勇者と小さな魔王の旅

木元うずき

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ペルソナ町

旅の記録12 レディー?ファイト!

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「ところで魔王様。何故そのような人のニードルに捕まっているいのですか?」
メイが魔王の護衛になってから数時間が経過した頃、メイは先程から魔王が日向にベッタリくっついていることを気にしていたらしい。魔王はそれを聞かれると少し慌てた表情で周りを見渡していた
「こ、これはじゃの・・・。そ、そうじゃ!こやつは珍しい魔法を使いよっての、それで仲間にする時にこやつが『貴方がいつも私の側を離れないならいいよ』って言うからの。仕方がなくくっついておるだけじゃ」
「え・・・?」
「リアリー?では、この人はロリコンってわけですね!」
魔王の唐突な言い訳が飛んでもないことを言っており日向が話を合わす前にメイが日向をロリコン認定してしまった。そして、日向は顔から表情がなくなり歩くペースが少し遅くなっり見るからに落ち込んでいるのがわかった。
「ですがレアなマジックですか。一度お手合わせしてみたいものですね」
その言葉にピクリと日向が反応した
「軽い魔法なら見せれるけどやってみる?」
日向の顔は明らかにさっきの事を撤回させようとしているのが見えた。たぶんこの後「これで認めてくれたら私はロリコンじゃないことを認めてね」って言いそうなぐらいの勢いだった。
「魔王様、よろしいでしょうか?」
「そうじゃの。なら、ここらで儂らは休憩するからお主らで気が済むまでやっておれ。一日中やるわけでもなかろう?」
「流石に一日中はやらないよ」
日向はそう言うと杖を構えた。
「そうですね。私の判断でやめるでオッケー?」
「いいよ。それじゃ・・・本気で行くから怪我してもしらないよ」
「いや、軽くやるのじゃないのか!?」
先程の言葉を忘れたのか、それとも早くロリコン認定を外して欲しいのか分からないが本気でいく様子の日向は勇者の言葉を無視して戦闘態勢に入っていた。メイは腰に付けていた小さな巾着からなにか塊を取り出すと空中に投げ捨てた。投げ捨てられた塊は少しの間宙を舞うとメイのサイズにあった弓に変化した。
「へ~、面白い弓ね」
「魔王様にスペシャルに作って貰った弓ですからね!」
メイは自慢げに弓を日向に見せている中魔王は少し申し訳なさそうな顔をしていた。
「どうしたんだフィー?」
「いや・・・あれ、儂が作ったんじゃないんだがの、あやつが勝手に勘違いしていて・・・。あれは特別に作って貰った弓、が正しい言い方なんじゃよ」
そんな事も知らずにメイは目を輝かしながら弓を構えた。
「アーユーレディー?」
「いつでもいいわ」
「GO!」
メイの合図と共に日向はメイの懐に走っていった。予想外の行動にメイは出遅れたがすぐに距離を取ろうと下がった。
「あまいね」
日向は超至近距離で魔法を唱えた
「アイスよ」
「ウォール!」
メイは後ろに下がりながら日向の魔法を防いだが、少しバランスを崩した。
「ホワイ!何故自爆覚悟の攻撃をするのです!」
その言葉に日向は少し笑うとメイの事を見下すような顔で言った。
「自爆覚悟~?何言ってるの?ちゃーんと私には当たらないようにしているよ」
日向は挑発するように言うとあからさまにメイは不機嫌な顔になった。そして、1本の矢を放つと日向はそれを片手で受け止めた。
「なに?当たると思ったの?」
挑発をやめない日向に対してボソッとメイはなにかを言うと矢の先から紫色のドロっとしたものがこぼれ落ちた。日向はその瞬間矢を離しメイとの距離を取った。
「先程まで攻めていた威勢はどうしたのですか?ミス日向」
今度はメイは挑発を始めたと思うと日向は少し真剣な顔になっていた。先程までの余裕はなくなっており、次のメイの行動を待っていた。
「そちらから来ないのでしたらミーから行きますね」
そう言うとメイはまた1本の矢を放つと日向は次は矢を避けてメイとの距離を詰めた。するとメイは悔しそうな顔をするとまたなにかボソッと言うと次は矢が爆発した。
「氷獄よ!」
「っ!シャードムーブ!」
日向は杖を地面に刺すと先程までメイがいた場所に氷の檻が出来た。だが、肝心のメイは地面に逃げ込みそこにはいなかった。
「なるほどね。闇魔法の使い手だったのね」
日向はなにかに納得すると服を整えた。
「この辺で終わらない?お互いの実力はある程度わかったと思うし」
そう言うと日向の後ろからメイが現れ弓を小さな塊に戻した
「オッケー。魔王様がこのフューマンに固着する理由がなんとなく分かりましたし」
メイも服を整えると魔王の方に向かって歩き出した。
「あなたって遅延魔法使えるの?」
「「遅延魔法(じゃと)?」」
魔王と勇者は日向のよく分からない言葉に同じタイミングでオウム返しをした。
「イエス。よく1回見ただけで分かりましたね」
「初見で見破れなかったから悔しいけどね」
二人の会話に全く着いていけない魔王と勇者は二人が話しているのを黙って見ていた。
「風魔法と炎魔法が簡単のは使えて闇魔法はほとんど使える。毒はどうやって出したのか分からないから何も言えない。これであっているかな?」
「ワイッ!?そこまで見破りました!?」
「う~ん、矢に魔法を込める事が出来るなら簡単なのは出来るのは分かったし最後の私の魔法に対して闇魔法で対抗してきたから炎と風はそこまで使えないのかなって予測が出来ただけよ」
「いや、日向よ。そんな事より遅延魔法とはなんじゃ?」 
日向の観察能力と推察力の凄さが分かったところで魔王が先程から気になっていた『遅延魔法』について聞いた。すると、日向は少し面倒くさそうな顔をすると解説を始めた。
「はぁ・・・、遅延魔法とは魔法の発動を遅らして呪文を唱える魔法の事。これ。するには魔力のコントロールが馬鹿にならないほど必要で魔女の私ですら運良く出来るぐらいの超高度なテクニックなわけ。普通の魔法使いは一生分の運勢を使ってでも出来ないかもね」
「イエス。魔王様がいなくなってからミーは練習をスタートしたのでーす。元々マジックは得意でしたから習得までのタイムはゼロに等しいのでーす!」
日向の説明を受けても凄さが全然実感しない勇者に対して魔王は少し考えていた。
「ふむふむ。まぁそれはともかくそろそろ行くか?」
「それもそうね。勇者さんもいいかな?」
「あ、あぁ。もちろんだ」
「行くぞメイ」
「イエス、魔王様!」
こうして四人はペルソナ村に向かって歩き出したのだった。
「あ、それとメイだっけ?私はロリコンじゃないから覚えといてね」
「ワイッ?この光景を見ても違うと言えるのでしょうか?」
日向の上に魔王が肩車の形で乗っており説得に欠けていたのはまた別の話・・・
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