地獄の日常は悲劇か喜劇か?〜誰も悪くない、だけど私たちは争いあう。それが運命だから!〜

紅芋

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最悪の時間

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「お祭り開始ですわ!!」

「M、五月蝿え」

 祭り開始早々に騒ぐMにサトリは冷めた目を贈る。
 いつもならその対応に興奮しているMだが、今は祭りに興奮している様だ。
 騒がしさがいつもの倍くらいである。

「何でまた合流しなければならないんですか?」

 そう溜め息をつきながら殺は目の前の金魚すくいの屋台を見た。
 ここに来たのが運の尽き。
 最初は陽と二人きりでまわろうと画策していたのだが、何の因果か五人の英雄が全員集結してしまったのである。
 殺は酷くがっかりしている様だ。

「まあ、そんなことは良いから金魚すくいをやらぬか?」

 殺は如何でも良くないんだよと内心思いながらも敬愛する兄、御影の提案を断らなかった。

「俺は今年の祭りの警備の時に金魚大量にゲットしたから正直要らないんだよな」

「如何でも良いからやろう」

「そうですね」

 殺は陽がやろうと言ったら早速お金を払い、金魚すくいの用意をする。
 殺は陽に格好良い姿を見せたい様だ。
 それにサトリは触発されたのか急にやる気を出す。

「よし!俺もやる!」

 そうなれば全員が金魚すくいを始める。
 誰が一番多く獲れるか、そう競争しながら。

「ああん!一匹も獲れないですわ!」

「儂は一匹は獲れたぞ!」

「僕は三匹だ」

「俺はMと一緒の結果」

 皆が金魚すくいを楽しんでいる中で殺は一人真剣だ。
 狙いを定めて一瞬で獲る。
 その姿は狩りをする猛獣だ。

「よし!二十匹!」

「どんだけ獲ってんだ!?」

 獲った獲物を皆に見せる姿は主人を敬愛する犬の如く。
 殺は獲りすぎということで金魚を何匹か屋台に返上した。

「サトリ兄さん」

「何だよ?殺」

 殺は一匹も獲れなかったサトリを見つめる。
 その目はどこか生温かい。

「これ……あげます」

 そう言いながら殺は金魚をサトリに差し出す。
 サトリは一瞬だが同情かと思い断わろうとした。
 しかし殺の心を読んだ瞬間にサトリの頭の中は怒りで満ち溢れた。

「お前……育てるのが面倒だから俺に押し付けてんだろ!!」

「はて?何のことやら?」

「テメェ……」

 殺はふざけた態度をとりながらサトリを見下ろす。
 見下ろされたサトリは更に怒る。
 怒ってすぐ様、殺の視界に入る為に大人の姿になった。
 白い煙がサトリを包めばサトリが大人になる。
 殺は大人の姿のサトリを見て此方の姿はイケメン系なんだよなと一人考える。

 サトリが子供の姿の理由を殺は知っていた。
 それは女子にモテたいが為である。
 そんなことしなくてもモテる見た目だが性格が残念な故にモテない。
 だから子供の姿でチヤホヤされ様とするのだ。

「殺!俺は金魚はもう育ててんの!もうこれ以上増えると成長とかの時の水槽代が勿体ねえよ!!」

 サトリは金魚の成長の度に水槽を変えているのかと殺は少し笑う。
 それを見たサトリは更に不機嫌になった。

「もう許さねー!」

「まあ、落ち着いてください。たこ焼き奢りますから」

「マジで!?ひゃっほー!」

 サトリは食べ物に釣られる。
 殺は敬愛する兄の一人がこうもちょろくて大丈夫なのかと少し心配になる。
 心配、そういえば閻魔は?そう殺は思い、辺りを見回す。

 よく見れば居た。
 閻魔は射的場で無双していたのである。
 閻魔が銃に込めた弾を放てば何故か何もかもを飛ばす勢いの風が巻き起こり、景品が一瞬で倒れるのだ。
 これは来年からは閻魔大王お断わりという看板が現れるだろうと殺は想像する。

「殺……あの閻魔大王……」

「陽、見なかったことにしましょう」

 情けない閻魔は見なかった、そう言いながら殺たちはたこ焼き屋の場所まで歩く。
 たこ焼きの屋台につけば皆が金を出してたこ焼きを買った。
 殺は宣言通りサトリに奢っている。

「たこ焼き美味しそうですね」

 そう殺が言った瞬間だった。
 子供が走って来る。
 それに気づいた時にはもう手遅れだった。
 子供が殺にぶつかりたこ焼きが宙を舞う。
 宙を舞ったたこ焼きはすぐに地面に落ちることになる。

「ぁぁぁぁぁぁ!!私のたこ焼きが!!!」

 殺は悲痛に叫ぶ。
 それを御影はたこ焼きを食べながら口の周りにたこ焼きのソースをつけて見ていた。
 サトリに至ってはまた買えば良いんじゃないかと平然と考えている。

「私の……私の……」

「仕方がないな……」

「え?」

 殺が顔を上げた先にはたこ焼きを冷ます為にふーと息を吹きかけている陽が居た。
 更に陽はたこ焼きを殺の目の前に持っていく。

「僕の分をやるから元気出せ」

「陽……!」

 殺はたこ焼きが貰えたというより、陽の息が吹きかけられたたこ焼きを食べられるということに心を躍らせていた。
 なんと変態的なのか……。

「ラブラブですわねー!」

「なっ!……べっ別にそういう意図があってのことでは……」

 陽は顔を赤く染め上げ下を向く。
 それを馬鹿三人は面白そうに見つめた。

「何はともあれ嬉しいです!ありがとうございます!陽!」

「あ……うん。どういたしまして」

 陽は相変わらず下を向いたままだ。
 殺はそんな陽を抱き締める。

「なっ!殺!?」

「恋人同士ですから良いでしょう?」

 本格的に馬鹿三人がにやついてくる。
 その時だった。

「うふふ~」

 歪む。世界が歪む。

「……ん?」

「如何したのです?サトリ兄さん」

 殺がサトリの態度を気にかけ声をかける。
 それにサトリは答えた。

「今、何か笑い声が聞こえて」

「笑い声なら其処彼処で聞こえてるでしょう?」

「いや……奇妙な、女の心の声が……」

「奇妙?……ん?何か火薬の匂いがするな……」

 その瞬間である。

「うわぁぁぁぁぁぁ!!」

「なっ!?」

 叫び声だけではない。
 叫び声の方向からは火の手が上がっていたのだ。
 更にドカンっと爆発音が響く。
 会場中が爆発の火に囲まれる。

「何だ!?御影兄さん、閻魔大王も近くに居るなら結界の用意を!」

「殺ちゃん!了解!」

「あいわかった!」

 閻魔と御影が結界を張ろうとする。
 だが上手くいかない。
 それに皆が焦りを募らせていく。
 そんな中、殺は冷静に祭りに集った人々を火の手が上がっていない場所に誘導した。
 祭りの人々を守る為に小規模でも結界を張る。
 だが大規模な結界は張れない。
 それに対し御影は己の不甲斐なさに腹を立て大声を出した。

「何故じゃ!?」

「そんなの私が妨害してるに決まってるじゃな~い!」

「誰だ!この声は!」

 殺は焦る。
 目を見開き、辺りをギョロリと見る。
 すると声の主の女が姿を現わした。

「レディースアンドジェントルメン!ようこそ!最悪の日へ!」

 女は戯け笑う。

「誰だ?お前は?」

「私は翠様の娘、邪よ!五人の英雄!はじめまして~!」

 さあ、最悪のショータイムが始まりを告げた。


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