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二人の出会い
しおりを挟む御影とサトリが出会ったのは齢四つの時であった。
彼らは互いの家の交流の際、偶然ならぬ必然的に出会ったのだ。
これは狐の一族の有力候補と悟り一族のせがれの物語。
~~~~
「お嬢さん!俺と付き合ってください!」
「ほぇ?」
サトリは四つの年齢で人生の一大イベントにおかれていた。
狐の一族との交流。最初は怠かったが、こんな美少女がいるなら話は別だと彼は思っていた。
だが狐の美少女は笑う。
「儂は男じゃぞ」
「は?」
これがサトリと御影の最初の会話だった。
サトリは焦る。こんなに綺麗な子が男?いや、そんな筈はない。
きっとサトリを体良くあしらいたいが為に嘘をついたのだろう。
そう納得してサトリは御影の心を読んだ。
だが見えたのは嘘もつかない純粋な心だったのである。
それを見たサトリはまた混乱してから叫んだ。
「なっ、なら証明してみせろよ!」
「良いぞ」
そう言って御影はサトリの手を引き脱衣所へと向かった。
ちなみにサトリはぽかーんとしている。
~~~~
脱衣所に着くと御影は着物をするすると脱いでゆく。
それを見ているサトリは何だかいけないことをしている気分で、その場に居たたまれなくなった。
すると御影が「おい」と呼ぶ。
呼ばれたらサトリは条件反射で声の方を向いてしまった。
そして見惚れた。
陶器の様な透き通った白い肌、陽に照らされて少し赤みを帯びている。
きらきら輝く金色の髪と尻尾……までなら良かった。
尻尾を、下半身を見てサトリはギョッとする。
その股には男なら誰しもがついているものがあったのだから。
「そ……んな……」
「えっへん!儂は男じゃぞ!」
そう言い張る御影にサトリの恋心は砕かれた気でいた。
だがそう思っていたのはその時だけだった。
「ここが少し崩れ……御影!?何をしておる?!」
「雅様ー!」
脱衣所は少し壊れたところがあったのだろう。
雅は作業員を連れて脱衣所に来ていた。
雅はこの時間は誰も入るなと言っていたのにと怒りでカンカンだ。
おそらく御影はうっかりさんなのだろう。
「雅様ー!」
御影は裸ということを忘れ、雅に抱きつこうとする。
だが雅はそんな御影を尻尾で叩いて叱りつけた。
「御影!うっかりも程々にしろ!」
「うぇーん!雅様ー!」
そう泣き喚く御影を見てサトリは思った。
『あ、此奴は俺が守らねえと』
砕けた筈の恋心は加護欲というお節介で蘇った。
~~~~
あれから何日経っただろうか?
サトリは御影とよく遊ぶ仲にまで昇格していた。
気心知れた友人。
御影は友人が増えて嬉しそうにしている。
人と人の繋がりを大事にしているのだ。
裏切りが多い狐の一族でも……。
「御影ー!何買うか決めた?」
「あれとー、これとー」
そういう御影は稲荷揚げを籠に入れていた。
サトリは好物も狐らしいなと思い、微笑ましいとにやけてしまった。
それを見て御影はムッとする。
「別のにする!」
「まあまあ、好きなものを買っといた方が後で後悔しないぜ」
「ムゥー」
サトリは笑顔で御影を宥める。
御影は確かに別のを買って後悔したくないと稲荷揚げをそのまま店員さんに差し出した。
店員さんが値段を言う。
そして御影はその値段の通り金を出そうとした。
だがそれはサトリに止められる。
「俺が払う」
「何を言っているのじゃ?儂のぶんは儂が払わねば」
御影は首を傾げる仕草を見せる。
それがいちいち可愛くてサトリは思わずにやけそうになる。
「偶には俺に奢られろよ。それにお前の主さんは倹約家で殆ど金を持たされてないだろ?」
「それは……」
「貯金が貯まったら何かしてくれや。和風ゴスロリを所望する」
「サトリ!ありがとう!」
サトリは笑う。
この時はいつも幸せに笑っていた。
だが、御影は守らなければならない存在。
そう思える様になったのは恋心だけが理由ではなくなった。
~~~~
「うわぁぁぁぁぁぁん!!」
御影は泣き叫ぶ。
神社での肝試しは最初は楽しい筈だった。
だが其処には悍ましい呪いが存在し、彼らの仲間を葬った。
神社での事件は彼らから大切な仲間を奪い、絶望の淵に追いやった。
御影は泣き疲れ、眠る。
御影は俺が守らなきゃ。もうこれ以上苦しませない様に、恐怖に陥れない様に……。
サトリはそう一人思いながら眠りについている御影の頬に口付けを落とした。
すると物陰から静かに雅が姿を現わす。
「随分と純粋なことをやっておるなぁ、サトリ」
「雅様、覗きなんて悪趣味ですね。まあ、俺は純粋なので悪いことはしませんから安心してください」
そうサトリは戯けた様に返事を返すが、力と感情がこもっていない。
それを見た雅は腹ただしそうに「ふんっ」と後ろを向く。
そうして雅は今のサトリへと言葉をおくった。
「無感情は道化師には良いが、貴様には感情があるじゃろう。だから守れ、御影を」
そう言って雅はサトリを置いて煙に包まれ消えていった。
感情がある。
それは確かに自分に存在するもの。
でなければ御影を守ろうなんて思わない。
自分はなんて馬鹿なんだろうか、このまま本当の感情に気づかず無感情に生きていたら御影に軽蔑されていた。
サトリは雅がいなくなったその場所に一礼する。
「うむぅ……」
「御影?」
サトリが御影の方へ振り向く。
御影は意識を少しずつ覚醒させ、サトリに向き合った。
「今、雅様がいたような?」
「ああ、いたよ。主人として今のお前の下へ来るのは当たり前だろう」
御影は泣きそうな顔をする。
雅がいなくなって寂しいのかと思っていた。
だが違った。
「サトリ……何故泣かないのじゃ?もしかして主だけが重荷を背負っているのか?!」
御影はサトリのことを心配していた。
サトリは急いで違うと言おうとする。
「いや、違……「違わないじゃろう!」
「御影……」
御影はサトリの顔を掴み、自分の方へ寄せる。
「主はそうやって儂を守って傷ついてきた。そんな主を放ってはおけない。今度は儂に守らせてくれ」
御影はまた泣いていた。
けれど涙を流すことが出来るのは強い証。
自分の感情に素直になれて無垢な涙を流せるのだ。
「御影、もう良い」
「何故じゃ……!」
御影は気づく。
そうして安心した。
「俺はもう充分守られてるよ。今も昔も。だから……ほら、泣くことが出来た」
そう言うサトリは頬に大粒の涙を流していた。
二人は抱きしめあう。
子供らしく泣き合う。
どうかこの惨劇が終わります様にと。
次に何か別の惨劇が起こったらそれを止められる程、強くなれます様にと……。
~~~~
今現在、二人は運命に翻弄され人殺し課へと入った。
其処は過酷な運命にもめげずに前へ進む強き者が集まっていた。
前に進んでいく皆を過去の自分たちに照らし合わせる。
だが全員が違う強さで前へと進んでいた。
それに二人は笑顔になる。
自分たちも前へ進もう。
そう心に誓い、その誓いを抱きしめて。
「御影兄さん!サトリ兄さん!起きてください!仕事!」
「おやつ抜きにするぞ」
「縛ってくださりませ!」
「「ははは……」」
心強い仲間と共にいこう。
運命のその先へ。
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