131 / 167
最悪の時間
しおりを挟む「お祭り開始ですわ!!」
「M、五月蝿え」
祭り開始早々に騒ぐMにサトリは冷めた目を贈る。
いつもならその対応に興奮しているMだが、今は祭りに興奮している様だ。
騒がしさがいつもの倍くらいである。
「何でまた合流しなければならないんですか?」
そう溜め息をつきながら殺は目の前の金魚すくいの屋台を見た。
ここに来たのが運の尽き。
最初は陽と二人きりでまわろうと画策していたのだが、何の因果か五人の英雄が全員集結してしまったのである。
殺は酷くがっかりしている様だ。
「まあ、そんなことは良いから金魚すくいをやらぬか?」
殺は如何でも良くないんだよと内心思いながらも敬愛する兄、御影の提案を断らなかった。
「俺は今年の祭りの警備の時に金魚大量にゲットしたから正直要らないんだよな」
「如何でも良いからやろう」
「そうですね」
殺は陽がやろうと言ったら早速お金を払い、金魚すくいの用意をする。
殺は陽に格好良い姿を見せたい様だ。
それにサトリは触発されたのか急にやる気を出す。
「よし!俺もやる!」
そうなれば全員が金魚すくいを始める。
誰が一番多く獲れるか、そう競争しながら。
「ああん!一匹も獲れないですわ!」
「儂は一匹は獲れたぞ!」
「僕は三匹だ」
「俺はMと一緒の結果」
皆が金魚すくいを楽しんでいる中で殺は一人真剣だ。
狙いを定めて一瞬で獲る。
その姿は狩りをする猛獣だ。
「よし!二十匹!」
「どんだけ獲ってんだ!?」
獲った獲物を皆に見せる姿は主人を敬愛する犬の如く。
殺は獲りすぎということで金魚を何匹か屋台に返上した。
「サトリ兄さん」
「何だよ?殺」
殺は一匹も獲れなかったサトリを見つめる。
その目はどこか生温かい。
「これ……あげます」
そう言いながら殺は金魚をサトリに差し出す。
サトリは一瞬だが同情かと思い断わろうとした。
しかし殺の心を読んだ瞬間にサトリの頭の中は怒りで満ち溢れた。
「お前……育てるのが面倒だから俺に押し付けてんだろ!!」
「はて?何のことやら?」
「テメェ……」
殺はふざけた態度をとりながらサトリを見下ろす。
見下ろされたサトリは更に怒る。
怒ってすぐ様、殺の視界に入る為に大人の姿になった。
白い煙がサトリを包めばサトリが大人になる。
殺は大人の姿のサトリを見て此方の姿はイケメン系なんだよなと一人考える。
サトリが子供の姿の理由を殺は知っていた。
それは女子にモテたいが為である。
そんなことしなくてもモテる見た目だが性格が残念な故にモテない。
だから子供の姿でチヤホヤされ様とするのだ。
「殺!俺は金魚はもう育ててんの!もうこれ以上増えると成長とかの時の水槽代が勿体ねえよ!!」
サトリは金魚の成長の度に水槽を変えているのかと殺は少し笑う。
それを見たサトリは更に不機嫌になった。
「もう許さねー!」
「まあ、落ち着いてください。たこ焼き奢りますから」
「マジで!?ひゃっほー!」
サトリは食べ物に釣られる。
殺は敬愛する兄の一人がこうもちょろくて大丈夫なのかと少し心配になる。
心配、そういえば閻魔は?そう殺は思い、辺りを見回す。
よく見れば居た。
閻魔は射的場で無双していたのである。
閻魔が銃に込めた弾を放てば何故か何もかもを飛ばす勢いの風が巻き起こり、景品が一瞬で倒れるのだ。
これは来年からは閻魔大王お断わりという看板が現れるだろうと殺は想像する。
「殺……あの閻魔大王……」
「陽、見なかったことにしましょう」
情けない閻魔は見なかった、そう言いながら殺たちはたこ焼き屋の場所まで歩く。
たこ焼きの屋台につけば皆が金を出してたこ焼きを買った。
殺は宣言通りサトリに奢っている。
「たこ焼き美味しそうですね」
そう殺が言った瞬間だった。
子供が走って来る。
それに気づいた時にはもう手遅れだった。
子供が殺にぶつかりたこ焼きが宙を舞う。
宙を舞ったたこ焼きはすぐに地面に落ちることになる。
「ぁぁぁぁぁぁ!!私のたこ焼きが!!!」
殺は悲痛に叫ぶ。
それを御影はたこ焼きを食べながら口の周りにたこ焼きのソースをつけて見ていた。
サトリに至ってはまた買えば良いんじゃないかと平然と考えている。
「私の……私の……」
「仕方がないな……」
「え?」
殺が顔を上げた先にはたこ焼きを冷ます為にふーと息を吹きかけている陽が居た。
更に陽はたこ焼きを殺の目の前に持っていく。
「僕の分をやるから元気出せ」
「陽……!」
殺はたこ焼きが貰えたというより、陽の息が吹きかけられたたこ焼きを食べられるということに心を躍らせていた。
なんと変態的なのか……。
「ラブラブですわねー!」
「なっ!……べっ別にそういう意図があってのことでは……」
陽は顔を赤く染め上げ下を向く。
それを馬鹿三人は面白そうに見つめた。
「何はともあれ嬉しいです!ありがとうございます!陽!」
「あ……うん。どういたしまして」
陽は相変わらず下を向いたままだ。
殺はそんな陽を抱き締める。
「なっ!殺!?」
「恋人同士ですから良いでしょう?」
本格的に馬鹿三人がにやついてくる。
その時だった。
「うふふ~」
歪む。世界が歪む。
「……ん?」
「如何したのです?サトリ兄さん」
殺がサトリの態度を気にかけ声をかける。
それにサトリは答えた。
「今、何か笑い声が聞こえて」
「笑い声なら其処彼処で聞こえてるでしょう?」
「いや……奇妙な、女の心の声が……」
「奇妙?……ん?何か火薬の匂いがするな……」
その瞬間である。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
「なっ!?」
叫び声だけではない。
叫び声の方向からは火の手が上がっていたのだ。
更にドカンっと爆発音が響く。
会場中が爆発の火に囲まれる。
「何だ!?御影兄さん、閻魔大王も近くに居るなら結界の用意を!」
「殺ちゃん!了解!」
「あいわかった!」
閻魔と御影が結界を張ろうとする。
だが上手くいかない。
それに皆が焦りを募らせていく。
そんな中、殺は冷静に祭りに集った人々を火の手が上がっていない場所に誘導した。
祭りの人々を守る為に小規模でも結界を張る。
だが大規模な結界は張れない。
それに対し御影は己の不甲斐なさに腹を立て大声を出した。
「何故じゃ!?」
「そんなの私が妨害してるに決まってるじゃな~い!」
「誰だ!この声は!」
殺は焦る。
目を見開き、辺りをギョロリと見る。
すると声の主の女が姿を現わした。
「レディースアンドジェントルメン!ようこそ!最悪の日へ!」
女は戯け笑う。
「誰だ?お前は?」
「私は翠様の娘、邪よ!五人の英雄!はじめまして~!」
さあ、最悪のショータイムが始まりを告げた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。
みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。
勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。
辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。
だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる