勇者と小さな魔王の旅

木元うずき

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ウェイパ村

旅の記録9 心を開く理由とは?

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三人は宿の部屋に着くとそれぞれ椅子やベッドに座った。勇者はズボンのポケットからこの村である程度買った回復薬と晩御飯を机の上に広げた。
「好きな物を各自使っといて。僕はその間に晩御飯を」
勇者は机の上に広げた晩御飯から蒸しパンを取り小さくちぎって口に放り込んだ。日向は塗り薬を肩や手首に塗り、魔王は栄養ドリンクを一気に飲み干した。
「ふぅ・・・それでじゃ」
魔王は飲み干した空き瓶を机の上に置くと口を開いた。
「よくこんなにも多いものをそんな小さなポケットに入ったのもじゃの・・・。いやまぁそれは今は置いておこう。置くのじゃが衛生面的に大丈夫なのか!?」
「い、言われてみればそうだ、ね・・・」
机の上にあるパンを取ろうとした日向は魔王の指摘で手を引っ込めた。
「う~ん・・・言われてみればそうだな。よし、明日カバン買いに行くか」
「うむ。それが良い」
三人はその後も楽しく会談した。
「ふぁ・・・僕はもう寝るよ。最後電気は頼んだぞ」
勇者は口に手を当てながらそう言うとベッドに潜り込んだ。
「あやつは寝たかの?」
「わからない。確かめてきて」
「儂がか?」
日向は首を縦に振ると魔王はため息をつきながら勇者に近づいた。そして、魔王は勇者の口元に手を当て確かめた
「うむ、恐ろしく早い眠りじゃ。呼吸の深くゆっくりに一定を保っているからしばらく起きることは無かろう」
「そ、じゃ例の件についてだけど」
勇者が眠っていることを確認した日向は真剣な眼差しで魔王を見た。
「ニナは精神魔法にかかっていて魔王の側近だから全体的に能力が上がっている。そう、考えていいのよね?」
「そうじゃ。それに付け加えるとしたら父上は人間を仲間に入れぬと聞いておったから油断はしておった」
「それは仕方が無いよ。それより精神魔法を解く方法はあるの?」
「あるのはあるんじゃが・・・」
魔王は日向の質問に顔を顰めた。
「言って。多少の無理は聞けるはずだから」
それを聞いても魔王は考えていた。そして、意を決して言い出した。
「時間がかかる。儂がいない状態でニナのやつを足止めし、その上、外したら二度は唱えれぬ」
「他にもあるでしょ?フィーちゃんがそれぐらいであんな顔にはならないから」
日向は魔王の顔を見つめたまま言った。日向は魔王と付き合って日は浅いものの、前のロリコン発言の時と照らし合わせてもここまで悩んではいなかった。もし、これで他のがなかったらそれはそれで日向にとっては有難いが、そうではないと日向は踏んでいた。
「お主に儂の何が分かると言うんじゃ。じゃが、正解じゃ。心して聞くが良い」
日向は唾を飲み込んだ。これから言われることをしないとニナを取り戻せないと考えるとプレッシャーがのしかかってきた。
「しばらくニナは儂らの前には現れんからいつになるか分からぬ」
「・・・・・・それだけ?」
魔王の言ったことが呆気なく日向は目を大きくして聞き返した。
「う、うむ」
「あのさ~、フィーちゃん。私がそんな事に気が付かないとでも思った?もし、そう思っていたのなら甘く見すぎだよ。あそこまで仲間をズタボロにされたのにまた出してくるなら指揮官が馬鹿なだけだよ」
日向はため息をつきながら魔王の前に立った。
「それぐらい待つし、フィーちゃんの言い方的にいつか戦うのでしょ?そうじゃないとあそこで怒るのおかしいじゃん」
笑顔で言った日向は優しく魔王は涙が溢れてきた。
「すまぬ・・・。儂の父上が一度に懲りず二度もお主の友に危害を加えて」
魔王は涙を拭い立ち上がった。
「お主は儂が絶対に守ってやる!」
「私はいいよ。それより私の友達を守って上げて」
「じゃがお主の友は・・・」
魔王は少し俯いた。その頭を日向に撫でられると自然と涙が溢れてきた魔王は急いで服で拭いた。
「勘が悪いのね。こう言えばいい?『取り戻して』って。まだちゃんと信用はしていないけどフィーちゃんは悪い魔物じゃないのも分かった。だって、私のお願いを聞いてくれたじゃん。悪いのはフィーちゃんのお父さん。フィーちゃん自体は悪くないからそれで許してあげる」
魔王はそれを聞いた瞬間止めていた涙が溢れ出してきた。止めようとすればするほど止まらなくなり体から力が抜けていった。日向は魔王の頭を優しく撫でた。
「戦った時は感情的になりすぎたからきついこと言ったけどあれが本心だから。そこは忘れないでね」
「お主は何故、何故そこまで儂に優しくするんじゃ・・・」
「優しくしている?何を勘違いしているの?」
魔王は崩れた顔の状態で日向を見上げた。
「私は私が当たり前って思ったことをしているだけ。だから、優しくはしているつもりはないから」
日向は笑顔で魔王を見た。
「さ、もう寝よ?明日は忙しくなるから」
「うむ・・・。わかった」
その後、日向は布団に入ると眠りについた。魔王はその後も枕に顔をうずくめて涙を流していた。
そして魔王は決意をした。『絶対に全員を守る』と。その後魔王は袖で涙を拭きドアに手をかけた。
「どこ行くの?」
魔王は後ろを振り向くとそこにはベッドの上に座っている日向がいた。
「眠れんから少しばかり体動かそうかとな」
「ふ~ん。なら、もう少し話さない?フィーちゃんの事、もう少し知っときたいしね」
「どう言う風の吹き回しじゃ?」
魔王は警戒するように日向を睨みつけた。
「気まぐれ?私って結構気分屋だし」
「む~。まだ儂は納得せんぞ」
「警戒心高めだね・・・」
日向は大きなため息を一つつくと魔王を見た。
「どうしてフィーちゃんのお父さんが人間を仲間にしただけでそこまで怒ったのかが気になるのよね。人間界と仲良くしたいからと言っても悪の人間もいるのは知っていると思うから」
「なんじゃ、そういう事か」
魔王は肩の力を抜くと椅子の上に座った。その時魔王は不思議な感覚だった。『何故ここまで日向に心を開けるのか』と。だが、今考えても答えが出るわけでもないと思いその違和感があるまま続けた。
「それは昔の話じゃ。まだ父上と仲が悪くなかった時の話」
魔王はどこか遠くを見つめるように日向に話し始めた。
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