めるこの体制だとしても結局向き合わない?」
 「お互いに慣れれば良いんじゃないですか?」
 「その慣れまで行くのが大変なんじゃないか。そういう関係を想定するとお付き合いってなる前に面倒そうだなってなるそうだよ?」

 説明をしてくれながら何か考えて居るのか、んーと唸りながら私を抱き締める腕に力が入る。
 それが嬉しくて首元に顔を近付けているコハクさんのに頬擦りする。

 「ふふっ」
 「どうした?」
 「こんな兄が居たら良かったのになって思いました。」

 頬擦りを嫌がらないのを良い事にグリグリ頭を押し付ける。
 髪をクシャッと撫でられるとやっぱり嬉しくて頬が緩みっぱなしになる。

 「もし、俺がヒスイの兄なら兄をからかうなってしっかり教える。」
 「からかってないですよ、お兄ちゃん。」
 「これだからなー。」

 そこで素朴な疑問が出てくる。
 さっき言っていたキスより先の行為はどう知るのか。それってやっぱり本だよね?

 「お兄ちゃん、エッチな本持ってます?僕も後学の為に読んでみたいんですけど。さっきの流れが具体的に分かると色々研究と対策出来ますよね?」
 「はぁ!?複数人で読むものじゃないから。」
 「ちょこっとだけ!男同士だから良いじゃないですか。」
 「今は持ってないよ。村から何も持たずに出されて弟が最低限の荷物だけ急いで持たせてくれただけだから。」
 「・・・そうですか。」

 うーんと悩んでいると珍しくニヤッと笑うコハクさん。そのニヤリ顔も良いと思うのだから恋って嫌だ。

 「ヒスイも男だなー。」
 「年頃ではありますから。だから次に街へ行くときは買いに行ってみようと思います。コハクさんも一緒に買いに行きますか?」

 私は興味がある。この世界のエロ本ってどんな物だろう?と。
 獣人居る世界だからモフモフした子とか色んなバリエーションがあるだろうな。

 「相互監視人だから付いては行くけど買わない。」
 「何でですか?」
 「気になる人が居ると他の子を見る気にならないんだよ。」
 「コハクさんってそんな一途だったんですか!?」
 「ヒスイが驚きすぎて悲しいんだけど。」

 本当に驚きだった。優しくされると次々好きになるもんだと思ってた。

 「惚れっぽいって言われるけど、脈が無いって分かってるからすぐ他の人をいいなーってなるだけで本気で狙ってたら一途だと自分では思ってる。」
 
 彼にとってアスティリーシャはキスもご家族に挨拶もしているし、確かに他の女性と比べたら進んだ存在なのかもしれない。もしそうなら嬉しい。

 「そうですか、じゃあ書店までは一緒に来て貰って外で待っていて下さい。」
 「わかった。ヒスイがどんなの選ぶか少し興味あるな。」
 「僕もどんなのがあるか興味あります。」

 コハクさんが珍しく意地悪な顔をする。これは私をからかおうとしてるのかな?

 「ヒスイはどんな子が好みなんだ?」
 「それは・・・その時好きな子が好みです。」
 「その返しは何だかズルいな・・・。」
 「ズルくないですよ。」
 「じゃあ、コハクさんはどういう人が好みって答えるんですか?」

 質問返しに「今真剣に考えてみるから待って。」と悩みだした。一つ一つ真剣に物事を考える所も彼の良いところだな。
 
 「えーと。可愛い子?」
 「考えた割に内容薄いですね。」
 「そう言われてもな。」

 とんでもなく下らない会話だ。だけどこうして笑いあって冗談を言えるのが心地いい。
 追われている身なのに、こうしている今が人生で一番楽しいと実感している。


◆◆◆


 夏祭りは僕が出国する前日にある。
 エロ本を買う日はその夏祭りの前日に決めた。クラスの人にエロ本買ってる所を見られたとしても2日後には帰るから気にならないからだ。
 エロ本を買うにはリスクも有るから慎重に行かなければいけない。うん。

 それまで何をするかと計画していると近くの湖に泳ぎに行こうとなった。
 暑い今の時期にピッタリの避暑地だけど少しだけ遠いのでガーネットとメノウも付いてくると強く主張され、四人での出発となった。

 都市から離れると監視の目も少なくなるから護衛すると意気込んでくれている。
 過保護だな、と思いながらも少し嬉しい。
 だけど、コハクさんが知らない二人が居て疎外感を感じないかとそれが心配だった。


◆◆◆


 待ってました!泳ぎに行く当日。
 寮の前でコハクさんと待っているとメノウとガーネットがすぐに姿を表す。
 その二人を見てコハクさんが小さく「あ。」と言うのが聞こえた。

 「どうしました?」
 「え?あぁ。二人は仲良くなったみたいだね。」

 何やら赤面するコハクさん。
 遠くから普通に歩いてくる二人。
 ガーネットがメノウに世話を焼き、メノウは気の抜けた感じで対応する。
 確かに少し打ち解けた?だけど特に何も変わって無い様に見える。

 「あぁ、そうか。ヒスイは纏う魔力が見えないんだっけ。」

 纏う魔力で分かる事。それって・・・

 「交わりがあったと?」
 「・・・うん。」

 驚きである。
 確かによく見たら少しイチャイチャしてるかも知れない。
 まさか疎外感を感じるのがコハクさんのみならず私もになるとは思わなかった。

 「ヒスイ、コハク君お待たせ!メノウったら本当に準備が遅くて。」
 「俺まだ寝たぃ。」

 恋人や配偶者が居る人を省いて選んだのにこの状況。私はマッチングしたかった訳じゃない。

 「とりあえず行きましょうか。」
 「行きましょう。」
 「行こー!楽しみー!」
 「寝たぃ。」

 ガーネットとメノウは移動中もイチャイチャ。
 湖に着いて他の人にガーネットの水着姿見せたくないとかでイチャイチャ。

 おい。
 ・・・おい!!
 護衛は!!それしてるの?護衛してるの!?

 「コハクさん、二人で泳ぎに行きますか。」
 「そうだな。」

 男物の水着にシャツと上着を着て湖を目指す。
 コハクさんも水着にフード付きの上着でツノを隠して居るため自分だけ浮く事は無かった。
 だけど湖に足を入れてひんやりした水を肌で感じてから忘れていた事に気がつく。

 「そうだ、コハクさん。試してみて欲しい品が有るんでした。」
 「え?何?」

 お面をしたまま水に入ろうとしていたコハクさんに違和感が無かった為忘れて居たけどとっておきのモノを作っていた。

 「呪印の上から被せる防水のボディスタンプです。防水インクの。」
 「ボディ・・・スタンプ?」
 「とりあえず取りに戻りましょう。呪印の上からそのスタンプを試して、お面無しでも大丈夫かガーネットとメノウに見て貰いましょう。」
 「・・・大丈夫かな?呪印は普通の人が直視するととても恐怖を感じるらしいんだ。」
 「大丈夫ですよ、きっと。」

 恐怖を与える結果になったとしても、二人なら多分大丈夫。それは私達単身者の目の前でいちゃつき過ぎた報いだ。

 ニヤリと悪い笑みを浮かべながら荷物置き場まで戻って行った。
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